どうもキャプテンタディーです。
みなさん、しばらくぶりですね。
今回から第9話、通称:“かなまり”
お話に入って行きます。
だいぶ遅いですけどね、はい。
それでは、本編をどうぞ。
私は彼女の言葉に愕然とした。
「…………えっ?」
私は果南から部室に呼び出され、どんな話をするのか疑問にも思わないまま部室に向かったら、果南からそんな話を唐突に切り出されたのだ。
「果南?今、なんて言ったの?」
『私、スクールアイドル辞めようと思う……』
「どうして?なんでそんなことを言うの?まだ引きずっているの?東京で歌えなかったこと……」
なんで?まだあのことを気にしていたの?
東京で歌えなかったことを引きずって、だからってスクールアイドルを辞める必要なんてないのに。
どうしてそんなことを平然と言えるの?
そんな事を考えていた私に、果南が話す。
『鞠莉。鞠莉には留学の話が来てるんでしょ?絶対に行くべきだと思う』
「どうして?冗談はやめてよ!それは何度も2人に言ったじゃない!あの話はもう断ったって……!」
『ダイヤも同じ意見なの』
「……っ!?」
それは私の留学の話だった。
その話は、ずっと前に断ったはずなのに、果南がまたその話をぶり返して話し出したの。
そしてまさか、ダイヤが果南とグルなんて……。
「ダイヤ?本当なの?」
『…………………』
「……っ!ダイヤも何か言ってよ!」
『…………………』
私はダイヤに問い詰めたけれど、ダイヤはドアの物陰に隠れて、何も話してはくれなかった。
『ほらね?ダイヤも私と同じ意見。だからこれ以上スクールアイドルを続けても、意味が無い』
そして果南は、私を突き放すように告げた。
『終わりにしよう……鞠莉』
「やだ……私はまだ!果南!ダイヤ!」
私の叫びは2人に届くことなく、2人は私を背に、私1人残したまま部室を出て行ってしまった。
これが、2年前に起きた真実
「…………………」
それを『夢』でまた見ていた私は、重い瞼を開け目を覚まし、身体に掛けていた毛布を取り払ってベッドから起き上がる。
部屋のカーテンを勢いよく開ければ、海の向こう側の水平線から太陽から顔を出して、もうすぐ夜が明ける時間であることが私には分かった。
「……果南」
日が昇る時に徐に呟いた、彼女の名前。
もしあの時に、私が留学を意地でもしていなかったら、私たち3人の関係はどうなっていたかな?
多分、結果は今と変わらないかもね。
もしかしたら、私が留学しなかったことに果南が怒って、絶交だったかも……。それだったら、この今の方がずっとマシね。
「ハァ。シャワーでも浴びよ……」
気がつくと、私の背中はべっとりと汗をかいていた。だから私はその汗を洗い流そうとシャワー室へ向かった。
朝見た過去の出来事を、少しでも早く忘れたいがために。そしてまたあの日に戻れるようにと、決心を新たにするために……。
〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜
「えっ!?夏祭りですか!?」
「屋台も出るずら〜!」
私たちはとある一通の招待から、千歌ちゃんの家でミーティングを行っていた。
そうなったのは今日の朝で、千歌ちゃんから電話がきてどうしたんだろうって電話に出たら、すごく慌てていた千歌ちゃんの声だった。
私は千歌ちゃんを落ち着かせて用件を聞いたら、千歌ちゃんちに届いた一通の手紙がとんでもない事だったと聞いて驚いた。だからみんなを千歌ちゃんの家に集め、朝練の練習前にそのことについて話し合っていたんだ。
「まさか、『沼津夏祭り』と『狩野川花火大会』の日にライブをやって欲しいってオファーが来るなんて思わなかったよ」
「ねっ!ねっ!凄いでしょ!?」
千歌ちゃんは相変わらず大はしゃぎ。
でもそれは千歌ちゃんだから仕方ないんだ。夏の沼津だったら、1番のメインイベントだからね!
沼津に引っ越してきた梨子ちゃんには、その祭りがどんなものなのか、まだ分からないと思うけど。
そしたら本人が私に問いかけてきた。
「ねえ、沼津の夏祭りってどんな感じなの?」
「梨子ちゃんはまだ知らないよね?沼津の夏祭りはね、ここら辺じゃあ1番のイベントなんだ!」
「へぇ〜!そうなんだ〜!」
私は出来るだけ簡単にお祭りの事を説明した。
そのあとで、梨子ちゃんに沼津のお祭りにどんなものがあるのか話をしようと口を開いたら、ルビィちゃんたち1年生組が、私の代わりに梨子ちゃんへ夏祭りについて話をしてくれた。
「花火大会も凄いんですよ!」
「すごく豪華で壮大で、1番の目玉は、ナイアガラっていう花火ずら!」
「それはまさしく、魔界へのゲート!」
「へぇ〜!見てみたい!」
善子ちゃんの言う魔界へのゲートっていうのは、ちょっと違うような気がするけど、花火大会自体は凄く盛り上がるし、何より壮大なんだ。
思わず、感嘆の声が出ちゃうくらいだよ。
「それでどうするの?千歌ちゃん?」
「……うん。決めないとね……」
それで私は千歌ちゃんに参加するかどうするか話を投げかけると、千歌ちゃんはさっきまでの笑顔とは正反対で、明らかに違う反応を見せる。
いつもの千歌ちゃんなら即『やる!』って言っていたのに、なんだか何かに思い耽ったような声を上げて、悩むような表情を見せていた。
千歌ちゃんは変わった。良い意味で……。
「曜ちゃん。遼くんもこれ知ってるの?」
「もちろん!私から話したんだ」
そして、彼にもこのことを話している。
遼くんも夏祭りのイベントでライブをしてほしいと手紙が来るなんて思っていなくて、遼くんもそれには凄く驚いていた。
でも、千歌ちゃんから聞いた話の内容をそのまま彼に伝えたら、彼は首を縦に振って納得し、みんなに助言をするように話をしてくれた。
それを私が、みんなに向かって話をする。
「そしたら、遼くんはこう言ってたよ。『祭りには出たら?そうすれば祭りに来る人たちに“Aqours”の名前を知ってもらえるから、ちょうどいい機会なんじゃないか?』ってね!」
「それじゃあ、遼くんは“賛成”ってことね?」
「うん。そういうこと!」
まぁ、簡単に言うとそうなる。遼くんは夏祭りでライブをすることには大賛成なんだ。
ただ、それでも私たちには問題がある。
「そんなイベントに、私たちが……」
「でも!ライブに出るとしたら、今からじゃあ練習時間もあまりありませんよね?」
「うん。ルビィちゃんの言う通りだよ」
ルビィちゃんが話してくれた通り、沼津の夏祭りまでの日にちは、そこまであるわけじゃない。
歌詞作りに曲作り。それにダンスを考えて覚えて踊るには、あまり時間が足りないかもしれない。
「そうね。私が思うに、今は練習を優先した方が良いと思うけど……」
「う〜ん、そうだね……」
その上で、梨子ちゃんはそんな提案をする。
夏祭りまで日もあまりないわけだから、今は練習を優先してやっていった方がいい。
千歌ちゃんは、どうするんだろう?
「千歌ちゃんはどうする?」
「……………………」
私は千歌ちゃんに尋ねたが、千歌ちゃんは四角くて細い木製の柱に身を隠して何も答えない。
ていうか千歌ちゃん。『頭隠して尻隠さず』の諺を超えちゃってて全身が隠しきれてないよ……。
千歌ちゃんの行動にちょっぴり困っていたとき、千歌ちゃんがそこから顔をひょこっと出して私たちを見ながら、私の問いかけに答えた。
「うん!私は出たいかな!今の私たちの全力を見てもらおう?それで駄目だったらまた頑張る!それを繰り返すしかないんじゃないかな?」
「千歌ちゃん……!」
やっと『出る』って答えてくれた。
満面たる笑みを浮かべながら私たちに発したその言葉は、私たち6人『Aqours』の、次の目標が決定したということを同時に告げる言葉だった。
「ヨーソロー!賛成であります!」
「ギランッ☆」
その言葉を聞いた私たちは笑って、私はいつものようにそう叫んでは、善子ちゃんはそう言って右目の目元に右手を持ってきて、軽くピースするようにジェスチャーをして答えていた。
本当に、千歌ちゃんは変わったと思う。
私の隣に座ってる梨子ちゃんだって同じ。
「梨子ちゃん」
「んっ?どうしたの?」
「変わったね、千歌ちゃん……」
「……っ!うんっ!」
遼くんも含めて、あのときに3人で千歌ちゃんを慰めた結果だと思ってる。
『嬉しい』とか、『悔しい』とか。感じたことや思ったことを、素直に言えばいいって千歌ちゃんに言ったからこそ、今の千歌ちゃんがある。
千歌ちゃんが素直になってくれて私は嬉しい。
さっきからこれしか言ってないけど……。
「ハァ……」
そんな時、千歌ちゃんがまた背を向けて木の柱に身を隠す。今度は千歌ちゃんは体育座りをしてて、何か思い悩むような深いため息をついていた。
「どうしたの千歌ちゃん?悩みごと?」
「う、うん……」
私が深妙にそう尋ねると、千歌ちゃんはその問いに首を縦に振って頷く。
千歌ちゃんがどんな悩みを持っているのだろうと気になった私と梨子ちゃんは、2人で彼女のもとへ歩み寄ると、千歌ちゃんはその悩みを自分の口から打ち明けてくれた。
「果南ちゃんのことなんだけど、どうしてスクールアイドルやめちゃったんだろうって……」
「何よ、そんな話?生徒会長が言ってたじゃない。東京のイベントで歌えなかったからだって!」
「でも本当なら果南ちゃん、それだけで止めちゃうような性格じゃないと思う」
千歌ちゃんが悩んでいること。それは、私や千歌ちゃん、そして遼くんとは小さい頃からの幼馴染みで、1つ年上の果南ちゃんのことだった。
どうして果南ちゃんなのか?そう考えていた矢先に、善子ちゃんがダイヤさんが話していたことを話に持ち上げ、それで私を含め、みんなはすぐに理解することが出来た。
でも千歌ちゃんはその話に首を振り、本当の果南ちゃんはそんな人じゃないと告げる。
それには私も、千歌ちゃんの話したことに理解出来る。千歌ちゃんが言った通り、本当の果南ちゃんはそんな性格はしてないからだ。
「私が知ってる果南ちゃんなら、そんな事で諦める訳がないんだよ。私が怖くて海に飛び込めなかった時でも、果南ちゃん凄く応援してくれたんだよ」
そして千歌ちゃんはみんなの前でそう言い切る。
実際、私や遼くんよりは、千歌ちゃんの方が果南ちゃんとの付き合いは長い。だから千歌ちゃんは、そう言い切れるんだと思う。
すると千歌ちゃんは、今日の朝に淡島神社で果南ちゃんに会ったことを私たちに話してくれた。
「私ね、朝に果南ちゃんと会ったんだ」
「えっ?本当!?」
「うん。それで果南ちゃんに聞いたの、『スクールアイドルやってたの?』って……」
「それで?答えは?」
「『ちょっとだけね!』って言って、笑ってた」
「そう……」
果南ちゃんに、スクールアイドルをしていたの?と千歌ちゃんは聞いただけで、スクールアイドルをやめた理由を聞くことが出来なかったみたい。
私も、果南ちゃんのことが少し気になる。
スクールアイドルをやめてしまうほどの理由が、果南ちゃんにあるのかなって、私は気になって仕方がなかった。
ダイヤさんから話を聞いた時は、正直果南ちゃんがスクールアイドルをしてたなんて嘘だと思った。
だけど、千歌ちゃんが果南ちゃんに本当のことを聞いた話を聞いて、果南ちゃんがスクールアイドルをしていたのは本当だったと知ることが出来た。
「もう少しだけ、スクールアイドルをやっていた頃のことが分かればいいんだけどな……」
「聞くまで全然知らなかったもんね」
「そうだねぇ。何か手がかりがあれば……」
「……………………」
それで果南ちゃんのことについて、千歌ちゃんと梨子ちゃんは手がかりはないかと呟いていた時に、私はその事を知っていそうな人物が、私たちのすぐ近くにいるじゃないかと気づく。
その人物に、私はすぐさま問いかけた。
「ねぇ、ルビィちゃん」
「ピギッ!な、何ですか?」
「ダイヤさんからなにか聞いてない?小耳に挟んだとか、些細なことでもいいからさ」
「えぇ!?そ、それは……その……」
その人物はルビィちゃん。
ダイヤさんは果南ちゃんと鞠莉さんと一緒に3人でスクールアイドルをしていたから、ダイヤさんの1番そばにいたルビィちゃんなら、何か知っているんじゃないかって思って尋ねたの。
その私の声を耳にしたみんなも、ルビィちゃんに視線を向けて千歌ちゃんと梨子ちゃんは尋ねる。
「ルビィちゃん、何か聞いてない?」
「ダイヤさんとは、ずっと一緒に家にいるのよね?絶対に何かあるはずよ!」
「う……うゅ……」
梨子ちゃん、そんな鬼気迫るみたいにルビィちゃんに聞いたら、ルビィちゃん怖がっちゃうよ。
ほら、ルビィちゃんの身体が小刻みに……
「うぅ……うっ、ピギャアアァァア!」
……って!ルビィちゃん逃げちゃったよ!
「ちょ!?逃がさないわよルビィ!」
「えっ……!?」
そしたら善子ちゃんが悪戯っぽい笑顔を浮かべると、ルビィちゃんを捕まえるために追いかける。
ただ善子ちゃんのその捕獲の仕方が、私たちから見るととても意外なやり方だった。
「堕天使奥義!堕天流拘縛!」
「いやぁ〜!善子ちゃん、痛いよぉ〜!」
「あんたが逃げるからでしょ!」
ただ簡単に捕まえるわけじゃなくて、善子ちゃんはそっちの知識を知っているのか、プロレスの技を使ってルビィちゃんの身体を拘束した。
確か技の名前は、『コブラツイスト』
善子ちゃんは背後からルビィちゃんの左足に自分の左足を絡めるようにフックさせ、ルビィちゃんの右腕の下を経由して自分の左腕を相手の首の後ろに巻きつけ、背筋を伸ばすように伸び上がっていた。
『コブラツイスト』は関節技みたいだから、それにやられているルビィちゃんはみんなに対して助けを願うように悲鳴を上げる。
そんな感じに、助けを求めて涙目を浮かべているルビィちゃんを助けたのは、善子ちゃんの頭に軽くチョップを当てた花丸ちゃんだった。
「善子ちゃん、やめるずら?」
「あっ……ハイ……」
花丸ちゃんのその言葉に恐怖した善子ちゃんは、ルビィちゃんから離れるように拘束を解く。
花丸ちゃんのおかげで、無事に善子ちゃんの拘束から逃れられたルビィちゃんは、私たちに対して、ダイヤさんたち3年生のことを話してくれた。
「ルビィが話として聞いたのは、東京でのライブがうまく行かなかったって話くらいなんです」
「本当に……?」
「はい。それからはお姉ちゃんは、スクールアイドルの話もしなくなっちゃったので。でもただ……」
「ただ……?」
「この前、鞠莉さんがルビィの家に訪ねて来た時、鞠莉さんにお姉ちゃんが言っていたんです」
『果南さんは
「そう……お姉ちゃんは言っていました」
「“逃げている”わけじゃない……かぁ……」
ダイヤさんが鞠莉さんに向かって口に発した、『逃げている』という言葉。
果南ちゃんがどういうことから逃げているのか?私にはそれがどういうことなのか全く以って分からなくて、同じ言葉を言った千歌ちゃんをも含めて、みんなも同じことを考えていた。
「どういう事なんだろうね?」
「さぁ?私も全然分からないわ……」
頭を悩ませる千歌ちゃんたち。
手がかりが一切なくて、ダイヤさんたちのことで練習どころじゃなくなっている時、頭を抱えている千歌ちゃんがボソリと呟く。
「誰か、ダイヤさんたちのことを“知っている人”がいればいいのになぁ……」
「はい、そうですね」
ダイヤさんたちを知っている人か。
『ダイヤさん』『果南ちゃん』『鞠莉さん』
千歌ちゃんの言葉をきっかけに、私はこの3人に深く関わりがありそうな人物を考える。
一体誰がいるんだろう?当然鞠莉さんに関しては分からないし、ダイヤさんもあんまり分からない。
果南ちゃんなら私と千歌ちゃん。そして……
そして………………
そして…………?
………………あっ。
「あああぁぁぁあぁ!!??」
「わぁ!?よ、曜ちゃん!?どうしたの!?」
「何よ!突然大声なんか上げちゃって!」
いた。たった1人だけいる!
鞠莉さんとかどうなのかはっきりよく分からないけれど、果南ちゃんやダイヤさんとは知り合い深くて、実際私たちは、以前ダイヤさんと一緒にいたのを目撃している。
だから多分、間違いないと思う。
「いる!果南ちゃんたちのことを知っていそうな人、1人だけいるよ!」
「本当!?誰なのその人!?」
「勿体ぶらずに答えなさいよ!」
千歌ちゃんや善子ちゃんは、私の言葉にもの凄く興味津々に尋ねてくる。
梨子ちゃんやルビィちゃん、そして花丸ちゃんの3人も興味を示していて、彼女たち3人も私をじっと見つめていた。
隠す必要もないよね。
だって私たちの知ってる人だもん。
「えへへっ!その人はね……!」
それで私はみんなにその人物を伝えた。
その人である理由を交えながら話したとき、私の話に耳を傾けて聞いていたみんなの口から、驚きの声が盛大に上がったのであった。
「「「「「えぇ〜!?」」」」」
次回もこの続きです。
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