どうも、キャプテンタディーです。
モンハンワールドのPS4が欲しい今日この頃
誰かこの2つを恵んでくれ(白目)
ということで前回からの続きです。
それでは、本編をどうぞ!
「得票数、“0”ですか……」
「…………はい」
千歌たちを駅から連れ出し、俺とダイヤが連れて行った場所は狩野川の河川敷。
河川敷の歩道と、狩野川を挟んで佇む手摺には、夏祭りではよく見かける赤と白の提灯が川に沿って飾られていて、ライトアップもされている。
この狩野川の河川敷は、花火も上がるからデートスポットには最高の場所の場所なんだ。
まぁ、それはともかくだ。
こいつら、相当なほどに精神がやられてる。
全国トップレベルが見せる歌とダンスの質の高いパフォーマンスを見て、自分たちの今の実力が明白に示されたのかもしれないな。
「やっぱり、
「……………………」
ダイヤの言う『そういうこと』っていうのは、後々にダイヤ自身から話をするだろう。
30. Aqours …… 0
順位は『最下位』で、得票数が『0』人。
俺は千歌たちが参加した東京でのイベントの結果は、少々受け入れ難い気持ちではある。だがそれが今の現状で、彼女たちが精一杯やっての結果だ。
ただこの結果は、しっかり受け止めた方が良いと俺は思っている。俺なりの考え方だけどな。
とても残念な結果ではあるけど、この結果を受け止めて、またこれから努力して練習すればいいと、俺からそう言えれば良かったんだがな……。
あまりにも雰囲気が暗すぎて、とても言い出すにしづらい感じだった。
でもダイヤは、みんなに話を続ける。
「先に言っておきますけれど、あなたたちは決して駄目だったわけではないのです。スクールアイドルとして十分練習を積み、見てくれる人を楽しませるに足りるだけのパフォーマンスもしている。でも、それだけでは駄目なのです。それだけでは……」
実際のところ、ダイヤはなんだかんだで千歌たちの活動に関してはちゃんと認めていた。
あれだけ批判的な言葉を千歌たちに向かって言い放ってきた彼女だけれど、それは彼女なりの理由があって、本気でスクールアイドル活動は認めないと思っていたわけじゃないらしい。
俺もあの後にダイヤから話を聞いたけど、ダイヤもやっぱ心配性というか、千歌たちのことがずっと気になって仕方がなかったんだなって思った。
「それって、どういうことですか?」
「では質問です。『7236』、この数字が何なのか、皆さん分かりますか?」
「それはもちろん、ヨハネのリトルデーm……」
「違うずら」
「ツッコミ早っ!?」
唐突なダイヤからの質問に、善子はいつものリトルデーモンがどうのこうのって答えようとした。
だがあえなく花丸ちゃんに突っ込まれ撃沈。
答えることを読まれていたようだ。
「ふふっ。この数字は、去年最終的にラブライブにエントリーしたグループの数ですわ。これは第1回の約10倍以上にもなります」
「10倍。そんなにグループが……」
みんな、今現在でそんな数のスクールアイドルが存在していることに驚きを隠せない。
それはもちろん俺もだけどな。サッカー部がある全国の高校の数でも約4,000校。こっちとでは比べ物にならないほど、スクールアイドルというものが爆発的に人気であることが分かる。
「スクールアイドルは確かに、以前から人気がありました。しかしラブライブの大会の開催によって、それは爆発的なものになった」
「……………………」
「A-RISEとμ's、この2つのグループの活躍によりその人気は揺るぎないものになり、アキバドームでの決勝が行われるまでになった。そしてそれと同時に、レベルの向上を生んだのですわ……」
それが、今のスクールアイドル全体の現状。
俺も、実はその話をダイヤから聞いたときには、開いた口が塞がらなかった。
スクールアイドルも一つのスポーツのように既に成り立っていて、だんだんとレベルが上がっているということには正直驚きだった。
でもそれは、どんなあらゆる競技にも起こり得ることで決して悪いことではない。むしろ良い方。
俺がやってるサッカーだって、毎年毎年レベルが上がっている。年始に行われる選手権だって、毎年優勝校は変わりに変わりまくるのだ。
それの“スクールアイドル版”と考えたら、意外にも俺の頭の中にストンと理解することができた。
そしてダイヤは、意味深な言葉を呟く。
「あなたたちが誰にも支持されなかったのも、私たちが
「えっ……?今、歌えなかったって……」
「ダイヤさん、どういうことですか?」
それには勿論のこと、曜と梨子の2人がダイヤの発言に興味を持つ。
するとダイヤが、俺に問いかけてくる。
「どうします遼さん?話しますか?」
「ダイヤ、それは俺に聞くもんじゃねぇよ」
その質問に俺は即答。
正直なところ、ダイヤが今から話そうとしている一部のところは全部嘘だ。事実もあるけれど、その嘘のほとんどはダイヤが全て考えた。
それを俺にわざわざ聞いてくるなんてな。
まどろっこしいといえば、まどろっこしいがな。
「そうですね。実は2年前、既に浦の星が統廃合になるかもしれないと、噂がありましてね」
「じ……じゃあ、この間の統廃合の話は……」
「統廃合の“本格化”と考えた方がいい。でもダイヤが今話してるのは“噂”ってだけだ」
以前に曜から聞いた統廃合はそれの“本格化”で、ダイヤが発した統廃合は当時の単なる“噂”。
ただその“噂”が2年の歳月を経て本格的になって、今こうして千歌たちが阻止しようと頑張ってるのは、どこか2年前のダイヤたちと同じで似ている。
「それで私は果南さんと鞠莉さんの3人で、統廃合をなんとかしようって奮起したのですわ……」
「“スクールアイドル”をしてな……」
「やっぱり、やってたんですね?」
「はい。1年のこの頃までは……」
みんなは意外にも、ダイヤがスクールアイドルをしていたことに驚いている様子はない。
きっとルビィちゃんが知らない間に、千歌たちにダイヤがスクールアイドルをやっていたことを教えたんだろう。当のルビィちゃんは、頭をダイヤの膝の上に乗せてぐっすり眠ってるけど……。
「町の人たちも、学校の人たちも、私たちを応援してくれていました。ですが、東京に呼ばれた私たちは、他のグループのパフォーマンスと会場の空気に圧倒され、何も歌えませんでした」
「……………………」
ダイヤも果南も鞠莉姉も、当時は千歌たちと同じ悔しさを感じていたんだ。
ダイヤの話を耳にしたみんなは、誰も言葉を発言することはなく、ただただじっとダイヤの話に耳を傾けて聞いていた。
「あなたたちは私たちと違って、あの場所で歌えただけでとても立派ですわ。胸を張りなさい」
「…………はい」
『胸を張りなさい』
それはダイヤなりの励ましの言葉。
ダイヤも、千歌たちがイベントで感じた事をもう分かっていて、それで彼女はそう言った。
だが千歌たちは、ライブを精一杯頑張っても『0』だったことのショックがあまりにも大きく、千歌が零した言葉には力が感じられなかった。
こうしてダイヤは話したかったことを話し終え、ルビィちゃんを起こしつつ、今日はここでお開きにしようと話を切り出した。
「では今日はここでお開きにしましょう。皆さん、明日からは学校なので、遅刻しないように……」
明日は月曜日。だから学校も始まる。
ダイヤはルビィちゃんを連れたまま、そのまま家に帰ることになった。それで一瞬だけ、俺はダイヤとアイコンタクトを取る。ダイヤからは『千歌さんたちを任せましたよ』という視線を送られて、俺はそれを託されたわけだ。
でもそれは、ダイヤから言われる前に俺も分かりきっていた。別に勘というわけじゃない。
長年の経験ってやつさ……。
「それじゃあ、俺たちも帰ろう」
「うん。そうだね……」
今回、千歌たちは東京のイベントで多くのことを学んだだろう。
ラブライブで優勝するためには、生半可な気持ちでは絶対に無理であること。他のグループよりも、今よりも練習は一生懸命取り組まなければならないことなど、感じたことは数多くあるだろう。
けどそれよりも、1番大切な感情があるはず。
スポーツ競技のように勝ち負けがあるから尚更。勝負で負けたら、必然的に思うことがあるよね?
まぁ、とりあえず言わないでおくよ。
どうせ言わなくても分かるはずだからさ。
「千歌ちゃん、1つだけ聞きたい」
「……うん。なに曜ちゃん?」
それで俺たちは、狩野川の河川敷から、中央公園付近の大通りのところまで戻る。すると、ちょうど美渡姉さんが運転をしている旅館の車が、道路脇に止まって俺たちを待っていた。
沼津から少し離れた千歌や梨子の迎えで、ずっと待っていた車に千歌ちゃん乗り込もうとした時に、曜が千歌に声をかける。
俺はその時に曜が、千歌に対して何を尋ねようとしたのかをすぐに察することが出来た。
曜がいつも千歌に聞く、あの
「やめる?スクールアイドル……」
「…………っ!」
「…………………」
けれども、その魔法は全然通じない。
千歌は曜の話に顔をを振り返らず、じっとその場で動かなくなる。
大事な幼馴染みの言葉に、千歌がどう答えるのかは気にはなるけれど、早くみんなに本音を言って、また“0”からリスタートすればいいと俺は思う。
だが、それはどうも簡単にはいかないらしい。
「曜ちゃん、ごめんね……」
「あっ…………」
千歌は曜の質問に答えず、曜に振り返ることなく申し訳なさそうに彼女は謝る。
千歌が車に乗った直後に梨子もその車に乗り込んで、全員が乗ったことを確認した美渡姉さんの後、梨子が車のドアを閉め始める。
「…………………」
「………………………」
曜は下に俯き、何も言わない。
千歌が自分の質問に答えてくれなかったことに、よほどショッキングなんだろう。
ただその様子を隣で見ていた俺は、どうも
バンッ!!
「…………!?」
俺は閉まりかけていたドアをこじ開けて、千歌が乗る車に体半分乗り込む。
一歩間違えれば、俺の指が切断されてしまうギリギリのところであったが、なんとか間に合った。
「遼……くん……?」
千歌の力のない言葉を聞いてくると、余計に俺の中でむかっ腹が立ってくる。いつまでもそんな風に我慢してたって、何も良いことなんて起きない。
曜や梨子、みんなに迷惑をかけるだけだ。
「…………明日だ……」
「えっ……?」
「明日までにさっきの質問、その答えを出せ。そしてそれを、みんなの前でちゃんと話せ!」
「えぇ……!?」
だから俺はひとまず、千歌と超無理矢理に約束を交わす。もちろん、千歌に嫌とも言わせないくらいに超強引に……。
そうじゃないと、こいつは“逃げる”。さっきの曜の質問に答えないように、自分の本音を口にしないだろうから。
「ど、どうしてそんなことを……?」
「もしそれをみんなに話さなかったら、俺はお前らの手伝いをやめる。もしそれか、スクールアイドルをお前がやめるかの2択だ」
「りょ…遼くん。そんな強引な約束……」
「悪いけど、梨子は少し黙っててくれ」
「……っ」
梨子には申し訳ないけど、こいつ千歌を素直にさせるためだ。多少の強引は、受け入れて欲しい。
「“約束”だからな?破るんじゃねぇぞ?」
「………………………」
それで俺は車から降りるとき、少しギロッと睨みを効かせながら千歌にそう話す。これくらいやっておけば、千歌はもう現実から逃げられない。
千歌が何も反論しないのが、その証拠だ。
「曜、帰るぞ」
「えっ?ちょ、遼くん!」
そして俺は、曜を連れて家に帰る。
俺に千歌に対しては言いたいことが言えたから、いつまでもここで油を打ってるわけにはいかない。
そんな時、後から俺についてきた曜が俺の隣まで歩いてきて話しかけてくる。
「遼くん、流石にあの言い方はないよ。千歌ちゃんが本当にスクールアイドルをやめたら、私……」
どうやら曜の奴、質問を答えて貰えなくて、更に俺が『スクールアイドルをやめろ』って言ったから超ネガティブ思考になっていやがる。
そうだよな。曜は千歌と一緒に何かやりたいって言って、スクールアイドルを始めたんだよな。
でも大丈夫さ。あいつは
「アレで良いんだよ」
「えっ……?」
「大丈夫さ。あいつはやめないよ」
俺は、曜に言い聞かせるようにそう話す。
千歌に超強引に約束をしておいて、そういう根拠のないことを言うのは変かもしれないけれど、何となく、俺はそう感じた。
ていうかあんなショッキングな事があって、千歌が本当にスクールアイドルをやめることになれば、千歌の“やる”って決めたその決心は、そんな程度のものだったのかってなる。
はてさて、どんな答えが出るのやら?
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「いつ以来かな?こういうの……」
「ダイヤから聞いた。千歌たちのこと……」
「そう」
2年前。ううん、それ以上も前にやっていたこのやり取りが、とても久しぶりに感じている。
場所は、私のパパが経営する『ホテルオハラ』の付近の船着場。
そこには私と、私をここに呼んだ果南。
私たちがいる船着場は、髪や服が舞うくらいに風が吹き荒れ、海の波を高くしていた。
「どういうつもり?」
「……なんのことかしら?」
果南の具体的でもない質問に、私はシラを切る。
でも、私の内心は分かっている。果南が私に一体何を聞こうとしているのかを……。
「千歌たちには、同じ目に合わせたくない。なのに鞠莉、どうして千歌たちを東京に行かせたの?」
「それの何が悪いの?ダイヤにも話をしたけれど、あの子たちなら、私たちが乗り越えられなかった壁を乗り越えてくれると思ったのよ」
やっぱり。聞きたいことはそれよね?
あの子たちも、下手をすれば、2年前の私たちと同じ目に遭ってしまうかもしれない。
でも私は、彼女たちに賭けているの。
学校が統廃合の危機に直面した時に、真っ先に何とかしようと動いた彼女たちを見て、彼女たちなら私たちが越えられなかった壁を乗り越えるかもしれない。 そう思ったの。
ただ私の中で、1番に分かってほしい彼女には、全く理解すらしてくれなかった。
「でも、外の人にも見てもらうとか、ラブライブで優勝して学校を救うとか、そんなことは絶対に無理なんだよ!」
『無理』か。果南の口からそんな言葉が出てくるなんて、まるで
私が知ってる果南は、どんな失敗をしても笑顔で次に走り出し、絶対に成功するまで諦めなかった。
そんな彼女が『無理』などのネガティブな言葉を使うのは、私からしたらあり得ない。目の前にいるのは、私が好きだった果南じゃないのは明らかだ。
「だから諦めろって言うの?」
「……私はそうすべきだと思う」
私の発言に賛同するように、果南はあの子たちに対して諦めさせた方がいいと話す。
やっぱり、もう昔の果南じゃないのね……。
でも、果南は
「……果南」
「……っ!」
私は果南の名前を呼び、大きくを手を広げる。
それは、果南がいつもしてくれていた『ハグ』の前フリのようなもの。
果南は私の声に顔を上げれば、私がこうして手を広げ、自分を受け入れようとしてくれていることに驚きの表情を見せる。
でも、驚きは一瞬だけ。果南はすぐに真剣な表情になって、私を鋭い目つきで睨みつけてくる。
果南にこうしても、結局はダメなのかな?
そう思った矢先だった。
「…………………」
「…………っ!」
果南が、私を見つめながらこっちに歩いてくる。
私がハグをしたいと果南は思ったのか、果南は私から視線を外すことなく、まっすぐ私を見つめて、ゆっくり近づいてくる。
私は心の中で嬉しく思った。
久しぶりのハグを、私が誘って果南からハグしてくれることに、私は今しかと心待ちにしていた。
でも、それは“非情”に裏切られる。
約束を破られるそれ以上に、私の心は抉られた。
「誰かが、傷つく前に……」
「…………っ」
果南はそう言って、私の横を通って去っていく。
私がしたハグの前フリを受け付けることもなく、果南はそのまま、私に一切振り返らずに歩いていってしまった。
“悲しい”
私には、今まで以上にそう感じた。
ただ私は、諦めたくない。
果南とダイヤと過ごした、『輝き』で満ち溢れていた
その確固たる思いを、私に背を向けて歩き去っていく果南に向かって私は言い放った。
「私は諦めない!必ず取り戻すの、あの時を!果南とダイヤと一緒に過ごしたあの時を!私にとって、宝物だったあの時を……うっ……」
私は吹き荒れる風に打たれながら、海の水しぶきで湿ったコンクリートに涙を零し、すすり泣くようにして泣いた。
多分、次回で(第8話は)終わらせる(つもり)。
カッコ閉じが多いのは、それだけ未定という
ことなので、首を長くして待ってて欲しいです。
次回も楽しみにしてください。
感想や評価、誤字脱字等、待ってます。