ありんす探偵社へようこそ   作:善太夫

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誰がエルフ王を殺したのか?

 城砦都市エ・ランテルベーカリー街221B『ありんす探偵社』、今日の美少女探偵ありんすちゃんはいつもになく真剣な表情です。

 

「じゃあ、回すよ」

 

 ダーツを構えたありんすちゃんの先で助手のキーノが円盤状の的を回しました。クルクルと勢いよく回るその的には地図が描かれています。

 

 ──これってもしかしたら『ダーツのた──』ゲフン、ゲフン。

 

 えいや、とばかりに投げたダーツは微妙な場所に刺さりました。

 

「……うーん。この場所はエイヴァーシャー大森林みたいだが……私は行ったことがないな……」

 

 的の地図を確認したキーノが呟きました。

 

「エイバシャ大尻、きっちょ事件が起こるんでありんちゅ!」

 

 ありんすちゃんは大興奮です。けっして最近暇すぎて自ら事件を求めて出かけようとしているのではないそうですが……

 

「……しかし、こんな事で本当に事件にでくわすなんてありえなさそうだが? ……本気で行くのか? なんだかいやな予感がするのだが……」

 

「またキーノはうるちゃいでありんちゅ。名たんて、でかけるちょこに事件ありますでありんちゅ。ジッチャが言ったますでありんちゅ!」

 

 ……確かに名探偵コ●ン君や金●一少年が出掛ける先々ではやたらと殺人事件が起きるものですが……このありんすちゃん探偵はほのぼの事件ばかりしかたまに起きませんよね?

 

「──きっちょ、さちゅじん事件がまっているますでありんちゅ!」

 

 かくして美少女名探偵とその助手は《ゲート》を開くとエイヴァーシャー大森林に旅立っていくのでした。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 ゲートを抜けると目の前に城がありました。ありんすちゃんとキーノは開いたままの門から中に入ります。

 

「……なんか静かすぎるな……ここはエルフの王国の筈。たしか法国に攻められていた筈なんだが……」

 

 助手のキーノは眉をひそめます。彼女の正体は実は王国のアダマンタイト級冒険者であり、かつ、かつて『国墜し』という異名で恐れられたマジックキャスターなのでした。ですから独自の情報網をいくつも持っているのです。

 

「ちゃっちゃちょ、いくでありんちゅ。事件がありんちゅちゃをまっちぇいるますでありんちゅ!」

 

 ありんすちゃんはキーノの腕をつかむとドンドン先に進むのでした。

 

 やがて真っ赤な部屋にたどり着いた二人を出迎えたのは……なんと二人のエルフの女の死体でした。

 

 

※   ※   ※

 

 

 

「さちゅじん事件!」

 

 興奮しまくりのありんすちゃんにキーノが声をかけます。

 

「……あそこにも……死体が……」

 

「三人! こりはエルフれんじょくさちゅじん事件でありんちゅ!」

 

 被害者の血で赤く染まった部屋には二人の女エルフと一人の男エルフの死体があったのでした。

 

 さっそくキーノは死体を調べだしました。男のエルフの死体にかけられた布を取ると──

 

「──うわ……は、はだかだッ!」

 

 男のエルフは男性器がむき出しの全裸だったのでした。

 

「……こりは……足に叩いたあちょがありんちゅ。身体にはたくちゃん切り傷があるますでありんちゅ」

 

 ありんすちゃんがその辺で拾った棒でナニをつつきながら冷静に分析します。

 

「……こっちの女達は刃物で殺されているようだな。剣……いや、サイスみたいな武器かな?」

 

 落ち着きを取り戻したキーノが二人の女エルフの死体を調べます。

 

「──こりはダイニングキッチンでありんちゅな……チンチンが犯人、指しているますでありんちゅ」

 

 ありんすちゃんがまたしても棒で男性器を突っつきます。うーん。確かにナニの向きは女エルフの方に向いていますが……それにおそらくありんすちゃんはダイニングメッセージと言いたかったみたいですが……

 

 と、ありんすちゃんが突っつきすぎて今度はキーノの方を指してしまいました。

 

「……犯人はキーノであ──」

 

「──んなわけあるかぁ!」

 

 しばらくするとありんすちゃんはナニをツンツンするのに飽きてしまったみたいで、体育座りの格好をしながらウトウトしはじめてしまいました。

 

「……おや? このエルフの男、王冠をかぶっているぞ? エルフの王様なのかもしれないぞ? と、すれば身元をわからなくするために裸にしたのだろうか?」

 

 キーノが探偵助手らしく推理を始めました。

 

「……裸なのは、あちゅかっちゃからでありんちゅ! アチチアチチでスッポンポンなんでありんちゅ!」

 

 ありんすちゃんも負けじと推理します。

 

「……しかし、衣類は誰かが持ち去った? いやいや、実はエルフ王は裸族だったかもしれないぞ? それならば納得できる……」

 

 キーノはブツブツと考え込んでいます。

 

「……裸なのは、あちゅかっちゃからでありんちゅ! アチチアチチでスッポンポン!」

 

 ありんすちゃんは大きな声で叫びました。うーん。

 

 突然、ありんすちゃんが手を叩いて笑いだしました。おもむろに取り出したのは小さなワンド──|蘇生の短杖〈リザレクションワンド〉でした。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 ありんすちゃんは女エルフの一人を蘇生させると訊ねました。

 

「犯人、だりでありんちゅか?」

 

 エルフの女は戸惑いながら答えました。彼女は髪が黒と銀の二色で瞳に王族の特徴があるハーフエルフに殺された事、男のエルフはやはりエルフ王のデケム・ホウガンだが、どうして死んでいるのかはわからない、との事でした。

 

 ありんすちゃんは話を聞きながら閉じていた目をパチリと開きました。

 

「犯人がわかっちゃ、でありんちゅ!」

 

 さて、ありんすちゃんがたどり着いた犯人とは? そして何故、エルフ王デケム・ホウガンは裸だったのでしょうか?

 

 

 ──つづく


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