どうも、キャプテンタディーです。
最近、本当に毎月1話程度しか上げられなくて
読者の皆さんには本当に申し訳ありません。
もうこの小説も2年になるので、つくづく時が
進んでいくのが早いなと感じてます。
さて、今回も前回からの続きとなります。
やっと、やっと水着回へ突入していきます。
それでは、本編をどうぞ!
夏本番
今日から、みんなと一緒に合宿を始める。
「やっほ〜!」
「まっぶしい〜!!!」
「ふふっ!シャイニ〜♪」
それなのに私たちは、この雲一つとしてない快晴の中で、練習をせずに遊びまくっていた。
こんな日は、水着に着替えでみんなと一緒に海で遊ぶのに限る!
だけど、そう簡単にはいかなかった。
「結局、遊んでばかりですわ……」
実際、海で遊んでいるのは私と千歌ちゃんと鞠莉ちゃんと果南ちゃんの4人だけ。千歌ちゃんと鞠莉ちゃんでビーチボールを楽しみ、果南ちゃんは得意のサーフィンをしている。
そして遊んではないが、ぷかぷかと浮かぶ浮き輪の上で、ゆったりとのんびりしているルビィちゃんもいる。
「はぁ……ぷかぷか〜♪」
波の揺れ加減が丁度いい感じなのか、ルビィちゃんは波に揺られてとても気持ち良さそう。
そんなのんびり寛いでいるルビィちゃんを、私は悪戯せずにはいられなかった。
「…………っ!」
海に潜水し、気づかれないようにルビィちゃんの真下にまでやってきて、その後で自分の両手をそっと、ルビィちゃんの脇腹のところに差し出す。
そして『今だ』と思った瞬間、私はルビィちゃんの脇腹を思いっきりくすぐった。
こちょこちょ、こちょこちょ!
「ひゃあっ!?」
脇腹に突然やってきた変な感覚。私に唐突に襲われたルビィちゃんは驚きの声を上げ、浮き輪の上で私のくすぐりから逃れようと暴れる。
「あはははっ!あははは……わぁ!?」
それでその暴れる勢いのあまり、ルビィちゃんは海へ背中から転げ落ち、海にドボンした。
バシャン!
「ぷはぁ……!」
「あははは!ごめんねルビィちゃん!」
「もう!くすぐりはダメです曜さん!」
「えへへ!ごめんごめん!」
私は海にドボンルビィちゃんを引きあげ、ルビィちゃんに悪戯したことを笑いながら謝る。まぁ見ての通り、全然反省してないけどね!
ルビィちゃんへの悪戯は大成功に終わった。でも後々ルビィちゃんからこっぴどく叱られちゃった。プンプンと口を膨らませて、私に怒っているルビィちゃんの顔、とても可愛い。
「マルは言われた通りに4時に来たずらよ?」
「えっ!?ズラ丸が!?」
それから私たちがある海とは打って変わり、浜辺では、ダイヤさんが私たちを見つめているその横で善子ちゃんと花丸ちゃんが話を繰り広げていた。
どうやら花丸ちゃんは、本当に朝4時にはここに来ていたらしい。
「うん!でもマル以外誰もいなかったずら……」
「当ったり前よ!あんな時間からここで練習出来るわけないじゃない!」
「そうだけど、善子ちゃん、それはダイヤさんの前では言っちゃったらダメずらよ……?」
「…………あっ」
「……………………」
砂浜に、そこに敷いたレジャーシートにうつ伏せで寝転がり、ゆったりと日光浴している善子ちゃんも花丸ちゃんの行動に驚くくらいだった。
ただ、花丸ちゃんに対して口にした善子ちゃんのその言葉が、ダイヤさんの心を深く抉った。
「いいんです……私がラブライブに向けて張り切り過ぎたのがいけないのですから……」
「その表情とトーンで言われると、逆になんか私が一番罪悪感を抱いちゃうんですけど……」
ダイヤさん、朝から練習出来なかったことに少しばかり悔しさを感じていた。そしてその表情を目の当たりにした善子ちゃんは、己が発した言葉に凄く罪悪感を抱くことになってしまった。
「あ〜あ。善子ちゃんいけないんだ〜」
「う……うっさい!仕方ないでしょ!」
善子ちゃんには、ドンマイっていう言葉しかいいようがないや。
善子ちゃんは花丸ちゃんに対してそんな風に話をしたと思うけど、ダイヤさんがそばにいるところでそれは話しちゃいけないよ……。
ここまで来たら善子ちゃんを擁護するわけじゃないけど、思わず口から声に出てしまったのかもしれないけどね。
うん、“思わず”ね……。
とりあえず善子ちゃん、ご愁傷様だよ。
「梨子ちゃん!梨子ちゃんもおいでよ!」
「ええっ!?私はいいよ千歌ちゃん!」
「いいからいいから!」
「……………………」
私は善子ちゃんと花丸ちゃんのやり取りを見て、その後でふと視線を千歌ちゃんの方へと向けると、梨子ちゃんの手を取り、彼女を引っ張っていくように海へ駆けていく姿があった。
海を泳ぎ、梨子ちゃんと遊ぶのをとても楽しそうに笑みを浮かべる千歌ちゃん。今日も千歌ちゃんは元気そうで何よりだ。
ただそう思ったのも一瞬だけ。昨日の夜の出来事をふと思い出しては、私でも自覚は出来るくらいに笑顔はすんなり消えた。遼くんと電話していたことに関しては、私に一言もその事を打ち明けてはくれなかった。
「へへっ!梨子ちゃん、そぉれ〜!」
「きゃっ!もう〜千歌ちゃん!」
「えへへっ!梨子ちゃんも楽しもうよ〜♪」
「……………………」
にも関わらず、こうして千歌ちゃんは梨子ちゃんに対して笑顔を見せている。
最近思うんだ。千歌ちゃん、ここ最近梨子ちゃんに向けて笑うことが多くなっている気がするって。もちろん私の“誤解”なのかもしれない。けど私は、それがずっと気になっちゃって仕方がなかった。
ただ単純に、楽しくて笑っているだけなのに。
「千歌さん!ちょっとよろしいですか?」
「はい?なんですかダイヤさん?」
「そういえばですが、海の家の手伝いは午後からって言ってましたわよね?確か……」
「はい!そうですよ!」
そんな時、ダイヤさんは千歌ちゃんに対して海の家のことを尋ねてくる。
今日からみんなで海の家の手伝いをも一緒にするから、ダイヤさんは海の家の事が気になって聞かずにはいられなかったのかもしれない。
と思っていたその束の間、次にダイヤさんは千歌ちゃんにとんでもないことを声に発したのだ。
「それで、そのお店はどこですの?」
「…………えっ?」
「「「「「「「えっ!?」」」」」」」
ダイヤさんは千歌ちゃんにそう尋ねながら、キョロキョロと周りを見渡し始める。
千歌ちゃんですら、ダイヤさんの発言に、度肝を抜かれた表情をして驚いていた。みんなも、ダイヤさんがそんなことを言うなんてと、口にした言葉に驚きを隠せずにはいられなかった。
「あ、あははは……」
私も、苦笑いが止まらない。
なにせダイヤさんが探している海の家は、ダイヤさんの
「ダイヤさん、目の前にありますよ?」
「…………えっ?」
そのことを、千歌ちゃんはダイヤさんに教える。
その促しによってダイヤさんは、見た目がすごくボロボロな小屋を目にする。それこそが、私たちが今日からお手伝いする『海乃家』なのであります!
少しボロい小屋だけど、海乃家としてはまだまだ全然使えるから、とりあえず大丈夫……だと思う。
「ダイヤさん、現実を見るずら……」
「……ボロボロ……」
それを目の当たりにしたダイヤさんは、自分自身が想像していた海乃家とは全然違うらしく、衝撃を受けて見た目を呟くことしかできなかった。
まぁ確かにボロボロなんだよね。ずっと昔からあの小屋で海乃家を続けてきたって話を聞いてるし、それにあの海乃家をずっと守って欲しいと自治会の人たちから言われちゃったから、私も千歌ちゃんも果南ちゃんも、その言葉を守らなきゃいけない。
ただ、その隣に佇む海乃家は凄かった。
「それにひきかえ、隣は……」
「と……都会ずら……」
「……ダメですわ」
まるで東京にある、雰囲気のあるカフェのような海乃家がそこに佇んでいた。それを見た花丸ちゃんは感激し、ダイヤさんは意気消沈気味。
お隣の海乃家に負けないくらいのお客さんを呼ばなければ、私たちで9人で切り盛りをする海乃家が悪い意味で潰されかねない。特にダイヤさんが一番そう思っているに違いない。
するとそのとき、少し前まで千歌ちゃんとビーチバレーをして楽しんでた鞠莉ちゃんが、ダイヤさんに向かって言い放つ。
「ここで白旗を振るつもり?ダイヤ……」
「鞠莉、さん……?」
「私たちはラブライブを目指しているんでしょう?だったら、あんなチャラチャラしたお店に、私たちが負けるわけにはいかないわ!」
「鞠莉さん……」
正直に思うのは、今ここで、この場でラブライブの話題を出しても何の意味もないと思うんだ。
「「「「「「……」」」」」」
ほらやっぱり。千歌ちゃんたちの表情を見回してみると、むしろ鞠莉ちゃんの言葉に対して、疑問に思っている表情ばっかりだった。
だからこの場面、ラブライブのことを話題にしてダイヤさんをやる気にさせようなんてこと、絶対に無理だってそう思ってたのに。
ダイヤさんは、鞠莉ちゃんの言葉を聞いたのち、一瞬にして感情が正反対に切り替わったのだ。
「鞠莉さん!あなたの言う通りですわ!」
「えっ……?」
「ダイヤさん、やる気出たみたいずらね……」
「えぇ。そうね……」
本当に、やる気出ちゃった……。
これはとことん、ダイヤさんの厳しい檄が飛ぶに違いない。
そう思った私は、妹のルビィちゃんを再び浮き輪に乗せ、しばらくの間、海乃家のことを考えつつ、ルビィちゃんとこの楽しいひとときを一緒に過ごしたのであった。
えっ?千歌ちゃんとはしないのかって?
「梨子ちゃん!そぉ〜れっ!」
「きゃっ!もう〜千歌ちゃんってば〜!」
「えへへっ♪」
「……………………」
うん。私はいいんだ。
千歌ちゃんには、梨子ちゃんがいるから。
〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜
午後の1時。
今頃、千歌たちは海乃家の手伝いで頑張っているだろう。今日から合宿で、海乃家の手伝いで。正直に俺が思うことは、海乃家の手伝いで大変な思いをするだろうってところだ。
はっきり言って、曜以外で料理が出来る人なんて聞いたことがない。
・千歌:皆無
・梨子:簡単なものなら出来そう
・ルビィちゃん:まぁまぁ出来そう
・花丸ちゃん:出来なさそう
・善子:論外
・果南:してるとこ見たことない(=不明)
・ダイヤ:そこそこ出来そう
・鞠莉:未知
俺の身勝手な想像ではあるが、こうだと思う。
千歌は全くの料理実力皆無だし、善子は作れたとしてもモザイクかかりそうだから論外に近い。料理が出来るのか俺も全くわからないのは、鞠莉と果南の2人ぐらいだろう。
でも鞠莉なぁ。自分から作るって言ったときに、使う食材がめっちゃ高価そうなものとか、そういう食材をよく使いそうだ。魚介類に限れば、鮑とか、伊勢海老、ズワイガニとか。あっ。別に使う食材がめちゃくちゃ高い代物なんだろうなって思っただけだ。料理出来るか、出来ないかは別として。
「ちょっくら向かってみるか!」
とりあえず俺は、少し足早に彼女たちがいる海岸へと向かった。部活は午前中で終わり、一度帰宅した俺は、必要なものを用意したあとにすぐに自転車で海乃家へと出発した。
「ハァ……ハァ……」
日差しが強い。汗が額から出て頬を伝い、とにかく身体が出る汗が止まらない。でもそれが夏らしさを感じる。梅雨が明けてからずっとそうだが、気温も30度近い日が続いている。本格的に、季節が夏になったんだなって改めてそう思えた。
漕いで20〜30分の旅。俺を追い抜く車と、対向ですれ違う車が道路を駆け抜け、そして俺は、場所が変わっても必ず見える駿河湾を眺めながら自転車を猛スピードで走らせた。ただ、何かと千歌たちのいる場所も遠いから、部活の疲労が溜まってるせいで正直しんどいや……あはは……笑えないけどね。
「ハァ……ハァ……」
海乃家がある海岸に向かうけど、俺の身体はもう『ジ・エンド』と言えるほどに限界だった。なにせほぼ毎日を部活に費やしてるし、インターハイっていう大きな大会を控えている。その上で、あの時に俺は彼女たちの手伝いをするって決めたのだから、如何なる理由があっても、あいつらのところに行かないと駄目だよね?
「ハァ……ハァ……!」
必死に自転車を漕ぎ、頭の中でずっと考えてた。ラブライブ出場を目指すため、これから精一杯努力しようとしている彼女たち。そんなあいつらのことを思うと、千歌たちのサポートをするって決心した俺が辿り着いた答えは、もう既にたった“一つ”だけなのかもしれない。
俺は“Aqours”の『10人目』だ。何が何でも彼女たちのところには行かないとね。
「……っ!うおおぉぉおおぉ〜!」
そこから俺は何一つ考えなかった。ただ無我夢中に、一心不乱に、自分の自転車を漕ぎ続けた。
そして気がつけば、目指していた目的地の場所に到着していた。
「……アレ?着いちゃった……?」
ズボンのポケットに入れてるスマホで時間を確認すると、時間は出発してから30分が経ってた。どうやら俺は、本当に周りもなにも気にしないで自転車を漕ぎ続けていたみたいだ。ほぼほぼ考えてた時間通りではある。
すると何故か、俺の正面から声が聞こえてくる。砂浜からではない。それで俺が手伝いにやって来たことを喜んでいるのか分からないが、声のトーンがものすごく高かった。
「あっ!遼くん!」
「遼くん!来てくれたのね!」
声は2つ。千歌と梨子だ。
ただ、俺の方にやってくる2人の格好がいかにも斬新で奇抜だった。着てんの?被ってんの?きっと答えは前者だと思うが、ぶっちゃけそれはどこから出てきたんだって驚けるくらいの代物だった。
「あぁ。部活が終わったから、手伝いに来たんだ。まぁそれで早速聞きたいのだが、それは一体何だ?海乃家の宣伝をしているつもりか?」
「これ?そうだよ!梨子ちゃんと2人でね」
「うん。でも……なんか違和感しかなくて……」
2人の姿、もう違和感しか感じない。
彼女たちが着ている?それには、俺には全く意味が分からない言葉が記されていた。千歌のやつには『堕天使の涙』という言葉が記され、梨子のやつには『シャイ煮』という言葉が記されていた。おまけにすげぇキラッキラしてるし、何がなんなのか全然分からない。
ひとまず、他のみんなの話をしよう。
「ところで、他のみんなは?」
「えっと、まず果南ちゃんも私たちと一緒で海乃家の宣伝のためのチラシ配りをしてるんだ!」
「あとは、ダイヤさんと花丸ちゃんとルビィちゃんの3人は海乃家でお客さんの接待をしてて、曜ちゃんと善子ちゃんと鞠莉さんの3人は、厨房で料理を作って……」
「えっ!?ちょっと待て!」
「「えっ……?」」
とりあえず、大体みんながどの役割をしているのか理解出来た。果南も海乃家の宣伝で、ダイヤと花丸ちゃんとルビィちゃんの3人が接待。ここまでは十分に理解出来た。
けど問題は、この先の料理担当の3人。曜ならまだ分かる。あいつは料理得意だし、どうせあいつは得意料理を出してるに違いない。俺が問題にしているのは、善子と鞠莉の2人の方だ。
『ギランッ!堕天!』
『シャ〜イニ〜♪』
チラッ
「遼……くん?」
「どうしたの?」
「……………………」
何となく、俺の中で全てが一致した。
“堕天使の涙”に、“シャイ煮”という二つの言葉。完全に2人がいつも言っている言葉に、少しばかり変化を加えただけのものにしか見えない。そうだ、こればっかりはそれしか見えない。
いま、でも待てよ?今こうして善子と鞠莉が料理担当をしているなら、2人は料理が出来るってことになる。そうなれば俺は善子を『論外』って思ってたり、鞠莉を『不明』って思ってしまっていたことを悔い改めなければならない。2人が料理を作れるなんて、俺は思いもしなかったよ。
「……いや、何でもない。とりあえず、俺ちょっと海乃家に顔を出してくるわ」
「うん!みんな、遼くんが来てくれたら喜ぶよ!」
「へぇ〜?そうか?」
本当に喜ぶのかどうかは分からないが、ひとまず俺は2人と別れ、曜たちが切り盛りしている海乃家にひょっこりと顔を出したのである。中をふと見てみれば、少しは空席もあるけれど、それなりに忙しそうでも頑張ってるみんなの姿があった。ある意味ちょっとホッとしている自分がいる。
「うぃ〜っす。みんな元気にやってる〜?」
「あっ!遼さん!」
「遼さん!来るのずっと待ってたんですわよ?」
「遅れてすまなかった。遅れてきた分は、ちゃんと料理をして取り返すよ」
千歌の言ってた通りだな。ダイヤと花丸ちゃんとルビィちゃんの3人がお客さんとの接待をしてて、曜と善子と鞠莉の3人が厨房で料理を作っている。善子はたこ焼きを焼く場所に居座り、鞠莉は自分の身体が隠れるくらいのでかい鍋を使って、ぐるぐるとなにかをかき混ぜていた。“シャイ煮”と名付けたのは鞠莉だろうから、煮込み料理のようなものなんだと思うけど……。
「お〜い、テキパキ料理してるか〜?」
「遼くん!やっと来てくれた!」
果たして、2人の料理は一体何なのだろうか?
そんなことを思いつつ、俺は厨房にも顔を出す。そしたら今一番に曜が俺のことに気づき、キラキラと目を輝かせながら、鉄板の上の焼きそばを大いに掻き混ぜていた。いや……俺なんかよりも焼きそばの方、そっちをよく見ろよ。
「曜、今はそっちを優先しろ」
「は……はーい」
でっ?善子の『堕天使の涙』という食べ物は一体なんなんだろうか?
「善子、お前の料理は……」
「クックックッ。リトルデーモンよ、悪いが我は今立て込んでいる。邪魔をしないでほしい……」
善子の料理している風景を見ようと覗き込もうとしたが、善子にいつもの感じで断られてしまう。たこ焼き機の前に立っているのだから、善子は何となくたこ焼きを作っているのだろうと思ったが、俺の予想は大きく外れる。
彼女がたこ焼き機の前で作ってたのは、たこ焼きのようでたこ焼きでないような、真っ黒の丸い何かだった。
「……ほぅ。そんな丸っこくて真っ黒に焼け焦げたたこ焼きみたいなのが善子が作った料理か?」
「そうよ。これぞ、堕天使の涙ッ!」
名の如き『“堕天使”』という、黒をベースにしたたこ焼きのようななにか。俺から見ればまるっきりたこ焼きのように見えてしまうのだけれど、断定的に『たこ焼き』とは言い切れなかった。
だから今は、それを『堕天使の涙』と言った方が良いかもしれないと思った。それの味見は、なんかまだしない方がいいと感じた。未知だから、しないでおく。
「それで、鞠莉の方は……」
「Oh, Unbelievable……!」
「……………………」
そんで次に鞠莉の料理を見てみようと俺は彼女の方へ振り向く。だが俺の鞠莉の料理に対する好奇心を消し去るがごとく、鞠莉の前にある大きな鍋にはただ食材をぶち込んでるだけだった。
それに調味料も大量に鍋の周りに置かれている。これが“料理”として成り立つのかどうかさえ疑問に思ってしまうほどだった。
本当に鞠莉の料理の出来は、『未知』に近い。
「ま、鞠莉。それは……なんだ?」
「これ?うふっ♪これはシャイ煮よ!」
「……これが、シャイ煮」
これが、シャイ煮。
鍋に入っている食材を覗き込むと、どれもこれも高級食材とも言える食材ばかりが鍋にぶち込まれている。一体どこからそんな食材をもって来られるんだと、俺は食材の出所が気になって仕方なかった。
そんな時、ダイヤが俺に言い放つ。
「遼さん!」
「うん?」
「そんな風に遊んでないで、あなたもここの手伝いを始めてください!」
「それは……拒否権なしってやつ?」
「当然ですわ!」
鞠莉から食材のことで色々と聞こうと思っていたのだが、人差し指を差し向けて結構な強めの口調でダイヤは言うもんだから、俺は動きやすいように、上着だけ部活のジャージを脱ぎ捨てる。正直、厨房の中はめちゃくちゃ暑くて脱ぎたかったから、全然ちょうど良かったくらいだ。
手伝いはする。曜は焼きそば、鞠莉は煮込み料理で、善子がたこ焼きっぽい黒きもの。その3つ以外で俺が料理すべきものといえば、俺の得意でもあるアレしかないな。
「分かったよ。俺はカレーを作る」
「えっ!?カレー!?」
「そんなの作れるの!?」
俺的王道のカレーライス。でも夏祭りの屋台などで出ているのをあまり見かけたことはないが、今回は俺の腕を振るって作ろうと思った。
ただ今回は海の家だ。少しカレーライスそのものを変えたカレーライスを作る。
「あぁ。でも俺が作るのは、“キーマカレー”だ」
「キッ……キーマカレー!?」
家庭でよく食べるようなカレーとは少し違う。
玉ねぎ、にんじんなどを使うことには変わりないけど、肉はひき肉を使い、トマトとニンニクを加えたカレーだ。本場はもちろんインド料理。似てるのはドライカレーに近いね。
「遼くんはカレーを作るんだね!」
「おう。俺も得意分野だ」
よし。キーマカレーに使う食材もちゃんとある。ダイヤにお願いして、新しく“キーマカレー”というメニューを追加してもらわなきゃな。
「さて、準備するか」
キーマカレーを作るには、まず材料の下ごしらえをしないといけない。だからまずは、キーマカレーで使う食材をカットするところから始めよう。
そんでもってな、この俺が作ったキーマカレーをじゃんじゃん売っ払ってやろうと思った。今のところ焼きそばで売れてる曜よりもね。
調理に使う包丁とまな板、そして後に使う大きくて底が深いフライパンを用意し、調理を始める前に俺は、あるものをリュックから取り出す。これは俺が料理をする時、必ず用いる必需品だ。
ギュッ!
まぁ……“手ぬぐい”なんだけどね。
「よしっ!そんじゃ始めっか!」
意気揚々。
手ぬぐいを頭にギュッと縛り、フライパンに予め火を付けて温めておく。そのあとに、目の前に使う一通りの食材を揃えて、曜・善子・鞠莉から視線が注がれる中で、俺はキーマカレーを作り始めた。
最強で最高のキーマカレー、少々お待ちを!
てことで、彼は料理が出来るみたいです。
彼が作るキーマカレーはいかほどなのか?
あっ、私はカレー好きです。(違う)
次回になりますが、この話の続きから
入っていこうと考えております!
(┘ω└)ガンバ└(。`・ ω ・´。)┘ルビィ
次回も是非楽しみにしててください!
感想や評価、お待ちしています!
P.S. 花丸ちゃん、誕生日おめでとう!