リ・エスティーゼ王国王城の玉座の間にありんす探偵社の美少女探偵ありんすちゃんと助手のキーノは招かれました。先日、ありんすちゃんの機転で王国のアダマンタイト級冒険者 蒼の薔薇のガガーランとティアが助かった一件からありんすちゃんの名声が王家にまで届き、国王ランポッサ三世から直々に依頼を受ける事になったのでした。
「うむ。その方がかの高名な名探偵ありんすちゃんであるか。……じつはな、厄介事なのだが、頼まれて欲しい」
「お金さえ払えば依頼を受けるでありんちゅ」
ありんすちゃんは胸を張って答えます。
「実は……最近魔導王なる人物がエ・ランテルを寄越せと言ってきておりまして、是非にもありんす探偵社にエ・ランテルを守って頂きたいのです」
ランポッサ三世の隣に控えていた戦士長のガゼフが依頼内容を説明します。
ありんすちゃんがすぐにも承諾しようとするとキーノがいきなり口を挟みました。
「……戦士長殿! それは一体どういう事だ? 我々は探偵であって兵士ではない。そんな事……うぐっ!」
ありんすちゃんはキーノのお腹を蹴りあげて黙らせました。どうしてキーノはいつも空気を読めないのでしょうね。
「ちょの依頼、受けるでありんちゅ。大船にのるでありんちゅよ」
「有り難う。ありんすちゃんよ。ところで報酬だが、成功報酬で良いかな? 無事にエ・ランテルを守れたのなら金貨三千枚を支払おう」
ありんすちゃんとランポッサ三世はがっしりと握手を交わしました。
※ ※ ※
その日からありんすちゃんはリ・エスティーゼ王国王都のホテルにこもりだしました。なにやら四角い包みを大切に抱いています。
「ありんすちゃん、そろそろエ・ランテルに戻ろう。不本意だが国王の依頼を受けたからには守らぬとな」
しかしありんすちゃんはリ・エスティーゼから離れようとしません。ただ「まかせるでありんちゅ」と自信ありげに答えるだけでした。
※ ※ ※
「なんという事だ!」
それから数日後、カッツェ平野での戦争で甚大な被害を受けたリ・エスティーゼ王国は魔導王にエ・ランテルを譲り渡す事になりました。
ニュースで知ったありんすちゃんと助手のキーノは大急ぎでエ・ランテルに戻りました。既にエ・ランテルは魔導国となっており、街の様子は様変わりしていました。
「これでは我々が守ろうにも何も出来ないな」
キーノは吐き捨てるように呟きました。国家間で決まってしまった事は探偵の力ではどうにもなりません。
しかし、ありんすちゃんの様子は違っていました。随分落着き払っていて、何やら自信ありげです。
「キーノ、リ・エスティーゼ王国に行くでありんちゅ。だいじょぶ。エ・ランテルはここにありんちゅ」
ありんすちゃんは相変わらず懐に四角い包みを大事そうに抱えています。キーノはありんすちゃんに従って、一緒にリ・エスティーゼ王国首都、リ・エスティーゼに向かいました。
※ ※ ※
「なんと? ありんすちゃんとやら、エ・ランテルを守り抜いたとな?」
国王ランポッサ三世に謁見したありんすちゃんがいきなりエ・ランテルを守り抜いたと断言したのでキーノは慌てました。
エ・ランテルは既に魔導国となり、街中にはアンデッドの配下が闊歩している状態になっていましたから、ありんすちゃんの発言とは明らかに矛盾しています。
ありんすちゃんは懐から四角い包みを取り出してランポッサ三世に広げて見せました。包みの中身はただのノートパソコンでした。
ありんすちゃんはノートパソコンのディスプレイを開くと、シールを指差しました。
「ありんちゅちゃはちゃんとエ・ランチェル守っちゃでありんちゅ」
──ありんすちゃん……それ、Intelです……
あまりの出来事にランポッサ三世も助手のキーノも固まってしまい身動き出来ませんでした。