少年と少女達の輝き目指す物語   作:キャプテンタディー

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どうも、キャプテンタディーです。

今回から小説は、第3話へと入っていきます。
更新の間隔が空いてしまったのを取り戻す為
にも、また頑張りたいと思います!

最後まで読んでいってくだされば幸いです!
それでは、本編をどうぞ!




#10 新しい朝と新理事長

 

 

 

 

 

月曜日。いつもの朝がやって来た。

 

でも、今日からは俺のいつもの朝じゃない。

 

それはなぜか?なぜなら……

 

 

「遼く〜ん!早く来て〜!」

「はいはい、分かりましたよ」

 

 

今日から千歌たちのスクールアイドルのお手伝いをすることになったからだ。

 

基本的にすることは、ダンスの練習を考えること。

 

それにもう1つは、彼女たちがそのダンスがずっと出来るように、笑顔のままダンスが続けられるように体力作りをすることだ。

 

 

「それじゃあ早速始めようか?時間的にも、あまり練習出来ることも少ないだろうから」

「うん!じゃあ始めよう!」

 

 

この5時という、今なら普通まだみんな寝ているだろうって時に、朝っぱらから元気な千歌である。

 

彼女の服装は、なんかとても変。

 

千歌のサイズよりちょっぴり大きめな黄色いTシャツに、大きなカタカナで『チ』と書かれていた。

 

千歌の服のセンスって、なんか皆無だな。

 

 

「ふわぁ…まだ私…眠いんだけど……」

「梨子…眠そうだね……」

「えぇ、こんな朝早くに起きるの初めてだから」

 

 

あくびを1つした梨子は、海に向かって大きく背伸びをする。太陽の日の出の光を浴びていた梨子の姿は、とても美しく見えた。

 

それにしても、初日から3人とも寝坊せず、ちゃんと集まれたから良かった。特に千歌とかが寝坊するんじゃないかって思っていたが、寝坊せずに集合したからなんの心配もなさそうだ。

 

 

「じゃあ先ずはストレッチから!」

「「「は〜い!」」」

 

 

彼女たち3人は、俺の指示でストレッチを始める。

 

最初はいつも普段からやっている準備体操から始める。それから砂浜に座って両足を開き、体を左右に倒して体を伸ばして体をほぐしていく。

 

ただ3人がしているのを見ていると、体を伸ばしたときに3人のボディラインが見えたり見えなかったりして、時々エロさを感じる。

 

おへそがチラッと見えたりして、俺の中にある理性という名のブレーキが、俺の性欲を止めるブレーキをかけていた。

 

 

「ストレッチは十分かな?」

「うん!オッケーだよ!」

 

 

ストレッチを終えた千歌は、自分の両腕をブンブンと振り回していたから、彼女は相当なやる気に満ち溢れているのが伺える。

 

 

「でも、ダンスって何から始めるの?」

 

 

すると梨子は俺にそう尋ねてくる。

 

ダンスとか、そういう体を動かすことが苦手そうな感じに見える梨子にとっては、まず最初に何をするのか分からないでいる。

 

だからそこでだ。

 

梨子みたいにダンスとか苦手な人向けに、練習はまず基本のステップをすることにしようと考えた。

 

 

「今日は最初だから、最初の練習はダンスの基本的な動き、“ボックスステップ”をしよう」

「ボックス…ステップ?何それ?」

 

 

千歌は首を傾げ、俺に尋ねてくる。

 

 

「“ボックスステップ”っいうのは、ボックス…箱の形みたいに動く基本的な動きの名前さ」

「あっ!もしかしてこれかな?」

 

 

すると曜は、ボックスステップが一体どんな動きをするのか分かったようで、彼女はその場でボックスステップを踏んでみる。

 

そしたら意外もその動きそのままで、ボックスステップの動きがしっかり出来ていた。

 

 

「こんな動きでしょ!?」

「あぁ。曜の今の動きが“ボックスステップ”だよ」

「すご〜い!曜ちゃんすご〜い!」

 

 

千歌は曜を褒め、曜は頭を掻いて照れる。

 

でも梨子は、その動きを見ても気難しそうな表情になっていた。眉間にシワが寄り、険しい顔だった。

 

 

「先ずはこういう基本的な練習に尽きる。今日の練習はこれだけだから、3人はこれがしっかり出来るように頑張ろう」

「うん!千歌も頑張る!梨子ちゃんも頑張ろう!」

「え…えぇ……」

「大丈夫。俺が手取り足取り教えるから」

 

 

手取り足取り…決して深い意味はない。

 

とりあえずは梨子の体に覚えさせるようにする。

 

それから3人がボックスステップの動きを覚えるまで、みっちり時間を費やすのが今日の練習。

 

だが…それが意外にも時間がかからなかった。

 

 

「えっと、こう…かしら?」

「そうそう。何かと梨子も飲み込みが早いな」

「本当!?良かった〜!」

 

 

俺の教えた通りに梨子はボックスステップを踏む事が出来たから、あまりにも上達することに俺は驚きを感じていた。

 

そして千歌の方は曜に動き方を教えてもらい、千歌の方も上達は早く、すぐに出来るようになった。

 

それで俺は3人を集め、次の段階に進む。

 

 

「じゃあ3人とも少しずつ出来るようになっているから、今度はリズムをつけて動いてみようか?」

「リズム?どうやってやるの?」

 

 

それでまた千歌が首を傾げながら俺にそう尋ねてきたから、俺はまずその問いに答えず、自分の右手を曜に向かって差し出して尋ねる。

 

 

「曜、お前のスマホって動画撮れるよな?」

「えっ…うん。動画なら撮れるよ」

「ちょっと貸してくれないか?良い事をするから」

 

 

良い事と言って具体的に何に使うかは言わなかったけど、それでも曜は何も躊躇うこともなく、自分のスマホを貸してくれた。

 

それから俺は曜のスマホを立ち上げ、カメラを動画に切り替えたあと、今度は俺のスマホを取り出してとあるアプリを立ち上げる。

 

 

「よしっ、これでOK!」

 

 

そして曜と俺のスマホ2つをちょうど立てて置ける大きな石を置き、そこに2人のスマホを置いたところで準備が出来た。

 

ちょうどその時に、千歌がもう一度尋ねてきた。

 

 

「遼くん?これは?」

 

 

千歌が俺のスマホに指を指していたので、多分俺が立ち上げたアプリが知りたいんだろうと思い、俺はそれに答える。

 

 

「メトロノーム。知ってるだろ?」

「もしかして、これでリズムを?」

「そう。メトロノームのリズムでステップを踏み、曜のスマホで3人の動きを動画で撮る。動画はあとで動きで見直すことも出来るから、俺がいなくてもこうすれば練習は捗るだろう」

 

 

梨子は音楽をやっているからメトロノームを知っていて、俺がなぜこんな事をしたのかも、彼女は分かっていたようだった。

 

 

「そうだね!そうした方が画期的かも!」

「どうせ俺がいての練習なんてあるわけないから、3人でこうした方が効率的だと思う」

 

 

実際こんな事を考えたのは今さっき。

 

3人がダンスの練習をする上で、動きの確認は自分では分からない。他人に見られることで分かることもあるから、逆にこうして動画にして自分で確認して、どこが悪いか確認が出来るから、ダンスの練習だったらこれがいいかな〜って思った。

 

曜もこの俺がした試みには賛成のようだった。

 

 

「それじゃあ3人はカメラが映るまで下がって横に並んで?練習は俺の合図で始めるから」

「「「は〜い!」」」

 

 

そして今から練習を始めると、俺は3人に声をかける。千歌たちは左から梨子、千歌、曜と横並びに一列で並び、練習出来る位置についた。

 

それで俺は3人が準備できた事を確認した俺は、3人に一声かけて練習をスタートさせた。

 

 

「じゃあ始めるぞ〜!テンポは少し早めにするから、テンポに遅れないようにな!」

「「「はい!」」」

 

 

まるで、俺が指導者にでもなっているかのようだった。3人は俺に向かって返事をしてくるから、自分が3人にダンスを教える指導者にでもなっているかのように思わせられた。

 

 

「それじゃあ……スタート!」

「「「ワン、ツー、ス…」」」

「わあぁ〜!?」

 

 

ドテッ!

 

 

「ち…千歌ちゃん!?」

「大丈夫!?」

「え…えへへっ、ごめんごめん……」

 

 

練習を始めだと思ったら初っ端から千歌が倒れる。

 

いきなり過ぎて曜や梨子はびっくりしていた。

 

俺はまあまだ最初だし、次第に慣れていくだろうと首を長くして千歌を見つめていた。

 

 

「じゃあ気を取り直して…だな」

「うん!よ〜しっ!頑張るぞ〜!」

「「おぉ〜!」」

 

 

それから5分くらいボックスステップをやっていたんだけど、もうなんかいいかなって思った。

 

理由は簡単、3人とも早く上達したからだ。

 

まぁボックスステップは初心者がする基本的なステップだって調べた時に書いてあったから、それくらい出来て当然かと俺は思った。

 

だから俺はボックスステップに少し動きを加えて、片方の足を動かしながら、もう片方の足を蹴り上げるような動きにしてみた。

 

あとは上半身の動きもプラスした。ダンスをする上でも、上半身もしっかり動かせるようにしなきゃならないからね。

 

 

「「「ワン、ツー、スリー、フォー!」」」

 

 

そしたら3人は悪戦苦闘。地味に難しくしたから、千歌だったり梨子がたまに転んだりしていた。

 

でも、それでも3人は徐々に上達している。

 

見違えるほどにってものすごく上達しているわけじゃないけど、3人は地道に上達していた。

 

 

「はい、ストップ!」

 

 

まぁ…それでも問題は少なからずあるけどね。

 

俺は一旦休憩を挟む形で3人に指示し、動画を撮っていた曜のスマホを持ち上げ、録画していた今のところをもう一度見直す。

 

後から千歌たち3人が俺の後ろから動画を覗き込むように見ていたので、俺は動画をみせながら、3人に悪いところをアドバイスした。

 

 

「見て。3人とも動きはだいぶ良くなってきているけど、ここの足の蹴り上げがみんな弱い」

「あっ…本当だ…」

 

 

動画を見て、実際左足の蹴り上げがみんな弱い。

 

梨子はそれを見て、思わず声を上げる。

 

すると曜も自分から、ここは悪い動きだと思ったところを2人に指摘した。

 

 

「あっ…あとここの動きも弱いね」

「凄い。よく気づくわね」

「高飛び込みやってたから、フォームの確認は結構得意なんだ!」

 

 

曜はえっへんと胸を張って答える。

 

それから千歌に対して、さっきやってたステップのリズムについて俺は伝える。

 

 

「それで、リズムなんだけど……千歌」

「んっ?な〜に?」

「お前だけリズムが2人より少し遅れてる。だからもう少し2人に合わせて取り組んでくれ」

「えぇ〜!?私〜!?」

 

 

千歌は俺に言われて愕然とした表情で驚く。

 

『嘘だ』と表情に出ていたので、俺は千歌に動画を見せる。すると本当にリズムが曜と梨子の2人よりも遅れている事実を知った千歌は、頭を抱えて上を見上げて『あぁ〜!』と叫んだ。

 

 

「本当だ。私…2人より少し遅れてる」

「まぁリズムは少しずつ慣れていけば、次第に2人と合わさって良くなると思うから、あまりしょげなくても大丈夫だろう」

「本当?嘘言ってない?」

「俺はこんなことで嘘つかないよ」

 

 

なにげに心配する千歌を、俺は優しく言った。

 

彼女はそれで笑顔になり、元気も出た。

 

 

「よ〜しっ!また頑張るぞ〜!」

「もう…千歌ちゃんったら……」

 

 

梨子が千歌の言葉を聞いて、苦笑いを浮かべる。

 

曜も千歌に向かって笑顔を向けていたとき、千歌の口から突然声を上がった。

 

 

「あっ……あれって……」

 

 

千歌は上を向いていた。

 

俺や曜や梨子は、千歌が見ていた先…つまり空を見上げたとき、一機のヘリコプターが俺たちの上空を回るように飛んでいた。

 

ヘリコプターはピンク色だったから、俺は派手だと思い、じ〜っとヘリコプターを見つめていた。

 

 

「あれって…小原家のヘリだね」

「小原家?」

「うん。淡島にあるホテルを経営してて、学校にくる新しい理事長もそこの人らしいよ」

「へぇ…そうなんだ…」

 

 

曜と梨子の話を隣で聞いていた俺は、理事長なんて言葉を初めて知った。普通の学校なら、だいたい校長先生って言われていると思っていたから、尚更、俺はその言葉に内心驚いていた。

 

そしてヘリコプターは俺たちの上空をうようよしたあとで、淡島のホテルの方へと飛んで行った。

 

 

「行っちゃった……」

「理事長…どんな人なんだろう……」

 

 

俺の前でずっと佇んでヘリコプターの方を見つめていた千歌は、小さくそう呟いていた。

 

俺は会えるわけじゃないけど、小原家って聞くと“あいつ”のことをどうしても思い出してしまう。

 

 

小原家か……

 

 

あいつ……元気にしてっかな?

 

 

俺は心の奥底で、2年前に海外に留学していった

“あいつ”のことを、頭の中で思いふけっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?あなたが…理事長ですか?」

 

 

新しく入ってくる理事長を目の当たりにした千歌ちゃんは、ついそんな言葉を吐いてしまう。

 

でも理事長はそんなことを微塵にも気にせず、彼女は千歌ちゃんの質問に答えた。

 

 

「イェ〜ス!でも、理事長だからって気を使わず、私のことを普通に“マリー”って呼んでほしいの!」

 

 

とても明るい人だということは、最初の話を聞いて分かった。けどなんというか…年下の人にも気軽にそんな風に名前を呼んでと言える人は、私が会ってきた人たちの中でも今まで見たこともなかった。

 

髪は金髪。頭の右上には自分のチャームポイントとなのかもしれない輪っかある。

 

それに私が驚いたのは、彼女が着ている服装。

 

理事長だったら普通、スーツみたいな…ピシッとしたもっと大人っぽい服装だと思っていたら、彼女が着ていたのは浦女の制服だった。

 

しかもリボンの色は緑色だから、この人は、私たちの1つ年上であり、生徒会長のダイヤさんと同級生だということが分かった。

 

そして同時に、この人がホテルを経営しているあの小原家の人間だということを、私は心の中で改めて思い知らされた。

 

 

「あの…新理事長……」

「ち・が・う!マリーって呼んで?」

「マ…マリー……」

 

 

千歌ちゃんが理事長の名前を呼ぶと、理事長は途端に笑顔になる。とても…陽気な人だ…。

 

 

「その制服はどうしたんですか?」

「どこか変…かな?ちゃんと3年生の緑色のリボンを用意したはずなんだけど…」

 

 

理事長の名前は、小原 鞠莉。

 

さっき言った通りだけど、淡島のホテルを経営している“小原家”の娘。

 

彼女は制服で変なところはないかと、胸元にある緑色のリボンを摘んで心配そうにしていた。

 

そんな理事長に、千歌ちゃんは尋ねる。

 

 

「でも…理事長ですよね?」

「えぇ!でもしかし、私はこの学校の3年生!生徒兼理事長だから、カレー牛丼みたいなものね!」

 

 

理事長はそう言って例えを話す。

 

カレーと牛丼を合わせた……みたいなことを話して私たちに理解をさせようとしていたみたいだけど、梨子ちゃんは澄ましたような顔をして、鞠莉さんに対して例えが分からないと答えた。

 

 

「例えがよく分かりません……」

「えぇ〜!?分からないの!?」

「そんなの…分からないに決まってますわ!」

 

 

すると突然、理事長の鞠莉さんの後ろから生徒会長のダイヤさんがドンッと飛び出してくる。

 

鞠莉さんはそれに驚いて尻もちをつくけど、ダイヤさんを見るとすぐさま立ち上がり、思いきりダイヤさんに抱きついた。

 

 

「Oh〜!ダイヤ久しぶり!随分大きくなって〜!」

「……触らないでいただけます?」

 

 

ダイヤさんは鞠莉さんにそう言うも、当の鞠莉さんはダイヤさんの頭を撫でたりと久しぶりに会ったという嬉しさで一杯なご様子。

 

 

「フフッ…でも〜っ♡」

「…っ!あっ……///」

 

 

すると鞠莉さんは両手を頭からだんだん下げていく。そして鞠莉さんはなんとダイヤさんの胸を制服越しから触ったのだ。

 

悪戯っぽい笑みを浮かべながら、ダイヤさんの胸をモミモミする鞠莉さん。

 

ダイヤさんは不意をつかれ、私たちもそれに不意をつかれ、ダイヤさんの聞いたことのない声が私たちの耳に入ってきた。

 

 

「胸は相変わらずねぇ〜♡」

「や…やかましいですわ!///」

「イッツジョ〜ク☆」

 

 

ダイヤさんは顔を真っ赤にしながら、力の限りに大きな声で怒鳴ると、鞠莉さんはさらっとその場を離れる。鞠莉さんは怒られているにも関わらず、余裕そうな表情で言葉を発する。

 

私ながら、この人は自由人だなって思った。

 

 

「全く。1年の時にいなくなったと思ったらこんな時に戻ってくるなんて…。一体どういうつもr…」

「シャイニ〜〜☆」

 

 

うん…とっても自由奔放な人だと思う。

 

鞠莉さんは窓のカーテンを勢いよく開けて、彼女の口癖なのか、鞠莉さんは『シャイニー』の叫ぶ。

 

 

「人の話を聞かない癖は相変わらずのようね?」

「イッツジョ〜ク☆」

 

 

ダイヤさんは鞠莉さんの性格が分かっているようで、ダイヤさんは鞠莉さんの制服の胸ぐらを掴み、顔を寄せてそう言い放つ。

 

けど鞠莉さんは余裕綽々。私たちに向かってピースサインすら出来るくらいに余裕な表情だった。

 

 

「とにかくっ!高校3年生が理事長だなんて、冗談にもほどがありますわ!」

 

 

そしてダイヤさんは鞠莉さんにそう言い放つ。

 

それには私も千歌ちゃん、そして梨子ちゃんもそう思っていた。そもそも1つ年上の人が、学校の1番上に立つなんてことがあるのかってくらい。

 

だけど鞠莉さんは、ダイヤさんのその言葉に対して、突然真剣な表情を見せる。

 

 

「でも、そっちはジョークじゃないのよね」

「えっ?」

 

 

すると鞠莉さんは自分のポケットから一枚の紙を取り出す。そして折り畳まれていた紙を開き、ダイヤさんの目の前に見せびらかす。

 

ダイヤさんはそれを見て、鞠莉さんが持っている紙が何なのかを尋ねる。

 

 

「これは…なんです?」

「委任状よ。私のホームである小原家のこの学校への寄付は、相当な額なのよ」

 

 

『委任状』、鞠莉さんの口から出た言葉。

 

それは本来は自分がしなければならないことを他の人に任せとき、任せることを証明するものとして持たせる文書のことである。

 

つまり鞠莉さんが持っている委任状は本物で、この学校は全て鞠莉さんに権限があることになるのだ。

 

ダイヤさんはその委任状に書かれている文字に目を通すと、信じられないといった表情をして呟く。

 

 

「う…嘘っ……」

「な、なんで!?」

 

 

千歌ちゃんも鞠莉さんに一言尋ねると、鞠莉さんは私たちを見てニヤリと笑みを浮かべながら話す。

 

 

「実は…この浦の星女学院に、スクールアイドルが誕生したっという噂を聞いてね…」

「まさか…それだけのために?」

「そう!ダイヤに邪魔されてはとっても可哀想なので、私が応援しに来たのです!」

 

 

鞠莉さんがこちらを見て笑ったときは、私もそんなことを考えていた。もしかしたらと思った。

 

そしたら案の定、鞠莉さんはそれを話した。

 

私たち…千歌ちゃんにとってはとんでもない助っ人といっても過言じゃなかった。

 

 

「それ…本当ですか!?」

「イェス!このマリーが来たからには心配ありません!あなたたちのデビューライブはアキバドゥームを用意してみたわ!」

 

 

すると鞠莉さんは、自分の小さなノートパソコンを取り出すと、それを開いて私たちにアキバドームと言われる大きな会場に、大きなステージがある画像を見せてきた。

 

その画像をじっと見つめていた私たちは、三者三様の驚きを見せた。

 

 

「えっ!?そ…そんな!」

「いきなり…そんなところで……」

「き…奇跡だよっ!」

 

 

特に千歌ちゃんは1番はしゃいでいた。

 

画像を見て目をキラキラさせて、とても嬉しそうな笑顔を浮かべていた。

 

けど鞠莉さんの一言で、全てが崩れた。

 

 

「えへっ♪イッツジョ〜クよ☆」

「わざわざ私たちへのジョ〜クのためにそんなもの用意しないでください……」

「本当…驚きました……」

 

 

笑顔で鞠莉さんからそう言われると、千歌ちゃんの笑顔はなくなり、鞠莉さんにジト目で言い放つ。

 

梨子ちゃんも鞠莉さんに対してそう言った。そんなものを用意してないでくださいと私もそう思った。

 

まだスクールアイドルを始めたばかりなのにそんな大きな会場を用意されても、私たち3人にはとてつもなく大きすぎるから。

 

 

「でも実際には…とある場所を用意したの!」

「とある…場所?」

 

 

そしたら鞠莉さんは今度は嘘っぽくなく、私たちのためにとある場所を用意してくれたらしい。

 

 

「着いてきて!見せてあげる!」

 

 

ただ千歌ちゃんの質問には、彼女はそれがどこかは教えず、ただ『着いてきて』と言い残して理事長室を出て行ってしまった。

 

顔を見合わせた私たちは、3人で話し合う。

 

 

「どうする?着いてってみる?」

「うんっ!だってライブの会場を用意してくれてるんだよ!着いて行かないわけないよ!」

 

 

率先して千歌ちゃんはそう話し、先頭を切って鞠莉さんの後をついて理事長室を出て行く。

 

私や梨子ちゃんは、まだあの理事長に対して不審感みたいなのがあったけれど、千歌ちゃんがあの人について行ったから私たちもついて行こうと思った。

 

 

「じゃあ…行こうか?」

「う…うん……」

 

 

それで私たちは理事長室に佇んでいたダイヤさんにお辞儀をし、それから千歌ちゃんを追いかけた。

 

 

 

そんなとき……

 

 

 

 

「……なんで……戻ってきたんですか……?」

 

 

 

 

理事長室で、なぜか悲しみにくれていた

 

ダイヤさんの声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 






最後まで読んでいただきありがとうございます!

ダイヤさんの“最後の言葉”と“感情”
それは一体何を意味しているのか?
次回もこの続きからになります。

最初に色々と書いていなかったら、これから先の話も書いていましたが、そしたら文字が多くなるのであえなく断念しました。

次回も楽しみにしていてください!
感想・評価等、お待ちしています!


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