少年と少女達の輝き目指す物語   作:キャプテンタディー

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どうもキャプテンタディーです。

今回、2話目が最後になります。
なんというか展開的に持っていけたので…。

そして字数は申し訳ない。いつも通りに
なっしまいました。字数は察したください。

最後まで読んでいってくだされば幸いです。
それでは、本編をどうぞ!








#8 “大好き”という名の『気持ち』

 

 

 

 

 

 

翌日、昼休み

 

 

「えっ?桜内さんに作曲をしてもらえるだって?」

『うん!でもスクールアイドルには流石にならないって言ってたけどね…』

「いや…それでも十分だろ……」

 

 

俺は曜の話を聞いて、とても驚いている。

 

実は、梨子が千歌たちに対して、作曲をしてあげると自ら申し出たということなのだ。

 

どういう訳かは彼女の考えあっての行動だろう。

 

そうとしか考えられない。

 

 

『でも凄いよね!私たちのために作曲してくれるんだもん!きっとあの時のお礼でなのかな?』

「さぁな。でも…1番の理由はそれだと思う」

 

 

日曜にダイビングしに行った時には、梨子も思いっきり千歌と曜と一緒に笑っていた。

 

それが何よりも証拠で、目的の海の音を聞けたからと、手伝ってくれたそのお礼と思い、彼女はそんな行動に出たのだろう。

 

考えがもし正しくなければ、彼女自身…自らがわざわざ申し出るわけもないと思うからね。

 

 

『それでね…千歌ちゃんが歌詞って何って…』

「…あいつ、また何かやらかしたのか?」

『やらかしたというわけじゃないけれど、桜内さんが千歌ちゃんに『詞を頂戴』って言ったとき、千歌ちゃんの頭には“?”マークがあってさ…』

「あいつ…スクールアイドルというものが何するか本当に分かってるのかな?すごく心配だ」

 

 

『詞』…つまりは曲の歌詞のことだろう。

 

だが千歌の野郎は、そんな歌詞のことすら分かっていないようで、『詞』って何って梨子に尋ねていたと、あとで曜から話は聞いた。

 

 

「それで?作曲はしてくれるにしても、作詞をどうするのか気になるけど…実際どうするんだ?」

『うん!それはね、今日の放課後に千歌ちゃんの家で作詞をやることになった!』

 

 

どうやら放課後に作詞はやるみたいだ。

 

それならそれでもいいんだが、作詞もどうも上手くいくのかも分からない。

 

やけに心配ばかりする俺もあれだけどさ…。

 

 

「そっか。じゃあ作詞作るの頑張ってね」

『うん!3人で一緒に頑張るね!』

 

 

曜はやる気満々の元気ハツラツな声でそう答え、今にも電話を切ろうとしているとき、俺は言う。

 

 

「あのさ…曲が出来たら、その曲は最初に俺に聞かせてくれ。千歌と曜の2人が歌う初めての曲だから楽しみにしているよ」

『うんっ!曲が出来たら真っ先に遼くんに聞かせにいくから、楽しみにしててね!』

 

 

もし曲が出来たら最初に俺に聞かせてくれという、一丁前な言葉をかけてしまったけれど、曜はそれに嬉しく思ったのか、そう言って大きく頷いた。

 

それから曜は電話を切り、通話は終わる。

 

梨子が作曲をしてくれるとなると、曲ができるのも時間の問題かな。さて…どんな曲に仕上がるのか、今から完成が待ち遠しい。

 

梨子に作曲をしてくれることに感謝しつつ、頭の中でどんな曲になるのか楽しみに待つことにした。

 

2人が歌う初めての曲、楽しみだなぁ〜!

 

胸の内で心を躍らせながら思う、俺であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれっ?ここって旅館じゃない?」

 

 

千歌ちゃんの家を見て、桜内さんは目を丸くする。

 

 

「そうだよ!」

「私の家は、なんと旅館なのだ〜!」

 

 

千歌ちゃんは体を使って自分の家を紹介する。桜内さんは千歌ちゃんの家がまさか旅館だというのを知って、目を丸くしたまま驚いていた。

 

 

「ここなら時間も気にしないで出来るし、バス停も近いから帰りも楽だしね!」

「そうね…。バス停も近くにあるし、ここだったら作詞とかは出来そうね」

 

 

それから私が桜内さんに時間とか帰りとか話をしているとき、旅館の中から1人の女性が出てくる。

 

真っ黒で艶やかなロングヘアで、その人は千歌ちゃんの姉で、私も知っている人物だった。

 

 

「おかえり!そしていらっしゃい!あら曜ちゃん、相変わらず可愛いわね〜!」

「えへへっ…♪」

 

 

この私の頭を撫でて優しく接してくれる人は、千歌ちゃんの三姉妹の1番上のお姉さんの志満さん。

 

おっとりしてて、とても優しいお姉さんなんだ。

 

いつも千歌ちゃんと一緒にお世話になっているから、この人は私にとってお姉さん的存在なの。

 

 

「そちらは千歌ちゃんが言ってた子?」

「そうだよ!桜内さん、志満姉ちゃんだよ!」

「あ…えっと…桜内梨子です…!」

「よろしくね〜!」

 

 

桜内さんが志満姉さんと挨拶を交わし、そのあとで志満姉さんが私たちを招き入れる。

 

だけど桜内さんは旅館に入らず、何故か目を細めて険しい表情をしていた。理由としては、桜内さんが見ている方向に、ある動物がいるからだった。

 

 

「ハッハッハッハッ……」

「…………………っ!」

 

 

桜内さんがじ〜っと見つめていたのは、千歌ちゃんが飼っている、ペットのしいたけだった。

 

桜内さんとしいたけはじっと見つめ合い、数秒後、しいたけが吠えたところで彼女は怯え、私と千歌ちゃんのあとを追うように旅館に入ってきた。

 

もしかしたら桜内さんって、犬嫌い?

 

 

「私の部屋はここだよ!」

「ゆっくり寛いでってね〜!」

「は…はい。ありがとうございます…」

 

 

それから私たち3人は千歌ちゃんの部屋に辿り着き、荷物をまとめて部屋の片隅に置いたところで、話は作詞の話へと移る。

 

 

「それじゃあ作詞を始めましょう」

「うん!よ〜し!いい歌詞を作るぞっ!」

「あはは…出来るのかな…?」

 

 

ノートを広げ、ペンを持ち、今から作詞をすることにやる気満々の千歌ちゃん。

 

でも私は思う。この作詞をする作業は、千歌ちゃんが思っている以上に難しいんじゃないかって…。

 

 

 

10分後

 

 

 

「う〜ん…はぁ…何も思い浮かばないよ〜!」

「あはは…やっぱり……」

「はぁ……」

 

 

私の思っていた通りの展開になった。

 

作詞を始めてから10分が経過したけど、千歌ちゃんは頭を抱え、歌詞にする言葉を思いつくことも何も出来ず、千歌ちゃんの前に広げられたノートは真っ白で何も書かれていない。

 

それを見ていた桜内さんも、千歌ちゃんを見て呆れてものも言えない表情をしていた。

 

 

「やっぱり…恋の歌は無理なんじゃないの?」

「いやだ!μ'sのスノハレみたいな曲がいいの!」

「とはいっても…思いつかないんでしょ?」

「うっ…それは…そうだけど……」

 

 

千歌ちゃんが作ろうとしている曲は、今千歌ちゃんが言った『スノハレ』っていう曲みたいな恋の歌を作りたいみたい。

 

でもその恋の歌にちなんだ言葉がなかなか出てこないから、千歌ちゃんはこうして悩んでいる。

 

私も恋の歌って言われても、どんな言葉がいいんだろうって考えちゃうし、何より…恋愛経験もない。

 

 

「それに…恋愛経験もないんでしょ?」

「うっ…それは…ないけど…?」

「じゃあやっぱり…恋の歌は無理よ…」

 

 

恋の歌を諦めさせようと、桜内さんは現実をつけつけるように千歌ちゃんに言い放つ。

 

私もこの有様を目の当たりにしてしまうと、私にもどうすることも出来ないし、千歌ちゃんよりも作詞が出来るわけもない。

 

だから、恋の歌は諦めるしかなかった。

 

でも千歌ちゃんは、その『スノハレ』についてとある事柄を思いついて話し出す。

 

 

「でも、μ'sがこの曲を作れたってことは、この曲を作っていた時に恋愛してたってことだよね?」

「なんでそんな話になるのよ?作詞でしょ?」

「気になる…。ちょっと調べてみる!」

 

 

そう言って千歌ちゃんは自分の目の前にパソコンを持ってきて、μ'sで誰が恋愛をしていたのかを、慣れた手つきで検索を始めた。

 

 

「本当に恋愛してたわけじゃないと思うけど…」

「でも気になるし!」

「はぁ…何でこうなるの……」

 

 

千歌ちゃんの行動に呆れも呆れまくる桜内さん。

 

私は桜内さんの表情を見て、彼女に対して弁解するように、ある一言を桜内さんに告げる。

 

 

「千歌ちゃんは今、スクールアイドルが大好きっていうか、“恋”してるからね…」

「……えっ?今…なんて…?」

 

 

だけど私が今言い放った言葉に、作詞をする上でのヒントが含まれていた。

 

桜内さんはそれに気づき、私の方を見る。

 

それから桜内さんの話を頼りに、私は今言った言葉をもう一度振り返ってみると、確かにヒントがあることが分かった。

 

私もついびっくりで、ふいに声を上げる。

 

 

「んっ?…あっ!」

「何?どうしたの?」

 

 

私が声を上げた時、千歌ちゃんは手を止めてこちらの様子を伺ってきたから、私は言った。作詞をする上での大ヒントを、千歌ちゃんに与えた。

 

 

「千歌ちゃん!こう考えたらいいんじゃないかな?スクールアイドルに対して、ドキドキする気持ちとか、大好きっていう感覚とか、そういうのなら書ける気しない?」

「…っ!うんっ!書ける!それなら…私ならいくらでも書けるよっ!」

 

 

千歌ちゃんはそう言って喜びの笑顔を見せると、置いていたパソコンを横に置き、真っ白だったノートにペンで歌詞を書き始める。

 

 

「えっと、まず輝いているところでしょ?それから…えへっ…あとね…えへっ…えへへっ♪」

 

 

笑顔は絶えず、ペンをひたすら動かす。

 

さっきまで悩んでいたことが嘘のように、千歌ちゃんはペンを走らせ、歌詞を書いていく。

 

千歌ちゃんが歌詞を書いている間、私も桜内さんも、千歌ちゃんが頑張って歌詞を書いている様子を微笑ましく見守った。

 

そして作詞を始めてから5分もしないうちに、千歌ちゃんは歌詞を完成させたようだった。

 

 

「はい!出来たよ!」

「えっ…?もう出来たの!?」

「ううん、これは参考だよ。私ね…こんな曲が作りたいなって思ってるの!」

 

 

千歌ちゃんが書いたのは歌詞だけど、どうやら参考としてこの曲を作れたいと望んでいる歌詞らしい。

 

千歌ちゃんが桜内さん手渡したノートを、私も桜内さんの横から覗き込むように見てみると、書かれていたのは『ユメノトビラ』という文字で、下にはその曲の歌詞のような言葉が並べられていた。

 

 

「ユメノ…トビラ…?」

「そう!『ユメノトビラ』!」

「私も聞いたことない曲だよ」

 

 

私も知らない曲だった。

 

千歌ちゃんが言うには、この曲も千歌ちゃんが大好きなμ'sが作った曲なんだって。

 

 

「私ね、その曲を聞いて…スクールアイドルをやりたいって思った。μ'sみたいにキラキラしたいって本気で思ったの!」

「μ'sみたいに…?」

「うんっ!頑張って努力して、みんなと力を合わせて、奇跡を起こしていく。私でも出来るんじゃないかって…今の私から、変われるんじゃないかって…そう思ったの!」

「……そうなんだ」

 

 

千歌ちゃんの思いを聞いた桜内さんは、納得気味の表情で笑っていた。でもどこか、少し寂しげな表情としても見て取れた。

 

本当…千歌ちゃんはμ'sが好きなんだなぁ…って、私もそんなことを考えていた。

 

 

「大好きなのね…μ's」

「うんっ!大好きだよ!」

 

 

それから私たちは3人で、そこから1時間くらい作詞を考えた。『大好き』っていう言葉にちなむ言葉を、3人でたくさん出した。

 

特に千歌ちゃんなんかが1番出てたと思う。

 

 

『キラキラ』とか『キラリ』とか。

 

 

“スクールアイドル”というものを初めて見たときに思ったことを、千歌ちゃんはたくさん言葉をノートに書き込んでいった。

 

そうやって歌詞を考えているうちに、時間も夕方の6時を回ろうとしていた頃だった。

 

 

「うわっ、もうこんな時間!?終バス来ちゃう!」

「えっ?もう帰るの?」

「うん。曜ちゃんはバスがないと帰れなくなっちゃうんだ。それにこっちは都会と違って、バスの本数もとても少ないんだ」

 

 

千歌ちゃんが桜内さんにバスのことを説明している間に、私は急いで身支度を整える。この時間だと、もうバスは1本しかなくて、これを逃すと家に帰れなくなるという事態になってしまうのだ。

 

私が帰る準備をしているところを見ていた桜内さんも、自分も帰ろうとテーブルから立ち上がる。

 

 

「じゃあ…私も帰るわ。明日もまた学校だし」

「えぇ!?帰っちゃうの?」

「また明日考えればいいだけよ。大丈夫、まだ時間はあるんだから…」

「…うん。分かったよ…」

 

 

千歌ちゃんの寂しいなっていう表情を見てしまうと、少し帰るのが辛くなってしまいそうになる。

 

でも桜内さんが千歌ちゃんに優しく声をかけてくれたことで、千歌ちゃんの表情も和らいだ。

 

 

「じゃあ、また明日ね?」

「千歌ちゃん!じゃあまた明日!」

「うんっ!2人ともまた明日!」

 

 

そして私たちは『またね』と挨拶を交わして、私と桜内さんは千歌ちゃんの部屋を出る。それから家を出る時にも、千歌ちゃんのお姉さんの志満姉さんに軽く会釈して、私と桜内さんは家を出た。

 

 

「じゃあ桜内さんもまた明日!」

「えぇ!また明日!あっ…ちょっと待って!」

「んっ?どうしたの?」

 

 

桜内さんにも挨拶を交わし、バスに乗り遅れちゃうと思っていたところを、私は桜内さんに止められる。

 

どうしたんだろうと思って彼女に振り向くと、彼女は少しだけ恥ずかしそうな表情をしていた。なんというか…顔をほんのり赤くしていた。

 

すると彼女の口からある問いかけが飛んでくる。

 

 

「あのね、私と渡辺さんが出会って…まだ数日しか経ってないけど、もし私を友達として見てくれてるなら、お互いに名前で呼び合わない?ずっとさん付けして呼んでるとあれだから…ね?」

 

 

思いもよらない言葉だった。

 

だって、桜内さんが自分から名前で呼び合おうって言ってくるとは思わなかったから…。

 

 

でも…なんだか嬉しい。

 

 

また新しい友達が出来ることに、自分の心はとても晴れ晴れとしていた。

 

 

「いいよ!じゃあ…梨子ちゃん!」

「うんっ!私は…曜ちゃんって呼ぶね!」

「うん!これからもよろしくね!」

「えぇ!よろしくね!」

 

 

桜内さんを“梨子ちゃん”と、お互いに名前を呼び合い、こうして梨子ちゃんとも友達となった。

 

梨子ちゃんも済ました笑顔を見せて、彼女自身の心も、綺麗に晴れ晴れとしていた。

 

 

「じゃあまたね!」

「うん!ばいば〜い!」

 

 

そして私と梨子ちゃんは千歌ちゃんの家の前で別れ、それぞれ家路に帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『梨子ちゃん、とても上手ね!』

『だって、ピアノを弾いてると空飛んでるみたいなの!自分がキラキラになるの!お星様みたいに!』

 

 

ふと…昔の小さい頃の私を思い出す。

 

 

『みんな…私と同じような、どこにでもいる普通の高校生なのに、キラキラしてた…』

『スクールアイドルって…、こんなにも、キラキラ輝けるんだって!』

 

 

今思うと、昔の私と高海さんは似ていた。

 

楽しそうにピアノを弾いている昔の私と、スクールアイドルに夢中で、μ'sみたいにキラキラ輝きたいって思っている高海さんが、すごく似ていた。

 

なのに“今”の私は、何をやっても…きっかけや環境を変えても、全然何も得ることは出来ていない。

 

私は部屋の明かりも付けず、学校の制服から着替えようともせず、ベッドの上で自分のクッションを抱いたまま、ずっとうずくまっていた。

 

 

「……どうすれば、いいんだろう……」

 

 

自分のスマホからは、高海さんが話していたμ'sの『ユメノトビラ』という曲が流れていた。

 

高海さんがスクールアイドルを始めるきっかけにもなった曲。彼女がμ'sみたいになりたいと思い始めたきっかけにもなった曲。

 

 

私は正直、彼女が羨ましかった。

 

 

すごく笑顔の絶えない人で、今思えばすごく優しい人だってこともよく分かった。

 

なのに…せっかく海の音を聞くことも出来たのに、私は未だに一歩を踏み出せずにいた。

 

それから私は部屋に置かれたピアノの方へと足を運ぶ。ベットから立ち上がり、ピアノが置かれた方向に歩き、ピアノの椅子に腰掛ける。

 

そしてそっと…ピアノの扉を開いた時だった。

 

 

「……っ!」

 

 

私は、あの時のトラウマを思い出してしまう。

 

高校1年の時の、とあるピアノの発表会。

 

私の番が来て、ステージに自分だけがピアノの前にいた。そしてピアノを弾こうとすると、観客の視線が私だけに向けられて、その視線が私には怖くってプレッシャーを感じてしまい、私はピアノを引く事ができなかった。

 

 

それからだ。自分がピアノを弾くことすら…楽しくなくなってしまったのは…。

 

 

でも、今はそんなプレッシャーも感じない。私の部屋には誰もいないし、私ただ1人だけだから。

 

 

〜♪

 

 

一度だけピアノの音を出したあと、少しだけ…私は勇気を出し、ピアノの鍵盤を弾いた。

 

 

「夢のと〜び〜ら〜 ずっとさ〜がし続〜けた♪」

「君と〜僕と〜の〜 繋がりを探し〜て〜た〜♪」

 

 

高海さんが大好きと話していた、彼女のお気に入りの『ユメノトビラ』を、私は口ずさんだ。

 

すると……

 

 

「……あれ?梨子ちゃん?」

 

 

窓の外から私の名前を呼ぶ声が聞こえ、私は視線を窓へと向けると、そこには高海さんの姿があった。

 

高海さんは風呂上がりなのだろうか?頭にタオルを巻いていて、寝間着の姿で私に手を振っていた。

 

 

「た…高海さん!?」

「そこって梨子ちゃんの部屋だったんだ!」

「そっか。私ここに引っ越してきたばかりで、全然気が付かなかった…」

 

 

歌っていたのを聞かれていたのはまだしも、まさか自分の部屋の隣が、同級生の高海さんの家だった事に私は驚きを隠せなかった。

 

そしたら高海さんは、私に尋ねてきた。

 

 

「今の…『ユメノトビラ』だよね?」

「えっ…?」

「梨子ちゃん歌ってたよね!?」

「あ…その……それは…」

 

 

自分が大好きな歌を、私が歌っていたことに興奮している高海さん。そこから高海さんは、自分の好きなμ'sのことを語り始める。

 

 

「私、その曲が大好きなんだ!あれは〜、第2回ラブライブの予選で…!」

「高海さんっ!」

「えっ…?」

 

 

でも私はその話を止めるように、つい大きな声彼女の名前を叫び、彼女も黙ってしまう。

 

 

「私…どうしたらいいんだろう。何をやっても楽しくなくて、変わらなくて…」

「梨子ちゃん……」

 

 

私は、自分の心に思っていたことを打ち明ける。

 

ベランダの手摺を掴みながら、ベランダの壁にもたれてしゃがみ込んで、項垂れていた。

 

何をしても上手くいかなくって、せっかく高海さんや遼くんの助けを借りて、海の音を聞けてきっかけを作ってくれたのに…変われなくって…。

 

惨めな私に…嫌気がさしていた。

 

そんな時に高海さんは、私に手を差し伸べて言う。

 

 

「やってみない?スクールアイドル…」

「…!ダメ…このままピアノを諦めるわけには…」

 

 

高海さんはまた、スクールアイドルに誘ってきた。

 

でも私にはピアノがあると言って、高海さんの言葉に、私は断るように話をする。

 

だけど、また彼女は優しく私に話してくる。

 

 

「やってみて、笑顔になれたら…変われたら、また弾けばいい。諦めることないよ!」

「失礼だよ…。本気でやろうとしている高海さんにそんな気持ちで…。そんなの失礼だよ…」

 

 

私はそう言ってベランダの影に隠れ、うずくまる。

 

本気でスクールアイドルとして活動しようとしている高海さんに、悪い思いはさせたくない。彼女に迷惑や、足手まといになりたくないから…。

 

でもそれでも、高海さんは話してくる。

 

でも何故か…なんでか苦しそうな声だった。

 

 

「梨子ちゃんの力になれるなら…私は嬉しい。みんなを笑顔にするのが、スクールアイドルだもん」

 

 

私はベランダの影からそっと見ると、高海さんは自分の部屋の窓枠から身を乗り出して、私に向かって手を伸ばしていた。

 

でもその行動はとても危険だった。ここは2階だから、一歩踏み外してしまえば、地面に真っ逆さまに落ちしまいそうな行動だったから。

 

 

「……っ!千歌ちゃん!!」

 

 

私はその行動に驚きのあまりベランダから身を乗り出し、自然と彼女の名前を呼んでいた。

 

外は風が吹き始め、頭に巻いていた高海さんのタオルが外れ、下に落ちていく。

 

 

「それって…とても素敵なことだよ!」

「……っ!」

 

 

何故…そこまで私に優しくしてくれるのだろう。

 

知り合って間もないのに、どうして彼女は…千歌ちゃんは私にここまでしてくれるんだろう。

 

私には、よく分からなかった。

 

だけど…嫌じゃない。むしろ…嬉しかった。

 

私は差し出された千歌ちゃんの右手に、自分の右手を千歌ちゃんに向かって手を伸ばした。

 

 

「んっ……くっ…!」

「うっ…くっ……!」

 

 

でも、どんなに手を伸ばしても届かない。

 

その距離は、届きそうで届かない距離だった。

 

私は一度手を引っ込めて、諦めかけた。

 

 

「…流石に、届かないね…」

「待って!だめっ!」

「……っ!」

 

 

でも彼女は私に『諦めないでっ!』って言い聞かせているようで、私の心に重く響いた。

 

さらに千歌ちゃんは身を乗り出し、手を伸ばす。

 

必死に伸ばされた千歌ちゃんの手を、私も掴もうと必死に手を伸ばした。

 

 

「んんっ…くっ…!」

「んっ…あっ…あぁっ……!」

 

 

私と彼女の声が漏れるくらい、必死に私と千歌ちゃんは、手を掴もうと手を伸ばした。

 

そして、その思いは報われた。

 

 

「…っ!届いた〜!」

「……うんっ!」

 

 

手を掴むことは出来なかったけれど、指の先には、確かに千歌ちゃんの指の感触があった。

 

届いたのだ。届かないと思っていたのに…。

 

 

「やったね!梨子ちゃん!」

「えぇ!私も嬉しい!」

 

 

私は千歌ちゃんと喜びを分かち合った。届かない距離だと思っていたのに、手を一生懸命伸ばしたことで、指先が届いた。

 

小さなことかもしれない…。

 

だけど、大きな成功にも思えた。

 

 

「梨子ちゃん!やる?スクールアイドル…?」

 

 

そして聞いてくる、高海さんの声。

 

その彼女の問いかけに、私ははっきり答えた。

 

 

「えぇ!これからよろしくね、千歌ちゃん!」

「…っ!うん!よろしくね、梨子ちゃん!!」

 

 

これが私の輝きになる…夢の第一歩だった。

 

 

 







最後まで呼んでいただきありがとうございます。

これにて、サンシャイン2話目が終わります。
次回からは3話目になり、あの子も本格的に登場!

ていうか、梨子と千歌が2人で手を伸ばし合って
いたときに出していた声ですが、アニメを抜いて
音声だけ聞くと…

僕の言いたいこと、後は察してくださいw

次回も楽しみにしていてください!
感想・評価等お待ちしています!


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