少年と少女達の輝き目指す物語   作:キャプテンタディー

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どうもキャプテンタディーです!

今回も前回の続きになります!
というわけで、中身は題名で察して()

最後まで見てくだされば嬉しいです!
それでは、本編をどうぞ!





#12 宣伝とグループ名

 

 

 

 

翌日の午後

 

私と千歌ちゃんちゃんと梨子ちゃんは、学校が終わった放課後、とある場所に来ていた。

 

 

「よしっ!頑張ってアピールするぞ!」

「本当に…出来るのかな?」

「あははは…大丈夫だよ!」

 

 

私たちがやって来たのは、沼津駅。

 

ちょうど時間も午後の4時を回っているけど、太陽は強く私たちを照りつけ、とても暑かった。

 

この時間帯は、沼津駅には多くの生徒がやってくる時間帯でもあった。

 

車の数もそれなりに多くて、生徒の帰りを待つ親の迎えも多数見受けられた。

 

そんな中で、どうして沼津駅に私たち3人がやって来たのかというと、ライブのお知らせをするためのチラシを配りをするためにやって来た。

 

駅なら多くの人が集まるし、違う学校の生徒の子たちもやって来るから、そこを狙ってって感じかな。

 

 

「東京に比べると少ないけど、やっぱり都会ね」

 

 

梨子ちゃんポツリとそう呟く。

 

東京よりは断然人は少ないけど、私からしてみれば駅付近はそれなりに人は集まるから、チラシ配りにはもってこいだと思う。

 

それから千歌ちゃんは私に尋ねてくる。

 

 

「曜ちゃん、そろそろ部活が終わった人たちがここに来る時間だよね?」

「うん!そろそろだと思う!」

「よ〜しっ!気合い入れて頑張るぞ〜!」

 

 

そう言って千歌ちゃんは駅に向かって走っていく。

 

ライブの宣伝で多くの人に見てもらいたいからと、千歌ちゃんはとても気合いが入っていた。

 

そしてちょうど2人の女子生徒が千歌ちゃんの目の前に現れ、それを見た千歌ちゃんはすかさずライブの宣伝をしながらチラシを渡そうとする。

 

 

「あのっ!よろしくお願いします!!」

 

 

けど千歌ちゃんに声をかけられた2人は、千歌ちゃんの声にスルーして通り過ぎていった。

 

 

「あれ?あれれ?」

 

 

千歌ちゃんはポカンと、口を開けていた。

 

 

「意外と難しいのね……」

 

 

梨子ちゃんも千歌ちゃんの姿を見て、宣伝することに対して気難しそうな表情を見せる。

 

梨子ちゃんに関しては、彼女はあまり自分から話し出すタイプじゃないって話をしていたから、私がチラシ配りの手本を見せる必要があった。

 

 

「う〜ん、難しいなぁ……」

「大丈夫だよ梨子ちゃん!こういうチラシ配りっていうのは、気持ちとタイミングなんだよ!」

 

 

そして梨子ちゃんに『見てて!』と言い残した私は、早速駅から出てきた2人の女子生徒に狙いを定め、ライブの宣伝を始めた。

 

 

「ライブのお知らせで〜す!」

「「……っ!」」

 

 

目の前にバッと現れた私を見た2人の女子高生は、驚いて足を止める。

 

それから私はすかさずライブの宣伝にと、2人の女子高生にチラシを見せて宣伝する。

 

 

「よろしくお願いします!」

「ライブ…ですか?」

「はい!」

 

 

1人の生徒に尋ねられ、私は答える。

 

するともう1人の生徒が私に尋ねてくる。

 

 

「あなたが歌うの?」

「はいっ!是非見に来てください!」

 

 

私は宣伝をするのと一緒にビシッと敬礼をする。

 

2人はチラシを受け取り、チラシに書かれていることに目を通したあとに、顔を見合わせながら話をしていた。

 

 

「ライブは日曜日なんだ。行ってみる?」

「うん、いいよ〜!」

 

 

そう2人が話し、私の前から去っていく中で、私は『よろしくお願いします!』と一礼した。

 

私を見ていた千歌ちゃんは、俄然やる気が増す。

 

 

「凄い!千歌も負けてられない!」

「す…凄い……」

 

 

逆に梨子ちゃんは凄いと言って、私のコミュニケーション能力の高さに脱帽していた。

 

そして脱帽するどころか、羨ましがられた。

 

 

「凄いなぁ。いきなり知らない学校の生徒とすぐに話せるんだもん。曜ちゃんって凄いね」

「別に…そんなに凄くないよ」

 

 

頬を掻き、頬を赤く染めて照れる私。

 

最初から持ってして生まれてきた訳じゃないけど、運動や勉強が出来るからってだけで、人気が出ちゃうだけなんだ…。

 

だから正直、嬉しいとは思わない。

 

 

「じゃあ次は梨子ちゃんの番!」

「えっ?私がやるの?」

「そうだよ!だって…私と千歌ちゃんと梨子ちゃんの3人しかいないんだしっ!」

 

 

私はそう梨子ちゃんに話すと、梨子ちゃんは駅付近のロータリーにいる多くの人を見て固唾を呑む。

 

梨子ちゃんはとても緊張している様子だった。

 

 

「ライブやりますっ!是非!」

「ど、どうも!」

 

 

それで千歌ちゃんはよく分からないけど、1人の女子高生に対して壁ドンをしてて、何だか脅迫してるみたいにライブの宣伝をしていた。

 

黒縁のメガネをした女子高生は、怯えながらも千歌ちゃんが持っていたチラシをそそくさと受け取り、そのまま立ち去って行った。

 

 

「うんっ!勝った!」

 

 

何に勝ったんだろう?

 

よそから見られれば、一体何をしているんだろうって言われてしまいそうだった。

 

 

「さっ、梨子ちゃんも頑張ろう!」

「う…うん、頑張る……」

 

 

私は梨子ちゃんを応援する。

 

梨子ちゃんは今からライブの宣伝をすることに不安が入り混じった表情を見せるけど、やるんだと表情を真剣な眼差しに変え、ライブの宣伝をしてチラシ配りを始めた。

 

 

「あのっ!今度ライブやります!是非見に来てください!」

「…………………」

 

 

梨子ちゃんの第一声は、やむなく撃沈。

 

目の前を通った女子高生に声をかけたけど、チラシを受け取ることもなくスルーされてしまった。

 

 

「あのっ!お願いします!」

「……っ!」

 

 

続く梨子ちゃんの第二声には、梨子ちゃんより少し背が小さい女子高生?が、梨子ちゃんの一声にビクッと驚いて、女子高生の足が止まる。

 

見た感じすごく怪しい人っぽくて、サングラスとマスクをしている。水色のコートみたいなとても暑そうな上着を着ていた彼女は、梨子ちゃんの一言で思わず足を止めてチラシを見つめる。

 

それを見て今だと感じた梨子ちゃんは、目の前にチラシを見せて力強く言い放つ。

 

 

「ライブやりますっ!是非来てください!」

 

 

梨子ちゃんのその一言に、チラシを差し出された女子高生は少し唸るような声を上げたあと、梨子ちゃんが持っていたチラシを取り上げるように貰って、その場を去るように走って行った。

 

梨子ちゃんはチラシを受け取ってもらえて、嬉しそうに笑っていた。けど、それから梨子ちゃんが持っているチラシは一向に減らなかった。

 

声をかけてもスルーされ、チラシを受け取ってもらえない。梨子ちゃんは意気消沈していた。

 

 

「うぅ…これ…上手くいくのかな?」

 

 

悲しく漏れる、梨子ちゃんの不安の声。

 

梨子ちゃんの様子を見ていた私はすぐさま彼女の元へと向かい、声をかける。

 

 

「梨子ちゃん、大丈夫?」

「……ううん、全然大丈夫じゃない……」

 

 

完全に意気消沈しかけている梨子ちゃん。

 

こんな時、彼女に対してどう声をかければいいのか分からないでいた私だけど、優しく話して梨子ちゃんをやる気にさせればいいのかなって思った。

 

 

「梨子ちゃん、頑張ろう?」

「えっ…?」

 

 

変に難しく話さないで、ただ単に梨子ちゃんを元気にさせるような言葉をかけて、私は梨子ちゃんが元気になるような言葉をかけた。

 

 

「大丈夫!スルーされてもいい。焦らず無理せず、梨子ちゃんのペースで宣伝すれば大丈夫だよ!」

「曜……ちゃん……」

 

 

ニコッとはにかむような笑顔を見せながら、彼女に言葉を投げかけて元気付ける。

 

すると梨子ちゃんは私の言葉に何かを感じたのか、彼女は目の色を変えて、やる気を見せる。

 

梨子ちゃんの中で何かが吹っ切れたのか、彼女の体からもの凄いオーラが放たれるほど、やる気に満ち溢れていた。

 

 

「うんっ!曜ちゃん、私…頑張ってみる!」

「うん!頑張って梨子ちゃん!」

 

 

梨子ちゃんはやる気満々だったから、私はもう何も言わなかった。彼女をやる気にさせただけで、もう私がすることもないと思った。

 

その上で、私もライブの宣伝の続きを再開した。

 

体育館を満員にするため、どうしても満員にする為に、私たち3人はライブの宣伝を続けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沼津駅でチラシ配りを始めて1時間が経つ。

 

1時間前の時よりも駅には多くの学校の生徒が帰っていて、仕事帰りのサラリーマンの人数も少しずつ多くなっていた。

 

 

「よろしくお願いしま〜す!」

「ライブやります!よろしくお願いします!」

 

 

そんな中で私たちは、鞠莉さんが貸してくれた体育館を満員するために、一生懸命にライブの宣伝と、そのチラシを配ることに追われていた。

 

曜ちゃんも梨子ちゃんも、駅を通る人たちにライブの宣伝を一生懸命にしていた。

 

ライブの宣伝をしている実感は、私にはある。

 

 

「ライブやりま〜す!よろしくお願いします!」

 

 

私たちでたくさん作ったチラシの数も1時間前よりも全然減ってきているし、受け取ってくれてる人たちも、私たちのライブについて見に行くかどうかで話し合っているのも耳にした。

 

この作戦は成功に近いと、私は思った。

 

 

「お願いしま〜す!ライブやりますので、是非見にきてくださ〜い!」

 

 

それから私は目の前を通る1人1人に対して、曜ちゃんが見せてくれた手本を頼りにライブの告知を行なっていた。

 

そんな時、見たことのある人物に遭遇する。

 

 

「あっ!花丸ちゃん!ルビィちゃん!」

「あっ、こんにちは!」

「ピ…ピギィッ!」

 

 

花丸ちゃんとルビィちゃん。

 

花丸ちゃんも私に気づくと、ペコリと頭を下げて挨拶をしてくる。ルビィちゃんは私を見ると、驚いて花丸ちゃんの後ろに隠れてしまった。

 

花丸ちゃんが背負っている風呂敷の中身が何なのかは私には分からなかったけど、私はとりあえず花丸ちゃんにチラシを手渡す。

 

 

「はい!花丸ちゃん!」

「これは何ですか?」

「ライブのお知らせだよ!」

「ライブ…ですか?」

「花丸ちゃんも見に来てね!」

 

 

花丸ちゃんは一度チラシに目を通してくれたけど、ライブという言葉を聞いて首を傾げる。

 

すると花丸ちゃんの後ろから、“ライブ”という言葉に反応したルビィちゃんが、ピョコッと顔を覗き込むように顔を出して尋ねてくる。

 

 

「ライブ…やるんですか!?」

「えっ?あっ、ルビィちゃん!」

「あっ…うゅ……」

 

 

だけど、ルビィちゃんの質問に対して私が少しでも反応すると、彼女はびっくりして、また花丸ちゃん後ろにチョコンと隠れてしまう。

 

まだ私に心を開いてくれない様子だった。

 

私はルビィちゃんに対してゆっくりと彼女に歩み寄り、しゃがみこんで蹲っていたルビィちゃんにチラシを手渡しながら大事なことを話した。

 

 

「私たちのライブ、学校の体育館でやるんだ」

「えっ?」

 

 

私のその一言に、ルビィちゃんは驚く。

 

 

「それで、体育館を満員にしないと私たち…スクールアイドル出来なくなっちゃうんだ……」

「えっ!?本当なんですか!?」

「うん、そうなんだ……」

 

 

私は『あはは……』とルビィちゃんに対して苦笑いをしながら頭をポリポリと掻く。

 

ルビィちゃんは衝撃の事実を聞いてしまったような表情をして、悲しそうな表情を浮かべていた。

 

それで『だから』と私は、ルビィちゃんに私の気持ちを全面に押し出すように伝えた。

 

 

「だから…絶対に、体育館を満員にしたいんだ!!だから来てね、ルビィちゃん!」

「…っ!はいっ!絶対見に行きますっ!」

 

 

私の話を聞いた上で、ルビィちゃんは宣言した。

 

その言葉に嘘はなくて、私たちのライブを絶対に見に来てくれると思わせられるほどの笑顔でそう話してくれた。

 

それが何だか嬉しくて、やる気が漲ってくる。

 

こうして私たちを応援してくれていると思うと、私は嬉しくてたまらなかった。

 

『よしっ!』と心の中で叫んでしまうほどに、私の体からはやる気が溢れかえっていた。

 

 

「じゃあ私、まだ配らないといけないから!」

 

 

そして私は花丸ちゃんとルビィちゃんにそう言って、背を向けて2人の元から離れて再びチラシ配りを始めようと走り始めた。

 

するとその時き、私の後ろから大きな声でルビィちゃんに呼び止められる。

 

 

「あ…あぁ、あのっ…!」

「んっ?どうしたの?」

 

 

まだ私に対して、緊張気味な面持ちを見せるルビィちゃんだったけど、彼女は一旦一呼吸おいてから、ある事を私に尋ねてきた。

 

それは、私たちにとって重要なことだった。

 

 

「“グループ名”は、なんて言うんですか?」

「えっ?グループ名…?」

 

 

私はルビィちゃんの言葉を聞いて、自分が手に持っているチラシに目を通す。

 

その時に私は、ある事に気付いてしまった。

 

 

「あっ!忘れてたぁ〜〜!!」

 

 

私と曜ちゃんと梨子ちゃんの3人で活動する上で、『グループ名』を全く決めていないことに……。

 

や…や……やってしまったぁ〜!

 

そう心の中で、非情に叫ぶ私であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?グループ名?」

「そう、グループ名だよ!」

 

 

千歌は俺に向かってそう言って、俺は千歌が何故そう目をキラキラしてるのか不思議に思っている。

 

 

「そういえば、そんなの決めてなかったね」

 

 

曜もその事を忘れていたらしく、自分も忘れていたと千歌の話しに続けて話す。曜までも忘れていたとなると、千歌が俺をここに呼び出した事情というか…現状が分かった気がする。

 

俺は部活の後、『相談に乗って欲しいことがある』と千歌からメールが届き、どうしたのだろうと思って俺は千歌に返信はしたのだがな…。

 

『とにかく砂浜に来て!』と、詳しい事情は聞かされず、仕方なしと千歌の言う砂浜へと向かった。

 

 

「ならなんで俺がここまで来なきゃならない?別に電話とかで相談はいつでも出来ただろ?」

「そうだけど…今決めなきゃいけないの!」

 

 

そしたら相談というのはグループ名を決めるということで、俺はその言葉を聞いてため息をつかながら彼女にそう話す。

 

すると彼女も俺に反論する。

 

どうして今決めなきゃいけないのかは不思議に思っている。グループ名なら、いつでも決められる時間はあるはずなのに…。

 

 

「じゃあどうして今なんだ?答えろ」

「ルビィちゃんから言われたの」

「ルビィ…ちゃん?」

 

 

千歌はルビィちゃんという子から言われたと、グループ名を決めるきっかけになった事を話す。

 

 

「そう!駅でライブの宣伝でチラシ配りをしていたときに、そのルビィちゃんって子に言われたの!!グループ名はなんて言うんですかって!」

 

 

それが多分、千歌たちがグループ名を決める事になった理由なんだと、俺はすぐに理解出来た。

 

 

「でも…まさか決めてないなんて……」

「梨子ちゃんだって忘れてたくせにっ!」

 

 

梨子はストレッチしながら呆れながら千歌に話すと、千歌は自分のせいにされて少々腹が立って、梨子に反論するように言い放つ。

 

そんなごちゃごちゃ話していたら埒があかないと、曜は2人の仲介に入って早いとこ名前を決めようと、2人に話を促す。

 

 

「とにかく早く決めなきゃ!」

「そうだな。早いとこ決めないと…」

「えっ!?手伝ってくれるの!?」

 

 

すると俺の言葉に驚く反応を見せる千歌。

 

いちいち俺に詰め寄ってくる癖は直して欲しいが、今は仕方ないと思って、彼女に俺は話をする。

 

 

「今グループ名が決まってないということは、自分たちを紹介する上で色々と面倒なんだろ?」

「う…うん……」

「だったら早いとこ決めないとな。そのルビィちゃんに自分たちはこんなグループ名だよって教えてやらないとな!」

 

 

少し強引ではあるけれど、さっさとグループ名を決めようと話すと千歌は喜んで抱きついてくる。

 

抱きついてくる癖も直して欲しいが、これも今は仕方ないと思った俺は、千歌に抱きつかれたままグループ名について3人に話す。

 

 

「どうせなら、グループの名前に学校の名前が入ってるほうがいいんだろ?」

「へぇ〜。例えば…?」

 

 

千歌は俺にそう尋ねてくると、俺はしばらくグループ名を考えた上で3人に言った。

 

 

「う〜ん…浦の星スクールガールズとか?」

「そのまんまじゃない!」

 

 

そしたら梨子に一蹴され、あえなく却下された。意外と物事を却下されると、心に来るもんだな…。

 

 

「じゃあ梨子ちゃんは決めてよ」

「えっ!?わ…私!?」

「そうだね!東京の最先端な言葉とか!」

 

 

梨子は千歌と曜に話を振られ、彼女は眉間にしわを寄せて考える。東京の最先端な言葉とか、聞いてみたい気もするけどな…。

 

でも一体何に期待をしてるんだこの2人は…。

 

 

「えっと…じゃあ、私たち3人が海で知り合ったから、“スリーマーメイド”…とか?」

「「……………………」」

 

 

…っておい!?お前らな、2人で梨子に話を振っておいてその反応は冷たいと思うぞ?ましてや無言で何も言わないなんて…。

 

 

「ま…待って、今のなし!///」

 

 

梨子は何も言われないことに頬を赤く染め、今のはノーカウントと言って、両手をブンブン振りながら言ってくる。

 

自分のセンスのなさに恥ずかしく思ったんだろうけど、確かにあまりセンスはないなと感じた。

 

 

「その…悪くわないと思うよ?」

「い、言わなくていいよ〜!///」

 

 

超絶に返すのが遅い。

 

曜はそう言うけど、梨子はさらに顔を赤くしていた。まるで湯気が立ち上るタコのように…。

 

 

「じゃあ曜ちゃんは?」

「私?私はね…そうだな……」

 

 

そして千歌は今度は曜に意見を聞く。

 

こいつの場合、大体こいつが言いそうなことは分かっている。それくらい曜はやってるし、スクールアイドルもそうするからな…。

 

 

「制服少女隊!!どう?」

「ないね」

「ないわね」

「ないわ。却下却下」

「えぇ〜!?」

 

 

そう言うだろうと思ったよコスプレ女。

 

千歌も梨子も曜の意見にいまいちピンと来なかったようで、曜の意見は却下された。

 

 

「もう〜!決まらないよ〜!」

 

 

その後にも4人で意見を出し合って、自分で良いと思ったグループ名を砂浜に書いていく。

 

だけど結局、4人が満場一致するようなグループ名は一向に決まらず、砂浜には俺たちが書いた文字が一面に広がっていた。

 

 

『sunshine』『波の乙女』『blue skylady』等々

 

 

たくさん思いついた名前はあったけど、3人はいまいちピンと来るようなグループ名はなかった。

 

そんな時に、梨子は言い出す。

 

 

「でもやっぱりグループ名とかこういうのは、言い出しっぺの人が決めるものよね」

「賛成〜!」

「うわぁ〜ん!戻ってきたぁ〜!」

 

 

何故か『海鮮』と書いた後に木の枝をグサッと砂浜に指した梨子は、もうグループ名を考えるのが嫌になって話を千歌に放り投げる。

 

 

「うぇ〜ん。もう分かんないよ〜!」

 

 

だが千歌も同じだった。頭を抱えて考えるも、砂浜に書いたもの以外で思いつくのはもうなかった。

 

 

「じゃあ制服少女隊でいいってこと?」

「スリーマーメイドよりはマシかな〜?」

「なっ!?それは無しって言ったでしょ!///」

 

 

それで梨子はまた『スリーマーメイド』を話を掘り返されたことで、頬を赤くして話をやめさせる。

 

そんでもって俺は、曜の『制服少女隊』という特に意味のよく分からない名前を却下した。

 

 

「まっ、俺は制服少女隊は無しだけどな〜」

「もう〜!なんで遼くんはそう言うの〜!」

 

 

曜はふくれっ面で怒って俺の肩だったら胸のあたりを叩いて来るが、全然痛くもかゆくもない。

 

逆に膨れている曜の頬を、俺の右手人差し指と親指でギュッと掴むと、頬はしぼんで変な音が出る。

 

まるで屁のような音だった。

 

 

「ぷっ……ぶぶっ」

「ははっ…まるでオナラの音だ」

「もう〜!遼くんったら〜!!」

 

 

曜は俺に弄ばれたことに怒って地団駄をする。

 

俺や曜の側にいた梨子は、俺と曜のこのやり取りを見ていて笑っていた。彼女は曜の素性というか、まだ梨子から見た曜についてまだ知らないことは多いだろうからな。

 

聞かれれば曜の素性なんて1時間くらい話せる自信はある。“自信”だけはな…?

 

 

「お〜い!3人とも〜!」

「んっ?あれっ!?千歌ちゃん!?」

「い…いつの間に……!?」

 

 

すると遠くから、千歌が俺たち3人をことを呼ぶ声が聞こえてくる。

 

ふと声がした方向に首を振ってみると、千歌が手を振って何かを見つけたようなジェスチャーをする。

 

 

「早く来て〜!いいもの見つけたから〜!」

「良いもの…?」

 

 

曜はそう言うも、千歌が早く来てと言うもんだから、俺たちは急いで千歌の元へと向かう。

 

それで千歌の元にたどり着いた時、梨子は尋ねる。

 

 

「千歌ちゃん、一体どうしたのよ?」

「見て見て!私たちがグループ名を砂浜に書いた時に、砂浜に書いてないものがあったんだ」

「書いて…ないもの?」

「どれどれ見せて?」

 

 

千歌はどうしても見せたいものらしく、曜は見せてと懇願すると、千歌は俺たちにその砂浜に書かれていたものを見せてくれた。

 

 

「書かれていたものは…これだぁ!」

 

 

やけに変に大雑把な行動ではあるけれど、千歌は俺たちに見せてくれた。

 

砂浜に書かれていたもの…それは……

 

 

 

『Aqours』

 

 

 

字体は歪んでいたものの、そう書かれていた。

 

 

「あ〜きゅ〜あわ〜ず?」

「アキュア?」

 

 

曜と梨子はそう言って、書かれている言葉を音読してみる。だが、そうじゃない。

 

本当は…こう言う。

 

 

「これは多分、アクアって読むんだと思う」

「アクア?それって水ってこと?」

「そうだな。そう言った方が正しいかも」

 

 

俺もよくは分からない。でも、この言葉をどこかで見たことがあって、確かにそう読んでいた。

 

確か…あいつらだったような…。

 

 

「水かぁ…。なんか良くない?グループ名に!」

 

 

すると千歌はこの名前を気に入ったようだ。

 

『Aqours』という言葉をまじまじと見ていた彼女は、曜と梨子の2人に対してにそう話す。

 

だけど梨子は、この文字は俺たちが書いたものではないからこれを名前にするのはどうなのかと、少しばかり不満を漏らした。

 

 

「これをグループ名にするの?誰がここに…何の為に書いたのかも分からないのに?」

「だからいいんだよ!名前を決めようとしている時に、この名前に出会った。それって…凄く大切なんじゃないかな?」

「はぁ…仕方ないわね……」

 

 

名前を決める時って、俺もよく分からない。

 

どういうコンセプトで、どんな風にキラキラした名前にしようかなんて、考えたこともなかった。

 

だけど千歌の話を聞いた時、何となく分かったような気がする。はっきりとは…言い切れないけど。

 

 

「そうかもね!私もこの名前がいいかも!」

「そうね。このままずっと続けても、名前も決まりそうにもないしね……」

 

 

それで曜と梨子は千歌の意見に賛成した。俺が何も言わずとも、その名前にするという事実は、決して変わることもないしね…。

 

 

「遼くんは?どう思う?」

「俺か?あぁ、俺もその名前でいいと思うよ。少し文字を捻った感じな名前だけど、とてもシンプルでいいんじゃないかな?」

 

 

俺の話に、3人は顔を見合わせる。

 

もうすでにグループ名は決まったも当然なのに、俺の一言でこれにしようって更に決心を強めるものだから、困ったものだよ…。

 

 

「それじゃあ決定だねっ!この出会いに感謝して、今から私達は『Aqours』だ!」

 

 

海に向かってジャンプした千歌は、明るい笑顔をしながらそう叫んだのだった。

 

偶然にも出会った言葉を、グループ名として3人は胸に刻み、そしてそれはまた、彼女たちの新たなる航海の旅路の始まりでもあった。

 

 

 

 

 






最後まで見てくださりありがとうございます。

本当ならグループ名についての話は次にしたかったのですが、今しかないと思い、今回の話に書かせていただきました。

次回か、またはそのまた次の話になるかもしれないのですが、そろそろライブの話になると思うので、みなさん是非楽しみにしててください!

感想・評価等、お待ちしています!



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