どうも、キャプテンタディーです。
今回はどうしても書きたいことが多く、いつもより
字数が多くなってしまいました。
あらかじめ報告しますが、多分この時期は更新率が
低くなるので、よろしくお願いします。
最後まで読んでいってくだされば幸いです。
それでは、本編をどうぞ!
放課後
なんの成果も得られなかった千歌ちゃんと私。
2人で道路と海に挟まれた防波堤に座り込み、千歌ちゃんはいろんな意味で頭を下げ、項垂れていた。
転校生には作曲を断られ、ダイヤさんにも結局スクールアイドルを部として認めくれなかった。
「もう〜!前途多難過ぎるよぉ〜!」
「じゃあ……やめる?」
「ううん!やめないよ!」
千歌ちゃんに私はいつもので尋ねると、千歌ちゃんは頬を膨らませ、強気にやめないと言い切った。
まだ千歌ちゃんの心はまだ折れていない。
けど、それもいつまで続くか分からない。
きっとこれからも千歌ちゃんはダイヤさんにお願いしに行くことが何度も続くと思う。でもダイヤさんもダイヤさんで、きっと認めてもくれない。
そして転校生の子にも同じだ。
千歌ちゃんはめげずに頼み込んでいるけど、彼女もまた引き受けてはくれないだろう。
「あっ、あの2人は!」
「んっ?あっ…あの時の……」
すると千歌ちゃんは後ろを振り向いたとき、ひときわ大きな声を上げて何かを見つけたみたい。
私もその声につられるように振り返ると、入学式の時に千歌ちゃんが勧誘していた花丸ちゃんとルビィちゃんの2人がいた。
「あっ、花丸ちゃん!ルビィちゃん!」
「あっ、こんにちは!」
「ピ…ピギィ!」
千歌ちゃんは花丸ちゃんとルビィちゃんを見つけると、手を振りながら大声で2人の名前を呼ぶ。
花丸ちゃんは千歌ちゃんに挨拶を返すけど、究極の人見知りと花丸ちゃんが称していたルビィちゃんは、千歌ちゃんを見て近くの木に隠れてしまう。
「ねぇ、ルビィちゃん!この飴をあげるからこっちおいで!大丈夫…怖がらないで!」
「う…ぅゆ……」
千歌ちゃんはそのルビィちゃんに、カバンから取り出した1つの棒付きの飴でルビィちゃんを誘う。
「ほ〜らほら怖くな〜い。食べる?」
いつからそんな飴を持っていたのかは知らないけど、千歌ちゃんはその飴を揺らしながらルビィちゃんに声をかけると、こっそり木の陰から恐る恐るとルビィちゃんは顔を出す。
「…っ!あっ、飴さんだ!」
「おっ、えへへっ!さぁ〜おいで〜!」
ルビィちゃんはまるで不審者に誘われる小学生のよう。不審者が千歌ちゃんで、ルビィちゃんが知らない人について行ってしまわないかと不安になる。
それから千歌ちゃんはちゃんとルビィちゃんに飴をあげて、ルビィちゃんは大喜びだった。
ブロロロッ!
「あっ、ちょうど今バスが来たよ!曜ちゃん!花丸ちゃん!ルビィちゃん!一緒に乗ろう!」
「は…はいずら!あっ…はい!」
「ピ…ピギィ…!!」
ちょうど来た沼津駅行きのバスに私たち4人は乗り込み、私たちが乗ったバスは沼津へと走り始める。
1番後ろに私と千歌ちゃん、その前の席にルビィちゃんと花丸ちゃんが乗っていて、千歌ちゃんは後ろから花丸ちゃんのほっぺを突っついていた。
「へへっ!花丸ちゃんのほっぺ柔らかい♪」
「うぅ…止めてくださいずら〜!」
「うんうん!花丸ちゃんすっごく可愛い!」
ほっぺを突かれている花丸ちゃんは、嫌がっているけど満更でもなさそうな表情。千歌ちゃんも花丸ちゃんたちに初めてあってからずっとこんな調子だ。
ずっと可愛いって言ってるから、そのうち花丸ちゃんとルビィちゃんにも勧誘をするだろう。
ていうかルビィちゃんはスクールアイドル好きそう。千歌ちゃんが作ったチラシに興味津々だったし、スクールアイドルは大好きそうに見える。
ただ人見知りという、人と接する上での壁のようなものがあるから、難しいんじゃないかな?
「花丸ちゃんスクールアイドルやればいいのに…」
「スクールアイドル?何ですかそれ?」
「とっても楽しいよ!興味ある?」
「あっ…いいえ!マルは図書委員なので、図書委員の仕事があるずら。いいえ、あるし…」
花丸ちゃんはとても真面目。
花丸ちゃんは図書委員らしく、図書委員の仕事があると言って、千歌ちゃんの問いかけに丁重にお断りをした。
でも花丸ちゃん、たまに『ずらっ』って語尾がつくけど、直さなくてもいいんじゃないかな?
その方が花丸ちゃんらしくていいと思うんだけど…野暮だったかな?
「ルビィちゃんはどう?やってみる?」
「ル…ルビィはえっと…その…お姉ちゃんが…」
「お姉ちゃん?」
千歌ちゃんは、今度はルビィちゃんにも同じように尋ねると、ルビィちゃんはすぐには答えられず、『お姉ちゃん』とだけ呟いた。
どうして『お姉ちゃん』なのかと私と千歌ちゃんは思っていたら、花丸ちゃんから思いもよらない言葉が飛び出してきたの。その話には千歌ちゃんも驚きを隠せなかった。
「ルビィちゃん、ダイヤさんの妹ずら」
「えっ!?あの生徒会長の妹なの!?」
「は…はい……」
ルビィちゃんは生徒会長のダイヤさんの妹だった。
よくよく考えてみたら、ルビィちゃんもダイヤさんも名前は『宝石』名前で呼ばれている。
家系の関係なのか、それともご両親が宝石のように輝ける女性であってほしいがために付けたのか?
私の中では…もちろん後者だ。
素敵が名前だし、キラキラしてる。だから両親が宝石のように輝ける女性であってほしいがために付けたと私は考えてる。
でも話は別になる。ルビィちゃんがやりたいと言っても、ダイヤさんがまずスクールアイドルが嫌いなわけだし、認めてくれるとは思わない。
「何だか嫌いみたいだもんね、スクールアイドル」
「はい。そうなんです…」
でも疑問に残るのは、ルビィちゃんがスクールアイドルが好きで、ダイヤさんが嫌いというところではなく、ダイヤさんが『μ's』という伝説のスクールアイドルのことを知っていながら、どうしてスクールアイドルが嫌いなのかというところ。
ダイヤさんが『μ's』を知っているなら、もちろんルビィちゃん知っているはず。
だけど、そもそもの根本的なところでの“スクールアイドル”というものには、妹が好きで、姉が嫌いということが私の心の中で矛盾していた。
この矛盾は、いつ晴れるだろう?
「でも千歌ちゃん、今は曲を作ることを考えた方がいいかも。何か変わるかもしれないし…」
「そうだね〜。うん…そうしよう」
千歌ちゃんは私の話にうんと首を縦に振って、花丸ちゃんたちへのちょっとした勧誘を終わらせた。
実際に本当に今は曲を作らないとアイドル出来ないからね。花丸ちゃんたちにはまたの機会に勧誘させたらいいと思う。
そう思っていたら、千歌ちゃんは花丸ちゃんにバスの降りるところを尋ねていた。
「花丸ちゃんはどこで降りるの?」
「今日は沼津までノートを届けに行くところで…」
「ノート?どうして?」
花丸ちゃんは今から沼津まで行って誰かのためにノートを届けるようだけど、一体誰にノートを?
と思い当たる人物もいないのにそんなことを考えていたら、花丸ちゃんから出た言葉は、とある入学式に現れた、あの善子ちゃんっていう子だった。
実はその善子ちゃんが、入学式に来て以来、次の日から学校に来なくなってしまったらしい。
みんなへの自己紹介のとき、善子ちゃんはあの時と同じように自己紹介をしたらしい。それが原因で、みんなから中二病だと思われたのかは分からないけど、それっきり学校に来なくなったみたい。
善子ちゃん大丈夫かな?まだあまり話したこともないけど、ちょっと心配かな?
「そうなんだ…。大変だね……」
「ずらっ…。はっ…またずらって言っちゃった…」
「ははっ!花丸ちゃんずっとそればっかり!」
「また言ってしまったずら……あっ!」
そんな天然っぷりを発揮する花丸ちゃんの言葉に、さっきまでの重苦しい空気が軽くなった。
花丸ちゃんの天然は面白い。すぐ言ったそばからまた言ってしまうというあたり、きっとその語尾が馴染んでしまっているのだろう。
でも、間違った時のあの表情は面白い。写真撮って、1つの思い出として残しておきたいくらい。
『次は〜十千万前〜♪十千万前になります』
するとバスのアナウンスから、千歌ちゃんがいつも降りているバス停前に差し掛かっていた。
辺りを見渡しても、日は夕方になり、バスは港付近を走っていたから、千歌ちゃんはそろそろバスから降りる準備をした。
「じゃあ曜ちゃん、また明日ね!」
「うん!また明日!」
今日は金曜日だから、明日は土曜日の休日。
毎週のように千歌ちゃんから遊ぼうと誘いが来るから、休日でも楽しい日々が続いている。私にとって、1つのお楽しみであります!
「じゃあ花丸ちゃんもルビィちゃんもまたね!」
「はい!さよなら〜!」
「さ…さようなら〜」
それから千歌ちゃんは花丸ちゃんやルビィちゃんにもそう言って、笑顔でバスを降りていった。
今日もまた、夜に遼くんのお家に行くつもり。
それが、私の毎日の日課だから。
〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜
「じゃあね〜!また明日〜!」
1番後ろに乗っていた曜ちゃんに手を振りながら、私はバスが見えなくなるまで見送った。
「………………」
「あっ、あの子……」
それからそのあと自分の家に帰ろうとしたら、あの時と同じように、海の浜辺に転校生の姿があった。
カバンを両手で前に持って、沈もうとしている太陽とオレンジ色の海を眺めていた。
「桜内さ〜ん!」
「……………………」
あの子、わざとシカトしてる。
私はあの子に聞こえるくらいに大声で名前を呼んだけど、きっと私の声を聞いて、また作曲のことかと思ってるのだろう。
でも今は別に作曲のことじゃないし、たまたま帰りに偶然会っただけだから何も心配ない。
「……………………」
あの子は私に振り向きもしない。
こうなったら、あの時の話をぶり返すようだけど、アレをするしかないかな?
うん…思い立ったらすぐ行動だよ!
私は道路から砂浜へと階段を降りる。桜内さんはそれでも気づかないから、そっと音を立てないように桜内さんのすぐ背後に迫り、その場で私は座る。
そして私は桜内さんのスカートを……
ペラッ
桜内さんに言いながら堂々とめくった。
「もしかして…また海に入ろうと……あっ///」
「なっ…ななななっ…///」
そしたら桜内さんの制服の下には、あの時と同じ競泳用の水着じゃなくて、女の子なら誰でも身につけているであろう…下着だった。
しかも桜内さんの『桜』にちなんだ薄ピンク色。
桜内さんは自分の下着を見られ、恥ずかしさのあまりに顔を真っ赤にしながら私の方を見てくる。
それから彼女は私の方に振り向き、私がめくっていたままのスカートを強制的にバッと閉じてから、恥ずかしさの勢いに任せて私に尋ねてくる。
「み…見ました!?///」
「ごめんなさい。また桜内さんが海に入ろうとしてるのかなって思っちゃって…つい……」
「してないですっ!///」
彼女にしてしまった以上、見てしまったとしか言えない。逆に言わなかったら作曲どころか、もう相手にしてくれなくなっちゃう。
私はそれだけは嫌だった。
「それで?また私に作曲のお願いしに来たの?あのね…そんなに作曲のお願いをしてきても、私が答えることは変わらないわよ?」
「違うよ桜内さん。私の家がこっちだから、偶然ここを通りかかっただけだよ」
やっぱりと思った。
きっと桜内さんはここでも私が勧誘してくるだろうと思って、彼女はそう話したんだろうけど、目的は全然違うことを話して弁解した。
それから私は、彼女がずっと…初めて会った時に話していたことを彼女へ問いかけた。
「そう言えば、海の音…聞くことはできた?」
「……ううん、聴けてない」
その私の問いかけに、彼女は首を2度横に振って答える。海の音は…まだ聞けてないようだった。
その時に私は、彼女にあることを尋ねる。
「じゃあ今度の日曜日…空いてる?」
「えっ?どうして?」
「海の音を聞かせてあげる」
日曜日は私も何もすることもないから、彼女のために日曜日に海の音を聞きに行こうと誘う。曜ちゃんも遼くんも大丈夫だと思うから、私は尋ねた。
でも彼女は私の本当の気持ちを悟られてしまい、彼女は私に向かって言い放った。
「でも聴けたらどうせ…スクールアイドルになれって言うんでしょ…?」
「そうしてくれたら…いいんだけど……」
バレていた。私が誘ってその後に言おうとしていたのに、真っ先に彼女に言われてしまった。
すると彼女は、初めて出会った時に話していたことを、もう一度だけ私に向けて話し出す。
「あのね…私が小さい頃からピアノをやっているって話は、ここで初めて会った時に話したでしょ?」
「うん、その話は覚えてるよ」
「小さい頃からずっとやってたんだけど、最近いくらやっても上達しなくて、やる気も出なくて。それで、環境変えてみようって。海の音を聞ければ何かが変わるのかなって…」
桜内さんはとても申し訳ないような、こんなことを話しても理解とかしてくれないよねって、なんか…辛そうな、そんな表情で話をしていた。
私も個人の事情は話を聞いてもよく分からないことはある。でも、私から言えるのは、彼女を前向きに、ポジティブにさせるのが1番だと思う。
私は自分の両手を彼女の両手と繋いで、にこやかに笑って彼女に言葉を投げかける。
「桜内さんなら変われるよ、きっと!」
「…っ、簡単に言わないでよ!」
「そんなの分かってる。でも…そんな気がする…」
「……っ!」
確かに、簡単に変われるはずがない。
そう簡単に人生とか、運命とか変えられるなんて、そんなことを簡単に考えてなんかいない。
でも、それでもやるんだって信じて前に進めれば、きっと変われると思う。私はそう信じてる。あの人たちの歌を聴いて、そう思えるようになったから。
すると桜内さんは私の言葉と、私の表情を見て何かを思ったのか、口角が上がり『フフッ』と微かな笑みを浮かべた桜内さんは言う。
「ふふっ…変な人ね、あなた……」
「笑った。梨子ちゃん笑った!」
「ふふっ…もう……!」
とうとう変な人って言われちゃった。けど、初めて会った時より表情は笑ってるから、つい私は彼女の下の名前で呼ぶ。でも桜内さんは、そんなことを気にしてもいなかった。
そして桜内さんは話を切り替えて私に話す。
「とにかく、私はスクールアイドルなんてやってる暇はないの。だから…ごめんね…?」
また申し訳なさそうに話す桜内さん。
でも、彼女のために海の音は聞かせてあげたい。
私が頭の中でそう考えたとき、閃いた。
頭の中で閃いた私は、『じゃあ』って言葉に続けて桜内さんに話をした。それもちろん、スクールアイドルとか全然関係ないこととしてね!
「じゃあ海の音だけを聞きに行こう!スクールアイドルとか、関係なしでね!」
「えぇ〜!?」
「それなら…大丈夫でしょ?」
桜内さんの両手を強く握りしめ、私はあなたのために協力するよって気持ちを、言葉と一緒に笑顔でメッセージとして送る。
私の笑顔を見た桜内さんは、その私の笑顔を見たあとで、ため息をつきながら私に言い放った。
「やっぱりあなたは変な人ね。ありがとう」
その彼女の言葉は、私が海の音を聞かせてくれる…協力してくれることに感謝している言葉だった。
私はその言葉を聞いて、心の底からで喜んだ。そしてそれから、私から彼女へ海の音を聞きに行く日にちのことも一緒に話をした。
「じゃあ今度の日曜日に、ここに来てね!」
「ここでいいの?」
「うん!ここでいいの!」
きっと桜内さんはここに来ても日も浅いし、ダイビングショップにも行ったこともないと思うから、ここに集まった方が桜内さんも大丈夫だと思う。
それであとから私がダイビングショップに連れて行って、曜ちゃんとかもみんなも誘って、海の音を聞きに行こうと思う。
「じゃあ約束だからね〜!」
「う…うん。約束ね…?」
そして私はそんな約束を桜内さんとして、私はそれからそそくさと家に帰るのであった。
桜内さんは私の強引さに少し困り気味だったけど、海の音に聴きに行けることに、私が去ったあとで笑みをこぼすのであった。
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日曜日
今日はあいにくの曇り空。
今から雨が降ってもおかしくないくらいの空模様。一面とにかく雲で空が覆われていた。
「遼くん、おはヨーソロー!」
「また朝から部屋に上がってくるなよ…」
「いいじゃんいいじゃん!」
俺の部屋に颯爽と曜が現れる。
そして曜の手には、いつも着ている水着が入った手提げカバンを持っていた。
今日は曜と千歌の学校にやってきた転校生の要望で、海の音を聞きたいということで、ちょうど部活が休みだった俺も誘われることになった。
ていうか、この曇り空だと潜ったら絶対冷たいと思う。若干ではあるが、木も揺れてるから風もある。
「遼く〜ん、早く行こうよ〜!」
まだ朝の8時なのにもかかわらず、曜は集合場所の『十千万』の近くの浜辺に行こうと急かしてくる。早く行きたい気持ちも分かるが、俺はまだ起きたばかりだ。それに集合時間は9時なんだから、そんなに急がなくてもいい気がする。
朝飯も食ってないし、歯を磨いてもない。こいつが準備するのが早すぎなだけなんだ。
「遼くんってば〜」
「はぁ……」
でもまぁ…こいつが早く行きたいって言うのなら、こいつの我が儘に仕方なく付き合ってやるか。
俺に上目遣いをしてきて、俺に駄々をこねてきたのが可愛かったなんてことは、こいつには内緒な?
「はいはい。今から準備するから待ってろよ?」
「うん!ヨーソロー!」
曜にそう言って自分の部屋で待たせ、自分の部屋を出た俺は、すぐさま準備に取り掛かる。
朝御飯は簡単にバナナなどのエネルギー食品を体に取り入れ、お腹の空腹感を満たす。それから洗面所で歯を磨き、顔を洗う。
真っ白でふかふかなタオルで濡れた顔を拭き、そのあとでまた部屋に戻ると、曜は勝手に俺のベッドに横たわって寛いでいた。
「あっ、おかえり〜♪」
「『あっ、おかえり♪』じゃねぇよ。人のベッドで勝手に寛ぐな。あの時みたいに襲われたいのか?」
「きゃ〜!遼くんに襲われる〜!」
「こいつ俺のことを馬鹿にしてやがる……」
いや、やろうと思えばやれるのよ?
こんな余裕な表情をしている曜を、いつでも淫らな格好にさせることなんて俺にとって容易だ。
まぁ…やろうと思えばの話だ。
「とりあえず、俺は着替えたり準備するから、曜はとっとと部屋を出て下に降りて待ってろ」
「は〜い!」
曜が部屋から姿を消したあと、俺は即座に外に出られる格好に着替えた。ダイビングスーツにかさばらないよう、いつも履いている水着のパンツをカバンに放り込み、タオルなどもカバンに入れたあとで、俺は曜が待つリビングに足を運ぶ。
「悪いな。お待たせ」
「それじゃあ行こうか!ちょっと早いけど!」
「あぁ!ちょっと早い方がちょうどいい」
それから俺と曜は家を出て、2人で出発の合図である『ヨーソロー!』をいつものように掛け声をしてから自転車で集合場所へと向かった。
俺たちが向かう集合場所である『十千万』までは、ここから結構遠い。それに自転車だから、それなりに時間はかかってしまう。
だが曜といろんなことを話したりしていたら、いつの間にか集合場所に着いてしまった。
「あっ!曜ちゃ〜ん!遼く〜ん!」
『十千万』に近づくと、集合場所の近くの浜辺から千歌の声が聞こえてきた。浜辺に目を向けると、浜辺には千歌ともう1人の女の子がいた。赤みがかった長い髪に、顔立ちが綺麗な女の子。
きっとその子が転校してきた子なんだろうと思った俺は、曜の自転車と一緒に『十千万』に場所を借りて自転車を止めてもらい、カバンだけを持って千歌がいるところへと歩いていく。
「おはよう曜ちゃん!遼くん!」
「千歌ちゃん、おはよう!桜内さんも!」
「お…おはよう……」
千歌、曜、そして転校生の子の3人は挨拶をして、その後に俺の正面に千歌たちの学校に転校してきた子を千歌は連れてくる。
そして千歌から紹介をしてもらった。
「遼くん、この子は桜内 梨子ちゃん!東京の音ノ木坂学院ってところから来た子だよ!」
「さ…桜内 梨子です!あの…高海さんから幼馴染みだとは聞いてます!あの……その……///」
初対面だからだいぶ緊張してるねこの子。
桜内さんは俺に対して、もじもじと顔を赤面させながら自己紹介をしてくる。
男の子とかと絡む機会とかなさそうだし、自分で話をしているけど、その最中は俺に目を合わせず、目線を横や下に泳がせていた。
こういうのは、俺から話しかけた方がいいかも。
そう考えた俺は彼女に対して一歩前に近づき、彼女に手を差し伸べて彼女に自己紹介をした。
「よろしく!俺の名前は楠神 遼。桜内さんが言った通り、千歌と曜の幼馴染みだよ。これからよろしくね、桜内さん!」
「は…はい!よろしくお願いします!」
桜内さんはまだ落ち着きを取り戻せていないけど、初対面ということだから仕方ないか。
俺と桜内さんは両手で握手を交わし、それから桜内さんに話をしたあとで千歌にあることを尋ねる。
「まあ詳しいことは船で話そう?」
「は…はい!」
「千歌、この時間に定期船あったよな?」
「うん!一本あるよ!」
千歌に尋ねたのは、港から出る定期船のことだ。
ここで桜内さんと話すのもなんだから、船で果南のところに行きながら話した方がいいと思ってね。
できるだけ、この桜内さんの緊張もほぐしてやった方がいいと思うし、これから千歌たちとも友達としてやっていくのであるのなら、俺もその子とは友達になりたい。
「じゃあその船で行こう。定期船で少し桜内さんとも話がしたいしな…」
「あぁ〜!遼くんナンパだ!」
「違うわ!ナンパなんかすか!」
千歌と曜にナンパとか言われるのはちょっと悲しいけど、仲良くなりたいから我慢した。
とりあえず俺たちはそれから定期船がある港に行き、定期船に乗り込む。波にゆらゆらと揺られながらダイビングショップへと向かった。
「楠神くんって、何かスポーツでもやってるの?」
「俺はサッカーだよ。小さい頃からやってる」
「遼くんって凄いんだよ!サッカーですっごく強い学校に通ってるんだよ!凄いよね!」
「へぇ〜!そうなんだ〜!」
定期船で目的地に向かう間、みんなで話を花を咲かせた。桜内さんも少しずつ千歌や曜の話の中に入っていけるようになっていったので、俺はそれを見て少し安心した。
俺の話をしたあとで、彼女たちは彼女たちでしばらく話をしていた。内容といったら、ガールズトークならではの話だ。例えば…オシャレとかな?
「あっ、そろそろ港に着くよ!」
「本当?結構着くの早いのね」
「まぁ、そこまで遠くもないからね」
15分ほど定期船で過ごした時間は短かった。まぁそれくらい、みんなで話していたからな。
俺たちは定期船を降り、港からダイビングショップへと徒歩で歩いていく。事前に果南にも連絡はしていると千歌は言っていたから、果南もダイビングの準備は進めているだろう。
約5分ほど歩いたところで、例のダイビングショップが見えてくる。ちょうど入り口の前には、すでにダイビングスーツを着ていた果南の姿があった。
「お〜い!果南ちゃ〜ん!」
「ち…ちょっと!お店の人を名前で呼ぶなんてちょっと失礼じゃない!?」
突然、千歌がお店の人に対して名前で呼び捨てするのを見て、桜内さんは驚いて叱責する。でもこれは仕方のないことで、俺は彼女を宥めて説明をした。
もちろん、果南との関係も含めてだ。
「大丈夫だよ。千歌が今呼んだ彼女も俺たちの友達でね、実は俺たちと同じ幼馴染みなんだ」
「えぇ!?あの人も幼馴染みなの!?」
「あぁ。年は俺たちより1つ上だし、とても優しい人だから安心してくれて構わない」
果南とは幼馴染みだと話すと、流石に桜内さんも驚きを隠しきれないご様子だった。年上に幼馴染みって考えると、そう思われても仕方ないよね。
でもすぐに桜内さんはそれで納得してくれた。実際果南は優しいお姉ちゃんみたいな人だし、千歌も曜もそんな風に絡んでる。果南もそれで満更でもない表情だったりする。
まぁとにかく、果南は包容力のあるお姉さん。
初めて会う桜内さんには、そう思ってもらったほうがいいかもしれない。
「おっ、みんな来たね!おはよう〜!」
「おはよう果南ちゃん!」
「ヨーソロー!おはよう果南ちゃん!」
千歌と曜はいつも通りに果南と挨拶を交わす。
「おはよう果南。相変わらず準備は早いな」
「千歌にダイビングするって言われたから、準備はしないとね。物事にはまず準備が大事だから」
俺も2人に続いて果南と挨拶をして、話を終えたところで俺は桜内さんの背中を押し、千歌に彼女を果南に紹介しようと促す。
「ほら千歌、果南に紹介しないと」
「うん!果南ちゃん!桜内 梨子ちゃんだよ!」
「よろしくね!梨子ちゃん!」
「は…はい!よ…よろしくお願いします!」
おどおどしながらも頭を下げ、桜内さんは果南と挨拶をする。果南はそれを行動に笑みを浮かべつつ、もう下の名前を呼び始めた。
それから千歌から桜内さんの話を聞いていて、東京から転校してきたことや、ピアノがとても上手であることに果南は関心を抱いていた。
それで千歌から桜内さんの話をし終えたところで、果南は俺たちに話を切り出す。
「それじゃあ、ダイビングスーツの準備は出来てるから、早速中で着替えてきて!全員が着替え終わったら、早速ダイビングに出発だよ!」
「「は〜い!」」
海に潜るためのダイビングスーツは中に準備されているらしい。千歌と曜は果南に言われるがまま建物の中へと入り、着替えに向かっていった。
だが桜内さんは更衣室へと向かわずに俺のそばにいたので、俺は桜内さんに向かって言う。
「桜内さんも着替えてきたよ。俺は千歌たちが着替え終わったら着替えるからさ」
「はい、これが梨子ちゃんのスーツだよ!」
俺が話をしていると、果南もその話に入ってきて桜内さんにダイビングスーツを手渡す。果南が渡したのは、紺色をベースに両脇にピンクのラインが入ったダイビングスーツだ。
「水着は持ってきた?」
「は…はい。水着は持ってきました」
「じゃあ大丈夫だね!」
「さっ、着替えた着替えた!」
桜内さんは果南や俺に急かされるがまま、建物の中へと入って更衣室へと向かった。千歌や曜もいるから着替えは大丈夫だろう。
そして5分くらい経ったあと、着替え終わった千歌と曜は桜内さんを連れて戻ってきた。
「お待たせ〜!」
「お待たせしたであります!」
「うぅ…なんか恥ずかしい…///」
千歌と曜はいつも通り陽気に歩いてくる。逆に初めてダイビングスーツを着る桜内さんは恥ずかしさのあまりに顔を赤面させていた。
桜内さんの髪型はさっきまでとは違い、髪を後ろでお団子ヘアみたいにまとめていた。
「く…楠神くん!み…見ないで…///」
そう言って桜内さんは、別に俺はまじまじと見ているわけでもないのに、恥ずかしくて両手で自分の体を頑張って見せないようにしている。けど、自分の体のボディラインを浮き上がらせてしまうダイビングスーツを着ている彼女がしているのは、全くもって無意味である。
ある意味、セクシーなポーズをしているようで性的興奮を駆り立てるだけだった。
「大丈夫!見てないから安心して?」
「うっ…本当ですか?」
「本当だよ。安心して」
俺は桜内さんを安心させ、それから今度は俺が着替える番だったからそそくさと着替えに向かった。
「じゃあ俺も早速着替えてきますかな」
「早く着替えて着てね〜!」
千歌に大声でそう言われ、はいはいと心で思いながら更衣室でダイビングスーツに着替えた。
それで更衣室で着替え終わったあと、みんなが待っているところへとに戻ると、ダイビングに使う用具が千歌たちの手によって用意されていた。
ゴーグルにシュノーケル、そしてフィンが用意されていた。桜内さんのために海の音を聞きに行くだけだし、比較的浅いところでダイビングするわけなので、そこまで重装備はしない。
「準備は万端な感じだな」
「うん。そっちも着替え終わったね?」
「あぁ!じゃあそろそろ海に出発しようか?」
「よぉ〜し!出発だ〜!」
千歌はもうすでにダイビングすることに笑顔でウキウキとしていた。千歌はゴーグルとシュノーケルを持って、港へと走って向かっていった。
曜も千歌のあとを徒歩でついて行く。曜は忘れてないだろうが、千歌に関しては、今日の本当の目的を忘れてしまっていないか心配だ。
「千歌の野郎…桜内さんのためだけに海に潜るってことを忘れてるな…あれは…」
「別に気にしなくても大丈夫です。高海さんがわざわざ私のためにこんなことをしてくれているので、別に文句なんて言いませんよ」
「悪いな。友達があんなので…」
「いいえ!別に大丈夫です」
何か凄く気を使われてる感じがしてならない。笑顔をより繕ってる様子が彼女を見て感じられる。
もちろんきっと桜内さんは、転校初日で千歌から勧誘をされまくっていたから、そのことで少し腹を立てているのかもしれない。
でも彼女の表情は真っ白で、どす黒いオーラなど何もなかった。なんというか、彼女は天使かと思ってしまう俺であった。
俺と桜内さん、そして果南の3人はダイビング用の小さなボートが止めてある港へ足を運ぶ。千歌と曜はすでにボートに乗り込んでいた。
「遼く〜ん!桜内さ〜ん!果南ちゃ〜ん!」
「早く行こうよ〜!」
俺たち3人を急かしてくるように声をかけてくる千歌と曜に俺はイラっとするけど、そこはちょっと我慢して俺たちは船の目の前までやってきた。
すると何かに疑問を持った表情をした桜内さんは、俺や果南に向かって疑問を投げかけてきた。
「そういえば思ったんですけど、船は誰が運転するんですか?船にも免許はいるんですよね?果南さんといえど、運転するにはまだはy…」
「船は私が運転するんだよ」
「………えっ?」
桜内さんが疑問に思っていたのは、この船を誰が運転するということだった。でもその疑問は、桜内さんが尋ねてくる前に、果南のたった一言で解決してしまった。
果南のたった一言で、桜内さんの表情は固まる。
唖然とした表情のまま、その表情を果南の方へと向けてそれが本当なのかともう一度尋ねるが、その前に俺から真実を告げた。
「えっ?でも…果南さんは…」
「果南だよ。船を運転するのは…」
「えぇ〜!?」
自分の1つ年上が、まさか船を運転するという驚きの真実に、桜内さんは驚愕して声を上げた。
そしてそこから一歩、二歩後ずさり、今にも逃げようとする体勢になりかけていた桜内さんの背後を俺は取り、彼女に言う。
「く…楠神くん!?」
「さぁさぁ、行きますよ桜内さん!」
「えぇ〜!そんなぁ〜!」
俺は桜内さんの背後を取ったあとで、後ろから桜内さんの背中を押して半強制的に船に乗り込ませた。
彼女が逃げるってことはなさそうだったけど、ダイビングの本来の目的は桜内さんが海の音を聞きたいからということだから、本人がまず逃げてしまってはどうにもならない。
「じゃあ少し揺れるけど、我慢してね?」
「「は〜い!」」
全員が船に乗り込んだあとで、果南が操縦席に座り、みんなに声をかけてくる。その声に千歌と曜は陽気に返事をして、俺は無言で右手をあげた。
声を上げなかったのは、隣に桜内さんかいるからだ。実は船に乗るのは初めてらしい。だから少し怖がっていたんだなって、今はっきり理解できた。
「桜内さん、大丈夫?」
「う…うん。こういう船に乗るのは初めてだから、その…少しそばにいてください…///」
「……うん。分かったよ桜内さん」
桜内さんの甘えてくる表情…めっちゃ可愛い。
なに?このか弱い小動物は?赤面して甘えてくるあたり、めっちゃ恥ずかしがってるのが見て取れる。
内心めっちゃ可愛いと思いつつ、このドキドキ感が3人にバレないように頑張って平然を装った。
「じゃあ、出発だよ!」
「は〜い!しゅっぱ〜つ!」
「えへっ!ヨーソロー!」
そして果南は船を走らせる。船の出発と同時に船体は大きく揺れ動き、『きゃっ!』と声を上げる桜内さんの胸が、俺の左腕に当たってくる。
桜内さんの胸が…当たってる。俺の左腕にムニュっていう感触が伝わってくる。桜内さんの胸の感触に襲われる俺は、心臓がドクンドクンと動悸が早くなっていた。そして俺は思う。
どうか……バレずにこのままでいさせてくれ。
ダイビングするポイントに着くまででいいんだ。
このまま桜内さんが俺に甘えたまま、俺にこの至福のひとときを過ごさせてくれ!
心の中でそう願う俺であった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次回もこの続きになります。
桜内さんは海の音が聞けるのか?という話です。
まだアニメは2話なのに、もう6話も書いてる。
先はまだまだ長いようです。
次回も楽しみにしていてください。
感想・評価・誤字報告等、お待ちしてます!