どうもキャプテンタディーです。
本当なら第7話へ話を移そうと思っていましたが、曜→千歌ときた個人回なので、今回を含めて2〜3話程度、梨子の個人回を書くことにしました。
オリ主の遼と梨子が鎌倉へお出かけするお話、
つまり“デート”ですね。
その最初の方を、今回は書きました。
最後まで見ていってくだされば、とても幸いです。
それでは、本編をどうぞ!
梅雨の時期が明け、それから1週間が経った頃
ことの始まりは1週間前、俺の行きつけの書店から全てが始まった。
「あれ?梨子じゃん」
「あっ、遼くん……」
毎週のごとく、俺は有名なサッカーの雑誌を立ち読みしようと、いつも『マルサン書店』という書店に立ち寄っている。
それで今日もそのサッカー雑誌が出るからと、俺は書店に足を運んだら、ちょうど店の入り口付近で梨子が雑誌を立ち読みしていたのだ。
お互い、出会っては驚きの声を上げる。
「偶然だね。遼くんは部活帰り?」
「あぁ。そっちも?」
「うん。ちょっと見たいものがあって……」
「ふぅ〜ん……」
お互い部活の帰りとだけあって、梨子の首筋から流れる汗につい見とれてしまっていた。
それを彼女にはバレないよう、梨子の背後を回りサッカー雑誌が置いてある棚に向かおうとした瞬間だった。
俺は、梨子が読んでいる雑誌に目が止まる。
「んっ、『鎌倉』?」
梨子が読んでいた雑誌は、観光ガイドブック。
それでその本内に記載されている『鎌倉』と書かれたページを、梨子はじ〜っと読んでいた。
ただ俺がその言葉を口にした途端、梨子は驚いてこちらに振り向き、驚きの声をあげた。
「りょ……遼くん!?」
「へぇ、梨子ってそういうの読むんだ」
「ち、違うの!これは、別に……!」
書店に売っている観光ガイドブックを読んでいる地点で、梨子がどう理由を上げようともそこに行きたがっている証拠になっている。
書店の入り口にあるわけで、足を止めてつい行ってみたいところを読んでいたのだろう。
でも、この書店の観光ガイドブックの本を読む人なんてごく稀だ。その本を読む人が決して多いわけではないのにだ。
これが、都会の女の子の特性なのだろうか?
「別に、隠すことはないと思うが……?」
「だって、恥ずかしいじゃない?」
「恥ずかしくない。だってそれって、梨子が行ってみたいところなんだろ?それなら、特にそれを隠す必要もないと俺は思うぞ?」
「っ…………///」
俺は梨子に対してそう言って安心させようとするものの、梨子は観光ガイドブックを閉じては、本で顔の下半分を隠す。
いや、顔の半分を隠す事をしてまで恥ずかしがることもないと思うのだが、やはり彼女的にやっぱり恥ずかしいと思うのだろうか?
すると彼女は、しきりに話し出す。
「……分かった」
「えっ?今なんて……?」
「分かったって言ってるの!仕方ないから、遼くんにはちゃんと話すわ」
ため息まじりに、梨子は俺にそう話す。
彼女が行きたがっている場所を、自身から聞ける事に安心しきっていた俺の前で、梨子は観光ガイドブックをペラペラページをめくり、俺に自身が行きたいと思っている場所を見せた。
「ここよ!私が行きたいと思ってるところ!」
「へぇ〜、やっぱり鎌倉だったのか」
「何よ!最初から分かってましたって言うの!?」
「別に、ただ、ここなのかなって……」
梨子の問いかけにはっきりと答えず、中途半端に答えた俺は梨子の持っていた観光ガイドブックを手に取る。
「ちょっとそれ、見せてくれないか?」
「えっ?あ、うん……」
梨子の持っていた観光ガイドブックを手に取った俺は、鎌倉の特集がされているページを、順に目で追っていく。
鎌倉には観光名所はたくさんある。だから、その観光スポットそれぞれに観光の“オススメ度”として最高☆5の評価形式で、この本には記されている。
また、その鎌倉におけるグルメとかも本には記載されているから、なんともまぁ、観光したいと誘惑させる本だなと俺は思った。
「梨子は、ここに行きたいのか?」
「えぇ。だって、行ってみたいと思わない?」
「まぁ……行ってみたいとは思うぞ?」
梨子は何も隠すこともなくなったせいか、俺に対して初めて見せる表情を見せていた。目をキラキラ輝かせて、鎌倉に行ってみたいとウキウキしている表情だ。
確かに俺も、鎌倉という場所には行ってみたいところでもある。観光できるどころは満載で、1日かけても全て観光できる場所ではないが、行ってみる価値はある。
だが、梨子はポツリと呟く。
「はぁ、行ってみたいなぁ……」
少し残念そうに、雑誌を見つめて言う。
鎌倉に行きたかったという気持ちが、梨子の残念な表情に現れていた。俺は、その気持ちになる理由をすでに分かっている。
千歌たちとやっている、“スクールアイドル”だ。
「……………………」
土曜・日曜と、ほぼ毎日スクールアイドルの練習に取り組んでいると曜から話は聞いている。
でもそれ以前に、梨子が前々から鎌倉に行きたいと思っていたら話は別になるけれど、俺は、梨子に対してこう思った。
梨子を、鎌倉に連れて行ってやりたいって……。
俺がそれを考えた頃には、梨子が手に持っていた観光ガイドブックを取り上げていた。
「えっ!?遼くん!?」
「悪い。ちょっと待っててくれないか?」
梨子が驚きの声を上げるなかで、俺は彼女にそう告げてガイドブックをレジへ持っていって買う。
このガイドブックは、俺のために買ったのではない。この本は、梨子のために買ってあげたものなのだから、変な誤解をしないはほしい。
「ほれ、ガイドブック」
「で…でも、どうしてこれを?」
観光ガイドブックの入ったレジ袋を梨子に手渡すと、彼女はそんな事を聞いてくる。
こんな事をした理由は俺にとっては明確だ。だが彼女に対してどう説明すればいいのか分からないでいたとき、俺は何となく梨子にこう言えばいいかなと思って、彼女に対してこう口を開いた。
「…………うよ、鎌倉」
「えっ?なんて言ったの?」
俺は少し恥ずかしいと感じている。
まだ出会ってそんなに月日も経っていない都会の女の子に、こんなことを言う日が来るなんて思っていなかった。
「一緒に行こうよ、鎌倉!」
「えぇ!?えええぇぇぇええ!?」
それが1週間前の出来事。
俺ってば、意外と困っている女の子を前にすると、何かしてやらないと気が済まないらしい。
〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜
〜〜梨子 side〜〜
あれから、1週間後が経った。
今日は、遼くんと鎌倉に行く日。
本当は今日もいつも通りに千歌ちゃんたちと練習する日なんだけれど、今日はサボっちゃった♡
梨子『ごめん千歌ちゃん。今日、ちょっと用事が出来ちゃったから練習に行けないかも……』
千歌『えぇ!?そんなぁ〜〜!』
朝方、千歌ちゃんとLINEでやり取りを交わしたら悲しみにくれた言葉を返されてしまった。
本当にごめんね千歌ちゃん。
いつしか千歌ちゃんたちの言うことに、ちゃんと付き合ってあげようと思ってるから!
「ふぅっ、よしっ!」
だけど同時に、本当に今しかないと思ったから。
人生は一度きりだし、行きたいと思ってるところには絶対行きたいと思ってる。
あの場に遼くんが来てくれなかったら、私はこうしてワクワクしながら沼津駅に向かうことなんてなかった。それにそもそも、鎌倉にすら行けなかったかもしれない。
だから素直に、遼くんに『ありがとう』って言いたい。でも今は、まだ言わないでおいた方がいいかも。それは、また後にとっておこうと思った。
「お〜い梨子!ここだ〜!」
「あっ、おはよう〜!」
バスで沼津駅まで乗り、バスから降りれば沼津駅には先に遼くんがいた。腕組みをして壁に寄りかかり、私のことを待っていてくれていた。
私がバス停から走って近くまで寄り、遼くんと挨拶を交わす。すると彼は、私に対して素っ気ないことを質問してきた。
「ちゃんと眠れたか?」
「ふふっ♪えぇ、もちろん!」
きっと、私のことを心配しての質問だと考えた私は、元気よく彼に眠れたことを話す。
そしたら彼は、安心したような表情を見せた。
「良かった。行きたいって言ってた人物が寝不足でぶっ倒れたらたまったもんじゃないからな……」
「何それ?私に対しての嫌味?」
「全然。ただの独り言さ……」
ふと笑みをこぼしつつ、遼くんはそう呟く。
彼は、私を心配してその言葉を言ってくれたのかもしれないけど、少し嫌味っぽく聞こえてしまったのは気のせいなのかな?もしかして、そう思ってるのって私だけ……?
「んじゃ、早速電車で鎌倉へ出発すっか!」
「えっ!?ちょ、ちょっと遼く〜ん!」
それで私は半ば置いてけぼりにされて、遼くんは電車の切符を買おうと券売機へ向かう。
この日のために、私は事前に電車の料金を調べたの。そしたら沼津から鎌倉まで、2回の乗り換えもあって片道だけで1,500円もするらしいの。
私が東京いた時に、東京から少し離れた場所に行く時にはそんなに料金はかからなかったのに、地方の電車の料金はとても高かった。
「切符は買えた?」
「買えたよっ!でも、東京と違ってお金がたくさんかかるのには正直驚いたわ」
「まぁ、それが田舎の宿命よ……」
“田舎の宿命”と、東京での料金を羨むようにして命名し、私にそう告げてくる遼くん。
沼津から鎌倉までの往復切符を買った彼は、往路の切符を右手に持ち、復路の切符は無くさないように自分の財布の中へしまう。
往復でかかる料金は約3,000円。
出費のダメージは意外に大きかった。
『まもなく3番線に、電車が到着します。危ないですので、黄色い線より下がって、お待ちください』
するとちょうど、電車が到着しますというアナウンスが駅構内に流れる。
それを耳にした遼くんは、私に言う。
「そろそろ電車も来るみたいだ。じゃあ行こうか」
「えぇ!行きましょ!」
私はそれに答えて、鎌倉へと向かう足となる電車に乗り込み、遼くんと2人で鎌倉に向かう。
目的地の鎌倉駅に向かうまでには、なんと2回も電車を乗り換える必要がある。でも、私と遼くんはそれを気にすることもなく、お隣同士で席に座っては、互いに話に花を咲かせていた。
「へぇ、梨子ってサンドイッチが好きなんだ」
「そうなの!でも、意外だった?」
「ううん。俺は人の好きなものを別に貶したりなんかしないよ。逆に言えば、人の好きな物事を貶して何が楽しいんだか知りたいくらいだ……」
お互いに趣味とか、好きな物や嫌いな物。休日の時には何をして過ごしているのかと、何気ないことを遼くんと話し合っていた。
実はね、今日私はあることを企てているの。
「ねぇ、遼くん?」
「んっ?次はなんの話だい?」
フフッ、それはね……?
「遼くんって、“好きな人”っているの?」
「………………え"ぇ"!?」
遼くんのこと、もっと知りたいと思ってるの。
だって、まだ遼くんと出会って2ヶ月と少ししか経っていない。だからまだまだ私の知らない遼くんがあるかもしれないと思ったのがきっかけ。
まぁ、これは私の好奇心で企てたようなもので、変な事を聞きすぎちゃうと遼くんに嫌がられちゃうと思うから、ほどほどにしようと思う。
「ウフフッ♪冗談よ♪」
「何だよ。今すげぇびっくりしたじゃんか……」
遼くんったら、冗談で質問したのに本気でそれを聞き入れて驚いている。
もしかして、本当にいるのかな?
ただそれとも、私がしてきた質問に驚いていただけなのかしら?
少し、興味深いわね……。
〜梨子 side out〜
〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜
ヤバい。もうすでにヤバいわ。
「それでね、千歌ちゃんがねぇ……!」
梨子って、綺麗すぎやしませんかねぇ?
「何だよそれ。全く千歌のやつ……」
「そうなの。本当変な人よね……」
元々東京からやってきた子だから、服というか、彼女のファッションがとにかくすごい。
薄い水色を基調に、花柄が散りばめられたワンピース。その上に紺色のすらっとしたカーディガンを羽織り、太ももから足にかけて露出させては、靴は真っ白のハイヒールだ。
比べてはいけないけど、この間の曜の私服を比べたら、真っ先に梨子の私服には『可愛い、綺麗』って言える自信がある。
それくらい、彼女には神々しさがあった。
「今日の梨子の服、すごく綺麗だね」
「えっ?そ、そう……?」
「うん。女の子らしさの中にある、華やかさっていうのかな?俺、あんまりファッションとか全然詳しくはないけど、今着ている梨子の服は、俺はすごく似合ってるの思うぞ?」
話の一区切りの後に、俺は梨子の私服で思った事をそのまま彼女に告げた。
思ったことを自分の思いのまま彼女に伝えたら、彼女は嬉しくて顔を真っ赤し、赤面を浮かべながら俺に一つお礼を話してきた。
「嬉しい。頑張って選んできた甲斐があったかも。ありがとう遼くん!」
「いや、別にお礼されるほど何も言ってないと思うけど、有り難くお礼は受け取るよ」
赤面し、恥ずかしい気持ちでややはにかんだ笑顔を見せながらお礼を言ってくる梨子に、俺は致し方なく、そのお礼を胸に刻む。
すると梨子は、俺に自分のことを話してきた。
「実は私ね、あまり男の人とあまり話す機会もなくて、正直に今日はとても不安だったの……」
「えっ?不安、だったの?」
「うん……」
その話の内容は、俺にとっては意外なこと。
綺麗で美人で、誰とでも隔てなく話せそうな梨子が、そんな事を呟くなんて思ってもいなかった。
最初に出会った時は少し萎縮しているように見えたけれど、それ以後は普通に話せるようになって、だから俺は、最初だけ少し用心深い人なのかなって思ってた。
でもそれは大きな間違い。改めて人の性格を勝手に決めつけてはいけないと感じた。
俺みたいな男と話す機会がなくて、今日をとても不安に感じている梨子。
正直、俺はびっくりしている。
でも、俺はその不安を搔き消せる自信がある。
簡単にそう言える理由は、たった一つ。
それは、今日を目一杯楽しむことだ。
「でも梨子、そんな心配はいらない」
「へっ?どうして?」
「ていうか逆に、そんな不安なままで鎌倉に行ったって、それで楽しもうなんてダメだよ」
ひとまず俺は、そんな不安に駆られている梨子に言葉を投げかけ励ます。梨子がそんなに不安なままで、一緒に鎌倉を探検するのはちょっと嫌だ。
だから、出来るだけ楽しく、たくさんの思い出を作って帰りたい。俺にはまだ梨子のことを知らないところが多いからさ。
「今日は2人っきりだ。思いっきり楽しもうぜ」
「ふ、2人っきり!?」
「何だよ?顔を茹でタコみたいにして……」
「な、何でもないわよ!」
さっきよりも顔を赤くする梨子には、どうして『2人っきり』に敏感なのか不思議でならない。
梨子にとって、その単語に何か深い事情でもあるのかは知らないけど、なんかあるんじゃないかな〜って思っている。
それで俺は、梨子にあることを尋ねる。
「あっ、そういえば……」
「今度はなによ?」
「鎌倉で行きたい所、ちゃんと計画できた?」
「あっ、うん。それは大丈夫よ」
それは、今日の予定についてだ。
実は、俺が梨子に観光ガイドブックを買ったあとの話だ。あの後の話で、梨子自身がこの日の予定を決めると自分からそう宣言したのだ。
それを、俺は今聞こうとしている。
俺の質問に梨子は、自分のカバンから俺が買った観光ガイドブックを取り出す。
本にはいくつかピンク色の付箋が貼られていて、その付箋が貼られているページに載っているところに梨子は行きたいんだなって思った。
「私が最初に行きたいのは、ここ!」
「ほほぅ、鶴岡八幡宮か」
梨子が最初に指差したのは、鎌倉に来たら誰もが行く場所である『鶴岡八幡宮』という神社。
それは、鎌倉の中心に建っている。
1063年、源頼義が京都の石清水八幡宮を由比ヶ浜辺に祀ったのが始まりで、それから後、鎌倉幕府を源頼朝が開いた際、現在の鎌倉に移動した。
鎌倉でNo.1の観光スポットを最初に選んだ梨子だ。是非とも訪れてみたかったんだろう。
実は俺も一度は鶴岡八幡宮に行ってみたかったところだ。たから最初に行くところは、鎌倉でNo.1の観光スポットで決まりだな。
「じゃあ、最初はそこで決まりだな!」
「うん!はぁ、楽しみ〜!」
「ははっ!さっきからそればっかだなぁ〜!」
「もう!別に楽しみにしたっていいじゃない!」
鎌倉の鶴岡八幡宮を間近に見られることに浮かれていてる梨子。俺はその浮かれようを指摘すると、彼女は膨れっ面で激おこぷんぷん丸になった。
でも、すぐにそれも治まったけどね。
「まっ、今日は1日、楽しむこととするか!」
「ほら、遼くんだって私と同じじゃない」
「そうだとしても、梨子よりは負けるけどな……」
「うふふっ。まぁ、そうかもしれないわね」
「「あはははっ!!」」
電車の中で、俺たちは笑った。
お互いにおかしな話だと思いながら、俺は大胆に、梨子は右手で口を少し隠すようにして、俺たちは笑いあった。
それから俺と梨子は。しばらくの間は電車に揺れに揺られながら車窓を眺め、鎌倉に着くまでの間のひと時を過ごした。
2度の乗り換えもあるけど、今のところ何の問題もなさそうだから大丈夫そうだ。
鎌倉、楽しみだなぁ。
一区切り。前編が終わりました。
次回は中編or後編のどちらか。3話構成か2話構成になるかは自分の中でも未定なので、首を長〜くして待っていただければと思います。
そして一昨日のアニメを見てふと思ったのは、梨子って♢の口になるときが多いですよね。もう海未の顔芸担当の後を引き継いだと言っても過言じゃないくらいのリアクションぶりに、私はとても癒されているところです。
ということで、次回もお楽しみに!
感想・評価、誤字・脱字等あればですが、
是非ともよろしくお願いします。
善子「私の個人回はいつやるのよ!?」
作者「う〜ん。“そのうち”、かな?」
善子「そんなぁ〜!」
そして最近、個人回をやりたいと告げる善子を
抑えるばかりであった(笑)