少年と少女達の輝き目指す物語   作:キャプテンタディー

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どうも、キャプテンタディーです。

夏休みもすでに終わり、また学校や会社への
通勤・通学フィーバーの始まりですね( )

ということで、この話は前回からの続きです!
今回は“よしまる”のお時間です。
視点は主に花丸ちゃんを視点に話をしていきます。
時には善子ちゃんも……。

それでは、本編をどうぞ!





#24 普通になりたい堕天使

 

 

 

 

 

間違いない。確かにマルは見たずら。

 

屋上をチラッと見ている善子ちゃんの姿を…。

 

 

「ハァ…ハァ…どこ行ったずら?」

 

 

みんなにはお手洗いと嘘をつき、実際は善子ちゃんを追いかけてきちゃったから、善子ちゃんを探している時間はあまりかけられない。

 

善子ちゃんの姿が見当たらない中で、マルがやって来たところは学校の1年生の教室前の廊下。

 

どうしてここなのか?

 

それは……マルの勘ずら。

 

善子ちゃんはマルと同じ1年生だし、他に隠れる場所といってもほとんどの教室は鍵が掛かってるから一度職員室に行かないといけない。

 

教室も使わないときは、普段は鍵がかかってる。

 

だから善子ちゃんが隠れるなら、きっと廊下の外側にある戸棚だと考えていた。

 

 

「あっ、あれは……」

 

 

すると案の定、キッチリ閉まっている戸棚の中に、不自然に半開きになっている戸棚があった。

 

 

「ふふっ、善子ちゃんたら……」

 

 

私はゆっくりそこへ忍び寄り、不自然に半開きになっていた戸棚を全開に開けると、中には体育座りで縮こまっている善子ちゃんの姿があった。

 

 

「……学校、来たずらか」

「うわぁ!?」

 

 

マルは戸棚に隠れてる善子ちゃんの顔を覗き見ると、善子ちゃんは驚いた声を上げ、戸棚を飛び出して反対側の壁にもたれかかる。

 

それで善子ちゃんは言い訳をする。

 

 

「来たっていうか、たまたま……通りかかったから寄っただけていうか……」

 

 

偶然に通りかかったと言っても、善子ちゃんが着ている服装は学校の制服。本当はたまたまではなく、最初から学校に来るつもりだったんだと思う。

 

屋上にまで顔を出してきたのだから、善子ちゃんはいつもの事をしに来たんだと思うずら。

 

 

「本当にたまたま…?」

「べ…別にいいでしょ!そんなこと!」

 

 

マルは善子ちゃんに尋ねたけど、善子ちゃんはマルの問いかけに一切答えてくれなかった。

 

はぐらかさらちゃったずら…悲しいずら。

 

そう心の中で悲しんでいるとき、壁にもたれていた善子ちゃんは立ち上がり、制服のスカートについている埃をパンパンと落としながら尋ねてきた。

 

 

「それより、クラスのみんななんて言ってる?」

「えっ?」

 

 

尋ねてきたのは、クラスのみんなのこと。

 

善子ちゃんがその質問をしてきた意味に関しては、マルははっきりと理解していた。

 

それが、善子ちゃんが学校に来ない理由であることも、マルはちゃんと分かっていた。

 

ただ、善子ちゃんの質問には主語たるものの言葉が抜けていたから、マルはわざと知らないふりをし、わざと本人から打ち明けるように仕向けた。

 

そしたら善子ちゃんは自分から打ち明けてくれた。

 

 

「私のことよ!変な子ね!っとか、ヨハネって何!っとか、リトルデーモンだって、ぷぷっとか!」

「はぁ……」

 

 

善子ちゃんはクラスの子が自分に対して思ってることを表現する。それは完全に、自分の自己紹介の時に言ってしまった後のイメージで捉えていた。

 

 

『堕天使ヨハネ?何それ…ぷぷっ、ダサっw』

『厨ニ病だよねアレw』

『自分は堕天使とかw 頭馬鹿じゃないのw』

 

 

きっと、善子ちゃんの頭はあれからずっとこんな感じのことを考えているだと思う。

 

それに、さっき私は善子ちゃんの質問に呑気な声で返事をしてしまったから、善子ちゃんはその返事を真に受け止めてしまった。

 

 

「そのリアクション、やっぱり噂になってるのね」

 

 

がっくり肩を落とし、項垂れる善子ちゃん。

 

そして善子ちゃんはまた、戸棚に逃げ込む。

 

 

「そうよね…あんな変なこと言ったんだもん。終わった!ラグナロク!まさに…Dead Or Alive!」

 

 

ガタンッ!

 

 

と、善子ちゃんは戸棚を閉めて閉じこもる。

 

そんなに悲嘆しなくてもいいのに…。

 

 

「それ、“生きるか死ぬか”って意味だと思うずら」

「別にいいでしょ〜!」

 

 

でも、幼稚園の頃から本当に変わってないずら。

 

マルは善子ちゃんに本当の意味を指摘すると、善子ちゃんは意地を張って声を上げる。

 

そしてマルは、善子ちゃんに言った。

 

 

「ていうか善子ちゃん、誰も気にしてないよ?」

「でしょ〜!……………えっ?」

 

 

クラスのみんなが思っていることを代表し、マルは善子ちゃんにそれを伝えた。

 

 

「それより、みんなどうして来ないんだろうとか、悪いことしちゃったのかなって心配してて……」

 

 

殻に閉じこもるように戸棚の中にいる善子ちゃんにマルは感情をも込めて伝える。

 

善子ちゃんはマルの言ったことに対して信じがたい反応をみせ、それが本当なのかマルに尋ねてきた。

 

 

「……本当?」

「うんっ!」

「本当ね?嘘じゃないわよね?天界堕天条例に誓って、嘘じゃないわよね?」

 

 

戸棚をちょこっと開けて、顔を出す善子ちゃん。

 

2度も聞かなくても分かると思うけど、本当だよ。マルの言うことは嘘じゃないずら。

 

 

「……ずら!」

 

 

マルは善子ちゃんの問いかけに『ずらっ』と、解釈するなら『本当だよ』と答える。

 

そしたら善子ちゃん、凄く元気になった。

 

 

「よし!まだいける!まだやり直せる!今から普通の生徒でいければ…!」

 

 

自分のクラスのみんなが、自分に対して思っていることをようやく信じた善子ちゃんは、戸棚を思いっきり開けて飛び出してくる。

 

自分の心の中で、もう一度“普通”の高校生になるために決心を決めた善子ちゃんは、突然戸棚を開けたことにびっくりしてその場で尻餅をついているマルに対して声をかけてくる。

 

 

「ずら丸!」

「な…なんずら〜!?」

「ヨハネたってのお願いがあるの!」

 

 

顔を近づけ、目を鋭くして話してくる善子ちゃん。

 

お願いがあるのと言われても、マルからしてみれば善子ちゃんがお願いしてきそうなことは、今までの話を聞いてて大体分かるずら。

 

それで善子ちゃんは話し出す。

 

 

「私、堕天使ヨハ…ゲフンゲフン。私…津島 善子は、何かあるとどうしても堕天使ヨハネの顔に出てしまうの。だからずら丸……」

「堕天使にならないように注意すればいいずら?」

「そう!ずら丸にしか出来ないお願いなの!」

 

 

両手を合わせ、マルに懇願してくる善子ちゃん。

 

堕天使ヨハネを捨てて普通の高校生を目指すということは、“今までの自分”を捨てるということ。

 

それを善子ちゃんは分かっていて、それでも普通になりたいって思ってるなら、マルはそれに手伝わないわけはないずら。

 

小さい頃の大切な友達のお願いなら、尚更ずら。

 

 

「善子ちゃんのどうしてものお願いなら、マルは快く引き受けるずら!」

「本当!?ありがとうずら丸!」

 

 

マルは善子ちゃんのお願いを引き受けると、善子ちゃんは思いっきりマルを抱きしめてくる。腕ごと抱きしめられたから、ちょっと苦しいずら…。

 

 

「よ…善子ちゃん!マル…そろそろ練習に戻らないといけないから離してほしいずら!」

「あっ、ごめん。ついうっかりしてたわ…」

 

 

善子ちゃんはマルの話にハッと我に帰る。

 

それで抱きしめていた腕を解いてくれた善子ちゃんは、マルに向かって言い放った。

 

 

「じゃあねずら丸!明日から私は学校に来るから、私のお願い、絶対に守ってよね!」

「ずらっ!堕天使ヨハネさんのお願いなら、リトルデーモンのマルはちゃんと守るずらよ〜」

「クックック…我がリトルデーモンよ。明日からの我に忠誠を誓うことをここに…ハッ!?」

「…………………」

 

 

約束したそばから早速出る堕天使ヨハネ。

 

堕天使ヨハネから普通になるには、とても険しい道のりになりそうずら。

 

 

「じゃ…じゃあずら丸!また明日ね?」

「うん。また明日!」

 

 

そして善子ちゃんはマルに背を向け、そのままマルから立ち去るように走って行ったずら。

 

姿が見えなくなった後、マルも急いで屋上へ向かった。千歌さんたちが待ちくたびれないように、急いで屋上へ向かう階段を駆け上がった。

 

 

「お…お待たせしました!」

「おっ、帰ってきたね!」

 

 

息を切らしながら屋上に来ると、準備運動をしていた曜さんが気がつき手を振ってくる。

 

 

「長かったね。そんなに我慢してた?」

「は…はい。でも…何とかなりました」

 

 

善子ちゃんと会ったことは秘密にし、曜さんの話に合わせてマルは話した。

 

マルが戻ってようやく5人が集まったのを見かねた千歌さんは、右腕を高々と掲げて青空に叫んだ。

 

 

「よ〜しっ!早速練習始めよう〜!」

「「「おぉ〜!!」」」

「おっ…おぉ〜!!」

 

 

一瞬マルだけが遅れて声を上げたけど、他のみんなはそれを気にすることなく練習は始まった。

 

 

明日からは善子ちゃんがちゃんと学校に来る。

 

 

そう考えていたマルは、心なしか嬉しかった。

 

やっと…善子ちゃんと学校生活を送れるからっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜善子 side〜

 

 

昨日の学校で、ずら丸に無理いって堕天使になるのを止めてほしいとお願いしてからの翌日。

 

はっきり言って、こんなに清々しい朝はない。

 

 

正に…神からの祝福!

 

 

……はっ!?またやってしまった…。

 

もうこれは卒業するの。堕天使ヨハネは、この日を待って終わりにするの!

 

これからは、津島 善子として生きていくの!

 

 

「行ってきま〜す!」

「いってらっしゃ〜い!」

 

 

ママには私はそう告げ、学校に向けて家を出る。

 

学校まで行くにはバスに乗って行く必要があって、私はまず沼津駅まて歩いていかないといけない。

 

学校行きのバスは、沼津駅にしかないから。

 

 

『次は、浦の星女学院前、浦の星女学院前です』

 

 

沼津駅からバスに乗ってしばらく揺られて、バスのアナウンスで学校前のバス停に差し掛かる。

 

私は降りる降車ボタンを押し、運転手に知らせる。

 

同じバスには同じ学校の生徒もいて、ちょっとドキドキしてる。だけど、絶対に堕天使にはならないと決めた以上、その約束は守るつもり。

 

落ち着いて立ち振る舞えば、きっと大丈夫。

 

 

「おはよ〜!」

「あっ、おはよう!」

 

 

学校に続く坂道を登っていくと、次第に周りは朝の挨拶をする生徒たちがたくさん見えてくる。

 

 

「ねぇ。あれ…津島さんじゃない?」

「あっ、本当だ」

 

 

すると私の前を歩く3人組が、私を見てヒソヒソと話している。リボンの色は見えないけど、私の話をしてるならきっと1年生。

 

ただ、私の話をされていることにドキッとした私は、まず心を落ち着かせる。

 

歩いていたはずの3人は立ち止まって私をじ〜っと見つめていたが、私はその横を通り過ぎて気にせず学校へと歩いて行く。

 

特に3人が何か話している様子もない。

 

どうやらずら丸の言った通り、あの時の事はみんな覚えていないみたい。

 

よしっ。それなら…まず第一印象を残さないと!

 

 

「……おはようっ!」

 

 

歩めていた足を止め、私を見ていた3人のクラスの子たちに向かって私はにこやかに挨拶をした。

 

普通らしく…何も飾らずに…。

 

 

「お……おはよう…」

 

 

3人は突然の私の挨拶に驚いていたけど、3人のうちの1人がちゃんと私に挨拶を返してくれた。

 

うんうん!掴みは大体オッケーね!

 

 

そして私はまた学校へと歩き出す。

 

 

今日から私は、普通らしく生きる。

 

 

リア充に……私はなるの!

 

 

〜善子 side out〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで止めてくれなかったのよ〜!」

 

 

善子ちゃんの悲嘆する声が部室の外まで響き渡り、マルたち5人の耳を刺激する。

 

 

「折角上手くいってたのに〜!」

 

 

善子ちゃんは部室のテーブルの下に隠れるよう縮こまって、涙を浮かべながら項垂れていた。

 

 

今から数時間前のことずら。

 

 

昨日、善子ちゃんから堕天使が出ちゃうから危なくなったら止めてと言われ、マルは学校にやって来た善子ちゃんを見張っていた。

 

善子ちゃんは入学式から学校に来ていない。だから善子ちゃんが自分の席に座ると、善子ちゃんを取り囲むように周りには人集りができていた。

 

それで周りのみんなは、善子ちゃんに対していろんな質問を投げかけ、善子ちゃんはその質問の嵐に笑顔を見せながら答えていた。

 

 

その時は、何も問題なかったずら。

 

 

善子ちゃんが望んでいた普通の女子高校生として、望んでいた生活を楽しんでいた。

 

 

アレをやってしまった前までは……ねっ?

 

 

「まさか、善子ちゃんがあんな物を持って来るとは思わなかったずら……」

 

 

原因は、善子ちゃんに対して『趣味とかあるの?』という質問で、善子ちゃんの対応にあった。

 

でもそれまでは好きな食べ物とか、どこに住んでるのとか、ごく一般的な質問ばかりで、堕天使ヨハネが顔を出すそぶりなど全くなかった。

 

たけど趣味について聞かれたとき、善子ちゃんは『占いをちょっと』とまず答えた。

 

そしたら、クラスのみんなは善子ちゃんに占ってとお願いされ、そしてそれが…堕天使ヨハネを呼び出してしまうことになってしまった。

 

善子ちゃんは自分のバックから黒地に白い線で描かれた魔法陣のテーブルクロスを机に広げ、少しだけサイズが大きめの真っ黒のマントを身に纏う。

 

そして最後には蝋燭立てと蝋燭を取り出し、蝋燭に火をつけて詠唱まで始めたのだ。

 

 

『天界と魔界の蔓延る遍く精霊。

煉獄に堕ちたる眷属たちに告げます。

ルシファー、アスモデウスの洗礼者、

堕天使ヨハネと共に、堕天の時が来たのです!』

 

 

マルがハッ!?と気づいた時にはもう遅くて、完全に堕天使ヨハネになってしまった善子ちゃん。

 

自分で気づいた頃にはクラスのみんなからドン引きされた目で見られ、きっと善子ちゃんの頭の中では“終わった…ラグナロク!”とか思ってる。

 

故に、今でもそうずら。

 

 

「う…うぅ〜!」

「ルビィちゃん、これどういうことなの?」

 

 

今の状況をいまいちを理解できずにいる先輩たちには、ルビィちゃんがマルの代わりに話してくれた。

 

善子ちゃんのことの説明を含めてね。

 

 

「ルビィもさっき聞いたんですけど、善子ちゃんは中学の時、自分のことを“堕天使”だと思い込んでたみたいで、まだその時の癖が抜けてなくて…」

「堕天使……」

「まさにこれ……厨二病ってやつだね」

 

 

曜さんは善子の心に響く一言を投げかけ、堕天使とボソッと呟いた梨子さんは『この子が堕天使?』と、少し驚いた表情で善子ちゃんを見つめていた。

 

 

「自分でも分かってるのよ。自分が…堕天使のはずなんてないんだって…。そもそも、そんなもの最初からいないんだって……」

 

 

善子ちゃんは自分が最初から堕天使じゃないということはちゃんと理解している。でも気が抜けると、堕天使ヨハネが出てきてしまう。

 

堕天使をやめたくてもやめられないという現象が、善子ちゃんの身に起きている現状なのだ。

 

 

「でもその…堕天使?をやめたいのなら、どうしてマントとかを学校に持って来たの?」

「それは…その…ヨハネのアイデンティティみたいな物で、あれがなかったら、私は私でいられないっていうか……」

 

 

善子ちゃんが持ってきていたマントや、魔法陣が描かれた真っ黒のテーブルクロス。それら全てを持っていないとヨハネらしくないと、持ち物に対しても善子ちゃんはそう話す。

 

その話に梨子さんは小さくため息をつきながらも、善子ちゃんの現状を何となく理解してくれた。

 

 

「とりあえず何か…心が複雑な状態になるということはよく分かった気がするわ……」

「うん。私も何となく分かった気がする」

 

 

曜さんも自分が言った質問の答えに対して完全に理解出来ていないけれど、何となく分かったと、頭を悩ませながらもそう話す。

 

 

「そうですね。実際今でも、善子ちゃんはネットで占いやっていますし……」

 

 

そしていつの間にかルビィちゃんはパソコンで善子ちゃんやっている“生放送”という名の映像を開いていて、映像の中の善子ちゃんは言う。

 

 

『またヨハネと一緒に堕天しましょ!フフッ♪』

「あぁ〜!やめて〜っ!///」

 

 

自分がしている生放送の映像を見られ、恥ずかしいと思っている善子ちゃん。ルビィちゃんが見ているパソコンを強制的に閉じ、善子ちゃんはマルに詰め寄って来る。

 

 

「とにかくっ!私は“普通の高校生”になりたいの!ずら丸〜!何とかして〜!」

「な…何とかって言われても……」

 

 

半ば涙を浮かべて半泣き状態の善子ちゃん。

 

そんな様子でマルに対して普通の高校生になりたいと言われても、マルにもどうすればいいのか分からないでいる。

 

マルの見る限り、今日のアレや今まで善子ちゃんの様子を見ていると、善子ちゃんが望んでいる“普通の高校生”になるのは、だいぶ難しいと思うずら。

 

 

『堕天使なんてやめるずらっ!』

 

 

…って、マルが言えればいいのに。

 

そうすれば善子ちゃんも決心してくれる。なのに、マルは自信がなくて、それすら言えなかった。

 

 

本当、マルは友だち失格ずら……。

 

 

「可愛い…!」

「「「えっ…?」」」

 

 

その時、善子ちゃんが強制で閉じたはずのパソコンが開かれていた。そして善子ちゃんの映像を見て、思わずそう呟いたのは、なんと千歌さんだった。

 

 

「これだ!これだよ!」

「ち…千歌ちゃん!?」

 

 

黒い衣装を着ている善子ちゃんを見て、すごく目を輝かせている千歌さんに曜さんは驚く。

 

善子ちゃんの姿を見て一体何を思いついたんだろうと、マルはもとより他のみんなもそう考えていた時、千歌さんは善子ちゃんの両手を握る。

 

そして千歌さんは、善子ちゃんに言い放った。

 

 

「津島 善子ちゃん!いや…堕天使ヨハネちゃん!!私たちと一緒に、スクールアイドルやりませんか?堕天使アイドルとしてっ!」

「……………えっ?」

 

 

その言葉は、善子ちゃんをAqoursに勧誘する言葉だったと同時に、“堕天使アイドル”になると言っているようなものだった。

 

 

「えっ……なに?何なの?」

「千歌ちゃん……」

「はぁ……」

 

 

あまりにも唐突過ぎる言葉だったから、言われた善子ちゃんは『何を言っているの?』と、千歌さんに対して疑問を抱く。

 

曜さんと梨子さんに関しては『またか』という感じに、やや呆れた表情で千歌さんを見つめていた。

 

 

“堕天使アイドル”

 

 

それが一体どういう“アイドル”ものなのか、その時のマルは、まだ知る由もなかったずら。

 

 

 

 

 

 

 






・☆10、☆9の高評価をしてくれた
真面目さん、アーセナルさん、tatsumiさん

評価をありがとうございます!

次回も、この続きとなります。
是非楽しみにしててください!
感想・評価等、お待ちしています!


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