これで夏休み編は終わりなので、ある意味キリが良い!
では、焦らしっくパーク(ネタの引用)の続きをいきましょう!
※遅れて大変申し訳ありませんでした!
あまりにもあっさりと認めた渚だったが、十三束本人も驚くくらい十三束は驚かなかった。
むしろ、茅野が何故渚に惚れているのか、これだけでもわかった気がした。
十三束は、男子の中でも身長は低い方だが、渚はそれよりももっと小さい。
なのに、たまにとても大きく感じるのだ。
まず、態度が堂々としている。
例えば、今みたいに好きな人を聞かれたら、その好きな人の前にも関わらず普通に答えるところ。
本人が意識をしているのかどうかは知らないのだが、何気ない日常の行動一つでも、何故か惹かれるような物を持っているのだ。
そして、普段の時と戦闘の時とのギャップ。
家事も全般的にできて頭も良く、顔も整っているため、身長が低いことを加味しても間違いなく優良物件なのだ。
「そうか……今日は何時くらいまでいるつもりなんだ?」
何か、特別なことをしてあげたい。
十三束は、渚の親友としてそう思った。
「日帰りだけど、夜はここで食べていくよ」
「なら、午後七時五十八分に観覧車に乗ることをオススメするよ」
「七時五十八分だね?わかった。ありがとう、鋼」
「礼には及ばないよ。頑張れよ、渚」
「うん!」
そこで一歩後ろに下がって、渚に一礼、茅野にも一礼をして再びバイトに戻っていく。
「今のは、十三束君だっけ?」
なんとか平常心に戻った茅野は、顔だけは渚を見ることなくそう聞いた。
「そうだよ」
そして、一度好きだと思ってしまったら、当然意識しないはずもなく、自然と渚も顔を伏せてしまう。
結果、珍しく二人の間に沈黙が流れた。
「――渚!」
「――茅野!」
それに耐え切れなくなった二人は、何か話題を振ろうとするも、今度は被ってしまったため再び気まずい雰囲気が流れる。
「えーっと……なんか初めてデートをしにきたカップルみたいな雰囲気になってるんだけど……?」
「ダメだよ中村ー。今二人はお見合い中なんだから」
「違うよ!!」
ちょうどそこへアトラクションから帰ってきた四人は、そのなんともいえない雰囲気に出会したため、とりあえず中村と業はこの状況を弄ることにした。
その結果、渚と茅野から息ピッタリにツッコミが返ってくる。
「おやおや、どうやら夫婦仲もよろしいようで」
「夫婦じゃないから!!」
そして、再び中村に対して息ピッタリのツッコミをした渚と茅野に、四人は生暖かい目で見つめながら笑った。
◆◆◆
それからは、相変わらずの組み合わせでアトラクションを巡った渚たち。
茅野も渚の隣が慣れてきたのか、少しずつアトラクションを楽しむ余裕ができたらしく、顔は赤くしながらも楽しそうに笑っていた。
だが、その一方で渚は一度意識をしてしまうと、どうしても緊張でアトラクションどころではなくなってしまう。
なんとか平常心は保っているが、そういうところに特に敏感な二人が、また何やら怪しいことをしようとニヤニヤしているために渚も気が気ではない。
昼食、夕食共にワンダーランド内にあるレストランへ行ったのだが、そこの料金も十三束家が持ってくれるというのだから、ありがたいことこの上ない。
そして、時刻は午後七時五十分。
十三束が五十八分には観覧車に乗った方がいいと言っていたため、今から観覧車乗り場に向かわなければ間に合わない可能性もある。
「後はどうする?もう帰る感じかな?」
ちょうどその時、業が伸びをしながら皆に問いかけた。
今日はもう十分に遊んだのだ。
ここで帰ったとしても、悔いは何も残らないだろう。
「あ、ちょっと観覧車に乗りたいな」
「観覧車か……おっけー」
「いやー、楽しみだねー」
渚の意見に誰も反対することなく、観覧車乗り場へと移動する一同。
時間にして約五分。
観覧車乗り場には若干人が並んでいたが、観覧車は回転率がいいため、そこまで待つこともなく乗れる。
夏とはいえ、八時近くにもなるとさすがに暗く、アトラクションのあちこちでライトアップが始まっていた。
そして二分後、五十七分に渚たちのところまで回ってきた。
「ほら、早く入ってよ渚」
「あ、ごめん」
業に急かされたため、急ぎ足で乗り込む。
その後ろに、茅野と扉の閉まる音が続いた。
「……え!?」
扉を閉めたのは、業だ。
その本人はニコニコと手を振りながら渚たちを見送っている。
つまり、またハメられたのだ。
「…………」
「…………」
またしても二人の間に流れる、沈黙。
そこで、渚の携帯が震えた。
着信相手は、業。
『二人だけの場所は作った。後は頑張れ』
内容は、完全にこちらの事情を知っているかのようなもの。
今回はハメたというより、応援の意味合いが強いというわけなのだろうか。
「……とりあえず、座ろうか」
「……うん」
観覧車に乗っているのに立ちっぱなしでは何かと勿体ない気がするため、茅野に座るよう促す渚。
だが、座ってからも、会話はない。
情けない話だが、渚にもこういう経験は少ないために、どう切り出せば良いのか全くわからないのだ。
だから、幸運だったといえるのだろう。
「ねぇ、渚」
茅野から話しかけてくれたことは。
「ん?何?」
「私ね。この前の渚が出ていた『モノリス・コード』を見て、思ったの」
顔は伏せているが、声は震えておらず、しっかりとしている。
「やっぱり、渚はすごいなって。ほぼゼロからやっているはずの魔法を使いこなせて、十師族にも勝って、信頼できる友達も持って」
「そんなことないよ。僕なんてまだまだ――」
「渚はすごいよ。私が保証する。それでね、私、今まで考えていたことが一つあって、渚の姿を見てやろうって思ったの」
少しずつ、茅野の表情が見えてきた。
だが、話の内容は全くと言って良いほど、予想ができない。
「もう一回、
「え!?本当に!?」
磨瀬 榛名とは、約二年前までやっていた女優の時の茅野の名前。
当時は天才子役として活躍していたのだが、事務所の方針により長期休業を取り、それを利用して暗殺教室へと転入してきたのだ。
「うん。渚を見て思った。私もそろそろ新しい一歩を踏み出そうって。高校卒業するまでは弊害が出ないようにはするけどね」
「茅野なら大丈夫だよ!」
「そう……?ありがとっ」
観覧車はまだ四分の一のほどしか過ぎていない。
せっかく茅野が作ってくれた会話の流れを、こんなにも早く終わらせるわけにはいかない。
「や、夜景が綺麗だね!茅野!」
「え?あ、うん。そうだね?」
確かにワンダーランドの夜景は綺麗だ。
だが、いきなりの話題転換に茅野は戸惑っている。
(うう……話が持たないよ……)
今までは全く気にすることなく会話することが出来たのに、意識した瞬間にこれだ。
これじゃあ弄られても仕方ないだろう。
ふと、渚はなんとなく茅野の顔を見た。
本当に、何故か気になってしまったからという理由だけだ。
「――クスッ」
笑っていた。
茅野は、何故か一生懸命笑いを堪えているようだった。
「い、いきなりどうしたの?そんなに可笑しかった?」
「可笑しいよ!喋るだけでそんなに慌てる渚を見るの初めてだもん!」
何処に面白いところがあるのか渚にはさっぱりわからないのだが、茅野の笑いは止まらない。
時間にして数秒、茅野は少しずつ落ち着いていく。
「――はぁ……はぁ……はぁー笑った笑った。久しぶりにこんなに笑ったよ」
「うん。そんなに茅野が笑ったの初めて見たかもしれないよ」
「まぁ、今までの私は猫被ってたからね……こうやって笑えるのも、殺せんせーと渚のおかげだよ」
その時のことを思い出したのか、茅野は少しずつ顔を赤くしていく。
恐らく、渚がその時に成り行きですることになった『ディープキス』のことを思い出してしまったのだろう。
「その……本当にあのときはごめんね?」
「え!?あ、あのときのことは仕方のなかったことなんだから、私も気にしてないって」
さらに顔を赤くしつつも、それを隠すような気丈な振る舞いで顔を横に振った。
観覧車は、後少しで最高点へと着こうとしている。
「そういえば茅野。八時になったら何かあるらしいよ?」
また会話が止まりそうな予感がした渚は、ちょうどその時が近づいているということもあり、会話の繋ぎとしてその話題を出した。
「後一分もないね。何かってなんだろー」
「そこは、僕も聞いてないよ」
そんな会話をしているうちに、八時まで残り数秒となる。
秒針が進むに連れて、渚も何が起きるのか、というワクワク感とともに心拍数が上がっていく。
そして、八時になったと同時に、身体の芯に響く気持ちの良い轟音がほぼ同じ目線の場所から鳴り響いた。
「……綺麗」
「うん。しかも特等席だね」
八時から始まったのは、花火だった。
魔法が主流になっている現代でも、花火は職人が一から作っている。
ここでバイトをしていたからこそ、観覧車が最高到達点を迎える時に花火が始まる時間を知っていたのだ。
二人とも、花火を全身で感じ取っている。
「ねぇ、渚」
「ん?」
そこで、不意に茅野が話しかけてきた。
渚は茅野の方に顔を向ける。
「渚はまだ、殺せんせーみたいな先生を目指しているの?」
「うん。殺せんせーは僕の目標だからね」
「そっか……やっぱり、変わってないんだね」
「変わってないって言われても……」
花火によって気分が高揚しているからだろうか、渚はいつの間にか以前と同じように茅野と喋れているような気がした。
「でも、私はそんな渚が好きだよ?」
「……え?」
だが、そんなことはなかった。
「自分の夢を一途に追いかける人って、私はとてもカッコいいと思うんだ」
花火に高揚させられた気分は、さらに上回る興奮によってかきけされる。
「そして、私はそんな人の支えになりたい。勇気を与えたい。もし私が女優をやることによってそういう人が一人でも増えるなら、その人のために私は頑張っていくよ」
えへへ、と顔を綻ばせながら、茅野はそういう語った。
演技ではない、本物の笑顔で。
それは、凄まじい破壊力を秘めている。
「勿論だよ!僕だってそのうちの一人なんだから!」
「……え?」
「好きな人がその人のやりたいことを楽しんでやっているところを見れたら、誰だって嬉しくなるし、頑張ろうって思えてくるよ!僕もそうだから!」
言葉の意味を理解して、一気に顔を真っ赤にしていく茅野。
向かい合っている状態のため真っ赤な顔をした茅野を見た渚は、自分が間接的に告白紛いなことをしているのに気がついてあっと声を漏らす。
茅野は顔を下に向けて昼みたいに表情が見えないようにしている。
やってしまった、という気持ちが渚の中で強くなっていった。
「えーっと……」
これは、もう渚にはもうどうしようもできない。
最早茅野からの答えを待つしかないのだ。
「……うん。なら、私は女優に復帰できるように、もう一回頑張ってみる」
花火にギリギリ負けない程度の大きさで呟くように言う茅野。
「だから、渚も殺せんせーみたいな先生になれるように、頑張って」
「うん。任せて」
「今は、まだ見てくれなくても良い。けど、二人ともその夢が実現したらさ――」
そこで下ろしていた顔を上げ、真っ赤になりながらも、しっかりと渚に聞こえるような声量で、
「私と、一緒の道を歩んで欲しいな」
告白をした。
「……僕なんかで良ければ、勿論だよ」
「渚じゃなきゃ、駄目なんだよ」
真夏の夜空に鳴り響く花火は、肩を寄せ合った二人を祝うかのように空を華やかに彩り、その空の下で一つの青春を作り上げた。
書いてて恥ずかしくなりました。
その後の展開は皆様のご想像にお任せします。
そういえば、友人から小野賢章に似ていると言われ続けていたので、どんな感じの人かなーっと昨日検索かけてみたのですが、真由美さんの声優をしてる花澤 香菜さんと付き合ってたんですね。
全然知りませんでした。
そして、とても嬉しかったです。(小並感)
はい、次話から過去編ですね。