少年と少女達の輝き目指す物語   作:キャプテンタディー

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どうも、キャプテンタディーです。

今回は、前回の3話からの続きになります。
やっとあの子も登場して、物語も進展していく
ので、是非見ていってください。

それでは、本編をどうぞ!







#4 それが全ての始まり

 

 

 

 

 それから果南ちゃんの家をあとにして、またフェリーに乗って港に帰ってきた私と曜ちゃん。

 曜ちゃんはそれから、直接家に帰るということで、ちょうど来たバスに乗って帰ることになった。

 

 

「じゃあ千歌ちゃん、またね!」

「うん!また明日!」

「えへへっ♪ヨーソロー♪」

 

 

 曜ちゃんは私にいつもの敬礼を見せてバスに乗り込み、私は曜ちゃんに手を振って見送った。

 

 

「バイバ〜イ!」

 

 

 曜ちゃんが乗ってるバスが、全く見えなくなるまで手を振り続けたあと、私は帰路へと歩み始めた。

 フェリーが出る港からさほど遠くもないし、家まで歩いて10分のところだから、全く問題はない。

 

 曜ちゃんと別れた私は、カバンから自分で作ったチラシの紙を取り出す。

 

 

「どうにかしなくっちゃな……」

 

 

 実際のところ、生徒会長に対して、なんとか弁解して承認してもらわなきゃ、スクールアイドル部を作ってもくれないから。やるしかないと思う。

 海に沈もうする太陽と、太陽によってオレンジ色に輝く海を眺めながら、私は歩道を歩いていた。

 

 有耶無耶に考えてても仕方ない。

 そう思った私は、急いで家へと帰ろうと思って、足の歩幅を広くして歩いていた。

 

 

 フワッ……

 

 

「……えっ?」

 

 

 そしたら突如として、花のような…フローラル?のような匂いが、私の鼻を突かせる。

 

 

「なんだろう、この匂い……」

 

 

 この匂いはどこからなのか?

 その匂いにつられるようにして、私は匂いのありかを探るように周辺を見渡した。

 

 

「……………」

「……っ!」

 

 

 すると周辺を見渡していた私の正面、港の海岸に、1人の少女が海を見つめながら立っていた。

 綺麗な顔立ちで、赤みがかった長い髪に、頭の後ろにはピンク色のヘアピンをしている。

 

 身長は見るからに、私より少し高い。

 

 

「綺麗な人……」

 

 

 そんな言葉が似合うくらい、そんな言葉が口から溢れるくらい、私はその女性に魅入っていた。

 だけど少女はここら辺の高校生ではない。

 そうでないと分かるのは、少女が着ている制服にある。ここら辺では見たこともない制服だった。

 

 真っ青なブレザー、水色に少し赤い模様があるとても短いスカート、胸のあたりには水色のリボンを身につけていた。

 なんでこんな時間にここにいるんだろうと思った私は、ふと彼女に声をかけようと考える。でも声をかけたら、変な人だと思われちゃうかな?でも同じ高校生だから、きっと話してくれるだろう。

 

 そう思った私は、少女がいる海岸に向かって歩み始めようと思った。

 だが海岸に立っていた彼女は、私が思っていた“綺麗な少女”というレッテルを覆すような、私でも開いていた口が塞がらないような行動をとる。

 

 私は、その行動に驚くしかなかった。

 

 

 スルッ……

 

 

「……えっ!?」

 

 

 なんと彼女は、着ている制服を脱ぎ始めた。

 

 

 スルッ……スルッ……

 

 

「えっ…嘘っ?まだ4月だよ?」

 

 

 制服のブレザー、スカート、そして、胸のリボンにワイシャツを次々に脱いでいく彼女。

 彼女は…まさかの露出狂!?って思ってたら、ワイシャツの下には競泳用の水着を見に纏っていた。

 

 見るからに分かる…。今から彼女は、今まさに海に飛び込もうとしていることに……。

 

 

「たあああぁぁぁ!!」

 

 

 そして彼女は海へと走り出す。

 

 まだ4月でも、海はまだ冷たい。

 水着なんかで入ったら、きっと凍え死んじゃうかもしれない。だから私の体は、自然に彼女の元へと走り始めていた。

 ギリギリだったけど、彼女が海へと飛び込もうとしていた寸前に、私は彼女の腰の部分をホールドして、海に飛び込ませないようにした。

 

 

「だめえええぇぇぇ!」

 

 

 絶対に海に飛び込ませないと、どんなに彼女が力ずくで海に飛び込もうとしていても、決して離れないと、私は彼女にしがみついた。

 

 

「待って!飛び込んじゃダメ!」

「離して!行かなくちゃいけないの!」

 

 

 なんで海に行かなきゃいけないのか私も分からない。知らない赤の他人だけど、いきなり目の前でこんな行動をされたら、止められずにいられない。

 

 もしかしたら、自殺かもしれない。

 そんなやばい思いが頭をよぎった私は、彼女を海から遠ざけようと行動に出る。

 

 

「てやあああぁぁぁ!」

 

 

 私は力を振り絞って彼女を海から遠ざけるように、勢いで自分の真後ろに彼女を移動させた。

 勢いに任せた行動だったから、勢いによって、私も彼女もその勢いで共倒れに倒れた。何とかだけど、それで彼女の行動を止められることが出来た。

 

 

「はぁ…はぁ…ふぅ……何とか止められ…」

「なんで止めるのよ!」

 

 

 そしたら私に向かって、彼女は叫んできた。

 止められるのを嫌がっていた彼女は、私に鋭い視線を向けてきて、私に向かって怒鳴るように言い放ってきた。

 

 その言葉に私も我慢が出来なくなって、私も彼女に向かって怒鳴るように注意をした。

 

 

「なんでって…いきなり海に飛び込むのは危険なんだよ!死んじゃうかもしれないんだから!」

「………っ!」

 

 

 死んじゃうかもしれない。彼女は私の言い放った言葉を間に受け、彼女はシュンと下に俯いてしまう。

 言い過ぎだとは私も思ってる。けど、突然にあんな行動を目の当たりにしたら、自殺かもしれないと、そう思っても可能性はゼロじゃなかったから、私は彼女に話を続けた。

 

 

「それに4月だけど、海もまだ冷たいし、沖縄じゃないんだから。海に入りたいなら、ダイビングショップもあるのに…」

「……ごめんなさい。私ったら……」

 

 

 私はそう言って彼女に、ダイビングショップや、海は4月でもまだ冷たいと説明をしたあとで、彼女は私に対して謝ってきた。

 もちろん、私は彼女の海に飛び込もうとした動機を聞く上で、彼女を許そうと話した。

 

 

「気にしないで。私もちょっとびっくりしちゃっただけだから、謝らなくてもいいよ」

「うん…ありがとう……」

 

 

 彼女はお礼を言ってきたから、とりあえず今のひと騒動は無事に解決して収まった。

 それから彼女には制服を着てもらった。し…下着は持ってきてなかったから、彼女はまた水着の上からせっせと制服を着た。

 

 そして私は彼女が着替え終わったあとで、彼女に海に飛び込もうとした動機を尋ねた。

 

 

「ねぇ、どうして海に入ろうとしたの?」

「……海の音が聞きたかったの」

「海の音?」

「うん、海中の音……」

 

 

 下に俯き、彼女は体育座りなったあとで、私に向かって海に飛び込もうとした動機を話してくれた。

 

 私は、その動機の理由も尋ねる。

 

 

「どうして?」

「私ね、曲の作曲をしてるの」

「作曲!?へぇ〜凄いね!」

 

 

 彼女は何かしらの作曲をしていて、きっとその作曲が思い浮かばなかったから、こうして海に来て飛び込もうとしていたみたい。

 

 作曲かぁ…。この子も凄いなぁ〜。

 

 それから私は、彼女がどこの学校なのかを尋ねると、彼女から思いがけない言葉が返ってくる。

 

 

「そういえば、あなたはどこの学校?」

「私…東京から来たの」

「と…東京!?わざわざ!?」

「わざわざっていうか……」

 

 

 この少女はわざわざというわけではないけれど、彼女はなんと東京からやって来たという。

 はっ!この子が東京からやって来たと言うのなら、もしかしたら彼女もスクールアイドルのことを知ってるのかな?

 この時に私はそう思い、スクールアイドルを知っているのか確信を掴むため、彼女に対してウキウキしながら私は尋ねる。

 

 

「ねぇ…あなたスクールアイドルって知ってる?」

「スクールアイドル?何それ?」

「知らないの?スクールアイドルだよ!学校でアイドル活動をして、大会が開かれたりするの!」

 

 

 彼女はスクールアイドルを知らないみたい。

 彼女はもしや、東京に住んでいるけど、スクールアイドルとかに興味がないのかもしれない。

 

 そう思っていたら、彼女からスクールアイドルというものが、そんなに有名なのかと尋ねてきた。

 

 

「そんなにスクールアイドルって…有名なの?」

「有名だよっ!ドーム大会も開かれたこともあるくらいで、超〜人気なんだよ!…っていっても、私も詳しく知ったのは最近なんだけど…」

 

 

 私の言葉に、『ふふっ』と笑う彼女。

 

 

「そうなんだ…。私もずっとピアノをやってたから、そういうの疎くて……」

 

 

 彼女は多分、小さい頃からピアノをずっとやっていたんだと思う。だから、スクールアイドルの存在を私が教えるまで知らなかったんだと思う。

 そうなんだ。ピアノをずっとやっていたから、スクールアイドルのことを知らなかったんだね。

 

 じゃあ…興味がないわけじゃないんだね。

 

 

「じゃあ見てみる?なんじゃこりゃってなるから」

「なんじゃこりゃ?」

「なんじゃこりゃ!」

 

 

 私はそう言ってスマホをポケットから取り出し、とあるスクールアイドルの写真を彼女に見せる。

 どんな写真かと聞かれれば、確か東京で見た、9人組の女子高生が写っている写真。私はその写真を彼女に見せて、この9人のスクールアイドルグループを見てどう思ったかを尋ねた。

 

 

「……どう?」

「うん、なんというか…普通?」

 

 

 普通……普通ね……。

 

 でも、彼女がそう言うのは想定内。

 

 だって、私も同じことを思っていたから。

 

 

「……………」

「あっ…いえ!悪い意味じゃなくて!アイドルって言うから、もっと芸能人みたいな感じなのかなって思ったっていうか…」

 

 

 私の無言の反応を見て怒らせた、又は誤解を生んでしまったのかと思った彼女は、誤解を解こうと慌てて話の修正をする。

 でも私は、誤解を解こうとしていた彼女が言い切る前に、彼女に対して私はこう言った。

 

 

「……だよね……」

「えっ……?」

 

 

 “だよね”。たったその一言に、彼女は困惑する。

 困惑するのは当たり前だよ。だって、私にしか分からない意味で言ったのだから。

 何に対して、何の意味も分からない単語を発したら、彼女は困惑するに決まってる。

 

 だからその一言の意味を理解してもらうため、私は彼女に対してこう言った。

 

 

「私ね、普通なの…」

「普通……」

 

 

 自分は何もない『普通』であるということ…。

 私がそう言ったあと、そこでやっと彼女は、私が何の意味に対して『だよね』と言ったのかを、理解することが出来たみたい。

 

 彼女も、同じことを考えていたんだって…。

 

 

 それから私は彼女の一歩前に出て、海の水平線に沈もうとしている夕日をずっと見つめながら、自分が普通であることの意味について話し始めた。

 

 

「あなたみたいにずっとピアノを頑張ってきたとか大好きなことに夢中でやってきたとか、将来こんな風になりたい夢とか1つもなくて、どんなに変身しても普通なんだって、そんな風に思ってて、それでも何かあるんじゃないか〜って思ってたんだけど、気づいたら…もう高校2年になってた…」

「……大変だったんだね」

「うん……大変だった」

 

 

 彼女はずっと体育座りのままだったけど、私の話を真剣に聞いてくれてた。

 彼女も私の話を聞いて、何かを感じてくれたのかもしれない。心配そうに声をかけてくれたから、私はそれがとても嬉しかった。

 そして私は彼女に向かって、私の人生そのものを変えてくれた人たちに出会ったことを話す。

 

 

「でもそんな時、出会ったの!あの人たちに!」

「あの人たち?どんな人たちなの?」

「私と同じような、どこにでもいる普通の高校生なのに、凄く…キラキラしてた」

「キラキラ…してた?」

 

 

 簡単な言葉を並べただけで、それをも〜っと詳しく彼女に話すのは、私はちょっと苦手なの。

 でも私は、彼女に十分に私の思いが伝わるような、そんな言葉を紡いで私は言い放った。

 

 

「スクールアイドルって…こんなにも…キラキラと輝けるんだな〜って思ったの!」

 

 

 私が感じたそんな思いは、彼女にもきっと分かってくれると思う。それくらい、彼女に十分に伝えられると思ってるから。

 

 

「気づいたら全部の曲を聞いてた!毎日動画見て、歌を歌って、ずっと覚えてた!」

 

 

 両手を大きく広げ、あの人たちに出会ってから私はいろんなことをやり始めたことを打ち明けた。

 あの人たちが歌っていた曲の動画を見たり、曲の合間に踊っている振り付けまで自分も踊ったりして、ずっとあの人たちに夢中だった。

 

 そうしているうちに、私は思うようになった。

 

 

「そして思ったの。私も仲間と一緒に頑張って、この人たちが目指したところを、私も目指したい!」

 

 

 

 

 

「私も…輝きたいって!!」

 

 

 

 

 あの人たちのようになりたいと思うようになった。

 

 あの人たちのように、キラキラ輝きたいと思った。

 

 でもまずは生徒会長に部として認めてもらわなきゃいけないけど、きっと出来る。そう信じてるから。

 すると彼女の方から、口を開いて言った。

 

 

「ありがとう…」

「えっ…?」

「何か…頑張れって言われた気がする…今の話」

「本当?」

「えぇ!スクールアイドル…なれるといいわね」

「うん!ありがとう!」

 

 

 私の知らないうちに、今の話が彼女への応援の言葉になっていたみたい。でも、悩んでいるならお互い様だよね!私も頭にあったモヤモヤが、少しばかりふっ切れた気がした。

 

 

 彼女の方も、いい曲が出来るといいね!

 

 

 そう思っていた私は、とりあえず私から自己紹介を始めた。まだ出会って数分しか経ってないけど、別に仲良くなってもいいよね?

 

 

「あっ、私の名前は高海 千歌!あそこの丘にある、浦の星女学院っていう高校の2年生なんだ!」

「あっ、そしたら私と同い年ね」

「本当!?」

「えぇ、本当よ!」

 

 

 彼女は、私と同い年だった。

 同い年なら彼女ととても仲良くなれそう。

 そう思った矢先に、彼女は立ち上がって私の横まで来て、次に彼女が自己紹介を話し始めた。

 

 

「私の名前は、桜内 梨子」

「梨子ちゃん、いい名前だね!」

「ふふっ、ありがとう!」

 

 

 名前は、桜内 梨子って言うみたい。

 とても素敵な苗字だし、綺麗な桜内さんにとって、素敵な名前だと私は思った。

 

 そして彼女は、通っている学校の名前も言った。

 

 

「高校は…音ノ木坂学院高校」

 

 

 桜内さんは東京の学校に通ってるって言ってたし、凄く頭のいい学校なんだろうなぁ…。

 すると桜内さんは、『あっ』と声を出して、何かを思い出したかのように口を開く。

 

 

「あっ、そろそろ行かなきゃ!」

「えっ?もう行っちゃうの?」

「うん。また会えたら…いつかね?」

 

 

 もう桜内さんは行ってしまうみたい。さっき初めて会ったばっかりなのに……残念。

 でも、もし東京に行ってまた桜内さんに会えたら、今度は私から会いに行こう!

 

 そう思った私は、なんだか寂しくなかった。

 

 

「うん!また会おうね!」

「それじゃあ、さよなら!」

「うん!さよ〜なら〜!」

 

 

 私と桜内さんはそんなやり取りをしたあとで、桜内さんは私に背を向けて、彼女は疾風のように私の前から走り去ってしまった。

 

 

「また…会えるかな?」

 

 

 私は彼女が走り去って行った方向を向いて、ボソッと小さく…そう呟いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日も今日とて、曜は俺の部屋に上がり込んできた。もう夜の9時を回っているのに関わらずだ。

 毎回のように俺の部屋に来るのは、もう小さいときの頃だから仕方ないかもしれない。

 

 それで俺は曜に対して、ジト〜ッとジト目で睨みながら、俺は彼女にあることを尋ねた。

 

 

「んでっ?お前…千歌に言えたのかよ?」

 

 

 俺の勉強机の椅子は回転式。机から離れ椅子を回して曜に正面に向くようにして尋ねると、曜は俺の質問に対して変な汗を流し、ぶっきらぼうに俺の質問から話を逸らそうとする。

 

 

「えっ?な…何のことかな?」

 

 

 そっぽを向き、俺と視線を合わせようとしない彼女を見て、俺は思った通りだと心の中で思った。

 だから俺は、夕方に千歌から電話してきたことをもとに、曜にこう話したのだ。

 

 

「とぼけんなよ。今日の夕方、千歌から電話してきたとき、曜はまだ千歌に一緒にスクールアイドルやりたいって言ってないって分かったからな」

「えっ!?あの時に分かったの!?」

「あぁ。お前があの時に千歌に言い放った一言で、俺はすぐに分かったよ」

 

 

 

『私も千歌ちゃんのことを応援するから、スクールアイドル、やめないで?』

 

 

 

 曜が千歌に対して、『一緒にスクールアイドルやりたい!』と言ってないということが分かったのは、曜が言ったこの一言だ。

 

 何ともまぁ、相変わらずのヘタレ曜だ。

 

 

「なんだ。分かっちゃってたんだ……」

「それで?ちゃんと千歌に言うんだろう?」

「うん。もちろん言うよ。もうこの機会を逃しちゃったら、きっと千歌ちゃんと、もう一緒に出来ないかもしれないから…」

 

 

 曜は下に俯いて、一つの決心を決める曜。

 

 その様子なら、俺は心配しない。

 なんせ、曜が千歌に『スクールアイドル一緒にやりたい!』って言うだけだからな。変に余計な心配は全然していない。

 

 

「曜がそう言うのなら、俺は心配しない」

「うん。遼くんに心配させちゃうのは、ちょっと面倒くさいからね」

「面倒くさいとはなんだ面倒とは…」

 

 

 曜に面倒くさいと言われた。

 別にメンタルはやられてないだけど、変にそう言われると、心がしんどくなる。

 

 

「それにね、あのあとに、千歌ちゃんが嬉しそうに言ってたよ。ありがとうってね…」

「そっか。あいつがそんなことを……」

 

 

 あいつらしいといえば、とてもあいつらしい。

 元気だし、馬鹿だし、何かと面倒な奴だけど、根っこは全くのいい女の子だから、まぁ嬉しい。

 

 だがそんなことをよそに、曜は何故か頬を膨らませて、ジト〜ッと俺をジト目で睨んでいた。

 あれ?もしかして…顔に出てた?

 

 

「曜?どうしたそんな顔して…?」

「別に…なんでもないよ?」

 

 

 曜の反応を見る限り、俺が千歌の言葉に対して嬉しく思っていら表情は出ていなかったので、ひとまず良しとするが、曜はなんだかご機嫌斜めだ。

 

 まぁこういうときは、アレだね。

 

 そう考えた俺は、曜に一言呟いたあとで、曜にいつもやっているアレを繰り出した。

 

 

「なんだと〜このやろ〜!」

「えっ!?ひっ…あは…あははは!遼くん…やめ…あははは!くす…くすぐったいよ!あははは!」

「ほれほれ〜!こちょこちょだ〜!」

「あははは!やめ…いひひひっ!」

 

 

 通称:こちょこちょの刑

 

 

 俺が曜や、千歌に対してよくやる刑だ。

 両手を上手く使って、曜の脇腹や、脇の下をこちょこちょして、思う存分に懲らしめるためにある。

 俺は曜の後ろに瞬時に回り込み、両手を曜の脇腹に持っていきこちょこちょをする。

 

 ビクッと…こちょこちょに対する反応を示した曜は、笑いと共にベットに倒れこむ。しかもうつ伏せに倒れたから、俺が曜の上になるわけで、思う存分にこちょこちょを続けた。

 

 

「遼くん…こちょこちょなんて…卑怯だよ…!」

「だってお前が不機嫌なんだから、こうやってお前を笑わせてやってるんだよ!」

「ちょ…そんなことで…くひっ、あははは!」

 

 

 だいたい1分くらい、こちょこちょを続けた。

 曜は俺のこちょこちょにもがくように、自分の両足をバタバタとベットを叩く。曜の笑い声は止まず、それに伴って涙も溢れる。

 

 俺は曜を元気付けるためにやったわけだから、後悔はない。むしろ楽しかった。

 

 

「はぁ…はぁ…遼くんいつもこうなんだから…///」

「でも、元気は出ただろ?」

「うっ、うん。元気は、出たよ」

「それならよろしい」

 

 

 俺は曜から離れると、彼女はうつ伏せから仰向けになって呼吸を整える。こちょこちょのせいか、顔もほんのり赤くなっていた。

 

 それから曜が落ち着いたあと、今日の学校で、生徒会長との話についてを曜から詳しく聞いたあとで、曜は10時を回ったところで帰ると言い出した。

 

 

「それじゃあ私そろそろ帰るね。明日も学校だし、千歌ちゃんもきっとまた生徒会長のところに話しに行くだろうから」

「分かった。あいつには頑張れよって言っておいてくれ。それでも十分にやる気出るだろ」

「まぁ、千歌ちゃんだからね!うん!ちゃんと千歌ちゃんに伝えておくよ!」

 

 

 千歌にはエールを送ることが、彼女をやる気にさせる1番のポイントだ。

 曜もついてるから、千歌が何かしらでむやみに突っ走ってしまうところがあったら、曜がそれを上手く制してくれるはずだ。

 

 千歌も曜が一緒にスクールアイドルしてくれたら、きっと大喜びだろうしね。

 すると曜は、何かを思い出すように俺に振り向く。

 

 

「あっ、そうだ!遼くん!」

「んっ?今度はなんだ?」

 

 

 今度は曜が何を話し出すんだろうと、曜が振り向きざまに声をかけてきたことに問い尋ねると、彼女は自分が言うことに恥ずかしさを覚えたのか、頬を真っ赤染めていた曜が尋ねてくる。

 

 

「あの…ね?私が…スクールアイドルになったら、遼くんは応援…してくれる?///」

 

 

 なんかそれ…この間も聞いたような気がする。

 

 でもきっと、曜はもう一度聞きたかったんだろう。

 

 俺から発せられる、その言葉にな……。

 

 

「何を今更…するよ!しないわけがない!」

「……っ!///」

 

 

 曜は俺のその言葉に、心を何かを掴まれたのかと顔を真っ赤に染め上げる。

 自分がこれからやろうとしていることに、幼馴染みから応援されるのは、やっぱり嬉しいものなのだろう。やっぱりそりゃ、俺もそうだけど……。

 

 曜や千歌から応援されれば、そりゃもちろん…その応援に応えるべく燃えるわけにはいかない。

 曜の心も、きっとこんな感じなんだろう。

 

 

「応援するよ。曜のこと!」

 

 

 そして俺はもう一言、そう言って笑顔を見せると、曜は嬉しくてたまらなくなって、曜からも嬉しそうに満面な笑みを浮かべてお礼を言った。

 

 

「うん!ありがとう遼くん!///」

「……っ!///」

 

 

 その表情に、俺もまた然り。

 

 

「じゃあまたね!おやすみっ!」

「あ…あぁ、おやすみ」

 

 

 曜の満面な笑顔に不意を突かれた俺は、曜のおやすみの言葉に遅れて反応する。

 曜が笑顔のまま手を振って部屋を出て行ったそのあと、俺はさっきの曜の笑顔についてふと思った。

 

 曜って、あんな笑顔が出来たんだってね…。

 

 

「あいつ笑顔…反則だろ…///」

 

 

 動悸が早い。顔が赤くて熱くなってる。

 これはもう…今夜は寝付けそうにないな…。

 

 あっ、そういえば…。

 

 結局のところ、あいつが不機嫌だったのは一体なんだったんだろう?まぁ…またあとで聞くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、浦の星女学院の教室。

 そろそろホームルームが始まるから、隣同士の私と千歌ちゃんは席についていた。

 

 

「1人もいない。生徒会長の言う通りだったよ…」

 

 

 それで今、なんで千歌ちゃんが机にもたれかかって項垂れているのかというと、今日もまた生徒会長のダイヤさんのところに行った私たちに、ダイヤさんからこう言われたのだ。

 

 

『スクールアイドルを始めるときには、オリジナルの曲でなくてはいけない。最初に難関になるポイントですわ。それに、ここには作曲が出来る人なんていませんもの…』

 

 

 ダイヤさんからのきついお言葉。

 それに作曲が出来る人は本当に1人もいなくって、だから千歌ちゃんはこうして項垂れている。

 

 アイドルだから、曲が必要なのは分かってた。

 でも途端にこの問題に直面してしまうと、私も千歌ちゃんもどうしていいか分からなかった。

 

 

 私っ?私はごめん…作曲なんて出来ないよ。

 

 

 アイドルだから、多分衣装くらいは作ることは出来る。自分で服くらい作っちゃうくらいだから。

 

 

 あっ、それにね!

 

 

 私…渡辺 曜は、無事に千歌ちゃんに『一緒にスクールアイドルをやりたい!』って言うことが出来たのであります!

 

 もちらん水泳部はやめない。掛け持ちでやる。

 そしたら千歌ちゃん、嬉しくてたまらなくなって私に思いっきり抱きしめてきたの。両腕までがっちりホールドされちゃうくらいに強かったから、ちょっと苦しかったけど……。

 でも、これでいいんだ。やっと千歌ちゃんと一緒に何かが出来るんだもん!それに遼くんも応援してくれる。私も頑張らなきゃ!

 

 

「え〜い!こうなったら私が…!」

 

 

 すると千歌ちゃんは、学校で使っている音楽の教科書を取り出し、自分で作詞や作曲をしようと躍起になり出す。

 でも千歌ちゃん、作詞はおろか…作曲なんて出来るはずもなく、私の一言ですぐに撃沈する。

 

 

「できる頃には、卒業してると思うよ…」

「はぁ…だよね〜」

 

 

 スクールアイドルって、始めるだけでも大変なんだなぁって思う私と千歌ちゃん。

 千歌ちゃんは作曲してくれる人がいなかったからと、ボソッとあることを呟く。

 

 

「はぁ…誰か曲の作曲してくれる人とかいないのかなぁ…。学校の生徒じゃなくてもいいから、誰でもいいから作曲してくれないかなぁ〜」

「そんなこと言ってても、きっと作曲してくれそうな人は…いないかも……」

「うわぁ〜ん!どうしよ〜う!」

 

 

 困った表情をして、体を机にもたれかかって喚く千歌ちゃんは、まるで小さな子供のよう。私からして見れば、可愛いからいいんだけど……。

 ちょっと苦笑いを浮かべつつ、心の中でそんな風に思っていたら、ちょっと教室に先生がやって来る。

 

 

 ガラガラッ!

 

 

「はい、みんな席について〜!」

 

 

 閉まっていた教室のドアを開け、左の脇に出席票を挟めたまま、両手でパンパンと生徒に席に座るように促す。そして生徒みんなが席についたところで、先生が話し始める

 

 けど、すぐにホームルームは始まらなかった。

 

 

「では、ホームルームを始める前に、今日からこの学校に通う転校生を紹介します!」

 

 

 先生が言い放った一言に、転校生がやって来ることに、生徒全員…教室全体がざわめき始める。

 私も千歌ちゃんも、今日に新しく転校生が入って来ることに驚いてる。でもそれとはまた逆で、どんな子が入ってくるんだろうって、期待に胸を膨らませている自分もいた。

 

 

「転校生か〜どんな人かな〜?」

「そうだね、どんな人だろう…」

 

 

 千歌ちゃんも私と同じだった。

 綺麗な人なんだろうなぁ〜って、千歌ちゃんも私と同じようにワクワクと期待に胸を膨らませていた。

 

 

「それじゃあ入ってきて!」

「……はい!」

 

 

 先生の合図で返事をする、転校生の声。

 透き通った声で返事をした転校生は、自分の赤みがかった髪をなびかせながら教室に入ってきた。

 綺麗な顔をしていて、その表情にキュンとときめくものがあった。それにサラサラとした綺麗な長い髪を、ピンク色のヘアピンで後ろで留めていた。

 

 ゆったりとした歩調で教卓まで歩いてきた彼女は、私たちの方に向き直り、先生は転校生の名前を、黒板に縦書きで大きく書く。

 

 

『“桜内 梨子”』

 

 

 黒板に彼女の名前であろう文字が書かれたとき、隣に座っていた千歌ちゃんの表情が一変した。

 

 

「あ……あぁ……!」

 

 

 何というか…“嬉しい”という感情が、1番に強い表情を千歌ちゃんはしていた。

 どうして初めて会う人物に対して、千歌ちゃんはそんな感情を持っているのか?

 そう思っていたら、転校生の少女は、ちょっと少しおどおどした挙動を見せながら自己紹介を始めた。

 

 

「は…初めまして!今日からこの学校に編入することになった……くしゅん!失礼…東京の音ノ木坂という高校から転校してきました」

 

 

 途中くしゃみに襲われた転校生だけど、すぐに表情を和やかにして、転校生は自分の名前を紹介した。

 その名前を紹介した瞬間、千歌ちゃんの疑惑の表情は、確信のものへと変化した。

 

 

「桜内 梨子です。よろしくお願いします!」

「…っ!奇跡だよ!」

「……っ!?あ…あなたは!?」

 

 

 千歌ちゃんは、その転校生との再会に喜びを爆発させ、桜内っていう転校生は、千歌ちゃんとの思いもよらない再会に驚きを隠せなかった。

 少女漫画などでしか見たことのない展開なんだけど、それが今、私の目の前で繰り広げられていた。

 

 これは一体……どいうことなんだろう?

 

 そう思うことしか、出来なかった私であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして私たちの出会いが、偶然なの必然なのか…

 

 この物語の…全ての始まりだった……。

 

 

 

 






最後まで読んでいただきありがとうございます。

これにて、サンシャイン第1話を終わります。
まだまだ物語は始まったばかりなので、長い目と、暖かい目で見ていてくださればとても嬉しいです。

次からは、第2話を投稿していきます。
次回も楽しみにしていてください!

感想・誤字等あれば、よろしくお願いします!


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