どうも、キャプテンタディーです。
今回も前回からの続きになっております。
ここから本格的に第8話のなかに入っていく
ので、是非見ていってください。
それでは、本編をどうぞ!
今日の内浦は、とても静かである。
あいつらがいないのもそうではあるけれど、それだけでそれを“寂しい”とかは全然感じてない。それより寧ろ、これくらいの静けさが良いくらいだ。
今日も天気は曇りもない快晴だ。太陽は俺のほぼ頭上、真上にまで上がり、そこから俺の脳天を焼き尽くしてしまいそうなくらいの直射日光の強さ。
そんな頭上から降り注ぐ直射日光を受けながら、俺は防波堤の上から海の波や音を聞きつつ、とある人物と待ち合わせをしていた。
そいつはここに来るって話してて、俺から話をしようって電話をしたのがことのきっかけ。
彼女は俺の誘いを断ることもなくすぐに了承してくれて、彼女は今こっちに向かっている最中。
でも、もうそろそろ現れるだろう。
そう思っていたその直後、当の彼女が現れる。
「お待たせ……しましたわ」
「急に誘って悪かったな、ダイヤ」
「いえ。別に構いませんわ」
俺が電話で誘った人物というのは、ダイヤだ。
彼女をどうして話に誘ったのかって理由は、一応のアレだ。昨日の果南との話の報告ってやつだ。
ダイヤには、色々とアドバイスをくれたからな。その報告をしてあげようって思ったのさ。
ただ、その報告はあまりにも“残念"なことばかりなんだけどね。俺はため息しか出ないよ……。
「それで、話というのは?」
「昨日、果南に話を聞いてきた。ダイヤには、その話の報告がしたくてね」
「そうですか。どうでしたか、果南さんは?」
「…………………」
正直、彼女の“豹変”ぶりには驚かされた。
俺が知っている果南は温厚で、いつも俺たちの面倒を見てくれる、とても優しいやつなんだ。
けど、昨日の果南は初めて見た。
ダイヤから聞かされたことをそのまま彼女に伝えて話を聞き出そうとしたら、彼女は俺の見たことない表情に変わったんだ。
“怒る”って感じの感情に近くて、鋭い眼光で果南に睨まれたことを、今でも脳裏に焼き付いている。
結局、果南から何かしらを聞き出すことは出来たのか?そう聞かれたら、答えはとても簡単さ。
“何も”、彼女は答えてくれなかったよ。
「あいつは、何も話してくれなかった」
「……そうですか」
果南は多分、もう俺には絶対に話してはくれないだろう。
口を開いたとしても、きっと果南が自分で考えた捏造で話をはぐらかすばかりだと思う。
“頑固”っていえば、間違いなくそうである。
だがそれでも、俺は果南からちゃんと聞きたいっていう思いを持つ自分がいるから、俺はまだ諦めるわけにはいかないって思ってる。
俺ってば、気になりだしたら止まらないからさ。
「でも、俺は諦めないよ」
「えっ……?」
「昨日はすぐに果南に追い返されちまったけれど、今度またあいつと会ったときは、ちゃんと果南の口から話させてやりたいって思ってる」
「でも、それでも果南さんが拒否したら?」
「あいつが言うまで追いかけてやるさ」
ダイヤのその質問に、俺は笑みを浮かべ答える。
ただ彼女は、俺とは真逆の表情をしていた。
「…………そうですか」
「……?」
ダイヤは俺の言葉に小さく呟き、顔を下に俯かせながら両手を太腿の上でギュッと握っている。
ダイヤはさっきから、とても暗い。
その行動にどうしたんだろうと俺は疑問に思い、彼女に対して口を開き尋ねる。
「どうした?今日は何か暗いな、お前……」
「そうですか?私は何でもありませんが……」
「…………………」
でも、間違いないと考えている。
彼女は顔に出るからな。何かしらで頭を悩ませている時が特に1番顔に出やすいんだ。
「何かあったの?」
「……遼さんに話すことではありませんわ」
「そういう事は、“ある”んだね」
「……っ。ずるいです、遼さん」
やっぱり、話すことは“ある”ようだ。
でも、いくら俺でも話したくないということは、 きっと俺が想像しているダイヤの悩みは相当大きいものなのかもしれない。
だとしても、それを誰も言わないで1人で抱えてしまうのは言語道断。もってのほかだ。
こういう時は、ダイヤに対して“押す”のみだ。
「1人で全部抱え込んでんじゃねぇよ」
「……っ」
ダイヤはその言葉に反応してこっちを見る。
ダイヤに対してどうして“押す”のか?これも対して理由は、特に難しいことじゃない。
ただ単に、ダイヤは俺や果南や鞠莉姉に問い詰められたりすると、自身が思ってる本心を口にする。ただ、それだけのこと。
ダイヤはあまりにも隠し事をするのが苦手でさ、すぐに隠し事がバレちまうんだ。
まぁ、誠実なダイヤの性格たる所以だよ。
「俺がそんなに信用ない?」
「……っ!違います!そういう事では……!」
「だったら思うことがあるなら、それを俺にガツンとぶつけてこいよ!お前の気持ちは、俺が全部受け止めてやるからよ!」
「……っ!遼……さん……」
でも、だからといって“本心”を聞き出すために俺は“演技”をしているわけじゃない。
俺も、ダイヤから聞きたい“本心”で言っている。
決してそういう誤解はしないでほしい。
「話してくれダイヤ。俺は、信じるからさ」
「うっ、うぅ……くっ……」
そして俺がダイヤに対して思う本心を話した時、ダイヤの感情は崩壊して、彼女の潤んだ瞳から次第に涙が溢れる。
何かとお堅いダイヤが見せてるその涙は悲愴感が漂う。何か悲しい事があったような涙で、ダイヤのその表情が全てをものがっていた。
「うっ、うぅ……」
「ほれダイヤ。そんな顔するな……」
俺は右手の人差し指で、ダイヤの目に浮かぶ涙を拭う。
綱元の長女が、そんな簡単に泣いちゃいけないんじゃないかって思うだろうけど、実際彼女はとてもと言っていいほど泣き虫だ。
親もいるし、妹のルビィちゃんがいるから、今はあまり泣くことは少なくなったけど、性格は本当に変わらないものだと改めて感じることが出来た。
するとダイヤが、俺に向かって指摘してくる。
「これは……あなたのせいですわよ」
「はいはい。ごめんな?ダイヤ“ちゃん”」
「……なっ!?」
『自分が泣いたのは俺のせいだ』
ダイヤが泣いてしまった理由を俺にしてくるもんだから、俺はダイヤに対して“昔”の呼び名で呼ぶ。
実は俺やダイヤが小学生の頃に、ダイヤにちゃん付けで呼んでいた時期があったんだ。あの頃いつもダイヤは果南の後ろに隠れっぱなしだったから、今となっては、どういう理由でそう呼んでいたのかは全く俺自身覚えていない。
強いて挙げるなら、“可愛かった“から、かな?
「な、なんで今更ちゃん付けで……!」
「懐かしいだろ?あの時のお前はずっと果南の後ろに隠れっぱなしでさ、弱虫で泣きm……」
「それ以上はダメ!ブッブーですわ!」
ダイヤは昔のちゃん付けで呼ばれたことから恥ずかしくなって、茹で上がった真っ赤なタコみたいに顔全体が真っ赤になる。
だんだんと昔のダイヤっぽくなってきたからさ、こうなるとやっぱり聞きたくなるんだよね。ルビィちゃんもたまに声に出してるけど、またダイヤから発せられる鳴き声が聞きたい。
まっ、それはそれで置いといて、だ。
「あははっ。まぁそれは置いといてだよ」
「はっ!?んっ、んんっ!」
ダイヤも俺の言葉を察してくれて、“ハッ”と我に帰って咳払いを一つする。
話が逸れてしまったことには後悔は一切にせず、俺は仕切り直してダイヤにまた訪ねる。
「じゃあダイヤ。話してくれるな?」
「はぁ、本当に、仕方のない人ですね……」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
俺からの質問にダイヤは笑みを浮かべ、やれやれといった風にそう答える。久しぶりに見せたダイヤの笑顔は、とても煌びやかな笑顔だった。
ダイヤにはとりあえず、俺に対して自分の悩みを素直に話をしてくれた。
たが、その悩みはとんでもないものだった。
俺はダイヤからその悩みを聞いて、正直に言わせて貰えば、今にも“あいつ”の顔をぶん殴りたいって気持ちになった。
ダイヤは昨日、“あいつ”から酷いことを言われたらしくて、俺にはとても信じられなかった。ずっと一緒だった友達だったのに、ダイヤに対してそんなことを言っちまうなんてな。
“幼馴染み”として、人間性を疑うよ。
本当に酷い奴だよ……“あいつ”は……。
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「この街ね、1,300万人の人が住んでいるのよ」
「そうなんだ……」
イベントのライブを無事に成功させた私たちは、東京の観光で東京スカイツリーに訪れていた。
世界一高いタワーから見える景色は絶景で、下にいる多くの町の人たちが米粒のように小さく、遠くに見える富士山が、ビルに遮られることなく綺麗に見える観光スポットなんだ。
普通なら私たちは、こういうことにワイワイして観光を楽しんでいるはずなのに、今の私たちは全然それどころではなかった。
「……って言っても、全然想像できないけどね」
「やっぱり違うのかな?そういうところで暮らしていると……」
“圧倒された”。その言葉が、イベントに参加していた他のスクールアイドルを見ての率直の感想。
逆に私たちが、ライブでとんでもないミスをしたということじゃなくて、ただただ私たちよりも、他のスクールアイドルの方が魅力的に感じた。
そのことで私と梨子ちゃんは、こんな感じにちょっと憂鬱な雰囲気になっちゃってる。
あまり、遼くんにも見せたくない雰囲気だよ。
「どこを見てもビルだらけずら……」
「あれが富士山かな?」
「うん。きっとそうずらね」
それで私と梨子ちゃんが2人で話してるなかで、その横でルビィちゃんと花丸ちゃんが双眼鏡を手に持って景色を見渡していた。
2人も一見普通に話しているように見えるけど、実際の胸中は私たちと同じ気持ち。花丸ちゃんは特に他のスクールアイドルを見て、そのグループに目を奪われていたのを私は覚えてる。
それくらい、私たちはレベルの『差』を感じた。
「最終呪詛プロジェクト、ルシファーを解放!魔力2000万のリトルデーモンを、召喚!」
たった1人を
「善子ちゃんは元気だね〜!」
「善子じゃなくて、ヨ・ハ・ネ!」
いつからそんなマントを羽織っていたのって、私は思わず彼女にツッコミを入れたくなる程に、彼女は相変わらずの堕天使っぷりを見せている。
善子ちゃんらしいといえば、善子ちゃんらしい。
「ライブ終わったのにヨハネのままずら……」
「うっ、うううるさい!」
でも例え彼女でさえも、私たちと同じ気持ちには少なからずなっているのかもしれない。
“悔しい”って……。
だからわざと明るく振舞って、重苦しい雰囲気を軽くしようと思ってやっているのなら、善子ちゃんは名前の通り、やっぱり善い子なんだと思う。
「お待たせ〜〜!」
するとそこへ、みんなの分のアイスを買ってきた千歌ちゃんがこっちに戻ってくる。
私たちの感情とは正反対で、いつもの明るい笑顔を振り撒く千歌ちゃん。彼女は自分が買ったアイスを私たちの前に差し出して、美味しそうだと私たちに話してくる。
「見てみんな!すごいよ!キラキラしてる!」
「千歌ちゃん……」
「これ凄く美味しいよ!食べる?」
「えっ?あ、うん……」
「はい!ルビィちゃんたちも!」
「あっ、ありがとう……ございます……」
「…………………」
もしここに遼くんがいたなら、千歌ちゃんの行動と心中がすぐにバレ、大きく怒鳴られるだろう。
それくらい千歌ちゃんが考えていること、心中で思うことが私には分かっていた。
なのに私は、すぐに千歌ちゃんに言えなかった。
「みんなで全力で頑張ったんだよ?」
「ち、千歌ちゃ……」
「私ね!今日のライブは今までの中で1番良かったって思った。声も出てたし、ミスも少なかったし。それに、周りはみんなラブライブの決勝に出てる人たちでしょ?入賞できなくて当たり前だよ……」
「…………………」
確かに、千歌ちゃんの話に間違いはない。
私たちのライブは、今までにないくらいの成功を収めた。ミスもなくて、見てくれているお客さんを楽しませるくらいには出来たと思ってる。
でも、私たちのそれ以上に他のグループのレベルが高くて、ラブライブの決勝にまで駒を進めた実力を、私たちはまざまざと見せつけられた。
入賞出来なかったのは、当たり前。ただ、本当にそれは
そんな時に梨子ちゃんが千歌ちゃんに尋ねる。
「だけど、ラブライブの決勝に出ようと思ったら、今日出ていた人たちより、もっと上手くならないといけないってことでしょ?」
「それは、そうだけど……」
その言葉に、千歌ちゃんは言葉を詰まらせる。
千歌ちゃんが目指してるラブライブの決勝には、絶対に今日以上のパフォーマンスをしないといけなければ、優勝とかそれ以前に、勝てない。
それを身を以て感じていたはずの千歌ちゃんは、みんなに自分が思ったことを話す。
「私ね、Saint Snowを見たときに思ったの。これがトップレベルのスクールアイドルなんだって。このくらい出来なきゃダメなんだって。なのに、Saint Snowは入賞すらしていなかった。あの人たちのレベルでも無理なんだって」
「それはルビィもちょっと思った」
「マルも……」
この話にはやっぱり、ルビィちゃんも花丸ちゃんも感じてはいるみたい。
Saint Snowの2人が見せたあの演技でも、2人は入賞すら出来なかった。ラブライブで優勝するためには、本当にもっとこれ以上の練習を積み重ねなければならない。
2人はきっと、そう感じたんだと思う。
すると、善子ちゃんがみんなに言い放つ。
「あ、あれは絶対にたまたまでしょ?天界が放った魔力によって……」
「何がたまたまなの……?」
「何が魔力ずら……?」
重苦しく雰囲気が暗くなっている中、善子ちゃんはたった1人でみんなを明るくさせようとする。
でも堕天使の言葉を使ったせいで、ルビィちゃんと花丸ちゃんからニヤついた表情をされてしまい、双眼鏡で顔色を伺われ、弄られてしまう。
「そ、それはその……」
「慰めるの下手すぎずら!」
「何よ!人が気を利かせてあげるのに!」
善子ちゃんについては相変わらずだけど、さっきまでの重苦しい空気は少しだけ軽くなっていた。
場の雰囲気を少しでも明るくさせようとした善子ちゃんは、やっぱり“善い子”だった。
そのノリに乗っかるように、千歌ちゃんも言う。
「そうだよ!今はそんなことを考えても仕方ない。それよりさ、せっかくの東京なんだから、みんなでいっぱい楽しもう!」
千歌ちゃんの『楽しもう!』という言葉と一緒に出た笑顔は、きっと善子ちゃんと同じように、暗い雰囲気を明るくしたいという気持ちの表れ。
けれども私や梨子ちゃんは、表情を笑顔には出来なかった。あまりにも千歌ちゃんの笑顔は偽物で、いかにも無理して笑ってるように見えてしまう。
今までずっと一緒で、千歌ちゃんの気持ちだって誰よりも分かっているのに、この時の私は、自分が情けないと感じていた。
そしたら次の瞬間だった。
プルルルルッ♪ プルルルルッ♪
「あっ、私の携帯だ」
「えっ?誰からだろう?」
千歌ちゃんの携帯に、電話がかかってきた。
電話の送信先は誰なのかよく分からないけれど、千歌ちゃんはその電話に躊躇する事なく出る。
「はい、高海です。えっ?はい、まだ近くにいますけど、はい、はい。分かりました」
いくつかの受け答えを目の前で千歌ちゃんはしたあとで、電話はそこで途切れる。
誰からの電話なのだろうと思い、私は尋ねる。
「千歌ちゃん、誰から?」
「イベントの主催者側から。何か私たちに渡したいものがあるって言ってて、イベントの会場に戻ってきて欲しいんだって……」
電話の送り主はイベントの主催者。
主催者側から何か渡すものがあるらしく、それを連絡するために千歌ちゃんに電話してきたみたい。
その事に梨子ちゃんも同じことを考えていたら、善子ちゃんがとんでもないことを呟く。
「何を渡されるんだろう?」
「もしや……ギャラ!?」
「違うずら!」
うん、私も花丸ちゃんと同じ意見。善子ちゃんが自分で思ってるものとは全然違うものだと私はそう思ってはいる。
お金が貰えたら、それはそれで嬉しいけど、でもそれは何となく違うと思うんだ。
「とにかく、一旦みんなで戻ろう!」
「「「「「うんっ!」」」」」
そんな千歌ちゃんの言葉に、私たちは東京スカイツリーを後にし、足早にしてイベントの会場に戻ることにした。
ただ、私たちはまだ知らないのだ。
本当の意味での、自分たちがいる
若干執筆自体が停滞気味で申し訳ないです。
展開は分かってるのに、どうしてもその通りには
あまりしたくない自分がいて、とても困ってます。
という事で次回も、この続きとなります。
まだしばらく地道に進めようと思ってるので、
次回も是非楽しまにしててください。
感想や評価等も、お待ちしてます!