どうもキャプテンタディーです。
今回も、前回からの続きとなります。
少々間に時間を割き、更新が遅れてしまい
申し訳ないです。
とりあえず前置きはここまでにして、
ぜひ最後まで見ていってください。
それでは、本編をどうぞ!
放課後
私たちがいるのは、鞠莉さんがいる理事長室。
「……………………」
あれから私たちは、遼くんのアドバイスを生かし、たくさんの観光名所と言える場所を撮影した。
沼津港大型展望水門びゅうおに、伊豆・三津シーパラダイス、そして沼津港深海水族館と、私たちの街にあるたくさんの観光名所を撮影した。
これの他にも、私たちがいつも練習している淡島神社とか、果南ちゃんが経営しているダイビングショップとかも撮影した。
淡島神社から見える景色はすごく絶景だし、ダイビングショップに行けば、海にダイビング出来てお魚さんとも触れ合える。
やれることは、全部やったつもり。
私たちはそのPVを何とか作り上げて完成させ、鞠莉さんにそれを見せていた。
「……………以上!頑張ルビィ!こと、黒澤ルビィがお伝えしました!」
「「「「「……………」」」」」
ルビィちゃんの元気な声の後、映像は消える。
理事長の鞠莉さんは机に両肘を乗せ、組んだ両手の上に顎を置いて、柔らかい表情でパソコンの画面を見つめている。
鞠莉さんからどんな感想が飛び出てくるのか?
私たちは、固唾を飲んで見守っていた。
「どう、でしょうか?」
「…………………」
千歌ちゃんの質問に、鞠莉さんは無言。
開けていた鞠莉さんの目は、次第に閉じる。
何も話してくれないことに不安に駆られ、理事長室全体には緊張感が張り詰めていた。
が、次の瞬間だった。
「………はっ!」
「えっ?どうしたんですか!?」
鞠莉さんは何故か、驚いたような声をあげる。
ルビィちゃんの声の後に映像が途切れて、それから少しの間があってのそんな声。
どうしてそんな驚いたような声を、鞠莉さんは上げたのだろうと考えていたとき、鞠莉さん自身が、私たちに対してこう言ってきた。
「ごめんごめん。つい寝ちゃってた!」
ズッテーーン!
鞠莉さんは、寝ていたと話す。
右手を拳に頭に当て、口から舌を出しては『テヘペロ♪』と私たちに向かって言ってきた。
その時に私たちの緊張が解けてしまったのか、はたまた鞠莉さんが抜けていたせいか、善子ちゃんを除いた私たちは、力が抜けて座り込んでしまう。
けど同時に、怒りがフツフツと込み上げる。
動画を見せては感想も言わず、ましてや生徒の前で寝てしまうという行動に、千歌ちゃんが代表して、鞠莉さんに言い放った。
「もう!私たちこれでも本気で作ったんですから、ちゃんと観てください!」
「………本気……ですか?」
本気で作った私たちの映像を、ちゃんと見て欲しいと千歌ちゃんは鞠莉さんに話す。
だけど鞠莉さんは、千歌ちゃんが言った『本気』という言葉に反応を見せると、開いていたパソコンを閉じ、嘲笑うように言葉を返してきた。
「本気で作って、この体たらくですか?」
「て、体たらく?」
千歌ちゃんは鞠莉さんの言葉に、首を傾げる。ただ私は、その言葉に憤りを覚えた。
もうその時、私は我慢出来なかった。
「それは、流石に酷いんじゃあ……」
そんな梨子ちゃんの話のあと、私は立ち上がって、梨子ちゃんが言ったあとに続くように、鞠莉さんに話をした。
怒ってはいたけど、至って冷静だった。
「そうです!千歌ちゃんをはじめ、みんな一生懸命に作ったんです!それを、どれだけ大変だったかを知らない理事長には言われたくないです!」
「曜ちゃん……」
人の苦労も知らず、動画に対して感想も言わないで罵倒しかしない理事長に言われたくないと、私は鞠莉さんにそう訴えた。
隣にいる千歌ちゃんからは心配そうな声が上がったけど、みんなで作ったPVを、そんな風に言われたくなかった。
だけど、鞠莉さんは反論した。
バンッ!
「努力の量と結果は、比例しません!」
「………っ!」
机を叩き、鞠莉さんは私に言い放つ。
努力をしてきたことと、それに伴って出た結果は、決して良いとは限らない。
鞠莉さんは、私の話を一蹴した。
「大切なのは、この街や、学校の魅力を、ちゃんと貴方たちが理解しているかデース!」
まるで、自分は街の魅力や学校のことを知っているような口ぶり。だから私は、それに対して本当なのって思ってしまう。
でも、鞠莉さんは私たちより先輩。
私たちより1年長く生きているわけだから、もしかしたらと思うと、私は何も言えなかった。
「それって、つまり……」
「私たちが理解していない、ということですか?」
「……そうね」
花丸ちゃんから発せられた疑問の声にも、鞠莉さんは少しの間を開けて答える。真っ直ぐに見据える目を私は見ると、鞠莉さんが話した事は、本当のように聞こえた。
すると、今まで口を挟まないでいた善子ちゃんが、鞠莉さんに尋ねるように口を開く。
「じゃあ理事長は、私たちよりもこの街や、学校についての魅力を分かっているのね?」
「……………………」
善子ちゃんが、鞠莉さんに対して敬語を使ってないのはあまり気にしなかった。それよりも、私は鞠莉さんの答えが気になっている。
千歌ちゃんたちも、同じ思いを持っていた。
そして鞠莉さんは、私たちに言い放った。
「少なくとも、貴方たちよりは……」
「…………………」
温厚だった理事長の目は鋭い眼差しに移り変わり、鞠莉さんは私たちに対してそう話す。
「……聞きたいですか?」
それから鞠莉さんは、私たちに対して不敵な笑みを浮かべてくる。それがとても嫌らしく、私からして見れば、からかっているようにしか見えなくって、とても腹が立った。
それで誰も、鞠莉さんに尋ねようとしない。
だから私はその様子を見て、右足を半歩前に踏み出しては、鞠莉さんに事を尋ねようとした。
「理事長、話を聞かせて……」
だけどその瞬間、私は彼女に止められる。
「ダメ、曜ちゃん!」
「っ!千歌ちゃん……!」
その“彼女”は、千歌ちゃんだ。
「やめて……曜ちゃん……」
「…………………」
私の肩に左手を置き、首を振る千歌ちゃん。
どうして私を止めたのか、その理由を千歌ちゃんに聞きたかった。だけど、千歌ちゃんの困った表情を見せられては、千歌ちゃんの言うことに従った方がいいと思った。
そうしなかったら、きっと千歌ちゃんを困らせてしまう。悲しませてしまうと、そう思った。
だから私は、鞠莉さんに言葉を訂正した。
「すみません理事長。今のは無かったことに…」
「えぇ、分かっているわ」
鞠莉さんもそのことを分かってくれて、私の言葉に許してくれる言葉を投げかけてくれた。
その後、千歌ちゃんが床から立ち上がると鞠莉さんに話をする。その中身は、一つのお礼だった。
「理事長、今日はありがとうございました」
「別に構わないわ。またPVが出来上がったら、私にまた見せにきて頂戴ね!待ってるから!」
鞠莉さんの陽気な声とは裏腹に、千歌ちゃんは少し元気がないような、そんな声を発していた。
「はい、分かりました」
そして鞠莉さんとの話のやり取りを終えた後、千歌ちゃんは理事長に深くお辞儀をしては、そそくさと理事長室を出て行く。
私たちも千歌ちゃんを追うように、鞠莉さんに1人ずつお辞儀して理事長室を出ては、そそくさと出て行った千歌ちゃんを追いかけた。
最後に、私が鞠莉さんに言葉をかけようとした時、鞠莉さんが私に話しかけてきた。
「あなた、やっぱり似ているわ」
「えっ……?」
その言葉に、私は言葉を詰まらせる。
えっ?似ている?一体誰のことなんだろう?
「それは、どういう事ですか?」
「別に、何でもないの。ただ、あなたが私に話している姿を見ていたら、昔の彼に似てるなって……」
鞠莉さんが話す口々に、私は疑問を呈する。
彼女の言う昔の“彼”とは、一体誰なんだろうって考えてしまう。鞠莉さんの口調からして、きっと男の人なんだろうとは理解できるけど……。
「会いたいわ、彼に……」
「…………会えると、いいですね」
その人とはもう会えていない事を口にした鞠莉さんに、私は、そう話すことしか出来なかった。
「それでは、失礼します!」
「えぇ。また会いましょう!」
そして私は、鞠莉さんに対してお辞儀をしてはそう告げ、理事長室を出て行く。
そして部室に戻って行った千歌ちゃんたちを追いかけるように、私も部室へと戻って行った。
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「どうして聞かなかったの?」
「…………………」
私が一旦部室に戻ったら、みんなは既に部室にいなかったので、私は学校の昇降口に向かった。
そしたらちょうどその頃に、梨子ちゃんが千歌ちゃんにそんなことを尋ねていた。
どうして、話を聞かなかったのか?
梨子ちゃんの他、みんなは同じことを考えていた。
もちろん私も同じ意見なわけで、その質問に対して千歌ちゃんは、口を開いて話す。
「なんか、訊いたらダメなような気がした」
「何よそれ。なに意地張ってるのよ?」
千歌ちゃんの話に、善子ちゃんは呆れ気味に話す。
「意地じゃないよ……」
「千歌、ちゃん……」
だけど、千歌ちゃんの口から出たのはそんな言葉。善子ちゃんの言葉を、訂正をするように話す。
その言葉は、私には重みがあった。
「それって大切な事だもん。街や学校の魅力を自分で気づかなきゃ、PV作る資格ないよ……」
下に俯き、千歌ちゃんはそう話す。
その言葉を聞いた私は、鞠莉さんから話を聞こうとしていたことが間違っていたのかもしれないと、私は不意にそう感じてしまう。
そしてそう感じた時、私は口を開いていた。
「千歌ちゃん、ごめん……」
「……っ、曜ちゃん」
「私が、鞠莉さんから聞こうとしていたのは間違いだったんだよね?だったら、ごめん……」
唇を噛み、私は千歌ちゃんに謝る。
千歌ちゃんが私を止めたのはそういう理由があったからで、千歌ちゃんの考えとは裏腹に、私は理事長への怒りだけで口を開いていた。
そんな身勝手な自分を、恨みたい。
無責任だった行動を、すごく反省していた。
けどそんな時、千歌ちゃんは私の両手を優しく握って、優しい言葉を投げかけてくれた。
「大丈夫だよ、曜ちゃん。曜ちゃんは鞠莉さんに、みんなのために怒ってくれたんでしょ?」
「……………うん」
「だから怒ってないよ。寧ろ、嬉しかった」
「………っ!」
優しい笑顔で、私にそう言ってくれた。
「だから、いつもの曜ちゃんでいいよ!」
「……っ!うんっ!」
そんな千歌ちゃんのおかげか、私は何だかスッキリした気分になれたような気がした。
疑問形じゃなくて、わりと断定に近い。
うん。そんな気分に私はなれた。
「ヨーソロー!」
「うん!やっぱりそれが曜ちゃんらしい!」
私がそう言って元気よく言い放つと、千歌ちゃんもさっきまでの落ち込んだ顔はなく、もうすっかり笑顔が溢れていた。
ルビィちゃんたち3人も、『ふふっ』と笑みをこぼす。さっきまでのどんよりした空気も綺麗さっぱりになくなって、和んだ雰囲気になっていた。
それで私が敬礼をして、梨子ちゃんに対してニヤリと不敵な笑みを浮かべながら話す。
「じゃあ今から千歌ちゃん家で、作戦会議だ!」
「えぇ!?また千歌ちゃんの家〜!?」
「喫茶店だってタダじゃないんだし、梨子ちゃんも頑張ルビィ!してね!」
「もう〜!」
学校からは、千歌ちゃんの家が一番近い。
だから千歌ちゃんの家でPVをどうするか作戦を練らないといけない。その事を梨子ちゃんに告げると、彼女は途端に顔をしかめる。
そんな顔になる理由は、察して?
「よぉ〜し!」
そして千歌ちゃんは右手を拳に上へ突き上げる。
いつものように、『頑張るぞ〜!』って締りのある言葉をみんなに投げかけるのだろうと、私は勝手にそう考えていた。
「あっ、忘れ物した……」
だけど、そんな一言に私たちは盛大にコケた。
あまりにも締りの悪さに少し苦笑いをしてしまう私だけれども、でもそれが、千歌ちゃんらしい。
「ちょっと部室見てくる〜!」
そう言って千歌ちゃんは、部室へと駆けていく。
「はぁ、本当…締りがないわね」
「あはは、ごめんね善子ちゃん……」
「べ……別にいいけど……!」
締りが悪いと善子ちゃんから発せられた指摘を、私は苦笑いを浮かべながら返す。
その言葉に善子ちゃんは言葉を詰まらせながらも、千歌ちゃんを信頼しているのか、すぐに私の言葉に対して許してくれた。
それから千歌ちゃんを見送った私たちは、昇降口でしばらく待つことにしていた。けど、千歌ちゃんを迎えに行った方がいいかもしれないと思った私は、みんなに口を開く。
「みんな、千歌ちゃんを迎えに行かない?」
「えっ?どうしたのいきなり?」
「なんか、そんな気分なんだ!」
どうして私は、そんな事を思いついたのかは自分もよく分かっていない。
でも何となく分かる。
自分が、千歌ちゃんに迷惑をかけてしまったから、彼女へのちょっとした“償い”のするような感じで、無意識にそれを私はしたくなったんだと思う。
そう考えていたときには、私の身体は、勝手に千歌ちゃんが向かった部室へと走っていた。
というより、体育館の方が正しいかも……。
「早く千歌ちゃんのところに行こう!」
「えっ、ちょっと曜ちゃん!?」
「な…何ずら〜!?」
「もう!一体なんなのよ〜!?」
みんなは驚いた声を上げながら、私についてくる。
それで部室がある体育館へ足を運んでいると、だんだん体育館に近づくにつれて、誰かが何かを話している声が聞こえた。
「一緒にやりませんか?スクールアイドル!」
「……っ!?千歌ちゃん!?」
千歌ちゃんが、誰かを勧誘しているそんな声。
誰よりも早く着いた私は体育館を覗くと、体育館のステージには千歌ちゃんと、ダイヤさんがいた。
どうやら千歌ちゃんは、スクールアイドルが嫌いなダイヤさんをAqoursに勧誘していたらしい。
どうしてスクールアイドル。嫌っているダイヤさんを千歌ちゃんは勧誘していたのか?
私には、到底理解できなかった。
〜千歌 side〜
私が忘れ物を取りに体育館に着いた時、とある人物がステージで踊っていた。
「…………………」
「うわぁ〜〜!」
それが目に入った私はふと、ステージへと足を運ぶ。部室に用があってきたのに、その人が踊る凄さに目が離せなくて声まで出ちゃう。
これが、“舞踊”ってやつなのかな?
千歌にはよく分からないんだけど、ステージで舞うように踊っているのがとても凄かった。
踊っている張本人の髪は長い黒髪に、銀色の髪留めが2つ。そして宝石のエメラルドのように輝く翠の目が特徴で、ツリ目。
話しての通り、その人物はダイヤさんである。
パチパチパチパチパチパチッ!
「……っ!?」
ダイヤさんが踊る姿に感動して、私はいつの間にかダイヤさんに拍手をしていた。
そのおかげで、私はダイヤさんに気づかれる。
「ち…千歌さん!?///」
「ダイヤさん凄いです!感動しました!」
「な…なんですの突然!///」
自分がしていたことを見られて恥ずかしかったのか、ダイヤさんは顔を赤くする。
そのときに私は、ダイヤさんの両手に大量の書類を持っていることに気づく。ただそれを見た私は、ところ構わずにダイヤさんに想いを伝えた。
「ダイヤさんがスクールアイドルが嫌いなのは分かってます。でも、私たちも学校続いて欲しいって、なくなって欲しくないって思ってるんです!」
ダイヤさんだって、自分が通っている学校がなくなって欲しくないとは思っていると思う。
それに本当は、ダイヤさんは本当は……!
「一緒にやりませんか?スクールアイドル!」
そう考えたから私は、ダイヤさんを勧誘する。
「お姉ちゃん……」
それと同時に、ルビィちゃんの心配そうな声が後ろから聞こえてくる。ルビィちゃんの1人の声しか聞こえなかったけれど、私の後ろにみんながいると感じることができた。
それで曜ちゃんたちが、私の元へとやってくると、それと同時にダイヤさんはステージから飛び降り、私の勧誘を優しい言葉で拒否してきた。
「気持ちは嬉しいです。でも残念ですが、私はそんなことをしている暇はありませんの……」
「……そう、ですか……」
「お互い、頑張りましょう……!」
そう言ってダイヤさんは、体育館を立ち去る。
そのときに私は、床に落ちていた一枚の書類を手に取る。見たところ、ダイヤさんが落としたものだと私は考える。
「ねぇ、ルビィちゃん……」
「えっ?」
そして私は、ルビィちゃんに尋ねる。
ダイヤさんの、本当の気持ちを……。
「ダイヤさんって、本当は……スクールアイドルが大好きだったんでしょ?」
「…………………」
ダイヤさんは私たちに一度も振り返ることなく体育館を後にしたけれど、私でもなんとなく分かった。ダイヤさんが、何かを抱え込んでいるって……。
それを唯一知っているのは、ダイヤさんの大〜切な妹のルビィちゃんただ1人しかいない。
私は彼女に尋ねたら、ルビィちゃんは暫くの無言のあと、私たちに話してくれた。
「はい…。お姉ちゃんは私よりもずっと、スクールアイドルが大好きでした……」
ダイヤさんの後ろ姿を見つめながら、ルビィちゃんは私たちにダイヤさんの話をしてくれた。
スクールアイドルが、ルビィちゃんよりも好き。
私は拾った一枚の紙を見る。するとそれは、学校の廃校を阻止するための“署名”の書類だった。
これをたくさん集めて、廃校を阻止しようとダイヤさんは考えているみたい。でもそれで廃校を阻止できるのか、私も不思議だった。
こんなことをするんだったら、ダイヤさんも一緒に大好きなスクールアイドルをして、大好きな学校の廃校を一緒に阻止しよう!
そんな風に声をかけようと考えた私は、体育館から立ち去ろうとするダイヤさんに声をかける……
……寸前だった。
「今は言わないで!!」
「…っ、ルビィちゃん……」
ルビィちゃんが、私の前に立ち塞がる。
両手を広げて、顔を私に向けず下に俯いたままで、ルビィちゃんは私に対してそう告げただけだった。
でも、ルビィちゃんが“何を”ダイヤさんに言わないで欲しいのか、何となく分かったような気がする。
具体的に説明は出来ないけど、とても大事なことを言わないで欲しいと彼女は言い……
「……ごめんなさい」
彼女はそう、みんなに小さく呟いた。
〜千歌 side out〜
〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜
今日も今日とて、汗をかいた部活のあと。
最近俺の行動を何処かで見られているのか、部室に戻ってきた直後に携帯のバイブ音が鳴り響く。
ブ〜〜ッ!ブ〜〜ッ!
電話だ。してきたのはいつもの人物。
俺は携帯を手にとって一旦部室を飛び出し、誰にも聞こえないだろう場所で俺は電話に出た。
ピッ!
「……もしもs」
『ヨーソr……!』
ブツッ!
最近のあいつの電話での開口一番はこれなのか?
あいつの声が大きすぎて、思わず耳を遠ざけてしまうし、一緒に電話まで切ってしまった。
甚だしいにもほどがあるというか、電話での最初の一言は、まず『もしもし』というのが普通なんだがな。『ヨーソロー』と叫ぶのはちょっとすまんが、やめて欲しいと思っている。
ブ〜〜ッ!ブ〜〜ッ!
「……またか」
またあいつから電話がかかってくる。
ただ、ここに“拒否”という赤いボタンがあってな、これを押せば電話の応答を拒否できる。
だが、仕方ない。
俺は電話に出る“応答”という緑のボタンを押し、あいつからの電話に仕方な〜く出ることにした。
「……もしもし?」
『何で突然電話切っちゃったの!?』
そしたらこの第一声だ。
いや、唐突に電話を切っちゃったのは俺も悪いとは思ってはいるよ?
だけどそうさせたのはお前だ、渡辺 曜。
「あんな大声を耳元で言われてみろ?切っちまうのは仕方ないだろ?てか、お前のせいだよ」
『遼くん酷い!そんなこと言うなんて!』
「いや、酷いのはお前だよ……」
最近、電話でのやり取りはいつもこんな感じ。
何かあるとつい口喧嘩が始まり、これがいつまでもキリがなく続いてしまうから、俺は無理やり話を切り替える。
というのも、俺が気になっていることを、彼女に少し聞きたかったからなんだけどね?
「とりあえず、PVはどうだったよ?」
『えっ?あっ、うん……』
「ダメ、だったのか?」
『……うん。ダメだったよ』
その曜の受け答えの声を聞くと、結果は散々だったみたいだな。
相当PVに対してダメ出しをされてしまったんだろう。だとすると、千歌の野郎も相当落ち込んでるに違いないな、うん。
まぁ、仕方ないよね。理事長が俺たちよりも1年歳上なんだし、1年長く生きているわけで……。
「何か言われた?」
『言われたよ。『本気で作ってこの“テイタラァク”ですか?』ってね。馬鹿にされちゃった……』
『テイタラァク』か……。
その日本語と英語の口調が混ざり合ったその言い方は、相変わらず変わってはいないようだ。
まぁ、あいつらしいといえばあいつらしい。
「それは、生徒会長にもか?」
『PVは生徒会長には見せてないよ。ただ……』
「ただ……?」
生徒会長のダイヤにもPVを見せたのかと曜に聞いたら、彼女はそう言った後で、言葉を詰まらせる。
けど、そのすぐに曜は言葉を発した。
『ダイヤさん、実はスクールアイドルが好きだったらしいんだ。私、それに凄く驚いてて……』
あっ、なるほどね……。
ダイヤが実はスクールアイドルアイドルが大好きだったことに、曜はだいぶ驚いている様子だ。
まぁ、今までスクールアイドルが嫌いと謳われてて、それが好きってなって何もかも覆ったわけだから、逆に驚かない人はいないんじゃないかな?
あっ、俺が驚かない方だったわ……。
「その事は、生徒会長自身から?」
『ううん、ルビィちゃんから聞いたんだ……』
「……そうか」
ダイヤから自白したのかと聞いたら、曜はルビィちゃんから話を聞いたらしい。
あいつもあいつだなって思う。
生徒会長だからと、ダイヤはきっと学校を救わなければならない使命感を背負っている。それを全部自分で背負って、仲間に頼らない。ルビィという、大切な妹に対してもだ。
ダイヤは頑固、そういえば当てはまる。
「じゃあまた家に帰ったらその話を聞かせてくれ。俺は少し用事が出来ちまった」
『うん。私も今から千歌ちゃんの家に行って、またPVをどうするかを考えなきゃいけないから!』
「分かった。じゃあ、また家で!」
『うん!また家でね!』
そして俺は、曜とやり取りをして電話を切る。
電話で言っていた“用事が出来た”っていうのは、少し行きたいところが出来たという話だ。言うなれば、とある人物の“家”に行くんだけど……。
ここは一つ、“あいつ”に話をつけてこよう。
そう考えた俺は、まず練習着から制服にせっせと着替えて荷物をまとめる。それから部室で寛ぐ先輩たちに挨拶をしては、部室を勢いよく飛び出し自転車置き場へ足を運ぶ。
それで各学年ごとに止めている自転車置き場に足を運んだ俺は、自分の自転車を引っ張り出したあと、自転車に乗って学校を出ては、あいつがいるであろう家へと向かったのであった。
あの時の話は、まだ終わってはいない。
聞きたい事が、俺には山程あるんだからな!
あいつに思いを馳せ、沼津の街並みを縫うように、俺は自転車を漕いで行くのであった。
さて、次回は遼のターンです。
遼の言う、“あいつ”とは?
一体、誰なんでしょうか?
皆さんも是非予想して見てください。
次回もこの続きからです!
次回も是非、お楽しみに!
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