どうも、キャプテンタディーです。
とうとうです!とうとう!
TOTOじゃないよ?とうとうです!
やっと1期の第10話に突入してまいります!
ここまで来るのに本当に期間が長すぎた。
今回から第10話の最初の展開が始まります。
もう小説は夏なので、冬なのに夏にいる気分
で読んでいただければ、とても幸いです。
それでは、本編をどうぞ!
“梅雨”という、私にとって嫌な時期が過ぎ去り、とうとう1番好きな季節がやってきた。
夏。
私が四季の中で1番好きな季節。
嫌いな季節はやっぱり冬。当然、寒いから。
「熱〜い〜〜!!!」
「ずらぁ……」
「天の業火に、我が翼が焼き尽くされる……!」
燦々とした太陽が、私たち9人と屋上を照らし、千歌ちゃんと、花丸ちゃんと、善子ちゃんの3人は、この酷な猛暑にこっぴどくやられていた。
暑すぎて、身体がドロドロに溶けてしまいそうだと言わんばかりに……。
「なんでこんなに熱いのー!?」
1番にそう叫ぶのは善子ちゃん。
Aqoursの中でかなりのインドア派の善子ちゃんは、夏という季節と、この厳しい暑さがとても嫌いみたい。
家から一歩も外に出ようとしない話を花丸ちゃんから聞いたとき、やっぱり善子ちゃんは夏が嫌いなんだなって改めて実感した。
「あはは……。善子は夏は苦手?」
「もちろんよ!天から放たれる灼熱地獄が、我が魔力を削ぎ落として……」
「普通に『苦手』って言うずらっ」
「最後まで言わせなさいよ〜!」
相変わらずの善子ちゃんは堕天使らしさ全開なんだけど、花丸ちゃんのツッコミを入れられて怒りを露わにする。だけど、私も花丸ちやまんの言う通りだと心の中でそう思った。
善子ちゃん、あまり素直じゃないからさ。
まぁ、私が言えたことじゃないんだけどね……。
「と〜に〜か〜く!ですわ!」
「イェス!と〜に〜か〜く〜よっ!」
するとダイヤさんと鞠莉ちゃんは、今日から始まる夏休みについてしきりに話し出す。特にダイヤさんに関しては、もう夏休みをどう過ごしていくのか既に決めているような表情だった。
「さて、今日から夏休みが始まりますわ!」
「サマーヴァケーションといえばっ!?」
「はい!千歌さん!!!」
「えぇ!?」
ダイヤさんがAqoursに加入し、それからダイヤさんは別人のように様変わりした。
今までは私たちのスクールアイドル活動に対して反発していたのにも関わらずだよ?あの時の厳格なダイヤさんはどこに行ってしまったのだろう?
今のダイヤさんは、何か“ポンコツ”だ。
こんなことは、正直本人に言えないんだけどね。言っちゃったら私が怒られちゃうよ。
「う〜ん。やっぱり海だよ!」
「曜さんは?」
「私ですか!?私は……夏休みにパパが帰ってくるんです!はぁ、早く帰ってこないかなぁ……」
と思っていた矢先に、ダイヤさんから話を振られちゃって、仕方な〜く私はパパが帰ってくることをみんなに打ち明けた。
そう。夏休みにやっとパパが帰ってくる!パパに会えることを凄く心待ちにしている私がいて、早く帰ってこないかなって、凄くウキウキしてる。
「……善子……さんは……?」
「クックック……ヨハネは、夏コミ!」
「……ッ!!!」
「……………………」
そんな私の思いも蚊帳の外。
善子ちゃん、もしかしてそっち系なの?
私を含めみんなは、善子ちゃんが言い放った言葉に絶句する。善子ちゃんがそっち系の人なんだってことが、みんな信じられずにいた。
特にダイヤさんは、拳を握りしめて身体を小刻みに震え上がらせている。
私はそれを見ては、彼女の逆鱗に触れてしまったことを一目で確認することが出来た。
故に、ダイヤさんの怒りが学校中に響き渡った。
「ブッブーーーですわッ!!!」
「「「「「「「……!?」」」」」」」
怒声
一体、なにがダイヤさんの怒りに触れてしまったのだろうか?でもそんなことは、言われるまで実際には分からなかった。
ダイヤさんの近くにいる鞠莉ちゃんを除いた千歌ちゃんたち6人も、妹であるルビィちゃんさえも、ダイヤさんに怒られる理由が見当たらず、少しばかりダイヤさんに困惑していた。
そしたらダイヤさんは一呼吸置き、困惑している私たちに向かってこう告げたのだ。
「それでも貴方たちスクールアイドルですの!?」
「「「「「「えっ?」」」」」」
とても意味ありげな言葉。
もちろんダイヤさんの言う通り、私たちAqoursは言うまでもなくスクールアイドルだ。
でもダイヤさんの今の言い方は、私たちをまるでスクールアイドルとして見ていないような口調で、スクールアイドルであるという自覚が欠如していると言っているようにも私はそう聞こえた。
隣にいる鞠莉ちゃんでさえも、キョトンとしてるくらい驚いた表情をしている。ダイヤさんは、一体何が言いたいんだろう?
「片腹痛いですわ!片腹痛いですわ!」
呆れて物も言えない感じにダイヤさんはそう言うものだから、千歌ちゃんはものの試しにダイヤさんに尋ねてみる。
「じゃあダイヤさん、何だっていうんです?」
「ふっふっふっ。よくぞ聞いてくれましたわ!」
するとダイヤさんは、千歌ちゃんの言葉に待ってましたと言わんばかりに嬉しそうな表情をする。何やらダイヤさんはとても自信満々で、『夏といえばこうだ』とはっきり言いそうなくらいに自信に満ち溢れていた。
それで両手を腰に当てたダイヤさんは、ドンと胸を張りながら私たちに言い放ってきた。
ただその言葉に私たちは、思わずズッコケた。
「では付いてきてください!部室に着いたらことをお話し致しますわ!」
「「「「「「「えぇ〜!?」」」」」」」
今ここで話さないの!?という感じで、その瞬間に思った私のツッコミはみんなも同じだった。
『夏といえば?』という名目で話す事柄の中で、なにか重要なことでもあるのだろうか?私もみんなもそのことが気になり始めるけれど、ダイヤさんが仕切りに話を進める。
「さぁ!早く部室に向かいましょう!」
「あ……あははっ。ダイヤは無理矢理だなぁ……」
「か、果南ちゃん!?」
「もう無理だよ、千歌。今のダイヤはもう、誰にも止められない……」
「そ……そんなぁ……」
「……………………」
ダイヤさんは話をする気満々だ。あの果南ちゃんですらダイヤさんを止める術を持っていない。
ということは多分、そういう事なんだと悟った。
〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜
「夏といえば?ルビィ!」
「えっと……多分ラブライブ!」
「まぁ!さすがは我が妹っ!かわいいでちゅね〜!よく出来ましたわ〜!」
「えっへへ♪頑張ルビィ!」
「「「「「………」」」」」
この部室にいるAqoursみんなが思っていることだろうけれど、目の前でルビィちゃんを可愛がっているダイヤさんの姿は、今までのダイヤさんの印象の全てがひっくり返るような言動ばかり。
果南ちゃんや鞠莉ちゃんを除いた1・2年生の私たちは、唖然して驚きを隠せないどころか、どう反応していいのか分からないくらいだった。
「なに……この姉妹コント……」
「コントではありませんわ!」
だから善子ちゃんは、ダイヤさんの言動に対してそう言い放った。善子ちゃんの思う気持ちは、ものすごく理解出来る。
「夏といえば『ラブライブ』ですわ!夏はその大会が開かれる季節なのです!」
「おぉ!そうなんですね!」
するとダイヤさんの言葉に千歌ちゃんは身を乗り出す勢いでそれに食いつく。
『ラブライブ!』は、日本中のスクールアイドルの日本一を決める大会。つまりダイヤさんは、この夏に行われる『ラブライブ!』に参加しようという話を持ちかけてきたのだ。
「ですから、ラブライブ予選突破を目指して、これからAqoursはこの特訓を行います!これは、私が独自のルートで手に入れた『μ's』が行なっていたと言われている合宿のスケジュールですわ!」
「すごいお姉ちゃん!」
「「「「「「「………」」」」」」」
その上でダイヤさんがホワイトボードに貼り付けたのは、千歌ちゃんが憧れている『μ’s』が合宿で行なっていたとされている、練習メニューだった。
円グラフ状に表記されている文字をよく見ると、ランニング、腕立て伏せ、発声、ダンスレッスン、精神統一、遠泳という、6種類ものメニューが合宿に組み込まれていた。
最初は私も合宿でこんなことをしていたんだって凄く関心していたんだけれど、そのメニューの下に書いてある数字を見て『えぇ……』ってなった。
「ランニング、15km……?」
「遠泳、10km……」
「こんなの無理だよぉ……」
千歌ちゃんがそれを見てネガテイブな発言をするのと同じで、みんな、そのメニュー表を見てはもの凄く嫌そうな表情をしていた。
こんな距離は、絶対に私たちには無理だって思わざるをえないくらいの距離である。“15km”なんて今まで走ったことないし、泳ぎが得意な私でもそこまで泳いだ経験すらない。
鬼だ。こんなメニュー出来るわけがない。
「大丈夫ですわ!熱いハートがあれば、どんな練習でも乗り越えることは出来ますわ!!」
「ふんばルビィ!」
けれどもダイヤさんは、まるで学校の体育会系の先生のようなことを言う。
「なんで、こんなにやる気なの?」
「ずっとスクールアイドルを我慢していただけに、今までの思いがシャイニーしたのかも……」
今までの思いがシャイニーって……。
そこまで我慢してたんだ、ダイヤさん。
でもここまでスクールアイドルに対してとてつもなく熱い情熱を持っている人を見たのは初めて。
千歌ちゃんもスクールアイドルが大好きだけど、そんなダイヤさんは千歌ちゃん以上であると感じることが出来た。
そして何より、その人は学校の生徒会長。
ルビィちゃんは元より、果南ちゃんと鞠莉ちゃんを除いた私たち5人は、驚くこと以外なにも感情が思い浮かばない。強いて上げるならば、ダイヤさんは、本当にスクールアイドルを『愛している』って思えるくらいだった。
そして間髪いれずにダイヤさんは告げる。
「さっ!外に行って始めますわよ!」
「えぇ!?もう始めるんですか!?」
「当然です!時間は待ってくれませんので!」
「「「「「「「うぅ……」」」」」」」
もう色々と唐突過ぎてついていけない。今日からこんな練習メニューこなしていたら、みんな思うし確実に考えられる。
『死人が出る』
ダイヤさんなら、色々と考えているかもしれないけれど、あまり運動が苦手な花丸ちゃんとかは特に注意しておかないときっと大変なことになる。
そうなる前に、私は千歌ちゃんに対してある話を持ち出す。
これは本当にすることであり、決してダイヤさんが見つけてきたそのメニューを、私と千歌ちゃんはやりたくないわけではない。
でも今言ったら変に思われちゃう?
ううん!今言わなきゃ変わらないよね!
そう思い私は口を開く。
「そういえば千歌ちゃん、前に海の家のお手伝いがあるって言ってなかった?」
「えっ?あ!そうだっ!そうだよ!私と曜ちゃん、自治会で出している“海の家”を手伝うように言われているのです!」
そしたら千歌ちゃんもそれを思い出し、私と一緒に敬礼を行いながら、ダイヤさんに対してその事情を詳しく説明する。
それに同じくして、果南ちゃんもそれを思い出してみんなにそのことを伝えると、やる気満々だったダイヤさんは意気消沈したように落ち込む。
「そんな!?特訓はどうするんですの?」
「残念ながら、そのスケジュールでは……」
「もちろん、サボりたいわけではなく……」
このまま上手くいけば、ホワイトボードに貼られている酷なメニューから逃れられる。
それを信じて私と千歌ちゃんでダイヤさんの答えを待っていると、横から鞠莉ちゃんがダイヤさんに助言をする形で話に割り込む。
「じゃあそれならみんなで海の家の手伝いをして、涼しいmorning and eveningに練習するってことでいいんじゃないかしら?」
「それ賛成ずら!」
「うん!それなら大賛成です!」
鞠莉ちゃんの名案に、花丸ちゃんとルビィちゃんはすぐさま賛成の意を述べると、それに続くように千歌ちゃんがある提案を提示する。
「そしたら、うちで合宿にしない?」
「「「「「「「「合宿?」」」」」」」」
「ほら!私のうちは旅館だし、頼んで一部屋借りられれば、みんな泊まれると思うし!」
それは、私たちみんなを千歌ちゃんの家に泊めてもらい、千歌ちゃん家の目の前の砂浜で合宿しようという提案だった。
そうすれば、みんなが集まる時間もなくなって、鞠莉ちゃんの意見も十分に出来る。
「そっか!千歌ちゃん家なら目の前が海だし、移動もないから鞠莉ちゃんが言ってた早朝と夕方に練習も出来るね!」
「うん!その方がいいと思うんだ!」
「でも、急にみんなで泊まりに行って大丈夫ずら?親に迷惑かけないずら?」
と、そう花丸ちゃんは尋ねる。
まぁいきなり8人も友達が集まることになれば、自ずと必ずやそういう問題も出てくる。
でも、千歌ちゃんはきっぱりと言い放つ。
「なんとかなるよ!じゃあ決まり!」
『決定』のところまで強引に言っちゃうあたり、なんか千歌ちゃんらしい。まだみんなが泊まれるのかどうか決まっていないはずなのに……。
千歌ちゃん、大丈夫なのかな?
「それでダイヤも大丈夫?」
「何か言いたいことはあるかしら?」
「……………………」
そんな千歌ちゃんのことを考えてるうちに、果南ちゃんと鞠莉ちゃんの2人は、ダイヤさんに対して話を進めていた。
合宿をする事に腕を組んで悩むダイヤさんだったけれど、ダイヤさんの口からすぐに答えは出た。
「……分かりましたわ。今回ばかりは、私も千歌さんのその意見に賛同いたしますわ」
「本当!?ありがとうダイヤさん!」
その答えを聞いた千歌ちゃんは両手を大きく振り上げて喜ぶ。その裏では、その答えにホッと安堵しているみんなの姿があった。
もちろん私もそう。何も合宿でそんなにやったらみんなの身体を壊しかねないから、良い意味で千歌ちゃんの意見はものすごく名案だった。
だから、これでもう終わりだと……思っていた。
「で・す・の・で!」
「「「「「「……!?」」」」」」
「明日の朝4時、海の家に集合ということで!」
「「「「「「「えぇー!?」」」」」」」
突然、またまたダイヤさんは私たちにとって無理難題を言い渡す。
目をキラキラさせて、今にもやる気満々なダイヤさんのその姿は、本当に、生真面目でとっても厳格だったあの姿を見る影がなくなってしまっていた。
『えっ?この人本当にダイヤさんなの?』
と、見間違えるほどに……。
多分、みんな集まれないと思うけどね。
「……………………」
「……んっ?」
そんなとき、その中で、1人だけ別なことを考えている人物がいた。
みんながダイヤさんの話に項垂れているなかで、顔をうつむかせ、右手で頬杖をつくような形で何かを考えている子が一人だけいた。
「……梨子、ちゃん?」
「あっ、曜ちゃん……」
そう、梨子ちゃんである。
「どうしたの?何かあった?」
この今時に、何を考えてるのだろうと思った。
私はそっと彼女の近くに寄って、ダイヤさんにもみんなにもバレないように小声で梨子ちゃんにそう尋ねると、梨子ちゃんは何も答えてはくれず、話をすぐにはぐらかされてしまった。
「う、ううん。何でもないの……」
「……本当?」
「うん。本当、だよ……」
にこやかに、でもどこか何かを隠しているようなそんな表情で。
だからそんな彼女にもっと色々話を聞きたかったけれど、逆に梨子ちゃんのことを追い詰めてしまいそうだったから、私はそこで口を塞ぐことにした。
もうそこで、彼女に問い詰めないことにした。
〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜
その日の夜
帰路に着き、私はそのまま部屋に籠る。
お母さんから『大丈夫?』って私の心配して声をかけてくれた。けれど私はあまり不安にさせない為に、無理して笑ってその場をやり過ごした。
「……………………」
部屋の明かりは付けない。
明かりを付けたら千歌ちゃんに気づかれて、千歌ちゃんは私へ声をかけるから……。
今は、私1人になりたい。
そういえる理由はたった1つしかないけど、その理由は私にとってとても『大切』なこと。
『Aqours』のみんなにも関わることだから。
それで結局、
みんなに言わなきゃいけないことなのに、いざとなった時に言えないこの状況を何とかしたい。
私もちゃんと、分かっているのに……。
そんな時でした。
ブーッ!ブーッ!
「……っ!」
突然、スカートのポケットに入っているスマホが振動し始める。
その振動が一定感覚で長く続くから、恐らく電話だろうと思ってポケットに手を入れてスマホを取り出すと、電話してきた人物は彼だった。
「……もしもし?」
「梨子か?俺だ、遼だ」
「遼くん!お疲れ様……」
電話に出て、遼くんの第一声を耳にする。
とても優しい声で、安心する。そんな遼くんとはここ最近、毎日のように連絡を取り合うくらいまで親交が深くなった。
遼くんも遼くんで部活をしているから、私も彼に対してそんな風に励ましの言葉を口にする。
ただ同時に、いつもそばで一緒にいる曜ちゃんにすごく申し訳なく感じてしまう。遼くんと曜ちゃんは恋人同士だし、色々と気を遣わないと曜ちゃんに迷惑をかけちゃうから。
恋人、彼女である曜ちゃんの事をふと考えていたその束の間、遼くんは私に話を振ってきた。
「今日も練習だった?」
「ううん。今日はみんなで、夏休みの打ち合わせ。それでね、明日から千歌ちゃんのお家で合宿をすることになったの!」
「えぇ!?マジか?」
「うん!マジよ♪」
私は今日のこと、学校であったことを彼に提供するように話をする。
多分いつもなら曜ちゃんに話を聞いているんだろうと思うけど、まだ曜ちゃんは帰ってきていないのかもね?
そしたら彼はとんでもないことを呟く。
「そうか。俺もその合宿に参加して、みんなの成長のためにビシバシしごきたかったなぁ……」
「それだけは本当にやめて!」
「えっ?ダメなのか?」
「ダメよ!まるでダイヤさんみたいよ!」
あの時の部室で、地獄の練習を明日からしようと息巻いているダイヤと同じような雰囲気を醸し出している遼くん。
ダイヤさん以上に地獄の練習メニューを考えてしまいそうな彼を、私は必死に制止させる。
でも遼くんにとって、どうしてダイヤさんの名前が出てくるのか理由を知らないから、遼くんは首を傾げながら私に問いかけてきた。
「なんでダイヤの名前が出てくるんだよ?」
「ま、まぁ……それはどうでもいい話だわ」
「……?そっか。そういうことにしとく」
それを私はなんとかはぐらかし、そこで話を一区切りさせて終わらせる。
遼くんは不思議に思うところがある表情を見せていたけれども、私の話に何も言及はすることなく、それで納得はしてくれた。
ただ、その後に彼はいきなり話題を変える。
「そんでさ、一つ聞きたいんだけど……」
「んっ?どうしたの?」
「ちょっと、聞き辛いんだけどさ……」
と、遼くんは私に対して聞き辛いとそう言う。
たった今、2人で合宿の話で盛り上がっていたそのあとで、なにか私に対して、少し言い辛いことでもあるのだろうか?
それを考えていた矢先でした。
彼は、私の度肝を抜く言葉を言い放ちました。
「また……言えなかった?」
「……!?」
「最初の『お疲れ様』、暗かったから」
「……………………」
その言葉を耳にした瞬間に、私は驚きのあまりで後ろに一歩後ずさる。
電話という『声』だけが頼りの会話なのに、その声のトーンだけで人の感情を汲み取って、それで人に発言する遼くんの感知する力はすごい。
驚き過ぎて、図星になっちゃう。
「……悪い。聞くべきじゃなかったね」
「う、ううん!いいのっ!別に私は気にしてない。それに遼くんは、私のことが心配で電話してきてくれたんだよね!?そう……だよね?」
「……うん。そうだよ」
そしたら私が図星になり過ぎてしまったせいで、彼が逆に申し訳なく感じてしまっていた。
私はすぐに言葉を紡ぎ、彼が電話してきてくれた理由を述べる。そして彼が発した答えを聞いた私は、ホッと心が晴れやかになった。
けど、また私は彼によって考えさせられる。
「梨子、迷ってる?」
「迷ってないって言ったら、嘘になる」
「じゃあ、もう一つだけ梨子に質問」
「えっ?質問?」
「“ピアノ”と“Aqours”、梨子はどっちが大事?」
「……っ!」
「多分梨子の中では、Aqoursの方が気持ち的には強いんだと思う。だから迷って、言えずにいる」
「……………………」
私の思う核心を言い当てられてしまった。
そうなの。私はAqoursのみんなが大事だから、だからこそ迷ってみんなにちゃんと言えずにいる。
彼は、そんな私に話をしてきた。彼自身の想いは強くて、心が惹かれてしまいそうだった。
「俺はね、小さい頃からずっとやってきたピアノを大事にしてほしいと思ってる。Aqoursも大事だということは、あのときに梨子の話でよく分かった。でもだからこそ、ピアノを大事にしてほしい」
「うん……分かってる……」
そう呟きながら、私はピアノにおいてある自分で作曲した楽譜をぼんやりと眺める。
『海へ還るもの』
あの時、本番で弾けなかった曲。
「自分の気持ちは、どっちだい?」
「わた……しは……」
「別に今言わなくてもいい。ゆっくり時間をかけて考えて、答えが出たら俺に言ってほしい」
「遼くん……」
「最終的に決断するのは梨子だ。今の自分の気持ちに、正直に答えを出してあげてくれ」
「……………………」
自分の、正直な気持ち。
『梨子は、好きなものは好きでいてほしい。特に何より、“一番”なものにはね!』
あの時、遼くんが私を勇気づけてくれなかったら今の私はここにはいない。
またこうして昔から続けてきたピアノと向き合うことができたのも、何もかも全ては遼くんのおかげなのも分かってる。
「じゃあ、今日はここで俺は……」
「ま、待って!!!」
「えっ?」
「今、今答えるわ」
「……えっ?」
でも遼くんに質問されて、答えはすぐに出た。
今の私にとって、ピアノよりもAqoursのみんなのことを1番大切に思っている。
“スクールアイドル”が自分の中でどんどん大きくなって、みんなと一緒にスクールアイドルをしていることが、私の中で1番の楽しいことなの。
だから……答えなきゃっ!
「遼くん。私の、私の答えは……!」
「……………………」
その後、私はスマホに届いてたピアノコンクールの参加申し込みのメールを削除した。
遼くんは私の答えを聞き、少し間を置いたあとに『梨子の答え、しかと受け取った!』って言って、それを最後に彼は電話を切った。
何よりも、みんなが大事だから。
後悔は、ないよ……。
ありがとう、遼くん。
でも……
貴方の思いに応えられなくて、ごめんね?
ということで始まりました第10話。
まず読者の皆様には、アニメ準拠に沿いつつ
執筆すればいいのに、なかなか手につけられず
更新もままならなくて申し訳ないです。
こっちのことで言い訳にはしたくないので、
これからまた頑張ってまいりたいと思います!
ということで!梨子ちゃんが遼くんにどう答えを
出したのか気になる方は、次回のお話にどうぞ
ご期待くださるようお願いいたします!
次回も是非、楽しみにしててください!
感想・評価等、お待ちしています!