少年と少女達の輝き目指す物語   作:キャプテンタディー

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どうも、キャプテンタディーです。
だいたい1ヶ月ぶりですね。
長い間待たせてしまってすみません。

今回も前回からの続きです。
是非最後まで見ていってください
それでは、本編をどうぞ!




#49 衝突

 

 

 

 

 

 

「えっ?果南たちについて?」

「そう!遼くん何か知らないかな?」

「突然そう言われてもな……」

 

 

 部活終わりで疲れた身体をベッドで休ませていたときに、部屋にやって来た曜が、果南たちについて俺に尋ねてきた。

 というのも、今日の千歌たちは朝練でも放課後の部活でも、果南やダイヤや鞠莉姉の3人のことを、ずっと考えていたらしい。

 

 でも特に、果南についての話ばかりだ。

 

 

「少しだけでもいいから、お願い!」

「両手を合わせてお願いされてもなぁ……」

「おねが〜い!」

 

 

 正直、俺でさえ果南がスクールアイドルをやめた理由を知らない。なのに曜は、千歌たちは、果南たちの真実を突き止めようとしている。

 ダイヤがあいつらに自分たちの過去を全て話したことが、ことのきっかけなのは間違いないけど、今の果南が全てを話してくれるはずがない。

 聞きに行けば、追い返されるのが目に見える。

 

 

「悪いが曜、俺はお前に話せることはないよ」

「そんなに話したくないことなの?」

「違う、そういう事じゃない。俺もお前たちと同じように、果南がどうしてスクールアイドルをやめたのかは知らないんだよ」

「えっ?本当なの?」

「俺が嘘ついてるように見えるか?」

 

 

 やれやれ。本当のことを言ってるのに嘘をついてるように見えるか?

 まぁ実際、俺は嘘をついているんだけどね。

 

 

「……見えない。じゃあ遼くんも果南ちゃんたちについては、私たちと同じくらいの事しか分からないってことだね?」

「そういう事だ。悪いけど、曜たちが求めてることに俺は答えられないや」

「そっか……」

 

 

 俺の本心で言えば、曜たちには果南たちの真実を話したいと思ってはいた。

 でもそれは、俺の中では何となくダメなような気がした。ダイヤは千歌たちに話したけれど、俺からは何も言ってはいけないような気がしたのだ。

 

 

「遼くんなら知ってると思ってたのに……」

「悪りぃな。俺の情報不足で……」

「ううん。遼くんは悪くないよ。私たちの勝手で遼くんに聞いてみようってなっただけなんだから」

 

 

 話の流れがそっちに傾いている。

 俺が考えているのは、俺から話さなくても、彼女たちが求めてることに気づかせてやればいいのかもしれない。けれどそれが、簡単に上手く行くことも保証は出来ない。

 

 

「そんなに果南が気になるのか?」

「うん。特に千歌ちゃんがね」

「またあいつか。まぁ、しょうがない」

 

 

 ここまで来ると、もう仕方ないのかな?小さい頃からずっと遊んでいた仲だし、それでこそ、まさに幼馴染みたる所以ってやつなんだろうな……。

 

 

「よし。じゃあ俺も、千歌たちが求めてる果南たちの過去に付き合ってやるか」

「えっ?本当!?」

「俺も果南とは幼馴染みだ。あいつを気にしない事なんてないからな」

 

 

 俺も実際、あいつには話したい事が山程ある。

 ダイヤに言い放ったあの言葉のせいで、俺は果南を許そうなんて思わなくなったんだからな。

 

 何もかも全部、あいつのせいだ。

 

 

「じゃあ手伝ってくれるんだね!?」

「あぁ。もちのろんだよ」

「わぁい!ありがとう遼くん!」

 

 

 曜は俺が手伝ってくれることに嬉しくなって、俺に盛大に抱きつく。

 なんだか最近、曜がやけに俺に抱きつく事が多くなってきたような気がする。けど、それが千歌たちからの感謝だと考えれば、これくらいはいいかと、俺は曜とともに笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日

 

 遼くんも果南ちゃんの事で手伝ってくれることに歓喜した私たちは、果南ちゃんの素性を確かめるためにあることを決行した。

 

 それは果南ちゃんへの『尾行』である。

 とても千歌ちゃんらしい思いつきだった。

 

 

「んんっ!はぁ〜!」

「いたよ。果南ちゃん」

「まだマル眠いずら……」

「しっかりしなさい、ズラ丸」

 

 

 果南ちゃんがすぐ目の前にいる最中で、私たちは淡島マリンパークの看板の陰に隠れて、じっと果南ちゃんを観察していた。

 そんな時、彼は警戒しながら話す。

 

 

「おい千歌。本当にこれでいいのかよ?」

「そうよ。こんなに大人数でいったらいつ気づかれてもおかしくないわよ?」

「大丈夫大丈夫!何とかなる!」

「おいおい。大丈夫なのかこれ……」

 

 

 梨子ちゃんも、遼くんの話と重ねて千歌ちゃんにそう言うけれど、果南ちゃんを尾行することに夢中な千歌ちゃんは、あんまりそんなことを気にしてはいなかった。

 

 その時、果南ちゃんに動きがあった。

 準備運動を終えて、ランニングを始めた。

 

 

 タッタッタッタッタッ!

 

 

「あっ、果南ちゃん走り始めたよ!」

「バレないように追いかけよう!」

「「「「「うん!」」」」」

「……バレないといいな……」

 

 

 私たちは果南ちゃんにバレることがないように、物陰に隠れながら尾行を始めた。

 さり気なく心配そうにそう呟いた彼も、私たちの最後尾から遼くんは果南ちゃんを追いかけた。

 

 ただ、私たちが果南ちゃんを追いかけるのは想像以上に過酷なものだった。

 マリンパークバス停から出発した果南ちゃんは、三津三叉路を通り、三の浦観光案内所がある長浜のバス停を通るという、私たちが走る距離をも遥かに超える距離を、果南ちゃんは走っていた。

 

 

「しっかし、果南は早いなぁ……」

「一体……どこまで走るつもり?」

「もうかなり走ってるよね?何キロくらい?」

「もうかれこれ“2km”だ。余裕だろ?」

「そ、そんなに……」

 

 

 遼くんの感じる2kmと、私たち6人が感じる2kmは全くもって違かった。

 遼くんは私たちと同じように2kmを走ったとしても、全く疲れを感じていなかった。私たちが疲れているのを見て、ぶっきらぼうに呆れていた。

 

 

「も、もうだめずら……」

「花丸ちゃ〜ん!しっかりして〜!」

「クックックッ。こんなことで疲れるなど、ヨハネにとっては全く問題など……」

「足ガクガク震えてるぞ、善子」

「だからヨハネ!」

 

 

 足が小刻みに震えている善子ちゃんに対しても、涼しい顔をして指摘する遼くん。彼がこんな風なのは、朝に果南ちゃんと一緒にランニングをしているからだと思うし、遼くんは学校の部活でサッカーもしている。

 彼の努力してきたことが、私たちの目の前で体現されているかのように、私は感じることが出来た。

 

 それからまたしばらく果南ちゃんを尾行し続け、私たち7人が辿り着いた先は『弁天島』だった。

 

 

「ハァ……ハァ……」

「もう、足が動かない……」

「みっともねぇなぁ〜お前ら」

「遼くんは疲れてないの?」

「3kmくらい、俺は全然疲れないよ」

 

 

 マリンパークのバス停から弁天島まで約3Km。

 それなのに彼は、私たちに対して全く疲れた様子を見せなかった。

 もしかしたら私も、今の遼くんみたいに頑張れば走れるようになるのかな?

 

 気になる。ものすごく。

 

 

「ねぇ遼くん」

「んっ?曜どうした?」

「遼くんって、毎朝何キロ走ってるの?」

「わ、私も気になります!」

「聞かせて遼くん!」

 

 

 私以外のみんな、特にルビィちゃんや千歌ちゃんが遼くんに差し迫って尋ねていた。

 2人にキラキラした目をされて、その質問に答えようか悩む遼くんは頭を掻いて視線を逸らしていたけれど、彼はやむなしに答えた。

 

 

「……しばらく前までは5Kmくらい走ってたけど、今はだいたい10Kmは走ってるな」

「じゅ、10kmですって!?」

「そんなに走って大丈夫なの!?」

「あぁ。特に問題はないよ」

 

 

 その答えに私たちは、とても衝撃を受けた。

 でも話によれば、サッカー選手は90分の中で行う試合の中で、1試合大体10kmくらい走るらしい。

 だから遼くんはもっと練習に励もうと、今までは5kmを走っていたのを、倍の10kmにしたみたい。彼の中には、全国の舞台で最初の11人に入ることを目標にしているようだった。

 

 それと同時に、彼の口から発せられる言葉の数々には、何かしらの()()がありそうに思えた。

 私には分からないけど、そんな感じがした。

 

 

「そんな事より、先に果南を尾行するのが先だろ?早く追いかけないと見失っちまうぞ」

「そうだった!みんな、急ごう!」

 

 

 遼くんが一通りに話を終えたところで、彼自身が本来の目的を指摘すると、千歌ちゃんはその言葉に『ハッ!』と我に帰って、果南ちゃんがそこにいるであろう弁天島へとみんなで足を運んだ。

 

 

「ハァ……ハァ……」

 

 

 入り口で少しばかり休んだものの、弁天島へ続く階段は淡島神社前の階段並みに段数があって、頂上に着く頃にはまたみんなは疲れ切っていた。

 それで千歌ちゃんが弁天島の神社に視線を向けると、目の前に見える光景に声を上げた。

 

 

「あっ……」

 

 

 あまりにも衝撃的だったのか、千歌ちゃんの声はあまりにも素っ気なく、何を見てそんな声を上げたのか私たちは全く分からなかった。

 だからみんなで木の陰に隠れ、千歌ちゃんが見ている方向へ目を向けると、そこには驚くべき行動をしている果南ちゃんの姿があった。

 

 

「綺麗……」

 

 

 千歌ちゃんは思わず感嘆の言葉を漏らす。

 果南ちゃんは、神社の前で軽やかに踊っていた。

 

 

「踊ってるな。あいつ……」

「うん。確かにすごく綺麗……」

 

 

 爽やかな汗を煌びやかに撒き散らして、私たちが隠れて見ていることを知らない果南ちゃんは、笑顔でステップを踏んだり、ターンをしたり、ダンスというものを知っているかのような動きだった。

 私を含め、みんなは目を奪われていた。

 

 ただ彼は、果南ちゃんを冷酷な目で見ていた。

 

 

「……………………」

「……遼くん?」

「んっ?どうした?」

「うっ、ううん!何でもない!」

 

 

 尋ねられなかった。

 軽蔑しているというか、果南ちゃんに対して憤りを抱いた目をしていた遼くんに対して、私は尋ねるのが怖かった。

 

 そんな時だった。

 

 

 パチパチパチパチ!

 

 

「「「「「「「……っ!?」」」」」」」

 

 

 神社の方から、誰かが果南ちゃんに対して拍手をする音が聞こえてくる。

 ふと果南ちゃんの後ろにある神社に目をやると、そこには浦の星の理事長、鞠莉さんがいた。

 

 どうやら鞠莉さんが、果南ちゃんに向けて拍手をしたんだろうとその時の私はすぐに理解できた。

 私たちは鞠莉さんが現れたことに驚きながらも、果南ちゃんと鞠莉さんのやり取りに耳を傾けた。

 

 

「復学届け、提出したのね」

「まぁね。お父さん、帰ってきたから」

 

 

 果南ちゃん、学校復学するんだ。

 

 

「やっと逃げるのを諦めた?」

「勘違いしないで!学校を休んでたのは、お父さんの怪我が原因。それに復学してもスクールアイドルはやらない!」

「私の知っている果南は、失敗したとしても、笑顔で次に向かって歩き出していたわ。成功するまで、諦めなかったわ!」

 

 

 果南ちゃんと鞠莉さん。2人のやり取りを聞いていると、やっぱり果南ちゃんには、何かしら原因はありそう。

 もしかしたら、この話を聞いていれば千歌ちゃんが気になっていたことが分かるかもしれない。

 

 千歌ちゃんも同じくして、みんなも同じ事を考えながら2人の様子を見守っていたとき、果南ちゃんが鞠莉さんに話を繰り出す。

 その果南ちゃんの言葉に、鞠莉さんはもとより、私たちは驚きを隠せなかった。

 

 

「卒業まであと1年もないんだよ……?」

「それだけあれば十分!それに今は後輩もいる」

「だったら千歌たちに任せればいい」

「果南……」

「鞠莉、どうして戻ってきたの?私は、戻ってきてほしくなかった!」

「……っ!」

 

 

 まるで果南ちゃんのその言葉は、鞠莉さんを強く突き放すかのような言葉で、言葉を間に受けた鞠莉さんは、メンタル的に深いダメージを受ける。

 

 それでも鞠莉さんは、果南ちゃんに対抗しようとするけれど、果南ちゃんが一方的に鞠莉さんに言い放っていた。

 私たちでさえ、見ているのが辛いくらいに……。

 

 

「果南!フッ、相変わらず果南は頑固者……」

「もうやめてっ!」

「……っ!果南……」

「もうあなたの顔、()()()()()の!」

「……………………」

 

 

 果南ちゃんがそんなことを言うなんて、この時の私たちは思いもしなかった。

 鞠莉さんに対して嫌悪を撒き散らした果南ちゃんは、私や千歌ちゃん、それから遼くんが知っているような果南ちゃんではないように感じた。

 

 あまり、こういうことを信じたくはないけれど、目の前で起こっていたのは現実だった。

 『酷い』としか、言いようがなかった。

 

 

「じゃあね……鞠莉」

「やばっ!こっちに来るわよ!」

「一旦逃げよう!早く!」

 

 

 すると果南ちゃんは、鞠莉さんをそのままにしてこっちに歩いてくる。

 バレてはないけど、果南ちゃんに今の話を聞いていたことがバレたら大変なことになる。1時間以上も果南ちゃんから説教をもらうかもしれない。

 

 だから私たちは一旦この場から離れ、果南ちゃんに見つからないように階段を駆け下りた。

 千歌ちゃんの表情を見てみると、今の2人のやり取りよりも果南ちゃんのことを気にしていた。表情を強張らせて、ずっと何かを考えていた。

 

 

「果南さん、酷い……」

「何だか理事長が可哀想ずら……」

 

 

 勢いで弁天島の入り口まで下りてきた私たちは、果南ちゃんと鞠莉さん、2人の話についてどんよりとした雰囲気で話し合っていた。

 尾行を通じて、分かることもあった。

 

 

「なんか、やっぱり何かありそうだね」

「うん?そうとしか思えないわ」

 

 

 色々と気になる果南ちゃんの言動。

 果南ちゃんの本当のことを知ったら、きっと千歌ちゃんは行動に移すと思う。

 私と一緒で、“幼馴染み”だから。

 

 

 それに、遼くんだってきっと……

 

 

「……ってあれ!?遼くんは!?」

「本当だ!遼さんがいない!?」

 

 

 私は遼くんがいる背後に視線を配ると、そこには彼の姿がどこにも見当たらなかった。

 私はそのことに驚いて声を上げれば、必然とみんなも彼の姿がないことに驚きの声を上げ、特に千歌ちゃんは私以上に驚いていた。

 

 

「ま、まさか……!?」

 

 

 遼くんがいないことに対して、そんな声を上げる梨子ちゃん。

 もしかしたら遼くんは、果南ちゃんに対して何かしらの行動を起こしに行ったのかもしれない。

 

 あまり悪い意味で考えたくはないけど、遼くんが果南ちゃんを見つめる目つきがとても冷酷だった、悪い目つきをしていた。それがこの場にいない意味を表しているように、私は思えた。

 

 それで梨子ちゃんがみんなに話す。

 

 

「早く遼くんを連れ戻さないと!」

「そうですね!早く連れ戻さないと果南さんに見つかって、尾行していたことがバレちゃいますし!」

 

 

 遼くんを連れ戻さないと、果南ちゃんに尾行していたことがバレてしまうとね。

 でも、それについて私は違う意見を述べた。

 悪い意味じゃなく、いい意味で。

 

 

「ダメだよ。みんなでまたさっきの場所に戻ったら、逆に果南ちゃんにバレちゃうと思う」

「そ、それはそうだけど……」

 

 

 わざわざ果南ちゃんにバレてしまう行動をしてはいけないのは、私も十分に理解している。でも彼のことだから私は、遼くんが何とかしてくれるんじゃないかって期待しているの。

 

 抽象的で変な理由かもしれない。

 でも私は、遼くんを信じてるんだ。

 

 

「遼くんを信じてみよう?」

「そうだね!!曜ちゃん!」

「千歌ちゃん……」

「遼くんも分かってるはずだよ。だから、遼くんに任せてみよう?」

「……そうね」

 

 

 梨子ちゃんが遼くんを心配しているのは私も分かっている。でもだからこそ、遼くんも私たちのことを気にしていると思うんだ。

 

 とにかく信じる。遼くんをね!

 

 この後に私たちは、ここにいたらまた果南ちゃんにバレちゃうんじゃないかって話になって、一先ず私たちは弁天島を離れることにした。

 彼を置いていく形にはなっちゃうけど、彼の考えもあると思うからきっと大丈夫……だよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これでいいんだ。これで……。

 

 鞠莉に『顔を見たくない!』と告げたあと、私は鞠莉を背にして弁天島をあとにする。

 私がここで鞠莉がいる方向に振り返ったら、そこにいる鞠莉の表情を私はまともに見れないと思う。

 

 でも、これは全部鞠莉のため。

 こうまでもしないと、鞠莉はずっと今後私を追いかけてくると思う。大きく分厚い1枚の壁を隔てて、鞠莉が近づいてこないようにしないと……。

 そして海外から戻って来ては、今更またスクールアイドルをしようなんて……。

 

 そんなの……絶対に……

 

 

「おい、果南」

「……っ!」

 

 

 弁天島から降りる階段を下っていた時、馴染みのある声が私の背後から聞こえてくる。

 けれどもその馴染みある声はとても低く、とても威圧的な声だった。

 

 

「随分な言いようだな」

「遼……」

 

 

 

 背後から現れたのは、幼馴染みの遼。

 他の木よりも一回りくらい大きな木の陰から姿を現した彼は、じっと私を睨んでいる。

 多分きっと彼は、さっきまでの鞠莉とのやり取りを聞いていたに間違いなかった。

 そうじゃなかったら遼はこんなところで呼び止めたりしないし、こんなにも睨んではこない。

 

 そう考えていたら、彼は私に言い放つ。

 

 

「どうしてあんな事を言う必要がある?」

 

 

 その言い方は、まるで私たちの事情をもうすでに全部知っているかのような発言で、またダイヤから話を聞いたのだろう。

 遼には全く関係のないことなのに……。

 

 

「……遼には、関係ないでしょ?」

「いいや。幼馴染みとして大アリだ」

 

 

 そういって私にそう告げると、彼は階段を下りてきて私にゆっくり近づいてくる。

 幼馴染み。確かに私と遼との関係は小さい頃からの仲で昔からよく遊んでいたし、幼馴染みじゃないと言ったら嘘になる。

 

 でも、それとこれとは関係ない。

 これは、私と鞠莉だけの問題。2年も経ってからこの問題に突っ込んできたところで、何かが変わるわけじゃない。

 

 私は、鞠莉のためにしているの。

 

 

「遼には関係ない!幼馴染みだからって、こんな事に余計な首を突っ込んでこないで!」

 

 

 私の気持ちを知らない彼に、私は言い放つ。

 鞠莉のために自分から憎まれ役をしてまでの行動をしているのに、彼は私の邪魔をしてくる。

 

 私がしている言動の意味が、全て鞠莉の為であるということを知っていながら。

 

 

「もうダイヤから話を聞いてしまった以上、お前ら2人のことを気にせずにはいられないんでね。もう加減さ、鞠莉姉に素直に伝えたら?」

「……何をさ?」

 

 

 彼の問いかけに私は首を傾げる。

 もし、ダイヤが遼に全部話さなかったら、こんな状況なんてなかったはずなのに……。

 

 そんな時に遼は、私に怒号を撒き散らした。

 

 

「とぼけてんじゃねぇよ!何なんだよあの言い方!あれで自分は良いとでも思ってんのかよ!」

「……………………」

「おい!なんとか言えよ!」

 

 

 遼はそう言って、私は彼に胸ぐらを掴まれる。

 こんな風に怒られる理由は私でも十分に分かっているのに、私は彼を睨み返していた。

 

 そして私は彼に叫んでいた。

 

 

「……さぃ」

「あぁ?聞こえねぇなぁ?」

「うるさいって言ってるの!!!」

 

 

 彼がさっき言った怒号に負けないくらいに大きな声を出した私は、自分の胸ぐらを掴んでいた遼の手を思い切り振り払う。

 彼に対して怒りが胸の奥底から湧いてきていた私は、怒り任せに彼に向かって言い放った。

 

 

「私の、本当の気持ちも知らないくせに!」

「お、おい!まだ話は……!」

 

 

 本当の事実を知ったとしても、私の気持ちなんて知れるはずがない。だから私はそう言って、彼から逃げるようにそのまま階段を駆け下りた。

 

 今の私の顔、一体どうなってるんだろう?

 きっと酷い顔をしていると思う。

 

 今の状況から逃げたいがためにあんな事言って、また私は酷いことしてしまった。

 ダイヤにも私は酷いことを言って、それを聞いた遼が私をあんな目で見ていた。そうなれば、彼には一先ず内緒にして、あとでダイヤにきっちり謝ろうと思った。

 

 

 ちゃんとした、謝罪の意味を込めてね。

 

 

 

 






ちょっと間を空けてしまって本当に
申し訳ないですが、この小説は地道に
進めていこうと考えてます。

書きたいこと(意味深)が多いので……
次回もこの続きからになります。
みなさん是非楽しみにしててください!


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