どうもキャプテンタディーです。
4話目に突入しようと考えていた、僕の思惑をぶち壊したのはライブの『反省会』という存在でした。
ということで今回は、前回の『はじめの一歩』
のその後のお話となっています。
最後まで見ていってくださればとても幸いです。
それでは、本編をどうぞ!
翌日の、いつもの朝
今日の彼女はいつもより元気そうで、且つまたいつものように変装をして俺の部屋にやってきた。
「遼くん!おはヨーソロー!」
「おはよう…って、また変装してきたのかよ」
「えへへっ♪」
今月でもう4度目だ。
最初は警察官、次は船の船員、その次は飛行機のキャビンアテンダントと、前回まではそんな服装で俺の部屋に押しかけてやってきた曜だ。
今まで仕事で着るような服装ばかりを着ていた曜だったが、今回は打って変わり、それとはかけ離れた服装を身に纏っていた。
「でも曜、なんかいつもと違わないか?」
「へへっ!気がついた?」
いつもと何かが違うことに気づくと、曜はそれに気づいてもらえて嬉しそうな笑みを浮かべる。
曜の着ている服装は水色だ。何とも大胆に肩を露出させて、彼女の引き締まった太ももの全部が丸見えしそうなくらいに短いスカートを履いている。
胸と頭に水色のリボンを身につけ、いつもとは違う雰囲気を漂わせていた。
「どう遼くん、似合ってるかな?」
「えっ?あっ……」
俺は曜の着ている服装に見とれていた。
いつもなら元気溌剌に、敬礼して『ヨーソロー!』って言ってくるはずなんだが、今日は何も言わずにその場で俺に見せるように一回転する。
今日の曜は、『私を見て?』と心に訴えかけているようだった。
それと同時に、彼女はどこか恥ずかしそうだった。
何に対してかは、なんとなく分かる。
俺だって…こんな曜の姿を目の当たりにするのは、人生で初めてなのだから。
「うん…似合ってる…///」
「ほ…本当?」
「あぁ、凄く可愛いよ。曜は……」
「……………///」
感想を言うこっちも恥ずかしくなってくる。
曜は俺に言われた感想を嬉しそうに聞いていた。
『やった!』と心のどこかでそう感じていて、拳を握って小さくガッツポーズをしていた。
そんな彼女に、俺は今日の予定を尋ねる。
「そ…そういえば曜。今日は千歌と梨子と3人で、ライブの反省会をするんじゃなかったのか?」
「う…うん、そうなんだ!あ…あはは…」
どうして曜に今日の予定のことを尋ねたのかというと、今日の曜には予定がある。
その予定というのは、千歌の家でライブの反省会をするのだそうだ。
それでなんで俺がそんなこと?ってなると思うんだけど、俺は3人のライブを間近に見ていない。
というよりか、俺は部活があって行けなかった。
だからあれだよ…3人にライブどうだったみたいな感想を聞きに行きたいわけ。
「遼くんも来る?千歌ちゃんってば、遼くんにたくさん話したいことがあるんだって!」
「本当か?ただの自慢話なんじゃないのか?」
「違うよ!でも…意外とそうかも……」
千歌だったら言わなくもないからな。
曜も流石にそう考えてしまうのも無理ないよ。
だって千歌は何かが出来ると、すぐ喜んですぐ人に自慢するやつだからな。俺や曜に対してもそう。
『私出来たよ!凄いでしょ!?』
そう言って胸を張ってドヤ顔をかまし続けてきたから、今回もきっとそうなんだろうな〜って、俺は頭の中でそう考える。
とりあえず俺から話を切り出そうとしていたところを、逆に曜が話を持ちかけてきてくれたので、俺はその話に乗って、千歌たちのライブの反省会に参加することにした。
「まぁとりあえず、俺もそのライブの反省会とやらに参加するよ。実際…どんなライブだったか話とか聞いて見たいからさ」
「本当!?じゃあ千歌ちゃんに連絡するね!」
「おう。しとけしとけ」
俺も反省会に参加すると、曜はカバンからスマホを取り出し、千歌にメールで連絡をする。
サッサッと慣れた手つきで文字を打ち、風の如くといわんばかりにメールを送信する。
「どう?凄いでしょ!?」
「いや…何が凄いのか分からない」
なぜか自分のスマホを見せつけ、意味不明にドヤ顔をしてきたから俺はジト目でそう言った。
その言葉に曜は『ガ〜ン!』と表情を驚かせ、酷いという感じに困った表情をしていた。
理由は簡単、面白くないからだ。
携帯で早く文字を打ってメールを送信なんて誰でも出来ることよ。だからドヤ顔されても驚かない。
凄いでしょ?と言われても凄いとは思わないよ。
ただ俺が目に止まったのは、曜の右手に持っている水色のスマホだ。それを見るのは初めてで、曜ってそんなスマホ持ってたか?と、ふとそう思ったので俺は彼女に尋ねる。
「でも曜、そのスマホどうしたんだ?」
「あ…これ?これは進級祝い!2年生になった進級の祝いで買ってもらったんだ!」
彼女は買ってもらったその当時のことを思い浮かべながら話す。その表情は、いつも見てきた曜の彼女らしい元気で明るい笑顔だった。
曜のスマホはピッカピカに綺麗で、画面も大きい。見る限りもしかしたら最新機種かもしれない。
「へぇ…見せてくれよ」
「うん!いいよ!」
曜は俺の願いに快く受け入れてくれて、手渡さずとも俺の目の前に自分のスマホを見せてくれた。
ただ…それだけじゃあ、つまらないよね。
「よっと!曜のスマホも〜らい!」
「あっ!私のスマホ〜!」
自慢気に見せつけてくる曜のスマホを、俺はひったくるように取り上げる。
自分の大事なスマホを、俺に取り上げられた曜は、スマホをすぐさま取り返そうと俺に迫ってくる。
「遼〜くん!返してよ〜!」
「や〜だね〜!」
だが俺はスマホを持った右手を高々と掲げ、曜の手の届かない、ジャンプしても届かないところにスマホを高く持ち上げていた。
だから曜がいくら頑張ってジャンプしても、自分のスマホを取り返すことすら、手に届かないこともままならなかった。
「う〜ん!う〜〜〜っ!」
「ははっ、俺から見ると曜はおもちゃを取り上げられて返してよと泣き迫ってくる子供みたいだな」
「もう〜!私でいじるのやめてよ〜!」
いや、子供っぽいから面白い。
曜もたまに千歌みたいに子供っぽくなる。だから何かしらでいじってみると、曜も千歌と同じように子供みたいにがむしゃらになるのだ。
それでスマホを取り上げてずっとワーワーやっているが、いづれ彼女側から飽きてしまうと思った俺は、今度はスマホの中身を覗いてみようかな。
「え〜っと、ロックを解除するには暗証番号が必要なのか。う〜ん…そうだな〜」
「…っ!?だめ!それだけはだめ〜!」
曜は俺にスマホのロックを解除されるのはどうしてもダメらしい。このスマホの中には何が入っているのか、とても気になる。
ムニッ♪
それで彼女はわざとではないと思うけど、俺の胸のあたりに彼女の胸が当たってる。しかも可愛い服装のあのままでだ。
「返して!返してよ〜!」
しかも無自覚というおまけ付き。曜は俺に胸を当てて密着する形で、自分のスマホを何としてでも取り返そうとしてきた。
そんな彼女の胸の柔らかさの感触を味わい、心に湧き上がる興奮を抑え、俺は彼女がスマホに設定しているであろう暗証番号を打ち込んだ。
『0417』っと……。
この4つの番号は、彼女に取って大切な番号だ。
彼女はスマホのロックを解除するには、きっとこの番号かもしれないと思った俺は、曜のスマホにその番号を打ち込むと、たくさんのアプリが並んだ画面に飛ぶことが出来た。
つまり、ロックを解除出来たわけだ。
「あっ、ロック解除できた」
「えっ!?解除出来ちゃったの!?」
「あぁ…すんなり解除したよ」
「やだっ!だめ〜!」
どうやら『0417』がこのスマホを解除するための番号らしい。うん…いい情報を得た気分だ。
「ほい、スマホは返す」
「えっ?」
「なんだ?返して欲しかったんだろ?」
俺はそれで彼女にスマホを返した。
本当なら、曜が隠しているかもしれない情報を見てみたかった。だが本人が目の前にいるため、今日はここまでしておくことにした。
この続きは、彼女がいない時にしよう。
「もしや…俺に見られてもいいモノがスマホにでも入ってるのか?あるなら見せてくれよ」
「なっ!?ち…違うよ馬鹿!///」
曜は見られてまずいものは隠してないと言い張る。たが曜は顔を真っ赤にするので、何かを隠していると考えられる。
それが何なのか、楽しみで仕方ない。
「じゃあ早くその服装、別のに着替えて千歌の家に行くぞ。集合時間とか決まってるんだろ?」
「うん!千歌ちゃんの家に10時!」
それから俺は曜に千歌の家に集合する時間を尋ねると、向こうに10時集合だと言う。
俺は部屋にある電波時計を見ると、時計の短い針は9と10の間にあり、長い針は5と6の間にある。
つまり時間は、大体午前の9時28分。
あと30分しかしないってわけだ。
「あと30分しかねぇじゃねぇか!!」
「うわぁ!?本当だ!!」
「馬鹿野郎〜!」
俺と曜は急いで千歌の家に向かう準備をした。
曜に関してはちゃんとした服装に着替えたり、俺に関しては顔を洗ったりして、千歌の家に行くために約10分ほど準備に費やしてしまった。
「忘れてものは?」
「ないよ!じゃあ遼くん!急ごう!」
「あぁ!」
それで俺たちは自転車で向かう。
曜を俺の後ろに乗せ、この間のように自転車で2人乗りをして千歌の家に向かうことにした。
「じゃあ出発!」
「猛烈に全速前進であります!」
ただ天気雲ひとつない快晴。
太陽の暑さに蝕まれ、千歌の家に着く頃には俺は干からびたミイラにでもなっているかもな。
〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜
「お疲れ様〜!」
「「お疲れ様〜!」」
3人はライブの成功を祝って乾杯する。
ガラスのコップを陽気にカランッ!と音を立てて、3人はオレンジジュースを一気に飲み干す。
「ぷはぁ!うま〜い!!」
大好物であるオレンジジュースを飲み干した千歌は、気分爽快に笑顔を浮かべていた。
テーブルを囲むように座っていた曜と梨子も、オレンジジュースを飲み干してライブの成功の余韻に浸っている表情を見せていた。
「あ"ぁ"〜!疲れた〜!」
ただ俺は、今は千歌のベットで寝ている。
今日の天気と、2人乗りによって重さが倍増にし、その中で俺は自転車を漕いだおかげで、自分の体力は限りなく0%に近いほどに奪われた。
曜に『頑張れ遼くん!』って何度も何度もエールを送ってくれたおかげで着くことはできたけど、もう動ける力は残っていない。
だから今は疲れ切った体を休ませようとして、勝手にだが千歌のベットに横になっているのだ。
「もう遼くん!千歌のベットに寝ないでよ!」
「いいだろ別に!減るもんじゃないんだから!」
彼女には注意されるけど、決してそれでやめたりはしない。体に残る疲れが十分に取れるまでは、この千歌のベットで休憩するつもりだ。
「それよりも、ライブの話を聞かせてくれよ。初のライブは…結構大変だったじゃないか」
「えぇ、結構大変だったわ」
「雨が降ってて雷も鳴ってて、あんなに宣伝したのにお客さんが来ないかもしれないって思ってた」
梨子と曜は、その時に思っていたことを口に出して話してくれた。雨が降ったり雷が鳴ったりしていたのは、俺が部活中にも降ったり鳴ったりしたいから知っている。
「そうだな。俺の方も雨は降ってたから、部活中そっちの方がすごく心配だったよ」
だから心配ではあった。千歌たちの初めてのライブが失敗するんじゃないかってね。天候は千歌たちの門出を祝ってくれないのかって思ってた。
でも心配はいらなかったようだった。
「でも美渡さんを始め、みんな千歌たちのライブを見に来てくれたんだってな?」
「うん!凄かったよね!」
「うんっ!体育館に人が入らないくらいたくさんいてね、とにかく凄かったんだ!」
やっぱり美渡さんに対してあの時にお願いしておいて良かったかもしれない。あのお願いをしたから、美渡さんは妹のために動いてくれたに違いない。
だから妹のライブの成功のために人を集めて来てくれた美渡さんには、感謝しないとな。
「それよりも私ってば初めてのライブだったから、心臓がバックバクで緊張してたんだよ〜!」
「千歌ちゃんも緊張してたんだ。意外ね」
「私だって緊張するよ〜!」
千歌はお正月によく食べるお餅みたいに、プクッと頬を膨らませては梨子に対して怒る。
ただ梨子も、千歌と同じだったらしい。
梨子は得意としているピアノのコンクールとは全くの別物だと感じていたらしく、彼女は凄く緊張していた面持ちだったようだ。
「私も凄く緊張してた。ピアノのコンクールの時と違ってて、目の前でピアノじゃなくて、歌とダンスを披露することに凄く緊張してた」
「私もそうだった。水泳の高飛び込みは1人でやるものだけど、スクールアイドルは仲間と歌ったり、息を合わせて踊ったりするから、上手く出来るかなって、私も凄く緊張してた」
曜に関しても、初めての経験に凄く緊張していた事を口に出して話してくれた。
俺は正直、2人の話には驚いた。
曜は水泳の大きな大会に出ているし、梨子はピアノのコンクールに出ている。だから2人は人前に出たとしても緊張とかは慣れていると思っていた。
でも2人は人間だ。初めての経験には、やはり緊張してしまうものなのかもしれない。
「やっぱ初めては緊張するよな……」
「遼くんもないの?緊張したこと…」
「それはまぁ、なくもない……かな?」
それで千歌からそう質問された俺は、初めての経験で凄く緊張した記憶を思い出そうとする。
凄く緊張したことでいえば、多分去年になる。
「冬の選手権かな?まだ1つ上の先輩が数人くらい残っていたときだと思う」
「あっ、もしかして遼くんの話してることって前に私に話してた初めて試合に出て得点決めた話?」
「よく覚えてるな。曜のその通りだよ」
全くもって、曜が話してくれた通りである。
「3年生の先輩たちがいる中で、大事な試合に自分が初めて出ることもそうだけど、自分が出てもいいのかって思ってたりして、凄く緊張してたんだ」
「遼くんも緊張していたのね…」
「うん、緊張してた」
梨子の言う通り、俺は凄く緊張していた。
試合の途中から出場。初めて高校生として試合に出たし、ましてや公式戦。緊張しないわけがない。
でもその緊張をほぐしてくれたのは、あの人だ。
「あの人がいなかったら、俺はこうしてチームの一員になれてないし、今の俺もいないと思う」
「あの人?どんな人なの…その人?」
梨子は首を傾げて“あの人”について尋ねてくる。
千歌と曜の2人も梨子と同じように、その人について話を聞きたそうにテーブルに身を乗り出しながらこちらを見つめてくる。
それで2人がテーブルに身を乗り出してるせいで、千歌と曜のおっぱいがフニュッといい感じに潰れててなんか凄くエロいな…。
なんて変な考えはさておき、俺は1つ深呼吸をし、心を落ち着かせて3人に話した。
「名前は、逢沢真司先輩。俺が所属するサッカー部の当時のキャプテンだった人だ」
「キャプテン。とっても良い人だったのね」
「あぁ。とっても良い人だったよ」
あの人がいなかったら今の俺はいないし、俺はあの人に感謝しているし、尊敬もしている。
あの人はサッカー上手いし参考になる。それに俺が初めてレギュラーメンバーの中に入ったときにも、積極的に声をかけてきてくれて、すぐにレギュラーメンバーの人たちと打ち解けることも出来た。
俺が所属しているサッカー部は、あの人を先頭に部は成り立っていた。
たけどあの人には…もう会うことが出来ない。
「でも…もうあの人には会えない」
「えっ?ど…どうして会えないの?」
「………察して?」
「えっ…………あっ」
俺はあの人に会えないとそう考えてしまうだけで、梨子にまで分かってしまうほど表情に出ていた。
そう…あの人は交通事故で亡くなった。
しかも県大会の決勝の2日前。全国の舞台に行けるかもしれないと思っていた矢先の出来事だった。
なぜ交通事故なのか?理由はある。
道路に小さい子供が急に飛び出してきて、車は思いっきり急ブレーキをかけても間に合わなかった。
それでその時に、先輩が子供を庇って犠牲に…。
俺はそれを知ったときには、家に帰らないで、誰にも見つからない場所で1人で泣いていた。
何であの人が犠牲になるんだってね。
「そう……だったのね」
「辛かった…よね?」
「あぁ。ごめんな?いきなりこんなこと話して…」
「良いのよ。大丈夫だから……」
梨子と曜は俺に対して、優しく気を遣ってくれていたけれど、彼女たちは、凄く申し訳なさそうな表情で悲しんでいた。
知ってはいけないようなことを知ってしまい、気分も落ち込んでしまっていた。
するとその時の大会について、千歌は尋ねてくる。
「それで遼くん。その時の大会はどうなったの?」
「………ダメだったよ」
「…っ!そう…なんだ……」
千歌は『やっぱり』って感じに悲しい表情をして、すごく申し訳なさそうに顔を下に俯かせる。
そのあとの大会の決勝は、やはり逢沢先輩の交通事故のショックでサッカーどころではなかった。俺もショックが大きすぎて、途中から試合に出ても何も出来なかった。
「ごめんね遼くん。辛い思いさせちゃって…」
お前までそんな申し訳なさそうな顔するなよ。
もう……仕方のないことなんだ。
今更こんなこと思い出して、あ〜だこ〜だ言っても何も始まらない。何をしたとしても、劇的に何かが変わったりなんかしないんだから。
「もういいよ千歌。そんな酷い顔するな」
「遼くん……」
「曜も梨子も!笑顔笑顔!」
「う、うん。あ…あははっ……」
だから俺は、3人を元気付けた。
完全なるお通夜ムードになっているこの雰囲気を、何とかぶち壊してやりたくて、俺は千歌の目の前にあったみかんを、1つ摘み食いした。
「千歌のみかんも〜らい!」
「あぁ!私のみかん〜!!!」
悪いな…みかんよ。
3人を元気にさせるための礎になってくれ。
俺は千歌の食べかけだったみかんを食べると、彼女はムキ〜ってまるで猿みたいに怒り出す。
「何で食べちゃうの〜!」
「小腹が空いたから食べたかっただけ」
「せっかく残してたのに〜!」
彼女の問いかけに、俺は思っていたことを正直に答え、俺は千歌と梨子、曜の表情を伺う。
「まぁまぁ千歌ちゃん。まだみかんは沢山残ってるんだから、1つくらい食べられても大丈夫よ」
「そうだよ千歌ちゃん。怒らない怒らない」
「うぅ……私のみかん……」
千歌は俺にみかんを食べられて悔し顔になり、梨子と曜は千歌を宥め、表情は笑顔が溢れていた。
もうさっきまでのお通夜ムードに重苦しかった空気はもう無く、3人の顔には笑顔が溢れかえっていたからとりあえず一安心だ。
「それよりライブの話、もっと聞かせてくれよ!」
「そうだね!私も話したいこと沢山ある!」
「うん!よ〜しっ!反省会続けるぞ〜!」
「「おぉ〜!」」
それから3人は、俺のためにライブにあった出来事や、当時に考えていた胸中の思いなどを、たくさんのことを話してくれた。
ライブ後にはダイヤにも言葉をかけられたそう。
『これは今までのスクールアイドルの努力と、街の人たちの善意があっての成功ですわ!!決して……あなたたちの努力が実っての成功ではありません!勘違いしないように…!』
いかにもダイヤらしい言葉だ。
でもそれはまるで…彼女自身も“やっていた”みたいな意味深な発言みたいにも聞こえるけど…。
まだ千歌たちもはじめの一歩を踏み出し、スクールアイドルも始めたばかりだから、成長の兆しは十分にあると思う。俺はそう感じている。
「それでね、千歌ちゃんがさぁ〜!」
「あぁ!曜ちゃんそれ言っちゃダメ〜!///」
「「あははははっ!!」」
小一時間ほど4人で話に花を咲かせていた俺たち。
ライブについての話題は尽きた頃、千歌が思い出したように立ち上がると俺たちに話してくる。
「ねぇねぇ!今から海に行こうよ!」
「海!?何で今!?」
「家でゴロゴロするよりいいでしょ!たまには4人で海で遊ぼうよ!」
突然、海で遊ぼうよと誘ってくる千歌。
家でゴロゴロしてのんびりするより、外で遊ぼうという彼女の願望らしい。
すると曜が嬉しそうに目を輝かせる。
「いいね!千歌ちゃんがそう言うだろうと思って、家から水着持ってきたんだ!」
「よ…曜ちゃん!?」
「お前いつの間にそんなもの持ってきたんだよ」
曜は俺の知らないうちに自分の水着を家から持ってきたらしい。それで俺がいるのにかかわらず、彼女は堂々とその持ってきた水着を見せつける。
シンプルな水色のビキニの水着。
曜はそんなビキニの水着をまざまざと見せつけて、俺を誘ってるのか?
いいや、俺を誘ってるようにしか見えない。
「曜ちゃんが水着持ってきてるなら、私も水着着て遊ぼうっと!じゃあ梨子ちゃんも水着持ってきて!今から遊ぶから!」
「えぇ!?私の意見もなし!?」
すると千歌までも水着を着て遊ぼうと言い出す。
そして梨子に対しては、彼女は半ば強制的に水着を着てきてと梨子に命令口調で言い放った。
どうやら梨子には拒否権はなさそうだから、少し俺は可哀想かなって思っていた。
ただ俺からしてみれば、初めて梨子の水着姿を拝めるという至福を味わうことが出来るのだから、全然そうとは思えなかった。
我ながらこの状況、運がいい。
「じゃあ私、もう早速水着に着替えてくる!」
「いってらっしゃ〜い!じゃあ私も水着に着替えてくるから、梨子ちゃんも着替えてきてね!」
「えぇ〜!そんなぁ……」
梨子ががっくり肩を落としている中で、千歌と曜は水着に着替えに部屋を出ていってしまう。
部屋に取り残された梨子は、千歌のベットに座っていた俺をチラッと見てくる。
チラッ チラチラッ
そんなテンポよく俺をチラ見されると、さすがに俺だって気づかないわけがない。
全てを悟った俺は、梨子に話しかける。
「どうした梨子?顔赤くして……」
「ベ…別になんでもないわよ…///」
「俺に水着姿を見られるのが恥ずかしいのか?」
「なっ!?べ…別にそうじゃないから!///」
今の反応と慌てぶりは、どうやら図星なよう。
梨子は強がって認めようとしないけれど、顔が赤くなってる地点で説得力は全くないに等しかった。
それで彼女は立ち上がって俺に対して背中を向けると、渋々と水着に着替えに部屋を出ていった。
梨子の水着姿を拝めると思っていた俺は、彼女に向かって手を振りながら見送った。『気をつけて〜』と、胸中に不敵に笑みを浮かべながら……。
それから俺はというと……
「で…俺はどうすりゃいいの??」
静かな千歌の部屋に、1人取り残されていた。
水着のパンツさえ持ってきていないのに、俺は一体どうすればいいのって、3人が水着に着替えているとき、そんなことを思っていた。
3人の水着姿は脳内変換してお楽しみください。
のちに海でどんな遊び(意味深)をしていたのかも、
自分の頭の中で考えてみてください。
次回は、とうとう4話目に突入します!
ルビィちゃんと花丸ちゃんの2人をメインにして
話を進めていこうと思います。
次回も楽しみにしててください!
感想・評価等、お待ちしています!