どうも、キャプテンタディーです。
今月は3話しか投稿できなかった(白目)
明日から始まる3月もこうなるかな?(震え)
今回は文字通り後編になります。
それでは、本編をどうぞ!
「ごめんな。荷物持ってもらっちゃって……」
「大丈夫です!それにお料理を作ってくれるんですから、これくらいはさせてくださいずら!」
「ありがとな、花丸ちゃん」
「えへへっ♪」
自宅の近くのスーパーに寄って材料を買い、俺は彼女たちを家に招き入れる。
ぶっちゃけ、1年生の3人を家に招くのは、当然のごとく初めてだからこっちも多少の緊張は、なきにしもあらずって感じよ。
「ちょっと!私にも何か言いなさいよ!」
「はいはい。ありがとな〜善子〜」
「もう!棒読みで言うな〜!」
やれやれ、善子は我が儘なやつだな……。
お礼は言ってるんだから、素直に受け取ってくれても良いじゃないか?減るもんじゃないんだし。
「遼さん、材料はここに置いておきますね」
「おう。サンキューなルビィちゃん」
「い、いえ……」
さて、材料も全部揃ったことだし、彼女たちを待たせるわけにはいかないから、早速オムライス作りを始めるとしよう。
早く作り始めないと、彼女たちにめっちゃ怒られちゃうからな。
「じゃあ、俺は早速オムライスを作るから、3人はゆっくり寛いでて良いよ」
「では、お言葉に甘えさせて貰いますずら!」
俺は彼女たちにそう言って、花丸ちゃんがそんな言葉のあと、3人でリビングへと向かって行った。
今しばらく善子のお世話は、主にツッコミを入れる花丸ちゃんに任せるつもり。朝練のときにいつもその様子を見てるから、花丸ちゃん自身もそのことは分かっていると思う。
頼んだぞ、花丸ちゃん。
「クックック。やっと堕天使ヨハネを……」
「他人の家でやめるずらよ?善子ちゃん?」
「うっ。わ、分かってるわよ!」
うんうん、それでいい。
さて、こっちもこっちで始めますか!
料理を始める前に俺はエプロンを着て、ゴシゴシと隅々まで手を洗う。
半袖のTシャツを着ているのに、袖を捲る仕草をしてしまったことに恥ずかしさを感じながら、料理に使う材料を冷蔵庫から取り出す。
オムライスを作るのだから卵は必須だ。
あとはご飯とケチャップ。それにチキンライスに入れる材料諸々を台所に置いて。よし、ライスの方の材料はこれくらいだろう。
チキンライスの材料 (※1人分の量)
・ご飯:お茶碗1杯
・玉ねぎ:1/4個
・鶏肉:50g
・バター:20g
・塩こしょう:適量
・ケチャップ:大さじ2〜3.5
上の一覧が1人分の目安。だから4人分になると、用意する材料はこれの4倍になる。材料の消費量がもの凄く増えるけど、作りがいがあるってもんだ。
「花丸ちゃん!善子ちゃん!ここにトランプがあるから、3人で何かやろう!」
「いいわよ!ババ抜きでもしましょ!」
「ババ抜き?それは一体なんずら?」
「花丸ちゃん知らないの?」
「仕方ないわね。私が説明してあげる!」
リビングにいる3人はババ抜きをするみたいだ。
3人の声を耳で拾っていると、とても楽しそうな雰囲気でトランプをしているように聞こえてくる。
ルビィちゃん、花丸ちゃん、善子の3人も、千歌たち2年生と同じくらいに、とても仲が良くなったように俺はそう思えた。
それじゃあ、こっちも料理を始めよう。
まず先に、チキンライス作りだ。
《チキンライスの作り方》
1、まず玉ねぎの皮を剥いてから、包丁で細かくみじん切りにする。鶏肉は食べ応えが得られるように、四方1.5cm角に切る。
2、フライパンにはバターを弱めの中火で熱し、バターが溶けたら鶏肉と玉ねぎを炒める。鶏肉の色が変わり、玉ねぎが透き通ったら、塩とこしょうを各少々をふって混ぜる。その後中火にして、ご飯を加えてほぐしながらフライパン全体に広げる。
3、木べらで切るようにして炒めて、ご飯が炒飯のようにパラパラしてきたらケチャップを加える。上下を返すようにして混ぜながら炒め、ケチャップが全体に馴染んだらチキンライスの完成だ。
ざっくりな説明ではあるけれど、ここまで出来たなら、もうチキンライスに関しては大丈夫だ。
炒めて完成したチキンライスは、フライパンからボールへと移しておく。
「ふわぁ……いい匂い……♪」
「ヨダレが出ちゃいそうずら〜」
「ズ、ズラ丸!もう出ちゃってるわよ!」
「あっ!ごめんずら♪」
チキンライスから香る匂いに3人は大興奮。
特に花丸ちゃんが匂いだけでヨダレが出るということだから、彼女もそれなりにお腹が空いていたんだろう。善子に指摘され、花丸ちゃんは恥ずかしさを隠せない様子。
それで次に俺は、チキンライスの上に被せる卵の部分を作っていく。
材料は卵と牛乳と塩少々。
地道ではあるが、この調理はゆっくり1人分ずつ作っていく。多少時間はかかるけれど、彼女たちの美味しく食べる笑顔が見たいからな。
すまないが許してくれ。
《上に乗せる卵の作り方》
1、用意したボールに卵2個を割り入れ、そこに牛乳大さじ1杯と塩少々を加える。菜箸2本の間隔をあけて持ち、ボールの底を擦るようにして、白身と黄身が混ざるまでしっかり溶きほぐす。白身の塊が残っていたりすると、卵がフライパン全体に広げにくくなるから、そこを注意してほしい。
2、卵を作るのに使うのは、さっきチキンライスを炒めたフライパンより少し小さいフライパンだ。サラダ油を小さじ2杯入れて強めの中火にかけ、1分ほど熱する。卵液を一度に加え、すぐにフライパン全体に広げる。火の通りにくい中心だけは、菜箸を使って手早くかき混ぜるのがポイントだ。
3、卵の中心が半熟状になってきたら火を止め、チキンライスをやや手前に、横に細長く、ラグビーボールのような形になるようにして乗せる。その後にフライパンを少し手前に傾け、向こう側から卵を破かないよう、フライ返しの先をフライパンに押し当てるようにして、卵の下に斜めに差し込み、卵をそっとチキンライスに被せる。
4、差し込んだフライ返しを手前に起こしながら卵をそっと持ち上げて、チキンライスを覆うようにしてそっと被せる。さらにフライ返しで手前に引き寄せて、フライパンの側面に軽く押し当てながら形をしっかり作る。
5、ここで、盛り付けるお皿を用意する。そして皿の上でフライパンを少し傾けて、縁が皿に当たるくらいまで近づける。卵の中からチキンライスがこぼれないよう、合わせ目にフライ返しを当て、その上にオムライスを被せるようにして、フライパンをそっと返す。フライ返しを横にすべらすようにして引き抜き、オムライスをお皿に移す。
6、オムライスをお皿に移したら、オムライスが熱いうちにペーパータオルで包む。はみ出た卵を下に押し込むように、両手でラグビーボールのように形を整えたら、オムライスの完成だ。
「ふぅ、やっと出来た!」
でも、これをあと3回繰り返す。
心許ないけど、あと3人分を頑張って作る。
「遼さん、まだ完成しないの?」
「あと3人分だ。もうちょっと待っててくれ」
「……分かったわ」
善子のやつ、相当待ちきれないみたいだ。
もう少しだけ待っててくれ善子。もう少しで全員分のオムライスが出来るから、辛抱しててくれ。
そんで、それから20分後
ようやく全員分のオムライスが完成した。
「よ〜しっ!オムライスの完成だ〜!」
「うわぁ〜!美味しそう〜!」
「あと“仕上げ”を済ませたらオムライスをそっちに持って行くから、リビングで待っててね」
「はい!分かりました!」
完成した様子を見に来たルビィちゃんは、出来たてのオムライスを見て目を輝かせている。
俺はそんなルビィちゃんをリビングへと一時的に追いやり、ルンルンと上機嫌なルビィちゃんの立ち去る姿を見たあとで、最後の仕上げに取り掛かる。
オムライスの上に何にも
「……よし!」
そして俺は“
『ルビィ』『花丸』『ヨハネ』
これでもう、お分かりに頂けただろう。
「はい、お待ち!楠神特製のオムライスだよ!」
「遼さん!ありがとうございます!」
「うわぁ〜!美味しそうずら〜♪」
「ゴ、ゴクリ……!」
手に取った“それ”はケチャップだ。
ケチャップでそれぞれ3人の名前を書いて、3人の前でそれを見せれば3人は超興奮している。
ルビィちゃんは最初からもうすでに興奮してたけれど、善子は一体何をしている??自分のスマホを取り出して写真をパシャパシャ撮っていやがる。
もしかして、あれか?女子の中で流行っている、俗に言う“インスタ映え”ってやつか?
「遼さん、食べていいですか!?」
「もちろん!そのために作ったんだからな!」
「ありがとうございます!」
「それでは、いただきますずら〜♪」
花丸ちゃんは俺の話を聞いてからスプーンを手に取り、オムライスを食べられる大きさにカットし、大きな一口目を頬張る。
「ああ〜ん♪」
「あぁ〜ん……」
「ぁん。もぐもぐ……」
ルビィちゃんも善子も、花丸ちゃんの少しあとに一口目を口にした途端、3人の口からは感嘆の声が飛び出してきた。
「美味しい!美味しいです!」
「スプーンが止まらないずら〜!」
「ちょ、ズラ丸!がっつき過ぎよ!」
花丸ちゃんは将来、もしかしたら大食い選手権で優勝するんじゃないかってくらいの食いっぷりだ。
隣でそれを見ていた善子でさえも、その勢いある食べ方に心配そうに彼女を見つめていて、不安そうに言葉を投げかけていた。
でも花丸ちゃん本人は、スプーンを動かすことを止めない。
俺のオムライスの味が想像以上に美味しいと感じているのか、もうすでに半分を平らげていた。
「マル、遼さんのお料理なら何でもいけちゃう気がするずら。マル、遼さんのお料理好きずら!」
「うん。そう言ってくれると嬉しいよ」
「ル、ルビィも!遼さんが作ってくれたオムライスが、とても美味しくて、とても大好きです!」
「あはは!2人とも、ありがとな!」
なんか、すごく照れてしまう。
2人のお礼は心の奥底からの気持ちで言っていると俺は感じれるから、な、なんかね……?
「…………………」
「んっ?どうした善子?」
「べ、別に何でもないわよ。ただ……」
「ただ……?」
「うっ。えっと……その……」
善子のやつも、何か言いたげな表情。
でもそれを言うことが恥ずかしいのか、善子の頬は赤く明るみを帯び、俺と目を合わそうとしない。
けれども彼女は自身で身体をもじもじとくねらせながら、目線を合わせずとも呟いた。
「お昼作ってくれて、ありがと……」
「……ふっ。善子はやっぱ良い子だな」
その様子を見て俺は、笑みを零してそう言った。
彼女の羞恥にまみれたその顔を見て、自分は彼女をとても可愛いと感じた。
彼女を弄ってるわけじゃない。
俺の率直な、心から言える本心だ。
「う、うるさい!あとヨハネ!」
「はいはい。分かりましたよ、ヨハネ」
「むぅ。分かればいいのよ」
だがやっぱり、俺にとってそれは少し難儀だ。
いちいち“ヨハネ”呼びで善子の名前を呼ぶのは、俺でも少し心が折れそう……。
「それじゃあさっさとオムライスを食べて、午後も目一杯楽しんでいこうぜ!」
「「は〜い!」」
「クックックッ、承知!」
一先ずそんな俺の考えは頭の片隅に置いておき、俺たちはオムライスを食べて、俺が知らない午後の予定を目一杯楽しもうと3人に声をかける。
午前中はミトシーに行って、イルカショーを見たりして楽しんだけれど、午後は一体、どんな予定を立てているのだろうか?
俺は、それも気になって仕方なかった。
〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜
ここらで、はっきり言わせて貰っていいか?
俺、今あまり来ちゃいけない場所に来ている。
「ルビィちゃん、これどうかな?」
「わぁ!花丸ちゃんなら、その下着すごく似合うと思う!綺麗で可愛い!」
「本当!?ありがとうずら!」
それは一体どこなのか?
今の会話でもう既に分かっただろう。
「なぁ、俺がここにいて良いのだろうか?」
「何言ってるのよ!私もルビィもズラ丸も、遼さんに選んでもらいたいから、別に良いのよ!」
「なんかそれ、もうむちゃくちゃやな……」
俺たち4人がいる場所は、主に女性の下着を取り扱っているお店。俺みたいな男性が立ち入るべきではない、言ってしまえば禁忌の領域。
そんな領域に足を踏み入れている俺は、彼女たちの下着を選ぶために今回訪れている。
正直に言って、恥ずいの一言だ。
「遼さん!これとかどうですか!?」
「あぁ、うん。ルビィちゃんなら似合うと思うよ」
ルビィちゃんが見せてきた下着は、本当にルビィちゃんに似合いそうなピンクの下着。花柄の刺繍が散りばめられ、大人っぽくも可愛いらしい下着だ。
でもルビィちゃん、そんな目で見ないで。
ちゃんと似合うと思ってるからさ。ねっ?
「……本当ですか?」
「う、うん!似合う似合う!」
「ありがとうございます!」
俺はルビィちゃんにそう言うと、彼女はニコリと笑顔を見せてトコトコと試着室へと足を運ぶ。
また後々に試着をした姿を見ると思うと、ルビィちゃんの恥じらう顔を頭で想像しただけで、こっちまで恥ずかしくなっちまう。
俺みたいな男子がここにいること自体場違いな気もするけれど、このお店は彼女たちにとって、大事なお店であることは俺も十分に分かっている。
沼津には、下着店が2店しかないからな。
「遼さん!ちょっと来てください!」
「んっ?どうした?」
すると俺の背後から、顔だけをひょっこり出して俺を呼ぶ善子の姿があった。
ただ俺はこの時、善子がどうして身体を見せずに顔だけを出しているのか?そんな理由を考えることもしないまま、善子のもとに行ってしまったことが大きな間違いだった。
「もしかして、買う下着もう決まっ……た?」
「うふん♡どう?ヨハネの魅惑の下着は?」
「…………………」
いや、その下着は過激にも程があるだろ。
胸を隠す生地が少な過ぎないか?なんなのこれ?ぶっちゃけ、こういう下着を着ている人いるの?
ダメだ。その下着は俺には刺激的過ぎる。
「善子、すまないが俺は却下だ」
「えぇ!?なんでよ!別に良いじゃない!」
「そもそも!あの試着室から堂々と俺のところまで出て来るなよ!ほら、戻った戻った!」
「ちょ、ちょっと〜!」
俺は善子の背中を押し、試着室へと強引に戻す。
それで俺は後々にして、善子が着ていたその下着を、“マイクロビキニ”の下着物だと知る。
着用する者の身体の最小限のプライベートゾーンだけを覆う大胆なデザインだから、俺の思った通りなかなか刺激的な代物だ。
あんまり、俺の前で来て欲しくはないな……。
「遼さん、遼さん!」
「んっ?どうした花丸ちゃん?」
「ちょっと良いですか?」
そう考えていたら、今度は花丸ちゃんが俺を名前を呼んで来る。なにやら試着室のカーテンから顔を出し、恥ずかしそうに俺に視線を向けている。
何か困ったことでもあったのか?
「何か困ったこととかあった?」
「いえ。そういうことじゃないんですけど、ちょっとこっちに……」
「えっ!?ちょ、ちょっと!」
バタン
「え、えぇ……」
「ごめんなさい。悪気はないんです」
俺は花丸ちゃんに声をかけた瞬間、花丸ちゃんに自分の手を掴まれて、試着室に引きずり込まれる。花丸ちゃんの行動に思わず抵抗しようと思っていたが、抵抗する前に中に引き込まれてしまった。
どうしたものかと思っていたら、俺の目に飛び込んで来たのは花丸ちゃんの下着姿。
黄色でシンプルな下着ではあるが、何ともエロスなのだろうか?花丸ちゃんのグラマーなボディーに俺の性欲が駆り立てられる。
1年生で15歳ながら果南並みにありそうな大きな胸に、引き締まったお腹と太もも。本当にこの身体が1年生なのかと驚かされる。
そんな花丸ちゃんは俺に話をし出す。
それは彼女からのお願いであるが、同時に男子には到底『いいよ』とは言えない難しい決断だった。
「あの、遼さんにお願いがあるんです」
「えっ?お願い?」
「次に試着しようと思ってる下着、遼さんには試着の手伝いをして欲しいんです……」
「えっ、えぇ……!?」
彼女の言う試着する下着というのは所謂スポーツブラのようなものらしい。それで花丸ちゃんが試着しようとしているスポーツブラには、“ジッパー”というものが施されている。
つまりその下着は、自分1人で着ることが不可能だから、代わりに閉じて貰う必要があるわけだ。
彼女曰く、ジッパーがないよく見るスポーツブラだとサイズはあるけど、自分の胸元が少し苦しいと感じているらしい。
スクールアイドルの激しい練習で、胸が苦しいと彼女が言っていた。だから今回それを買って、それを着て練習しようというわけだ。
でも思うのは、どうして
別に不満があるわけじゃないけど、ルビィちゃんと善子がいるのに、どうして異性である俺に手伝いをお願いしたんだろうってね。
……このお店にいるから、俺の考えすぎか?
「これが、次に試着する下着です」
俺が考えた矢先に、花丸ちゃんが試着する下着を見せてくる。いかにもスポーツブラっぽく、純白のように真っ白なスポーツブラだった。
だが、俺はあることに気づく。
「なるほど。これが次の……んっ?」
「……?どうしましたか?」
このブラのジッパー、胸に付いている。
背中ではなく、『胸』に付いていやがる。
「さっき花丸ちゃんさ、俺に下着を着る手伝いをして欲しいってお願いしてきたよな?」
「はい。そうですけど……」
「この下着、その必要はないんじゃない?」
「あっ……!?」
これなら俺が花丸ちゃんの試着の手伝いは必要もないし、何より1人でジッパーも閉められる。
花丸ちゃんでも、これは見ても分かるはずだ。
なのに俺には、試着の手伝いをして欲しいと彼女は間違いなく、きっぱりそう言った。
全くことが矛盾している。
これは一体、どういうことなのかな?
「花丸ちゃん、これは一体どういうこと?」
「あっ……マル、おトイレ行きたくなったずら」
「理由を教えてくれたら通してやる」
「そ、そんなぁ……」
場所はあくまで試着室。俺と花丸ちゃんの2人がやっと入れるスペースで、あまり身動きは取れないから早く質問に答えて欲しい。
そうすれば、俺もここから出るしな。
「ごめんなさい遼さん。さっきのは嘘ずら」
「……うん。だろうとは思ってた」
「本当は、話を聞いてもらいたくて……」
「話?どんな話?」
「ちゃんと話すので、少し待ってください」
そう言った彼女は、突然服を着始める。
本音は着替える姿を見ていたい。でも彼女にそれが失礼だろうから、彼女に失礼のないように後ろを向いて、着替えが終わるまで待つことにした。
それで3分が経った頃に、彼女は言う。
「終わりました。こっちを見てもいいですよ」
「うん。やっぱり、花丸ちゃんは綺麗だな」
「えっ!?き、綺麗!?」
「あぁ。髪がサラサラで、俺の好きなタイプかも」
「えぇ!?」
おっと。これは少し彼女には刺激的だったかな?思わず自分が思ったことを口にしてしまった。
でもいいか。花丸ちゃんの顔は真っ赤になって、文学少女の彼女だから変な妄想を働かせているのを見て堪能できるし、これでもいい気がする。
「あっ。少し恥ずかしかった?」
「遼さんにはこの気持ち、絶対に分からないずら」
「えぇ……」
やっぱり、ダメだな。
彼女にはあまりこれはよろしくないかも。
「ズラ丸!いつまで試着してるのよ!私もルビィも買う下着決めちゃったわよ!」
「花丸ちゃん、大丈夫〜?」
そんな時、カーテンの向こう側から善子とルビィちゃんの声が聞こえてくる。
2人はどうやら試着を終え、自分で買う下着を既に決めたようだ。善子なら特に、さっきの変な下着だったらマジ勘弁して欲しいところだ。
とりあえずは、ここに俺もいては2人に変な誤解を招いてしまい、花丸ちゃんに迷惑をかける。
その時、花丸ちゃんが背後から言い出す。
それはもう、自分からの志願だった。
「遼さん、ここはマルに任せてくれませんか?」
「えっ?でもそしたら君に迷惑……」
「迷惑じゃないです。むしろ、
「えっ……?」
『嬉しい』というとても意味深な言葉には、正直どういう意味なのかは分からなかった。
嬉しい?一体どういうことなんだろう?
「お待たせずら〜!」
「えっ?なんで遼さんもいるのよ!」
「マルのお手伝いをしてもらったずら!」
「な、なんですって〜!?」
そしてやれやれ。善子のことだから、絶対にこういう展開になるのはもう分かっていたよ。
年頃の男女が、密室に近い試着室であんなことやこんなことをしていたなんてって考えてしまうのは、当然のことで仕方のないことだった。
だからこそ、俺も話に加わらないといけない。
「変なことを考えるなよ、善子。俺は花丸ちゃんに『手伝ってください』って言われただけで、お前が想像していることには全然なってないからな」
「そう考えてたら善子ちゃん、スケベずら」
「うるさ〜い!悪かったわね〜!」
ふぅ。2人でいい感じには持っていけたな。
それに善子が何気に反論をしないということは、まぁそういうことなんだろうな。善子のやつ、意外とイケナイ妄想をしやすいようだ。
その後、ルビィちゃんに花丸ちゃんに善子の3人は、自分が気に入った下着を買うことが出来た。
俺は彼女たちに似合う色とか、そこらへんの意見を出すことしか出来なくて、あまり彼女たちの役に立ったと言える立場ではない。
でも、俺は彼女たちの笑顔を見て、少しほっこりしている。なんというか、安堵感みたいなもの。
どうしてだろうな?まるで彼女たちの兄か、父親にでもなった気分だ。
そうして3人は、それぞれ自分が購入した下着が入った紙袋を手に持ち、俺たちは店を出る。
時間も午後3時。太陽も西に傾きかける頃。
するとその時だった。
「そうだ!遼さん、まだお金ありますよね?」
「なんだ?嫌な予感しかしないんだが……」
「まだ太陽も沈みかけの3時ですし、私たちに何か奢ってくれませんか?例えば、アイスとか?」
「あっ!ルビィもそれがいい!」
「えぇ。ルビィちゃんもかよ……」
善子が俺にアイスを奢って欲しいと、とんでもないことをお願いしてきやがった。
この時に俺は頭を抱えた。同時にルビィちゃんまでもが賛同してきたのだからな。お金はあるけど、俺たちが今いるところの近くにあるアイスのお店となると、沼津駅にある2店舗くらいだ。
あそこしかない。そう言い切れる自信はある。
「分かったよ。奢ってやる」
「わ〜い!じゃあ私はチョコミント〜♪」
「ルビィはストロベリーにしよ〜♪」
俺が奢ってやると言った瞬間、2人は子供のように喜びをみせる。ルビィがストロベリーを選ぶのは何となく分かってはいたが、善子がチョコミントを選ぶとはな。
人は見かけによらないとは、こういうことか。
「遼さん、とても太っ腹ずら」
「花丸ちゃんは?いらないの?」
「マルはいいずら」
花丸ちゃんは、どうやらいらないらしい。出費は減るからいいものの、イマイチ釈然としない。
でも花丸ちゃん自身、4人で過ごした今日の1日をとても満足しているんだろう。
「今日は1日とても楽しかったですし、マルはもう満足です。遼さんがお昼に作ってくれたオムライスは、とても格別だったずら」
「ありがとう、花丸ちゃん」
笑顔がそれを物語っている。
3人の中で1番多く笑顔を見せていた彼女に同じく、俺も今日の1日が楽しかった。
『充実した週末』と言っても過言じゃない。
あっ。そういえばあの時……。
『本当は、話を聞いてもらいたくて……』
花丸ちゃんと試着室にいた時、あのときに彼女は俺に対して何か話をしようとしていたな。
あれも一体、どんな話だったんだろう?
「そういえば花丸ちゃん」
「はい?何ですか?」
「…………………」
いや、今は聞かないでおこうかな。
あの時、俺が彼女の話を逸らすようなことをしてしまったから、俺から話しかけるのはダメだな。
彼女が話そうとしていたことが、もしかしたら俺が聞いちゃいけないことかもしれないから。
「……ううん。何でもないや」
「……?変な遼さん」
気持ちを切り替えよう。
この子のためにも。あの2人のためにも。
「じゃあ行こう。2人に置いてかれないように!」
「はい!一緒に行きましょう!遼さん!」
こうして俺と花丸ちゃんは、ルビィちゃんと善子に置いていかれないように2人を追いかけた。
それで俺は沼津駅の近くにあるアイス屋さんで、2人に対してアイスをそれぞれ、1つずつ奢ることになってしまったのである。
はぁ。しばらく金銭は節約だな。
ルビィちゃんと善子が嬉しそうにアイスを食べている反面、俺は内心でため息をついたのであった。
1年生3人組においての回は、これで終了です。
また次回からはアニメ本編の第9話。
ようやく“かなまり”編を書いていくので、
みなさん是非、期待しててください!
感想や評価、誤字脱字等、お待ちしています。