少年と少女達の輝き目指す物語   作:キャプテンタディー

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どうも、キャプテンタディーです。

今回は第3話目になります。
視点は曜視点。前回の引き続きです。
最後まで読んでいってくだされば幸いです。

それでは、本編をどうぞ!






#3 輝きたい! 後編

 

 

 

 

 

 千歌ちゃんと生徒会長との話を終えて、生徒会室を出た私と千歌ちゃんは学校を出た。

 

 

「とりあえず、今日は家に帰ってまた考えよう?」

「そうだね。うん、今日は帰ろう」

 

 

 今日は入学式だけだったから、普通ならお昼頃には帰れたんだけど、今はもう太陽がオレンジ色で、だんだんと沈もうとしている時間だった。

 時間で言えば、だいたい3時だ。

 

 

「あっ、ちょうどバスが来た!」

「本当だ!曜ちゃん急ごう!」

「うん!」

 

 

 私と千歌ちゃんは、学校への通学は主にバスを利用している。自転車もあるけど、私の家からだと自転車はとても遠いから、バスを利用してるんだ。

 ちょうど来たバスに私と千歌ちゃんは乗り込み。バスは千歌ちゃんの家へと向かって走り出す。

 

 

 ブロロロッ!

 

 

 バスの走る音と、その原動力になるエンジン音がざわめくように私の耳に入ってくる。

 それに私と千歌ちゃん以外のお客さんが乗っていなかったから、私と千歌ちゃんで貸切状態だった。

 

 

「……………」

「……………」

 

 

 千歌ちゃん、多分生徒会長から言われたことにきっと落ち込んでいるに違いない。バスの窓からずっと外を見て黄昏ているし、何より千歌ちゃんの表情はどことなく曇っていた。

 私から話しかけようと思ったけど、なんだかそれがとてもできない雰囲気になってしまっていた。

 

 1番大切な友達を励まさなきゃいけないのに、私ったら…なにやってるんだろう……。

 そんなネガテイブ思考に思い馳せていた私の体を揺するように、千歌ちゃんが私に話しかけてきた。

 

 

「曜ちゃん、曜ちゃん」

「えっ?あっ、なに千歌ちゃん?」

 

 

 あまり突然だったから、慌てて笑顔をより繕って千歌ちゃんに言葉を返すと、千歌ちゃんは私には目を向けず、下に俯いて私に話した。

 

 

「私、スクールアイドルを諦めようと思う」

「………っ!」

 

 

 突然のその言葉に、私の表情は驚きの表情で固まってしまった。悔しさが入り混じった表情を浮かべていた千歌ちゃんは、そんな答えを出した。

 でも、それが千歌ちゃんの出した答え。

 

 私からはなにも言わない。私が言うのは、千歌ちゃんに対していつものアレだけである。

 

 

「じゃあ……やめる?」

 

 

 そう言って、私は問いかけた。

 でも千歌ちゃんは、今回ばかりは本当に諦めきれなかったようで、千歌ちゃんは言う。

 

 

「やだ!やめたくない!でも……」

 

 

 やめたくない。それがきっと千歌ちゃんの本心。

 やっと自分がやりたいことを見つけられたって、千歌ちゃんはとても喜んでいた。

 

 なのに、生徒会長の一言で全てが崩れ去った。

 

 

『私が生徒会長である限り、スクールアイドル部は認めないからですっ!!』

 

 

「生徒会長にあんなこと言われちゃったら、もうどうしようもないよ。だって、学校でスクールアイドルを始めたくても、正式に部として…生徒会長から認めてもらえないんだもん……」

 

 

 完全に千歌ちゃんは落ち込んでいた。

 今にも千歌ちゃんは、ここで大声で泣いてしまいそうな、そんな辛くて悲しい表情を浮かべていた。

 

 私は、千歌ちゃんを助けてあげたい。

 1番大切な友達を、絶対に泣かせたくない。

 何か。千歌ちゃんを元気にさせる方法……。

 

 私は千歌ちゃんを元気にさせ、そして尚且つ、千歌ちゃんをスクールアイドルを続けさせる方法を、私は頭をフル回転させて考えた。

 そしたら閃いた。とてもいい方法を…。

 

 

 あっ、そうだ!あの人なら……!

 

 

 私はきっとあの人なら、あの人なら千歌ちゃんを元気してあげられると思う。千歌ちゃんを、またやる気にさせてくれると思う。

 

 そう思った私は、千歌ちゃんに対して話し出す。

 

 

「あっ、そうだ!千歌ちゃん、遼くんが言ってたよ。『あいつがアイドル?ぷっ…』ってね!」

「えっ!?遼くんが!?」

 

 

 さっきまで涙を堪えていた千歌ちゃんは、私の言葉を聞いて驚いた表情を見せる。泣くどころか、遼くんが言ってたこと(嘘)に対して、千歌ちゃんはあり得ないといった表情を見せていた。

 

 

「酷い!遼くんそんなこと言ってたの!?」

「う…うん。そうなんだ……」

 

 

 千歌ちゃんは私に向かって顔を近づけて聞いてくるから、私は首を縦に振りながらうんうんと、千歌ちゃんの質問に答える。

 あまりに千歌ちゃんを怒らせたら危ないかな〜と思った私は、『でも』という逆説をたて、千歌ちゃんに遼くんが本当に言っていたことを話す。

 

 

「でもね、遼くんは千歌ちゃんのスクールアイドル活動を応援してるって言ってた!」

「えっ!?本当!?」

「うん!本当!『千歌が何かをやるんなら、俺は千歌のことを応援するよ』って!」

 

 

 遼くんが言ったことは本当だよ。

 前に私が千歌ちゃんとスクールアイドルをやっていいかを遼くんに相談しに行ったときに、遼くんは私に言っていたからね。

 

 

「それは本当?本当に本当!?」

「本当に本当だよ!」

 

 

 2度も千歌ちゃんは聞いてくるので、私は笑顔で千歌ちゃんにそう言って信じさせる。

 でも千歌ちゃんは、思いがけない行動に出る。

 

 

「じゃあ電話しよっ!」

「えぇ!?なんで電話するの!?」

「遼くんはたまに千歌のことからかうから、曜ちゃんの言ったことが本当なのかなって…」

 

 

 た…確かに遼くんってば、千歌ちゃんのことをよくからかってたりしてたときが多くあった。

 だからその部分で千歌ちゃんは、私が言った遼くんのことを、あんまり信じてないみたいだった。

 

 

「遼くん部活中だよ!駄目だよ千歌ちゃん!」

「部活中だったとしても、あとで遼くんから掛け直してくれればそれでいいよ!」

 

 

 そんなダメもとのような発言をした千歌ちゃんは、スマホをささっと指で操り、ダメもとで遼くんへと電話をかける。

 私はもう仕方ないと思い、千歌ちゃんが電話しようとしているのを止めようとはしなかった。

 

 

 

 プルルルッ プルルルッ

 

 

 

 それに普通なら、遼くんは今も部活中。

 

 そんな簡単に電話が繋がるわけがーーーー

 

 

 

 ブツッ!

 

 

 

『……もしもし?』

「あっ、遼くん?私だよ、千歌だよ!」

『よう千歌。こんな時間にどうしたんだ?』

 

 

 つ……繋がったああぁぁ〜〜!?

 

 嘘っ!?今、普通に電話繋がったよね!?

 

 えっ!?なんで普通に出ちゃうの!?

 

 

「まだ部活中だった?」

『いや、今は休憩中だよ。それで?千歌が俺に電話してくるなんてどうしたんだ?』

 

 

 何だ、部活の休憩中だったのかぁ……。

 いや、遼くんが部活をサボってたら、夜に遼くんの家に殴り込みに行こうと思ったんだ。

 

 でも、そんな心配は全然いらなかったみたい。

 

 

「あのね、遼くんって…私のスクールアイドル活動を応援してるの?」

『なにを藪から棒に……』

「曜ちゃんから話を聞いたの。ねぇ、本当はどうなの?応援してるの?」

 

 

 千歌ちゃんはそう言って遼くんに真意を尋ねる。

 正直、私の言ったことは嘘も混じってた。特に、『千歌がアイドル?ぷっ…』ってところが、私が適当に言ったことなんだけど……。

 

 お願い遼くん!なんとか言って!

 

 私は心の中でそう願った。もし言ったことが嘘だったら、本当に千歌ちゃんはスクールアイドルをやめちゃうかもしれない!いや、絶対にやめちゃう!

 心臓のドキドキ音が鳴るなかで、私の願いが遼くんに届いたのか、しばらくの間が空いたけど、遼くんは千歌ちゃんに言い放つ。

 

 

『そりゃもちろん。幼馴染みが何かやろうとしてることを、俺が応援しないわけないじゃないか』

「…っ!うん、そうだよね……」

 

 

 千歌ちゃんは遼くんの言葉に、嬉しさのあまりに目から涙がポロポロと溢れ出てくる。

 安心というか、自分が誰かからに応援されていることに、千歌ちゃんは嬉しかかったんだと思う。

 千歌ちゃんが涙を拭っても、拭っても拭っても拭っても、目から溢れ出てくる涙は止まらなかった。

 

 そんな中で千歌ちゃんは、遼くんにお礼を言った。

 

 

「うん。ありがとう遼くん…」

『おい、今の一言だけで泣いてんのか?』

「ぐすっ…泣いてない。泣いてないもん!」

 

 

 遼くんの問いかけに、千歌ちゃんは泣いていないと大声で強がるけど、泣いているせいで、千歌ちゃんの強がりは全く遼くんには通じなかった。

 

 遼くんはそれで千歌ちゃんに話を続ける。

 その話とは、私に関してのことだった。

 

 

『それに曜だってお前のこと応援してるんだ。そのためにも、千歌はめげずに頑張れ!』

「そうだよ千歌ちゃん。私も千歌ちゃんのことを応援するから、スクールアイドル、やめないで?」

「曜ちゃん……」

 

 

 遼くんの話に便乗して、私は千歌ちゃんの左手をぎゅっと両手で握りしめ、スクールアイドルをやめないでと心の底から言い、自分のやりたいことを貫いて欲しいと、心の中で呟いた。

 千歌ちゃんは遼くんや私の言葉を聞いて、下に俯いて考え込む。きっとスクールアイドルのことだから、少しは考え直してくれただろうか?

 

 

「千歌ちゃん……」

『千歌……』

 

 

 私も遼くんも、千歌ちゃんが答えてくれるのを待っていた。最善な答えを出してくれる千歌ちゃんを、私と遼くんは固唾を飲んで待ちわびた。

 そして考えがついたのか、千歌ちゃんは俯いていた顔を上げ、電話中のスマホをスピーカーにし、私と遼くんに向かって答えを言い放った。

 

 

「分かった。千歌、スクールアイドル続けるよ!」

『……うん。それでいいんだよ』

 

 

 遼くんは笑顔なのだろうか。千歌ちゃんの言葉を聞いて、少し安心したような言葉をかけていた。

 私も千歌ちゃんの言葉を聞いて、ホッと胸をなでおろすと同時に、なぜか私の心の底から、何かこみ上げてくるものがあった。

 

 やばいなぁ……なんか私まで泣いちゃいそうだよ。

 ダメダメ!私が泣いちゃいけない!堪えろ堪えろ!

 

 そんな中、私が泣いちゃいけないと堪えているとき、そんな私の感情を吹き飛ばすように、遼くんはあることについて千歌ちゃんに尋ねてくる。

 

 

『それで?勧誘はうまくいったのか?』

「ぎくっ!いや…それはその……」

『その様子じゃ、駄目だったようだな』

 

 

 千歌ちゃんが勧誘で全然ダメだったことが、遼くんに一瞬にしてバレてしまった。

 まぁ千歌ちゃんは単純なときもあるし、そうやって遼くんにいつもからかわれたりしてるから。

 

 私は遼くんにバレてしまった千歌ちゃんの慌てている表情を見て、不思議と笑っていた。

 

 何でだろうね?これは遼くんパワーなのかもね。

 そしてまたそんなことを考えていたとき、電話の向こうから遼くんとは違う人の声が聞こえてくる。

 

 

『おい楠神!そろそろ練習だ!』

『あっ、はい!分かりました!』

 

 

 遼くんの部活の先輩の声のようだ。そろそろ練習を再開するからと、遼くんを呼びに来たのだろう。

 それから遼くんは、千歌ちゃんに向かって言い放つ。ポジティブな、前向きな言葉をかける。

 

 

『じゃあ千歌、生徒会長に負けんなよ。めげずにやれば、きっと承認してくれるさ』

「うん!ありがとう遼くん!」

 

 

 

 ブツッ!プーッ プーッ

 

 

 

 そして千歌ちゃんが遼くんに対してお礼を言ったところで、電話はそこで途切れ、スマホから『プーッ プーッ』と音が鳴っているだけだった。

 千歌ちゃんは電話を切り、スマホの画面を真っ暗にした後で、千歌ちゃんは私に顔を向けて話す。

 

 

「曜ちゃん、こんなことに迷惑かけちゃってごめんね?私……もう迷わないから!」

「うん!千歌ちゃん、全力で頑張ってね!」

「…っ!うん!千歌、頑張る!!」

 

 

 これにて問題は解決。千歌はスクールアイドルを諦めず、まず生徒会長に何が何でも部として承認してもらおうと、彼女は決意するのである。

 そして千歌ちゃんは、ただ真っ暗な画面になっているスマホに向かって、彼女は頬を真っ赤に染め、なんだか幸せそうな表情を見せながら言う。

 

 

「遼くん、ありがとう……///」

 

 

 スマホをぎゅっと握りしめながら遼くんにお礼を言った千歌ちゃんは、遼くんから応援されたからとても嬉しそうで、不意に笑みを浮かべていた。

 けど、私はその笑顔の表情を見たとき、何故か胸のあたりがチクッと痛みが走る。

 

 そして千歌ちゃんが発した遼くんへのその言葉にも、チクチクと胸に痛みが走った。

 

 何故そんなことが起きてるのか?

 

 そしてそれは何が原因なのかは、まだ先の話……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私と千歌ちゃんは、そのあとで無事にバスで千歌ちゃんの家である『十千万』に帰って来た。

 だけどちょうどその時、千歌ちゃんのお母さんに捕まり、回覧板を渡してくるという頼みごとを頼まれちゃって、今は千歌ちゃんと一緒にフェリーに乗って、とあるの家に向かっているところ。

 

 

「もう!やっとお家に帰って来たのに、お母さんったら回覧板渡してきてって頼んでくるし、もう一体なんなのよ〜!!」

「あはは…タイミングの問題だね…」

 

 

 やっと家に帰ってきたところをお母さんに捕まり、そして回覧板を渡してくるというお仕事を任された千歌ちゃんは、不満を大きな声で言い放つ。

 逆に私は、自分の家に帰っても良かった。

 

 けど千歌ちゃん1人じゃ寂しいかなって思って、私も千歌ちゃんと一緒にフェリーに乗っている。

 

 

「果南ちゃん、家にいるかな?」

「家にいるんじゃない?いなかったらいなかったで、ポストに入れておけばいいよ」

 

 

 千歌ちゃんと一緒にフェリーで向かっているところは、果南ちゃんのお家。

 回覧板と一緒に、みかん数個を果南ちゃんへの手土産として、小さなフェリーでゆらゆらと果南ちゃんの家に向かっていた。

 

 

「う〜ん……何でだろう……」

「んっ?どうしたの千歌ちゃん?」

「う…うん。ちょっとね……」

 

 

 そんなとき、千歌ちゃんはとある人物に対して、とても疑念を抱いていた。

 千歌ちゃんの様子に気づいた私は、千歌ちゃんにどうしたのと尋ねると、千歌ちゃんは私に疑問を投げかけるように話し始めた。

 

 千歌ちゃんが疑念を抱いている人物は、生徒会長のダイヤさんについてだった。

 

 

「でもなんで生徒会長…あんなにスクールアイドル部は駄目だって言うんだろう……」

 

 

 素朴な疑問だった。

 

『私が生徒会長である限り、スクールアイドル部は認めないからです!!』

 

 今思えば、私もそれは感じていた。直々にダイヤの声を聞いた時も、なんか…生徒会長はスクールアイドルを嫌っているように聞こえてきた。

 

 んっ……嫌ってる?あっ、そういえば……

 

 私は頭の中で昔の話を思い出し、千歌ちゃんが考えているダイヤさんがなんでスクールアイドルは駄目って言うんだろうという理由を、千歌ちゃんに向けて話し出す。

 

 

「もしかしたら生徒会長、スクールアイドルを嫌ってるのかもしれない……」

「スクールアイドルを、嫌ってる?」

 

 

 私の話に、千歌ちゃんはそう言って首を傾げながら尋ねてくる。私は千歌ちゃんにさらに話す。

 

 

「うん…。前にクラスの子が、千歌ちゃんみたいにスクールアイドルを始めようって言ってたんだけど、生徒会長に駄目って断られたって…」

 

 

 この話は千歌ちゃんには話していない話。だから話を聞いた千歌ちゃんは、その話を聞いて驚いていた。まずそんな話があったことにね…。

 

 

「えっ!?そんな話あったの!?」

「ごめん千歌ちゃん!本当なら千歌ちゃんにも言いたかったの!」

「えぇ〜!?先に行ってよぉ……」

 

 

 両手を合わせ、私はそのことを千歌ちゃんに謝る。

 それを横目に千歌ちゃんに関しては、他にもスクールアイドルを始めようとしていた事を知り、一緒にやりたかったな〜とうなだれ、フェリーの柵を背に寄りかかり、グデ〜と上を見上げた。

 

 私が千歌ちゃんにこの事を言えなかったのは、スクールアイドルを知った千歌ちゃんは、もうスクールアイドルにずっと夢中だったからだった。

 

 

「だって千歌ちゃん、スクールアイドルに夢中だったし、だから、言い出しにくくて……」

 

 

 千歌ちゃんに申し訳ないという風に、言い出しにくかった理由を千歌ちゃん話した。

 その上で、私はそれからダイヤさんが何故スクールアイドルが嫌いなのかを、噂で流れて着たことを含めて、千歌ちゃんに話した。

 

 

「それに、生徒会長の家、網元で結構古風な家らしくて、だからスクールアイドルっていうチャラチャラした感じの物は嫌ってるんじゃないかって噂があるし、とにかく嫌ってるんじゃないかって……」

 

 

 これは単なる噂。

 だけど、ダイヤさんの家は実際にそうらしくて、だからスクールアイドルたるものは、全部嫌いなんじゃないかって、クラスの子も言っていた。

 千歌ちゃんは、私のダイヤさんについての話を聞いたあと、夕方の空を悠々と飛んでいるカモメに手を伸ばし、ぎゅっと手を握る。

 

 

「チャラチャラじゃないのにな……」

 

 

 千歌ちゃんは、小さくそう呟いた。

 ダイヤさんが本当にスクールアイドルを嫌っているのかは、誰を聞いても分からない。

 だから真意は本人に聞くしかないと思う。でも、そう簡単に口を開いてくれるとは思わないけど。

 

 

「よっ!着いた!」

 

 

 フェリーも目的地に到着し、フェリーが港に付けられたところで、千歌ちゃんが1番に降りて、そんな言葉を口にしながら変なポーズをとる。

 

 

「千歌ちゃん、元気になって良かった!」

「うん!千歌は元気100倍だよ!」

 

 

 千歌ちゃんはすっかり元気になったから、私もホッとしている。全部、遼くんのおかげだね。

 私と千歌ちゃんが、フェリーを降りてから、数分くらいずっと歩いていくと、目の前にログハウス的な果南ちゃんの家が見えてくる。

 

 そして入り口のところには、ダイビングスーツを着ていた果南ちゃんの姿もあった。

 

 

「果南ちゃ〜ん!!」

「あっ、千歌、曜!だいぶ遅かったね」

 

 

 千歌ちゃんが大声で名前を叫ぶと、果南ちゃんは笑顔で私と千歌ちゃんを迎えてくれた。

 けどそこで、果南ちゃんの一言が炸裂する。

 

 

「今日は入学式だけでしょ?」

「それがまぁ……色々とありまして……」

 

 

 果南ちゃんの一言に、私はそう言って用事が遅くなったってことにして話をした。

 千歌ちゃんが部活を立ち上げようとして、生徒会長のダイヤさんに断られたって言ったら、果南ちゃんがどんな反応するのか自分でも分かる気がしたから、私はそう話してやり過ごした。

 

 そして千歌ちゃんは、果南ちゃんに対して大きな袋を目の前に出して、回覧板と手土産としてみかんを持ってきたことを話す。

 

 

「はい!回覧板とお母さんから!」

「どうせまたみかんでしょ?」

「文句ならお母さんに言ってよ!」

「ふふっ。はいはい」

 

 

 ぶっちゃけ果南ちゃんにみかんをあげることは毎回のことだから、毎回のように、千歌ちゃんと果南ちゃんはそんなやり取りになる。

 そして必然、果南ちゃんのお返しにも、千歌ちゃんと果南ちゃんのやり取りは同じである。

 

 

「はい!それじゃあお返しの干物!」

「えぇ〜!?また干物〜?」

「文句ならお母さんに言ってよ!」

 

 

 果南ちゃんのお返しは、千歌ちゃんと同じように、毎回の如く干物なのだ。

 だから千歌ちゃんも『また〜?』って感じに、千歌ちゃんは呆れた表情を取っていた。

 

 逆に私はというと、千歌ちゃんはみかん、果南ちゃんは干物とずっと同じものを毎回あげたり貰ったりしてるから、それを見ていて面白かった。

 

 

「ふぅ…よっと……」

 

 

 それから果南ちゃんは、ダイビングに使う大きな酸素ボンベを運んでいたりして、私と千歌ちゃんはバルコニーにある椅子に座り、果南ちゃんが新学期から学校に来れると尋ねていた。

 

 

「それで果南ちゃんは、新学期から学校来れそう?」

「う〜ん。まだ家の手伝いも結構あってね…。父さんの骨折も、もうちょっと掛かりそうだし…」

 

 

 実は果南ちゃんは、お父さんの怪我の影響で、しばらく学校を休んでいたの。

 お父さんのダイビングショップの経営も出来ないからって、果南ちゃんは無理して1人でダイビングショップをやっている。

 逆に私からすると、1人でダイビングショップを経営していることに驚いていた。

 

 無理しているはずのに、果南ちゃん凄いなぁ…。

 

 

「そっか…果南ちゃんも誘いたかったな…」

「誘う?何に?」

 

 

 果南ちゃんは千歌ちゃんの言った言葉に疑問を抱き、千歌ちゃんが何に誘おうとしていたのかを尋ねると、隣の千歌ちゃんは、果南ちゃんを何に誘おうとしていたのかを、笑顔で話した。

 

 

「私ね、スクールアイドルやるんだ!」

 

 

 ピタッ!

 

 

 んっ?今、果南ちゃんの手が止まったような…?

 気のせいかな?多分…気のせいだと思う。

 

 

「だから、果南ちゃんも一緒にスクールアイドルやりたいな〜って思ってたんだけど、まだ果南ちゃん大変そうだから、仕方ないかな……」

 

 

 千歌ちゃんは、果南ちゃんを本気で一緒にスクールアイドルをしようって誘おうとしていた。

 でも果南ちゃんの事情を聞いた千歌ちゃんは、仕方ないと言って果南ちゃんをスクールアイドルに誘うのを諦めることにした。

 

 

「ふぅ〜ん…。まぁそれに、私はもう3年生だし、たった1年しかできないから…ごめんね?」

「大丈夫!気にしてないから!」

 

 

 それに果南ちゃんは今度から3年生。

 一緒にスクールアイドルを出来たとしても、一緒にやれるのはたったの1年だけ。だから果南ちゃんも千歌ちゃんにそう話し、千歌ちゃんはそれを聞いて快く受け入れた。

 

 それから果南ちゃんは、千歌ちゃんに対して自分の今の状況を告げ、学校のことをについて話をする。

 

 

「まっ、そういうわけで!もうちょっと休学続くから、学校で何かあったら教えてね!」

「うん!学校でなにかあったら、すぐに果南ちゃんに教えてあげるね!」

「うん。待ってる!」

 

 

 学校のことで、何かあったら教えるというちょっとした約束事を決めた千歌ちゃんと果南ちゃん。

 2人とも笑顔を浮かべて、笑い合った。もちろん、その場にいた私も、2人と一緒に笑いあった。

 

 

 そんな時…空から変な音が聞こえてる。

 

 

 何かのエンジン音と、プロペラの奇妙な音が、私と千歌ちゃん、そして果南ちゃんの耳を刺激して、私たちその音につられて3人は空を見上げる。

 

 

「んっ?何だろう?」

「もしかしてヘリコプター?」

 

 

 千歌ちゃんがそう言って空を見上げると、ちょうど私たちの上を、ピンク色をした派手なヘリコプターが低空飛行で飛んでいく。

 どんな人がピンク色のヘリコプターに乗っているんだろうと思っていたら、果南ちゃんがピンク色のヘリコプターを見ながら、ボソッと呟いた。

 

 

 

「小原家でしょ……」

 

 

 

 果南ちゃんがそう呟いたとき、私と千歌ちゃんは、果南ちゃんが口にしたときにしていた表情に、私たちは全く気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「2年ブゥリですか……」

 

 

 

 

 

 






最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

今回はここまでです!
第1話は、あと1話程で終わります。

まだまだ小説は始まったばかりなので、
読者方は気長に待っていてください。

次回も、楽しみにしていてください!
感想・誤字等、お待ちしています!


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