少年と少女達の輝き目指す物語   作:キャプテンタディー

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どうもキャプテンタディーです。

まず先にしばし更新が遅れてしまい
申し訳ありませんでした。

そして、しばらく執筆していなかったので
読みにくくなってしまっているところも
あると思いますが、最後まで読んでいって
くだされば、とても嬉しく思います、

それでは、本編をどうぞ!





#33 それが、魅力

 

 

 

 

 

 

 

 〜梨子 side〜

 

 

 翌日、早朝

 

 太陽も登らないまだ早朝の頃、私は、朝の3時半を告げる時計のアラームで目が覚める。

 アラームを止めた私は、そのベッドの上で大きく伸びをする。私がここまで早く起きるのは初めてで、今までにない経験だった。

 

 

「ふわぁ…あぁ……」

 

 

 でもあくびが出るくらい、まだ眠気がある。

 目を擦る私はベッドから起きると、すでに起きていたお母さんの声が下から聞こえてくる。

 

 

「梨子〜!早く起きなさ〜い」

「は〜い……」

 

 

 『みんなと集まる時間に遅れるわよ!』と、やや強い口調でお母さんは私に言ってきた。

 それを耳にした私は、ため息を無情に吐き、学校指定の上下真っ赤なジャージに着替え始める。

 

 昨日、千歌ちゃんや曜ちゃんや志満さんが話していた通り、今日の朝は海開きの事前の準備として、砂浜のゴミ拾いをすることになっている。

 都会に住んでいた私にはそんな事をするんだって驚きで、今日のその日のために朝は早起きしなきゃいけないのって、少し戸惑うところもあった。

 だけど、それだけこの海を大事にしているんだって考えたとき、すぐに私は納得が出来た。

 

 海も砂浜もすごく綺麗だし、私もそれにはやってやろうと自信を持っていたけれど、それ以前に私は眠気に襲われている。

 だからこの時に私は、早くこれくらいの時間にも起きられるようにしようと思った。

 色々、得るものがあるかもしれないから……。

 

 

「ふわぁ……行ってきま〜す……」

「えぇ、行ってらっしゃい!」

 

 

 そしてこんなに朝早いのに、元気ハツラツな様子で私を見送ってくれるお母さんを尻目に、私は集合する場所へと家を出る。

 外はまだ暗く、空は一面に雲が覆っていて、まるで夜になりかけの夕方みたいな明るさだった。

 だから街灯も、今も尚付いている。

 

 

「梨子ちゃ〜ん!」

 

 

 それで私が目的の場所に向かっていると、すでに聞き慣れた声が後ろから聞こえてくる。

 私はその場で足を止め、後ろへ身体ごと振り返ると、自転車を勢い任せに漕いでいる遼くんと、その遼くんの後ろに乗って、私に笑顔で手を振っている曜ちゃんの2人の姿があった。

 

 

「梨子ちゃん!おはヨーソロー!」

「おはよう曜ちゃん!遼くんも!」

「おう。おはよう梨子」

 

 

 こんな時間でも、特に曜ちゃんは元気一杯で、私はとてもそれが羨ましい。

 いつでもどこでも前向きで、衣装作りが得意で、みんなが憧れる存在で、とても優しい女の子。

 そんな女の子と友達になっては、一緒にスクールアイドルをしている。そんな私は、良い意味で恵まれているのかもしれない。

 

 

「相変わらず元気ね……」

「えへへっ♪元気が一番の取り柄だから!」

 

 

 そうやって曜ちゃんは右手を額に当てて、ビシッと敬礼する。何かとそれが癖なのか未だに分かってない私だけど、それが1番曜ちゃんらしいなって、最近そう思ってる。

 するそこに、遼くんの横槍が飛んでくる。

 

 

「何が元気が1番の取り柄だ。俺が朝、曜を起こしに行かなかったら、今頃寝坊して、大遅刻をかましてたっていうのに……」

「あぁ!それ言っちゃダメなやつ〜!///」

 

 

 遼くんは曜ちゃんのことを起こしに行った出来事を、曜ちゃん本人の目の前で話す。

 その話を目の前でされた曜ちゃんは、『どうしてそれを梨子ちゃんに話すの!?』って感じで、顔を真っ赤にして羞恥にまみれていた。

 

 

「別にいいじゃねぇか」

「良くないよ!もう〜!///」

 

 

 曜ちゃんは遼くんの左肩をポカポカ殴る。けど、肩を殴られて痛がる様子を見せない遼くん。

 曜ちゃんとは幼馴染みなだけあって、曜ちゃんや千歌ちゃんの扱い方が、とにかく慣れているようなそんな感じがしてならない。

 遼くんは、余裕の表情を見せていた。

 

 

「とにかく、今日は海開きがちゃんと出来るよう、砂浜のゴミ拾いをするために来たんだから、もう肩を殴るのはやめろ」

「むぅ……分かったよ……」

 

 

 それで遼くんは曜ちゃんを制止させる。曜ちゃんはそれに捻くれるようにして遼くんにジト目を見つめては、フグみたいに膨れっ面になる。

 でも、曜ちゃんもそれをやらなきゃいけないことは分かっているようだった。すぐに遼くんの左肩に殴るのをやめ、腕を組んでは遼くんから背を向けてそっぽを向いてしまった。

 

 

「じゃあ、早く砂浜に行こう!」

「あっ、曜ちゃん……」

 

 

 不機嫌な表情をして、砂浜へ通じる道をズカズカ進んでいく曜ちゃんに私は声をかけようとした。

 でもその行動をする直前に、彼に私の左肩を掴んで止められる。

 『どうして止めるの?』と思って、私は彼の方を振り返る。すると遼くんは何故か微笑んでいて、私に今の曜ちゃんのことを話してくれた。

 

 

「安心しろ、あれで曜は怒ってなんかいない。ただ私情をバラされて、少し捻くれてるだけさ。すぐにいつものあいつに戻るよ」

「えっ?あんなに不機嫌な顔をしてるのに……?」

「あぁ。だから、あまり心配しなくていいよ」

 

 

 どこからそんな自信があるのだろうか?

 私が見ると凄く怒ってるような表情しか見えないんだけど、本当にあのままで大丈夫なのかな?

 私、すごく心配だなぁ……。

 

 

「2人とも〜!早く行こうよ〜!」

「あ、うっ、うん!今行くね!」

 

 

 それから、3人で砂浜へ向かう。

 遼くんは途中、自転車が邪魔にならないところにポツンと止めて、自転車が盗まれないよう盗難防止のU字型のロックを後輪にかける。

 物の管理が凄く厳しいって曜ちゃんが言ってたけど、本当に遼くんの物の管理はすごい。

 なんか。マネージャーっぽい感じだった。

 

 

「お〜い!みんな〜!」

 

 

 そして、また聴き慣れたそんな声。

 目的地の砂浜に目を向けると、私たち3人に手を振っている千歌ちゃんがそこにいて、善子ちゃん、花丸ちゃん、ルビィちゃんも既にやって来ていた。

 

 

「おはよう〜!」

「おはよう!」

「おはヨーソロー!」

 

 

 浦女の赤いジャージを身に纏い、みんなの手には光る提灯と、大きなゴミ袋と、鉄の大きなはさみを持っている。どうやらそれで、みんなでゴミ拾いをしていくみたい。

 挨拶を交わした後、千歌ちゃんは3人の分も用意してくれていて、それをまず遼くんに手渡す。

 

 

「はい!3人の分!」

「サンキュー千歌」

 

 

 それでそこから、遼くんは私と曜ちゃんにゴミ袋とはさみを1つずつ手渡すのだけど、私は曜ちゃんの遼くんへの対応に愕然と驚いた。

 

 

「ほれ、曜の分」

「ありがとう、遼くん」

「………っ!?」

 

 

 さっきまでプンスカと遼くんに怒っていたはずの曜ちゃんが、いつの間にかいつもの曜ちゃんに戻っていた。

 それを目の前で見せられた私は、開いていた口が塞がらない。そのせいか、私のすぐ横に立っていた遼くんに声をかけられて、私の身体は驚きとともにビクッと跳ねさせた。

 

 

「…………梨子?」

「は、はい!?」

「……はい、梨子の分」

「あ、ありがとう……」

 

 

 そんな私の様子を気にすることなく、遼くんは私にゴミ袋とゴミばさみを手渡してくる。

 すると遼くんは、私にそれを手渡した後で、正面に立ったまま私の右耳元に迫り、小声で話す。

 

 

「なっ?言った通りだろ?」

「……っ!?!?」

 

 

 私はまざまざと、彼に見せつけられた。

 怒っていたはずの曜ちゃんが、少し時間が経つといつも通りの曜ちゃんに戻っていたことに……。

 それとも、私が抱いている曜ちゃんの疑問を解決させるためなのかもしれない。そうだとすれば、遼くんが千歌ちゃんから手渡されたものを、自分から貰いに行くはずがない。

 

 そう考えたら、私はまんまと嵌められた。

 

 

「気になってたんだろ?顔に出てた」

「えっ?本当?」

「意外と梨子も、表情に出やすいんだな」

「……馬鹿にしてるの?」

「あぁ、少し馬鹿にしてる」

 

 

 その瞬間、私は遼くんの右脇腹を殴る。

 けど私の行動を読んでいた遼くんは、私の左手の拳を右手で悠々とパシッと受け止める。

 余裕な表情を見せる遼くんに、悔しさで私は意外にも腹を立てた。

 

 

「そんなに怒るなよ。シワが寄ってるぞ?」

「うるさい!怒るに決まってるわよ!」

 

 

 そんな感じに遼くんに対して文句を言う。でも、遼くんは私の文句に対しては何も言わず、私のために千歌ちゃんから今からすることの話を聞き出す。

 

 

「それで千歌、どこまでやればいい?」

「う〜んと、こっちから……あっちまで!」

「へいへい。分かったよ」

 

 

 今のやり取りで、どこからどこまでゴミ拾いをすればいいのか分かるって、なかなか凄いと思う。

 だって、私ったら今の遼くんと千歌ちゃんの2人のやり取りが全然わからなかったんだもの……。

 そこへ私に、遼くんが簡単に説明してくれた。

 

 

「どうやらそこの端から、あっちの海に向かって、ゴミを拾っていく感じだってさ。今日も“みんな”は来てる感じだし、みんなで頑張れば、そんなに時間もかからないだろう……」

「みんな……」

 

 

 指を差してゴミ拾いをする範囲を教えてくれて、初めてこういうのに参加するわたしにとっては、遼くんの説明はとても分かりやすかった。

 その説明の後で、私は周りを見渡す。

 遼くんが言っていた『みんな』という言葉の通りで、砂浜には私たちだけじゃない。

 千歌ちゃんのお姉さんたちや、学校の生徒みんなもいる。理事長の鞠莉さんや果南さん、ダイヤさんもいて、このゴミ拾いにみんな集まっていた。

 

 そして何より私の目に止まったのは、このゴミ拾いをする上で、街の人もいることだった。

 

 

「ねぇ、曜ちゃん」

「んっ?どうしたの梨子ちゃん?」

「毎年、海開きってこんな感じなの?」

 

 

 あまりこういう事に参加することもなかった私にとっては、あまり見ない光景だった。

 そう感じていた中で、私は曜ちゃんにそう尋ねると、曜ちゃんは一度だけ千歌ちゃんと顔を見合わせながらも、私に笑顔で質問に答えてくれた。

 

 

「そうだよ!でも、どうして?」

「この街って、こんなにたくさん人がいるんだなって思って……」

「うん!町中の人が、毎年参加しに来るんだ!」

「もちろん、学校のみんなもだよ!」

「そうなんだ……」

 

 

 あとから千歌ちゃんも私に説明を加えてくれて、そのあとで私は、自分の頭の中で考えていた。

 普段、この内浦の街はそんなに人が多くいるように見えなかった。でも、私が見ている光景の中で、改めて感じたことがある。

 

 それは、街の人みんなが1つになって、街のために活動しているということ。

 

 私が住んでいた東京では、なかなか見られない光景だった。街の人たちや学校のみんなが、こうして一つのことに精一杯やっていることに、私は、目の前に広がる光景に感動していた。

 

 

「これ、なんじゃないかな?」

「えっ……?」

「梨子ちゃん、どういうこと?」

 

 

 思わずその事を自分の口から発して、曜ちゃんや千歌ちゃんに話を聞かれながらも、私はそのままに思うことを繰り返して話した。

 

 

「これなんじゃないかな?この街、内浦の街の魅力って、これなんじゃないかな?」

「これが、この街の魅力……」

 

 

 私の言葉に、2人は周りを見渡す。

 これで千歌ちゃんや曜ちゃんが、この街の魅力に気づくことが出来れば、これからまたPVを作る上で、きっといい材料になるんじゃないかと思う。

 私は、間違いなくそう確信が出来る。

 これが、この街の魅力なんだって……。

 

 

「そっか!これなんだね!」

「分かったよ!梨子ちゃん!」

 

 

 良かった。2人とも気付いてくれたみたい。

 でもいきなり2人で私に抱きついてこられると、いくら2人が嬉しくても、私ちょっと苦しい。

 でも遼くんが、私が2人に抱きつかれて凄く苦しそうにしている私を見かね、千歌ちゃんと曜ちゃんを引き剥がしてくれた。

 

 

「ほれ2人とも!梨子が苦しがってるだろ」

「あっ、ごめん梨子ちゃん……」

 

 

 幸い、遼くんが強く言ってくれたからすぐに2人は離れてくれて、ことはすぐに収まった。

 だけど次の瞬間、千歌ちゃんは何か思いつく。

 

 

「あっ、そうだ!」

 

 

 何かを閃いた千歌ちゃんは、手に持っていたゴミ袋やはさみなどを近くの朝礼台に置く。そしてそのまま朝礼台に登っては、ゴミ拾いをしているみんなに向かって声を上げた。

 

 

「あの!皆さん!私たち、浦の星女学院でスクールアイドルをしている『Aqours』です!」

 

 

 ここでゴミ拾いをしているみんなは、千歌ちゃんの声に一斉に彼女の方へ振り向く。

 この場で、千歌ちゃんが一体何の話をするのか私も疑問に思っているけれど、とりあえず私は、千歌ちゃんの話を聞くことにした。

 

 

「私たちは、大切な学校を残すために、学校に生徒をたくさん集めるために、皆さんに協力して欲しいことがあります!」

 

 

 この砂浜にいる学校の生徒や、街の人たちみんなに対して、千歌ちゃんは何かをやろうとしている。

 みんなで一つの事をやって、この街の魅力を伝えようって、千歌ちゃんは、話を聞いてくれているみんなにお願いをする。

 そして、千歌ちゃんはみんなに告げる。

 

 

「みんなの気持ちを形にするために!」

 

 

 学校がなくなってほしくない。

 学校の生徒を集めて、学校を存続させたい。

 

 

 そんなみんなの気持ちを“形”とするために、千歌ちゃんはある作戦をみんなに告げた。

 その作戦にみんなは『えぇ〜!』って驚いていたけれど、私や曜ちゃん、ルビィちゃん、花丸ちゃん、善子ちゃんにとっては、千歌ちゃんらしくて、凄くいい提案だと思った。

 

 学校のみんなも、面白そうって言ってくれて賛成してくれたし、街の人たちも、千歌ちゃんの意見を快く受け入れてくれた。

 

 みんなが千歌ちゃんの意見に賛成してくれた時、山の上から太陽が顔を出す。

 それはまるで、“何もない”と思っていた私たちに希望を与えてくれたような、そんな思いが伝えられたような、そんな気がした。

 

 

 〜梨子 side out〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、こんな事になろうとはな……」

 

 

 はっきり言って、千歌が提案したことが、まさかここまでの規模になるとは思わなかった。

 

 

「綺麗だね……」

「あぁ、そうだな……」

 

 

 俺の隣には、真っ赤なワンピース風の衣装を身に纏った曜の姿がある。頭の後ろと胸に大きなリボンが特徴的で、それでも至ってシンプルな衣装。

 千歌と曜は赤、梨子とルビィちゃんは紫、花丸ちゃんと善子がピンク色と、3種類の衣装を2人ずつが身に纏っていた。

 

 そんな衣装を着た曜と見ていたのは、赤紫と朱色が混ざり合った夕暮れの空……へ、フワフワ飛んで行く、たくさんのスカイランタンだ。

 

 

 その数、なんと1,000個。

 

 

 千歌が提案した案というのは、みんなでスカイランタンを作って空に飛ばし、この町には、みんなの温かい気持ちが溢れてることを伝えるため。

 娯楽施設とか、そういうものはこの街にはあまりないけれど、街の人たちの温かい気持ちは、どこの都会よりも溢れている。

 

 そしてそれを、Aqoursの『新曲』と共に『PV』としてみんなに見てもらう。

 それが千歌が言っていた、みんなの気持ちを『形』にするということだった。

 

 

「曜ちゃん!そろそろ始めるよ!」

「あ、うん!分かった!」

 

 

 この案を提案した千歌本人は、そろそろ新曲のPVの撮影を始めると曜に声をかけてくる。

 曜がそれに返事をした後、千歌は梨子たちの元へそそくさと戻っていった。

 

 それで曜は、俺に尋ねてくる。

 

 

「ねぇ、遼くん」

「んっ?なんだ?」

「魅力は、伝わるかな?」

「……学校や、内浦の街のか?」

「うん……」

 

 

 例えこんな事をして、学校の魅力が伝わったとしても生徒が集まるのか?きっと曜の頭は、そんな事を考えているに違いない。

 心配するのも分かる。でも、結果のことを考えても仕方ない。なんせ、未来がどっちに転がるなんて分からないんだから。

 だから俺は、曜の頭をチョップした。

 

 

「ていっ!」

「痛っ!」

「そんなもん、いくら言ったってどうなるか分からない。良い方向に転がるのか、悪い方向に転がるのかなんて、分かったもんじゃないしな……」

「………………」

 

 

 頭を両手で抑える曜に、俺はそう伝える。

 俺は、みんなは、やれることをやるしかないとは思ってる。

 全力で精一杯、みんなで一生懸命に頑張ってやっていけば、自ずと結果も良い方向に現れてくる。

 

 だから、俺から言えることはただ一つ。

 がむしゃらに精一杯頑張って、生徒を集めて、『学校を救う』という目標に向けて、やり遂げろ。

 

 

「遼くんは、凄いね……」

「凄くねぇよ。お前も、余計な心配すんな」

「……うん!」

 

 

 それから曜からは、“安心”というキラキラした眼差しを向けられる。あまりにも眩し過ぎるその視線に目のやり場を失っていた俺に、中学の同期であるむつが俺たちに声をかけてきた。

 特に俺には、怒声混じりだけど……。

 

 

「曜ちゃん!そろそろ始めるから位置について!」

「うん!分かった!」

「遼はカメラの邪魔にならないところにいてよね!ヘマしてカメラに映ったらぶん殴るから!」

「はいはい。殴るのだけは勘弁な……」

 

 

 中学の時に一度むつを馬鹿にして、一度だけ左頬を右ストレートで殴られたことがある。

 どうなったかは察してくれ。気持ちとしてはもう殴られたくないと思っている。次にまた馬鹿にしたら、次はきっと……殺されるかもな。

 

 

「じゃあ曜、頑張れよな!」

「うん!遼くんも、私たちの練習の成果、しっかり見守って見ててね!」

「はいはい。言われなくても大丈夫だよ」

 

 

 それで俺は、むつに言われるまま曜と別れる。

 曜は5人の元へ向かい、撮影がすぐに始められるように最初のポジションへと位置につく。俺は彼女たちの撮影の邪魔にならないよう、学校の屋上から降りられる階段に陣取った。

 

 言い忘れていたけど、今俺がいる場所というのは、千歌たちが通う浦の星女学院の屋上。

 つまり、俺は“禁断の領域”に足を踏み入れているわけで、だからといって、無断で学校に立ち入ったわけじゃない。

 この学校の理事長である鞠莉姉や、ダイヤに許可は得ている。だから、どうってことないのだ。

 

 あれから1週間、街や学校を魅力を伝えるために彼女たちは練習を頑張ってきた。

 彼女たちの努力は、結果として現れるだろう。

 でもまぁ、すぐにとはいかないけどね。

 

 

「じゃあみんな!学校に生徒を集めるため、この街の魅力を精一杯伝えるため、今日は頑張ろう!」

「「「「「お〜う!!!」」」」」

 

 

 千歌はその場で右手の拳を高々と掲げ、みんなで頑張ろうと声を張り上げる。みんなもその声に反応して、もの凄いやる気を見せていた。

 その元気さがみんなにあるなら、きっとこの撮影も無事に成功すると俺は思った。

 

 根拠は別にない。ただ、そんな気がした。

 

 

 そして俺は、ふと頭をよぎる。

 果南、ダイヤ、鞠莉姉の3人。

 3人がこれを見たら、3人はどう思うのか?

 

 

 夕暮れの赤紫の空に浮かぶ“1,000個”ものスカイランタンを眺めながら、俺は6人が撮影を行っている中で、ふと、そんなことを考えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 






これにて、第6話が終了しました。

変な終わり方かもしれませんが、次の第7話へ
と続くお話になっていくので、お楽しみに。

改めて、しばし更新が遅れてしまい大変
申し訳ありませんでした。

次回からはちゃんと執筆していきますので、
次の話も是非、お楽しみに!

感想・評価、誤字・脱字等があれば、
是非ともよろしくお願いします。


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