少年と少女達の輝き目指す物語   作:キャプテンタディー

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どうも、キャプテンタディーです。
今日は2/3、節分の日ですね。
皆さん『恵方“真姫”』は食べましたか?私は……

さて今回、本当であれば前回の後書きの通りに
お話を展開していこうと思っていたのですが、
あの話とは少し違う展開になりました。

今回は、この先の話の展開に大きく影響する
であろうと、個人的には思っています。

はて、どういうことなんでしょうね(笑)
それでは、本編をどうぞ!





#61 曜の欲し、千歌の芽生え

 

 

 

 

 

「梨子の梨子の答え、しかと受け取った!」

「うん。ありがとう!」

 

 

 ピッ!

 

 

「……ふぅ」

 

 

 梨子が決めた選択を聞き届けた後、俺はゆっくりと通話終了のボタンを押す。

 梨子と電話番号が表記された白い画面に自動的に戻ったあと、スマホの電源を落とす。そのまま自分のベッドへポイ投げし、机の椅子に座りなおした俺は、白い天井を見上げて口から零す。

 

 

「まぁ、そうなるよなぁ……」

 

 

 自分の願ったこととは違う決断を下した梨子。

 彼女の答えが、頭の中をぐるぐる駆け回る。

 

 いや、彼女の決断に、俺がとやかく発言する権利なんかは一切ない。ただ、これが梨子が決めた意志なんだって、それを自分に言い聞かせていた。

 

 でも、これで問題がスッキリした。

 俺も一応は、梨子がどう答えを出すのか気が気で仕方なかった。だから、梨子がAqoursのみんなとラブライブに向けて頑張るって聞いたときは、俺も彼女たちに出来るだけのサポートをしてやらないとなって。自然と俺は、燃えていた。

 

 

 コンコンッ!ガチャ!

 

 

「遼くん!こんばんヨーソロー!」

「……っ。おう。ヨーソロー」

 

 

 すると、曜がノックを2回して部屋のドアを勢いよく開けて入ってくる。だが俺は、そのドアの開く音に少し驚いてしまった。入る前に2回ノックしてくれたのは良かったのだけれど……。

 

 それで何故か、曜には少し笑顔が見えた。

 

 

「どうした?やけにニヤついてるな?」

「えっへへっ♪分かっちゃう?」

「お前はいつも顔に出すぎなんだよ」

 

 

 その笑みに俺もつられて笑みを浮かべ、俺の問いかけには彼女は敢えて首を傾げ、さらにまた笑顔を振りまく。

 こんな風に俺を前にしてニヤニヤしているときの曜は、大体は彼女にとって良いことだ。

 

 多分、梨子が話してた合宿の件だろう。

 

 

「あのねあのね!明日から海の家の手伝いがあるんだけど、それをしながら、みんなで千歌ちゃん家で合宿をすることになったんだ!」

「ほう。合宿かぁ……」

 

 

 俺の予想が、ものの見事に的中した。

 彼女の笑いっぷりを見て、何となく俺は想像していた通りにはなった。

 まだ夏は始まったばかりなのに、これから合宿を始めるとか。梨子と話していた中で、唐突に出てきたダイヤの名前も気になる。

 

 そういえば、梨子に合宿をする理由を聞いていなかった。この際に曜に聞いてみるか。曜にはダイヤのことを話したら、誰から聞いたの?って問い詰められそうだからさ。

 この件は曜に秘密にしておきつつ、その思いで俺は曜に合宿する理由を聞いた。

 

 

「でも、何で明日から?」

「えっとね、この夏にラブライブの大会が開かれるから、そのためにも合宿をしようってなって。最初にこの夏にラブライブが開かれるって話をしたのはダイヤさんなんだけど……」

「ふぅ〜ん。なるほどね……」

 

 

 曜の話を聞き、その度に俺は首を縦に振って相槌を打つ。

 話を聞いていると、梨子の口から何故か出てきたダイヤの名前の理由が、今の話で聞けた気がする。

 

 合宿をするきっかけを作ったのはダイヤだ。

 まぁあいつスクールアイドル大好きだし、μ’sの絢瀬絵里?って人が好きみたいだし。きっと、そのラブライブに向けて、とんでもない練習メニューを考えてそう。

 

 

「ダイヤはスクールアイドル好きだからな。それにあいつは真面目だから、ラブライブのために練習も増やそうとか考えてたんじゃないか?」

「す、すごい!?遼くんの言う通りだよ!」

「…………あっ。そう」

 

 

 声に出して曜に『予想(正解)』を口にしたとき、曜の反応を見てもう察した。

 間違いなくあいつならやりかねない。千歌が自分の家で合宿しようって言ってくれて、その方が一番良かったかもしれない。

 

 俺も一瞬、冷や汗をかいた。

 

 

「そういや、海の家はどうするんだよ?自治会から頼まれてるんだろう?」

「うん!それもみんなでやるんだ!朝と夕方に練習をして、それ以外は海の家の手伝いをする感じ」

「だとしたら、夕方の練習なら来れるかも」

「本当!?やった〜!」

 

 

 曜から今後のAqoursの予定を聞き、そこに俺の予定を曜に伝える。

 でも俺も俺で部活がある。1週間後にはインターハイが控えているから、よくよく考えたらそれまではそれどころじゃないかもしれない。

 

 まぁ、無理矢理にでも顔は出すつもりだが。

 

 

「といってもこっちも部活あるし、大会も近いから来れない日があるかもしれない。けど、出来るだけみんなのところには顔は出すよ」

「うんっ!みんなにも伝えておくっ!」

「あぁ、そうしてくれると助かる」

 

 

 それに明日から合宿を始めるとはいえ、明日の朝早くから練習をするとは到底思えないしな。必ずやこいつや千歌は遊ぶだろう。あと鞠莉も……。

 

 なんてったって、“夏休み”だからな。

 

 

「じゃあ、明日は来れる?」

「いきなりだなぁ!?」

「えへへっ♪ごめんごめん」

 

 

 『えへへっ♪』じゃねぇ。

 明日でさえ行けるかどうか分からないのに、曜はとんだ無茶ぶりを俺にふりやがる。

 

 けど、その問いかけは彼女は本音らしい。

 

 

「でも、()()()な……」

「えっ……?」

 

 

 俺にとって、彼女がその言葉を言うなんて思いもしなかったからだ。

 何しろ毎日のように、こうして俺の部屋に上がり込んで来て、ずっと2人で話をするのにだ。

 

 

「だって、だって……」

「……………………」

 

 

 そう言うと曜は、尻込み口を噤んでしまう。

 顔を下へ、視線も逸らし、項垂れてしまった。

 

 

 

 『無音』

 

 

 

 俺と曜がいるこの部屋の状態。

 俺も曜も、しばらくの間は口を開かなかった。

 

 

「……………………」

 

 

 ただ俺は何となく曜が、こいつがあのあとに何を言おうとしていたのか分かる気がする。

 

 理由は、俺と曜が付き合っていること。

 

 

「……………………」

 

 

 ただ単に“会えなくなる”。そういう考えもあるのかもしれないけれど、俺と曜はこれでも恋人同士、付き合っているんだ。

 だからこそ、それが一番の『原因』なんじゃないかと、俺はそう感じたんだ。

 

 ぶっちゃけてしまうけれども、俺たちは付き合い始めたはいいものの、特にこれといってなんだが、『恋人らしいこと』を俺たちはしていないのだ。

 

 

 恋人としての『デート』も、していない。

 

 

 俺はサッカー部で、曜はスクールアイドル。

 お互いそれで忙しくて、そういう恋人らしい何かをすることに時間を割けられない。それが原因で、曜は“現在進行形”で、ず〜っと気にしているのかもしれないと、ふとそう感じたからだ。

 

 

「……うぅっ」

「……っ」

 

 

 曜はもう、今にも泣き出しそうだった。

 それを見て胸を締め付けられる。こうなってしまったのは俺の責任だ。俺から言ったんじゃないか、『恋人になろう!』って!

 

 その時の俺は、自然と身体が動いていた。

 

 

 ギュッ

 

 

「……っ!」

「ごめん、曜」

「……」

 

 

 椅子から立ち上がって曜に近寄り、俺はこうすることしかできなかった。

 自分の身体に彼女を抱き寄せて、ギュッと優しくハグをする。果南から教わった直伝の大技だ。

 

 そして俺は、曜に言葉を紡ぐ。

 

 

「気づけなくて悪かった。俺、これから曜とはちゃんと恋人らしいことをしていきたい。俺たちは、まだ初々しい恋人同士だから!」

「……………………」

 

 

 こんなことしか言えない。

 でも、曜の思いを汲み取るんだったら、精一杯に自分の気持ちを伝えるしかない。

 

 正直なところ、“恋人”としてどうすればいいのか分からない自分もいた。

 けれどそれは曜も同じ。だからこれからは恐れずに、2人で一緒に歩んでいきたい。少しずつ、2人でともに前へ……。

 

 

「…………ねぇ」

「んっ……?」

 

 

 そんなとき、ずっと口を閉ざしていた曜がやっと口を開く。

 

 

「約束……する?」

「えっ?」

「私も、遼くんと恋人らしいことをしたい。だから遼くんは、私とこれからちゃんと恋人らしいことをするって、約束できる?」

 

 

 顔を俺に向けて、少し上目遣いの形で。曜は涙を拭ったあと、俺に対してそう問いかけてきた。

 

 約束、か。

 

 そんな約束、男なら守らないわけがない。

 一度決めたら、俺はそれをちゃんと守る。彼女である曜に言われたら尚更ね。

 

 

「あぁ。勿論だよ!」

「……っ!ありがとっ!」

 

 

 彼女にそう伝えた時、曜に笑顔が戻った。

 澄み切った青空のように、曇り一つもない満面の笑顔は彼女の魅力。その笑顔を、俺は守らなきゃ。

 

 すると、曜は呟く。

 しかし彼女がこれから言おうとしていたことは、俺にとっては想像がつくことだった。

 

 

「じゃあ……遼くん」

「今からしようとでも言うつもりか?」

「あっ。あはは……正解……」

 

 

 だから、曜より先に俺が話した。

 約束したそばからやろうって言い出す展開、彼女がいる場合において安易に想像がつくもの。

 先に言われてしまった彼女は、俺に対して申し訳ないって感じで苦笑いを浮かべる。それを見ていた俺は、やれやれと呆れ気味に口にした。

 

 どこか、悪戯好きの悪になった気分で。

 

 

「じゃあ今からしようか?」

「えっ?きゃっ……!」

 

 

 俺は自分のベッドに曜を押し倒し、逃げられないように彼女に跨って四つん這いになる。

 

 我ながら、この人を弄る性格を直したい。

 なのに時に、それが楽しいと思ってしまう自分がいて、このままでもいいかな〜?なんて考えている自分もいるのだ。

 いずれは直したいんだけどね……。

 

 

「したいんだろ?恋人らしいこと」

「……うん。でも、いいの?」

「今からしたいんなら、今するよ」

 

 

 今からしたいと言う彼女の要望に応えるために、至近距離で曜とそんなやり取りをする。

 幸い部屋は俺たちしかいないし、そして家には親もいない。この雰囲気で何も起きないわけがなく、そう考えただけ心臓がバクバクし始めた。

 

 その時、曜がまた口を開く。

 

 

「ねぇ遼くん」

「んっ?今度はなんだ?」

 

 

 よく見たら、彼女の顔も少し赤い。

 ゆっくり俺の首に腕を回してきて、俺を甘い誘惑へ誘導してくる。このときの曜は、より可愛さが目立った瞬間だった。

 

 そして曜は俺を見つめてきて、俺にニコッと笑いながら言い放った。

 

 

「これから、思い出たくさん作ろうね!」

「……………………」

 

 

 たった一言、それだけ。

 彼女の本音や本心がいっぱいいっぱいに詰まったその言葉は、俺の心臓を矢の如く貫いた。

 

 『思い出をたくさん作る!』ということは、改めて言うけど、俺と曜、2人で楽しいことをたくさんするってこと。

 たまには喧嘩することもあるかもしれない。ただそれよりも、色んな楽しいことをして、楽しかった思い出をより多く作りたい。

 

 それが、“渡辺 曜”という女の子の思い。

 その思いを、俺は、絶対に叶える。

 

 

「あぁ!たくさん作ろう!2人だけの思い出!」

「……うん!」

 

 

 彼氏の役目って、こういう感じなのかな?

 初めてだし、まだまだ全然分からないことが多いけれど、彼女と少しずつ、ゆっくり前に進んでいきたいと思った。

 

 

「じゃあ、いくよ?」

「うん。きて……♡」

 

 

 

 チュッ

 

 

 

「遼くん……大好き♡」

「あぁ、俺もだ」

 

 

 こうして俺と曜は、この夜、身体を重ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブーッ!ブーッ!ブーッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある人物から、電話が来てることを忘れて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 プルルルルッ!プルルルルッ!ブツッ!

 

 

 『……ただいま、電話に出ることができません。ピーッ!という音に続けて……』

 

 

 ブツッ!

 

 

「…………はぁ〜」

 

 

 午後9時

 

 遼くんが一度も電話に出てくれない。

 もうかれこれ5回目。ため息しか出ないよぉ。

 

 

「……………………」

 

 

 ベッドに仰向けで寝転がっている私は、電話をかけても出ない遼くんにうんざりしていた。

 どうして遼くんに何度も連絡していたのかと言われたら、ラブライブに向けて、歌詞作りを手伝ってもらいたかったから。

 

 それなら梨子ちゃんがいるじゃん?って思うかもしれない。けど私は、あの時みたいに遼くんと作詞をしたいって思ったの。あのときのように、遼くんから良いヒントがもらえると思ったから……。

 

 

「はぁ……」

 

 

 また、ため息一つ。

 

 明日からは、みんなと合宿を始める。

 ラブライブに向けて、自治会から頼まれている海の家を手伝いながら、合宿で練習をこなしていくのはみんな大変だと思う。けど、みんなラブライブに出たい思いがある。

 

 みんな、ラブライブのためにやる気なんだ。

 もちろん私も、ラブライブに出たい。

 

 だからそのためにも良い曲を作りたい。そう考えて私は、歌詞ノートを開いて歌詞を考えていたんだけど、これが一向に進まず今はベッドに寝転がっている状態。

 遼くんに助けてもらおうと思ったけど、そんな彼も全く電話に出てくれないから、もう、どうしようもない感じなんだ。

 

 

「作詞、全然進まないよぉ……」

 

 

 自分の部屋の天井をボーッと見つめては、作詞が進まないことをうじうじと嘆く私。

 ラブライブの予備予選は8月で、時間はまだまだある。だけど曲の練習もあるし、早く詞を作った方が良いんじゃないかって私は考えてる。

 

 『ラブライブに出たい』『その為にも、みんなの為に私は良い曲を作りたい!』という思いが、逆に自分に重圧を注ぐような、そんな感じになっている気がした。

 

 

 そんな時、外から声が聞こえる。

 

 

「千歌ちゃ〜ん!」

「……っ!?」

 

 

 私の名前を呼ぶ声だった。

 もうよく聞き慣れた、彼女の声だった。

 

 

「……梨子ちゃん」

「どうしたの?元気ないわね?」

「うん、まぁね……」

 

 

 部屋を出ていつもの場所へと向かうと、ベランダに寝巻き姿の梨子ちゃんがいた。

 私の今の表情を見たときに、梨子ちゃんは優しく笑みを浮かべて、私に対してそう尋ねてきた。

 

 梨子ちゃんに『作詞が進まない』って言ったら、どんな反応をするのかな?いつも私は梨子ちゃんに怒られちゃってるから、きっと『またなの?』って言われて怒られそう。

 

 でもこういうのは、ダメ元だよね?

 そう思い、私は梨子ちゃんに口を開いた。

 

 

「作詞、全然進まなくて……」

「…………そう」

 

 

 また、いつものように怒られるんじゃないかってそう思っていた私だった。

 でも梨子ちゃんは怒らなかった。私が全く作詞を進めていないのに、梨子ちゃんは笑い続けていた。アレレ?梨子ちゃん、怒ってない?

 

 

「……怒らないの?」

「うん。まだ時間あるし、ゆっくり考えていいよ」

「う……うん。ありがとう梨子ちゃん」

 

 

 彼女に聞けば、まだ時間があると返ってくる。

 そっか。それならまだ大丈夫だね。ちょっと梨子ちゃんの話に驚いたけど、まだ何とかなりそう。

 

 

「良い歌詞にしたいから、私、頑張るね!」

「うん!私も、良い曲を作りたい!」

 

 

 私が作詞、梨子ちゃんが作曲。お互いに良い曲にしたいから、私も梨子ちゃんも気持ちは一緒なんだって気づいたとき、だんだん元気が湧いてきた。

 みんなで歌う曲を、絶対良いものにしなきゃって思った。

 

 

「ねぇ梨子ちゃん!」

「んっ?なぁに?」

「……良い曲、付けてね!」

「うん!当たり前だよ!」

 

 

 その為に、歌詞作り頑張らないと!

 よぉ〜しっ!やるぞ〜!

 

 すると梨子ちゃんが口を開く。

 

 

「じゃあ、また明日ね!」

「ええっ!?もう寝ちゃうの!?」

「ううん、まだ寝ないよ。ちょっと……ね?」

「ちょっと……?」

「うん。ちょっと……考えごとをね」

 

 

 梨子ちゃんが考えごとだなんて……。

 

 このときの私は、梨子ちゃんに考えごとがあるだなんて知らなかった。

 そしてなにより、そもそも梨子ちゃんの考えごとって一体なんだろう?私にも、みんなにも言えないことなのかな?

 

 

「じゃあ、また明日!」

「えっ……?あ、うん。また明日……」

 

 

 私が梨子ちゃんの考えごとを悩んでいたら、梨子ちゃんから突然会話を切り出された。それで会話は唐突に終わり、梨子ちゃんは私に手を振りながら、自分の部屋の中へと姿を消した。

 

 考え方の発言をしたとき以外、終始笑みを浮かべていた梨子ちゃん。

 

 

「……………………」

 

 

 “考えごと”って、一体何なんだろう?

 それは、梨子ちゃんにしか分からなかった。

 

 

「梨子……ちゃん……」

 

 

 その後、私は梨子ちゃんから貰った元気を借り、もう少し歌詞作りに時間を費やしたいと、再び机に向かって歌詞ノートに言葉を紡いだ。

 

 曲を作るプレッシャーはある。けれど、みんなとラブライブに出たいから頑張りたい!

 そうやって『みんなのためにも』と、私は幾多の言葉をノートに書いていると、ひとしきりにスマホのバイブ音が鳴り響く。

 

 

 ブーッ!ブーッ!ブーッ!

 

 

 机の上で振動しながら、小刻みに動くそのスマホの画面に表示されたのは、5回も電話をしても出なかった、『彼』の名前だった。

 

 

「……っ!」

 

 

 私はすぐに手を止めて、スマホを手に取る。5回も電話に出なかった彼へ怒りをぶつけようと思ったから、私は彼からの電話に出た。

 

 

「もしもし遼くん!!!」

『うおっ!?開口一番、大声出すなよ……』

「出すよ!5回電話しても出なかったんだから!」

『わ、悪かったよ!それに関しては謝る!』

 

 

 開口一番、私は怒りを遼くんにぶつけた。作詞を電話越しに手伝って欲しかったのに、こんな時間でやっと出るなんて……!

 まぁ、電話に出られなかったことはちゃんと悪いと思ってるみたいだし、ひとまず許そうとは思う。

 

 次は、ないけどね……。

 

 

「全く!人の気も知らないで……」

『あっ、それで千歌!5回も電話してきたんだから、俺に何か用があるのか?』

「もちろん!」

 

 

 それで彼は私にそう質問をしてきたから、私はまた怒りを込めて長々と彼に話をした。

 真剣に、電話越しでもちゃんと耳を傾けているであろう遼くんは、流石に白旗を上げて降参した声を上げたのだった。

 

 

『……悪かったよ。俺が悪かった』

「もうっ!次からは許さないんだからね!」

『あぁ。次からはちゃんと気をつけるよ』

 

 

 反省の弁を述べる遼くん。

 その言葉を聞いたその後、私は驚愕した。

 

 

『遼くん!お風呂出たよ〜!』

「……えっ!!??」

 

 

 聞き覚えのある、ううん、私にとって大切な人のその声に、私は開いた口が塞がらなかった。

 

 

「曜……ちゃん……?」

『えっ……千歌ちゃん……!?』

 

 

 思わず出てしまった声に、当の曜ちゃんも私の声に気づいてしまったみたいで、きっと遼くんは、スピーカーで電話しているのかもしれなかった。

 そうじゃなかったら、私の声が曜ちゃんに聞こえるわけないもん。

 

 

「どうして、そこに曜ちゃんがいるの?」

『えっ?あ……え〜っと……』

 

 

 何で……こんなことを聞くんだろう?

 だって遼くんと曜ちゃんはお隣同士だし、毎日のように遼くんの部屋に曜ちゃんがいてもおかしくはない、はずなのに……。

 

 

 ズキッ!

 

 

 なに……この苦しくなるような胸の痛み。

 

 

『ひとまず先に、俺から話を聞こう。千歌、お前は俺に何か用件あって電話してきたんだろう?』

「……………………」

『お〜い。千歌……?』

 

 

 何もいつもと変わらないことなのに、どうして?

 どうして遼くんの部屋に曜ちゃんがいるだけで、こんなにも胸が苦しくなっちゃうの……?

 

 ダメ。もう、無理……。

 

 

「ううん。やっぱり何でもない!」

『えっ……?』

「ごめん。ちょっと私も用事が出来ちゃった!じゃあ曜ちゃん、また明日ね!」

『あっ!おいちょ……!』

 

 

 ブツッ!

 

 

「……………………」

 

 

 私は曜ちゃんにだけそう言い残し、逃げるようにして、遼くんとの通話を切ってしまった。

 

 

 ズキッ!ズキッ!!!

 

 

「……はぁ……はぁ……」

 

 

 胸が痛い。呼吸も苦しい。

 曜ちゃんの声を聞くまでは、全然こんなに苦しくなるなんてなかったのに。

 

 遼くんと曜ちゃんは、2人は恋人同士だっていうのはちゃんと分かっている。

 なのに、どうしてこんなに息苦しくなっちゃうくらい胸が痛くなるの?

 

 

 

 なんで?

 

 

 

 なんで……?

 

 

 

 なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?

 

 

 

 誰か……誰か教えてよ……。

 

 

 

 私しかいない自分の部屋で、私は、1人でに静かに辛く嘆いた。

 

 

 

 

 






ということで、一区切りです。
もうこの場面、この先に待ち構えている
お話の『友情ヨーソロー』どころではない
かもしれません()

ですが、この先もある程度は展開も考えて
いますので、この後どうなっていくのか、
楽しみにしていただければ、と思っています。

では、次回も楽しみにしててください!
感想・評価等、お待ちしてます!



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