少年と少女達の輝き目指す物語   作:キャプテンタディー

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どうも、ラブライブ!サンシャイン!!の
4thライブの余韻に未だに浸りまくっている
キャプテンタディーですw

長らくお待たせいたしました。
前回からの、遼の突然の質問からの今回、
彼らの恋の行方は一体どうなることやら?

随分な脇道に逸れてしまいましたが、
今回ばかりでそれも最後になります!
最後まで見ていってくだされば、幸いです!

それでは、本編をどうぞ!!!




#58 決着と、驚愕

 

 

 

 

 

 

 彼のその言葉に、私は一瞬止まった。

 もちろん、私にとって驚愕的な意味合いで……。

 

 

「曜は、俺のことが『好き』か?」

「……………………」

 

 

 度肝を抜かれて声が出ない。

 その言葉を境に、私は動揺を隠せなかった。

 

 

「えええぇぇぇえええええぇぇぇぇ!!!???」

「悪いな突然。ちょっと聞きたくてさ……」

「聞きたいことにしても程があるよ!!!」

 

 

 遼くんの口からさ、まさかそんな言葉が出てくるなんて思いもしなかったし、考えてもいなかった。

 だから、遼くんがその質問をしてきたその意図を聞くより前に、私は動揺で慌てふためいた。本当、驚きしか感じることが出来ないよ……。

 

 

「まぁそうだよな。お前の気持ちも分かる」

「……………………」

 

 

 そう言って、彼はうんうんと首を縦に降る。

 そんな遼くんを見ていて、私は彼の言動を不思議に思わないわけがなかった。

 

 遼くんは自分自身で、自分が何を言っているのか分かっているの?

 だって、自分から『好きか?』だなんて遼くんの口から言うはずがない。これは、私が自信を持って言えること。

 

 ただ、なんで遼くんが知ってるの?

 

 

「でも、どうして……?」

「んっ?何がだ?」

「どうして?いつ私が、遼くんのことを好きだって分かったの?もしかして、本当は気づいてたの?」

「……………………」

 

 

 私はあのとき、遼くんに告白出来なかった。

 なのに彼は、もはや全てを知っているかのような口調ぶりで、私に対して話を向けてくる。どうして遼くんは、私が『好き』だってことを知ってるの?

 

 もしかして、誰かから聞いたの?

 

 そんなとき、私の質問に口を閉ざして黙っていた彼の口は開く。すると開口一番、彼は驚きの言葉を私に言い放ってきた。

 

 

「気づいたというか、()()()()()

「えっ?聞か……された?」

「そうだ。全部、果南から話を聞いたんだ」

「えぇ〜!?」

 

 

 彼の口からは、果南ちゃんの名前が。

 遼くんの話を聞いていくと、どうやら果南ちゃんからその話を聞いたみたい。私はその話にも驚きを隠せなかった。

 

 この場合、私は果南ちゃんに怒るべき?

 それかそれとも、感謝するべきなのかな?

 

 

「果南ちゃんから……全部?」

「あぁ。俺に全部晒け出してくれたよ」

「はぁ……果南ちゃん……」

 

 

 そんな2つの選択肢で考えていた矢先、遼くんの言葉を聞いた私は、顔を下に俯かせて脱力した。

 果南ちゃんが自ら遼くんに話をするなんて、もしかして果南ちゃんは、私のことを思ってそうしたのだろうか?

 確かに私はあの日あの後で、果南ちゃんに告白は失敗してしまったことは、鞠莉ちゃんよりも一早くそのことを伝えていたのだ。

 

 だから……かな?

 

 これはもう、果南ちゃんから直接聞いてみないと分からないかもしれない。ただ残念ながら、今果南ちゃんはここにいないけど……。

 

 

「複雑な心境のようだな、曜……」

「まぁ、ね。ちょっと驚いてる」

 

 

 私の心境を、表情で読み取ってくれた彼は、私の気遣ってそこまで深く入ってこなかった。

 それで彼は、私に話をしてくれた。

 

 内容は、私が遼くんに恋をしていたことを知ったあとのお話。当時の遼くんも、最初はすごく驚いていたみたい。

 

 

「でも俺も、曜が俺のこと好きだったなんて初めて聞いたときは『嘘だろ?』って最初は思ってた」

「むぅ。それって、私に好かれてるの嫌ってる?」

「そういう意味じゃない。普通に驚いた」

 

 

 果南ちゃんの話を全て聞いてしまった遼くんは、その後で色々と考えたんだそう。

 この私が遼くんのことを好きで、あの夏祭りの日に実は告白をしようとしていたって知って、幼馴染の私に対して驚愕するばかりだったみたい。

 

 それを聞いていた私は、その事を嬉しく思うべきかで思い悩んでいた。理由は、やっと私の気持ちに遼くんが気づいてくれたけど、ふとあの場面を思い出してしまうと、どうしても嬉しくなれないから。

 

 

「そしてそう考えていくうちに理解出来た。曜は、俺のことが好き。そういうことなんだよな?」

「……嬉しい。やっと気づいてくれたんだ」

 

 

 そういう気持ちがあるのに、私は嘘を吐いた。

 嘘の笑顔を浮かべ、ニコッと微笑む。

 

 すると彼が口にした言葉の中で、少し頭に引っかかる言葉を聞いた私は、しばらく考えたのち、ひどく荒れ気味に愕然としてしまった。

 

 

「なんつうか、本当驚いた」

「もう。それ何回言ってるの?」

「だって、そりゃあ驚くさ。なにせ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()お前のことが()()』だからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ〜ん…………………………えっ?」

 

 

 その瞬間、私は言葉を失った。

 

 えっ?遼くんが、私のこと……『好き』?

 私の頭の思考が全くもって追いつかない。遼くんの発した言葉において、私は彼に尋ねた。

 

 

「遼、くん……?」

「何だ?何か聞きたいことあるのか?」

「う、うん。ごめんね遼くん、さっき何言ってたのか聞き取れなかったから、もう一度いい?」

「あぁ!?なんだ聞いてなかったのか。はぁ、仕方ないな。もう一度言うからちゃんと聞いとけよ?」

「う、うん……」

 

 

 遼くんが何を言ったのかはっきりさせるために、私はわざと聞き取れなかったと彼に告げる。

 彼はそれを聞いて頭を掻き、思わず呆れた表情を見せる。けど、遼くんはどことなく恥ずかしそうな雰囲気があって、それを見た私は心臓が『ドキッ』と、ふいに鼓動が早くなる。

 

 

「すぅ……はぁ……」

「…………」

 

 

 遼くんの顔が赤くなっている。

 多分、彼もドキドキしてるんだ。

 

 深呼吸をして、心を落ち着かせている彼を見る限り、遼くんは覚悟を決めているみたい。

 だから私も、心から受け止める。

 遼くんから発せられる、私への告白を。

 

 そして、さっき遼くんが言い放った言葉は本当のことだったんだってことが、今ここではっきり理解することが出来た瞬間だった。

 

 

「俺は曜ことがずっと前から好きだった。いつからかは覚えていない。いつの間にか好きになってた。だから、俺と、付き合ってください」

「…………っ!」

 

 

 

 ギュッ!

 

 

 

「おわっ!?よ、曜!?」

「嬉しい……!嬉しいよ遼くん……っ!」

 

 

 彼が最後に言い放った言葉と同時に、私は防波堤に立って告白してくれた遼くんに抱きついた。

 

 私と遼くんは“両想い”

 

 その事実が分かっただけで、私はいても立ってもいられないくらいに嬉しくて、現に涙を零しているくらいに嬉しかった。

 いきなり私に抱きつかれた遼くんは、不覚に驚きを隠せない。ただそれでも彼は、私を優しく抱いて包み込んでくれた。

 

 暖かく、私を受け入れてくれていた。

 

 

「嬉し過ぎて、泣いてるのか?」

「うん。嬉しいから泣いてるの」

「そうかい。なら、満足するまで泣け」

 

 

 私の頭を何度もゆっくり撫でてくれる遼くん。

 なんか私、早速彼に甘やかされる気分。

 

 でも彼が言うから、私は思う存分に泣いた。

 『号泣』までは流石にそこまではいかないけど、自分の想いというか、“両想い”という事実に、私は嬉しくて嬉しくてたまらなかった。

 

 

「どうだ?もうそろそろ大丈夫だろ?」

「うん……。もう大丈夫」

 

 

 私はそれからしばらく彼の暖かさの中で泣いて、5分くらい泣いたあとで私はやっと落ち着きを取り戻すことが出来た。

 涙を自分で拭い、私の頭を撫でてくれている彼の方に目線を送ると、私の視線に気づいた遼くんは私を見かねて様子を伺ってきてくれた。

 

 

「どうした?気分でも悪いのか?」

「ううん。遼くんに、1つだけ聞きたいことがあるんだけど、聞いていいかな?」

「あぁ。別に構わないが……」

 

 

 その質問に私は答え、今度は私が遼くんに聞きたいことがあると言って話を切り出す。

 遼くんには、ず〜っと聞いておきかったことだ。あの日あの時、彼は彼女と一体何をしていたのかを私は尋ねた。

 

 

「あのね、“夏祭り”のことなんだ……」

「えっ?夏祭りのとき?」

「ライブの後のことでさ、遼くんは梨子ちゃんと、なんの話をしていたの?」

「……!あそこにいたのか?」

「…………うん」

 

 

 思わぬ質問に、驚きを隠せない遼くん。

 

 それもそのはず。私は、遼くんと梨子ちゃんから少し離れたところで話を聞いていたから。

 遼くんにも彼女にも目が届かない場所で私は隠れてたから、遼くんが驚くのも無理もないかも。

 

 

「う〜ん……」

 

 

 彼は驚いたそのあとで、一思いに悩み出す。

 どこか彼のなかで、これを私に話してもいいのかという迷いがあるのかもって私は感じていた。

 

 すると遼くんは悩みの末、私に視線を向けては口を開き、私がした質問について1つだけ私に対して尋ねてきた。

 

 

「曜。これは話さないとダメか?」

「うん。ちゃんと話してほしい」

「……そうか」

 

 

 その質問に、私は即答。

 

 遼くんは頭をまたポリポリと掻き、頭を下に俯かせたけれども、思いのほか遼くんのなかでは、私に対しては話をしようという覚悟を決めたような言葉だった。

 

 

「じゃあ、話すよ」

「うん……」

 

 

 その重みある言葉を聞き、心を引き締める私。

 目を瞑らずにゆっくりと1つ深呼吸をした後に、彼は私に向かって口を開いた。

 

 

「話していたのは、梨子の“ピアノ”の話さ」

「……えっ?梨子ちゃんの……ピアノ?」

 

 

 彼の口から出てきた言葉は『ピアノ』

 『梨子ちゃん』と『ピアノ』というのキーワードを聞いて、私は『ハッ』と思い返し、思い出さずにはいられなかった。

 

 梨子ちゃんはスクールアイドルを始める前から、小さい頃からピアノをやっていたことに。

 

 

「そっか!梨子ちゃん、スクールアイドルを始める前からピアノをやってたって話をしてたね!」

「あぁ。それであの時に梨子から相談されたんだ。『ピアノをまた始めたいから、そのために少しだけ手伝って欲しい』ってね」

「そういうことだったんだ……」

 

 

 今の会話の流れではっきり分かった。

 

 私は、ただただ勘違いをしてただけだった。

 ちょこっとの会話の部分だけを聞いてはそう決めつけて、あんな早とちりしてしまったあの時の私に叫んで怒ってやりたい気分。

 

 本当に、私はつくづくバカ曜だ……。

 

 

「まだこれから先のことだけど、梨子がまたピアノを始めたいって言うなら、俺はあいつに協力する」

「そうだね。私も力になれるかな?」

「なれるさ。梨子もきっと喜ぶ」

 

 

 ピアノは、私もよく分からないことが多い。

 だけど、しばらくピアノから遠ざかっていた梨子ちゃんがまた始めるって言うなら、私も梨子ちゃんの力になってあげたい。

 梨子ちゃんはAqoursの作曲もして大変だから、少しでも楽にしてあげたいと私は思った。

 

 そう考えたあとで、私は彼に話を切り出す。

 あの話は、まだ終わっていないから。

 

 

「それでさ、さっきの遼くんの告白、私もそろそろ答えないとだね?」

「あぁ、そうだったな。ぜひ聞かせて欲しい」

「うん。分かった……」

 

 

 彼にそう告げて、私は深呼吸を1つする。

 

 

 ドクン!ドクン!ドクン!ドクン!

 

 

 心臓の鼓動が早くて、どうにかなりそう。

 彼の告白に対して返事をするだけなのに、自然と身体が震えて緊張してしまっていた。

 

 でも、私が話さなきゃ何も変わらない。

 言う……言わなきゃ気持ちも、伝わらない。

 

 

「………………っ!」

 

 

 伝えなきゃ!私の気持ちを、遼くんに!

 

 

「私は!渡辺曜は!遼くんのことが、大好きです!だから、私と付き合ってください!」

「……………………」

 

 

 あ、あはは。打ち明けちゃった……。

 ずっと大好きだった遼くんに、『大好き』であるこの気持ちを打ち明けちゃった。

 

 でも今更、後悔は全くないよ。

 気持ちを伝えなきゃ、遼くんに伝わらないから。

 

 

「……………………」

 

 

 正面に立ち、私の告白に彼は口を開かない。

 ただ明らかに変化したのは、遼くんの表情だ。

 

 真っ直ぐ、真剣な表情で私を見つめていた彼は、私の告白を境に、ホッと安心したような、もの凄い満面な笑顔に変わった。

 

 

 ギュッ

 

 

「……っ!」

 

 

 そうやって、今度は彼から抱きしめられる。

 私より大きく、私より長い2つの腕が、小さな私の身体を優しく包み込んでくれた。

 

 そして遼くんは、私の耳元で呟いた。

 その言葉に私は、また涙を流すことになる。

 

 

「曜。俺たち……『恋人』になろう」

「……っ。うん…………うんっ!」

 

 

 嬉しかった。ただただ嬉しかった。

 嬉しくて言葉を失って、私は言葉を発することもままならなかった。

 

 でも何より、私の恋が実った。

 遼くんへの恋が、報われた瞬間だった。

 

 

「あはは。お前泣きすぎだ」

「だって……嬉しいんだもんっ!」

「まぁな。俺も曜と恋人になれて、嬉しい」

 

 

 私も遼くんも、お互い嬉しそうに言葉を交わす。

 いつでもどこでも一緒だった彼と、更に近い距離でいられる。そう思っただけで胸が熱くなって、顔も自分でも分かっちゃうくらい赤かった。

 

 すると、遼くんは私に口を開く。

 

 

「それでまぁ、俺たちは晴れて“恋人同士”になれたわけだが、この後どうする?ちょうどお昼頃だし、2人でどこか食べにでも行かないか?」

「……っ!うんっ!2人で行こう!」

「よし。決まりだな!」

 

 

 私をお昼ご飯に一緒に誘ってくれる遼くんに、私は笑ってそれを快く受け入れた。

 それで私の答えを聞いた彼は私の手を握り、満面に微笑んで防波堤を降りていく。必然として、私も遼くんに連れられるように防波堤を降りる。

 

 一見して、彼はただ一目散に走り出した感じではなかったから、私は遼くんに1度尋ねてみる。

 

 

「ねぇ!どこに行くの!?」

「決まってるだろ!店だよ店!一応2人で行くならって考えて決めてたんだ。多分、曜なら気に入ってくれるお店だと思う」

「本当!?それならすごく楽しみ〜!」

 

 

 どうやら遼くんは、私のためにお昼を考えていてくれていたらしいんだ。もちろん私はそれがとても嬉しくて、一体どんなお店に連れて行ってくれるんだろうという気持ちが、胸一杯にあった。

 彼の大きな背中は、私が見ていた中で1番大きく感じた。何というか、私を守ってくれるその心強い背中だった。

 

 私、遼くんの彼女になれて……幸せ♡

 

 

「ねぇ、遼くん!」

「んっ?なんだ?」

「私、遼くんが大好き!」

「……フッ。あぁ、俺もだ」

 

 

 そう言い合って、お互い一緒に笑い合う。

 私はこれから、遼くんと一緒に楽しい時間を過ごすことが出来るようになった。

 

 楽しい時も、悲しい時も。

 

 一瞬一瞬のこの時を、これから遼くんと過ごしていくときはとても大事にしていきたい。

 

 そう心に決心した、私……渡辺曜だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………ふぇっ?」

 

 

 曜ちゃんが遼くんと付き合い始めたということを知ったのは、曜ちゃんと遼くんが付き合い始めてのすぐのことだった。

 

 というか、曜ちゃんからそう教えられた。

 何故なら、みんなの前でその話をしたから。

 

 

「りょ……遼さんと付き合う〜!?」

「うん!まぁ2日前のことだけど……」

「へぇ〜!おめでとう曜!」

「えへへっ!ありがとう果南ちゃん!」

 

 

 練習を始める目前だ。曜ちゃんがみんなに対し、そんな話を持ちかけたのがきっかけ。

 果南ちゃんや他のみんなは、曜ちゃんが遼くんと付き合い始めたことに驚きに満ちていたけど、すぐにみんなは、お祝いの言葉を述べた。

 

 

「おめでとう!曜ちゃん!」

「うん!ありがとう梨子ちゃん!」

 

 

 雰囲気は明るい。恋愛が成就した曜ちゃんに対して、みんなはお祝いムードで接していた。

 

 

「……………………」

 

 

 それなのに私は、嬉しそうに笑顔を見せている曜ちゃんに対して、どんな声をかければいいのか全然分からなかった。

 むしろ何より、その事実に胸が痛かった。

 

 どうして胸が痛くなっているのかなんて、私でさえもよく分からなかった。理解出来なくて、戸惑いの表情になっている私がいた。

 

 

「……?千歌ちゃん?」

 

 

 そしたら突然、曜ちゃんに声をかけられる。

 私の表情を見かねてた曜ちゃんは、私の顔を覗き込むようにして私の名前を呼んでくれた。

 ただ、私は曜ちゃんの声に驚いてしまった。

 

 それ以上に、自分の胸が痛いことに驚いて、そればっかりに集中して考えていたから。

 

 

「わっ!よ、曜ちゃんか……」

「どうしたの?なんか千歌ちゃん、ずっと考えごとでもしてるような感じだったけど……」

「う、ううん!何でもないから大丈夫!」

 

 

 だから慌てて、私は曜ちゃんを安心させるためにそんな風に話をして落ち着かせる。

 周りにはみんなが私を見ている。だから私は一旦気持ちを切り替えられるように一度深呼吸をした。

 

 

「すぅ……はぁ……」

 

 

 今日は遼くんはいない、部活でね。

 

 でもそんな幼馴染み同士が恋人同士になるなんて私は思ってもいなかった。本当なら、果南ちゃんのように曜ちゃんを祝うべきなんだろうけど……。

 

 

 ズキッ ズキッズキッ!

 

 

「……っ」

 

 

 この胸の痛みの原因が自分でも分からないから、正直、曜ちゃんの恋愛の達成にお祝いをしていいのかでさえ分からなかった。

 

 

「でも、おめでとう曜ちゃん。ずっと遼くんのことが好きで、やっと自分の想いを打ち明けられて恋人同士になれた。良かったね!!曜ちゃんっ!」

「……っ!ありがとう、千歌ちゃん!」

 

 

 でもそれでも、大切な友達の恋愛を祝わないわけにもいかなかった。

 だから私は曜ちゃんの両手を手に取り、曜ちゃんに『おめでとう!』と伝えた。そしたら曜ちゃんは感極まって、私に勢いよく抱きついてきた。

 

 曜ちゃんにとっては、私から言われること自体に嬉しそうに感じているようだった。

 けど、わたしの心はスッキリしなかった。

 

 なんでだろうね?

 私にも、全然わかんないや……。

 

 

「曜さん……」

「あっ、ダイヤさん……」

 

 

 するとそのとき、曜ちゃんの背後からダイヤさんが声をかけてくる。ダイヤさんの話し方とその真剣な表情を見た私は、曜ちゃんに対してダイヤさんがどんな話をするのか何となく分かった気がした。

 

 けれどもダイヤさんが口にした言葉に、私たちも曜ちゃんも驚きの表情に様変わりした。

 

 

「本来なら、私は『スクールアイドルはアイドルと同様に“恋愛”は禁止!』と言うつもりでした」

「えっ……?」

「でも恋人が遼さんであるなら、私が心配することでもないでしょう。良かったですわね、曜さん」

「……っ!ありがとう、ございます!」

 

 

 いつも誠実で他人にも厳しいダイヤさんまでもがにこやかに笑って、曜ちゃんの恋愛に対して祝福の言葉を口にする。

 それは私たちからしてみれば、とてつもなく意外な光景だった。

 

 でもダイヤさんが曜ちゃんの恋愛を許した1番の理由。それは、曜ちゃんの“彼氏”が遼くんという、みんなが知っている“友達”だから。

 きっとこれが見知らぬ人だったら、ダイヤさんはカンカンに怒って、『ブッブーですわ!』って言い張っているんじゃないかな?

 

 うん……ダイヤさんならしかねない。

 

 

「幸せになるのですよ」

「はいっ!ありがとうございます!」

「……………………」

 

 

 ただ、遼くんと曜ちゃんが付き合うって聞いた時は、私は2人のことをすごく羨ましいなってさえ、そう感じていたんだ。

 Aqoursの中では1番にファンが多くって、そんな曜ちゃんが幼馴染みの遼くんと付き合う。

 

 多分この私の胸の痛みは、きっと2人が付き合い始めることで、私も早く『()()()()()()()()()()()()なのかもしれない。

 それがそうじゃなかったら、こんなにも自分の胸がズキズキ痛くなるはずがない。

 

 きっとそうだ。そうだと……信じたい。

 

 

「じゃあ、今からみんなで練習だね!」

「そうですわねっ!では皆さん、今日も張り切っていきましょう!」

「練習、頑張るずら〜!」

「おぉ〜!!!」

 

 

 そうして私が心配事で考えていると、そう言って果南ちゃんが先頭に立ち、みんなに練習を始めようと促す。

 それを機にみんなは、ぞろぞろと部室を出ていき屋上へと足を運んでいった。

 

 

「では、先に行ってますわよ」

「はい!私も後から行きます!」

 

 

 そしてダイヤさんが部室を出て、みんなが屋上へ向かっていったのを最後に、部室に残っているのは私と曜ちゃんの2人だけだった。

 

 

「千歌ちゃん、みんな行っちゃったよ?」

「…………うん」

 

 

 みんなが屋上に行っちゃったなかで、私は部室にポツンと佇んでいた。そんな私を気遣い、声をかけてくる曜ちゃん。

 私がまだ部室にいることに驚いている感じでさ、でも逆に私は、どうしてまだ曜ちゃんもいるのって思っちゃったり……。

 

 ううん、思わずにはいられなかった。

 

 

「それは、曜ちゃんもだよ……」

「あっ……あはは……」

 

 

 私がそう言うと、曜ちゃんは困った顔で笑う。

 それで頭をポリポリと掻き始めたそんな曜ちゃんに、私はゆっくり近づいて右手を伸ばした。

 

 

「曜ちゃんも、早く屋上に行こう?」

 

 

 笑みを浮かべて、曜ちゃんに右手を伸ばす。

 別に……寂しいと思ってるわけじゃない。

 

 ただ、今こうして目の前にいる曜ちゃんなのに、遼くんと付き合い始めたって知った瞬間、なんだか曜ちゃんがだんだん遠くに行っちゃうような感じがして、すごく嫌なの……。

 

 私にとって『特別』な曜ちゃんが、千歌の前からいなくなっちゃうような気がして……って、千歌、やっぱり寂しいって思ってるじゃん。

 

 

「……一緒に、屋上に……」

 

 

 そう言いかけた私に、曜ちゃんが口を開いた。

 

 

「ごめん、千歌ちゃん!」

「……っ!?」

 

 

 部室中、下手をすれば屋上にいるみんなにまで響きそうなくらいの大音量。両手を顔の前で合わせる曜ちゃんは、私に次の言葉を言ってきた。

 

 

「私ね、ちょっと用事があるから、少し練習に遅れちゃうんだ……」

「えっ!?そ、そんなぁ……」

「千歌ちゃん、本当にごめん!」

 

 

 つい曜ちゃんのその言葉に、私はものすごい落胆をしてしまう。

 曜ちゃんが私の手を取ってくれて、それで一緒に曜ちゃんと屋上に行こうと思っていたのに、用事があると言われてしまった。

 

 けど、用事ってなんだろう?

 

 

「そう、なんだ。でも用事って……?」

「それもごめん千歌ちゃん。ちょっと千歌ちゃんには言えないことなんだ……」

「…………そう、なんだ」

 

 

 聞いてみたけど曜ちゃんは口を開かず、手を合わせてそういう風に言葉の一点張りだった。

 

 

 何度聞いても仕方ない、かな……。

 

 

 そう感じ取った私は、自分が伸ばした手を悔やみながら降ろしたあとで、曜ちゃんに笑顔を浮かべて口を開き、話を切り出した。

 もうこれ以上曜ちゃんには、迷惑をかけたくないからね。

 

 なにせ曜ちゃん、遼くんと“付き合ってる”から。

 

 

「そっか。分かった!先にみんなで練習始めてるから、早く来てね!待ってるから!」

「……うん!私も早く済ませて行くよ!」

「じゃあ、屋上で!」

 

 

 そういうやり取りをしては、私は曜ちゃんに手を振り、曜ちゃんを置いていく形で部室を出て行く。

 みんなを、屋上でずっと待たせないために、私は走って屋上へ向かっていった。

 

 

 本当、曜ちゃんの()()ってなんだろう?

 屋上に向かう途中、それがず〜っと気になって、ず〜っとそれが頭から離れなかった。

 

 

 

 タッタッタッタッ!

 

 

 

「……………………はぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり……()()()()よね?」

 

 

 

 






ということで、この第9.5話のようなお話が
終わり、次回から皆さんが長らく待っていた
であろう『第10話』に移っていきます!

皆さんごめんなさい。
こんなに長々と脇道に逸れちゃってw


次回も是非、楽しみにしててください!
感想や評価等、お待ちしています!


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