アニメ版の予定としてましたがマンガ版とミックスです。あと多少設定を盛ったり変えたり……。
書いたらまさかこんなに長くなるとは思わなかった。
6月25日。土曜日。
「悩んでるらしい。アイドルと“ホントの自分”に思うことがあったのかも」
情報収集の翌日。再びテレビの中にてクマに手に入れた情報を話した。
「……ホントの自分……。なるほど……クマと同じ……繊細でセンチメンタルなタイプね! ……おっ!? なんかいたクマ! 見つけた? クマ見つけちゃった!?」
「ついて来るクマー!」と張り切るクマ。見つけたらしいので僕たちはさっそくクマについて行った。
◇◇◇
「何ここ……真っ暗じゃん」
「ほんとにここで合ってる?」
「暗っ」
周りをキョロキョロと見渡す。とっても真っ暗で唯一足元がボヤけて見えるくらいだ。非常に危ない。
「クマの鼻センサーナメたらあかんぜよ! ……と言いたいとこクマけどちょっと自信ないクマ……」
すると一斉にライトがついた。辺り一面ピンクで何か目がチカチカしてる。
「うお……これはテレビに映ってた温泉街につきものの……」
「ストリップ……てやつスね」
「ストリップ!? はっはーん! 読めたクマよ……シマシマのやつクマね? ストリップって……シマシマのやつクマね!?」
「温泉街につきもの……ウチにはないからねっ」
「眩しいここ……」
「メガネしてても目が痛くなりそうだな……」
クマのボケを全員がスルーした。「偶然ではない、必然だ」とか厨二病チックな人ならば言ってしまうような光景だった。いつもなら器が果てしなく広い鳴上も流石にこれに触れるべきではないと思ったらしい。
「ねーボケだらツッコミなさいよ! もっかいクマ……。ストリップって……シマシマのやつ……」
「うっさいなこいつ……」
里中が呟く。今回は僕も同意だ。もう少し静かにしてもらいたい。
「……え、シマシマって? ごめんなんの話?」
目を細めていた天城が急にこっち向いた。睨みつけてる感じで怖かった。クマも怖かったのか「も、もう言わないクマ……」と言って黙った。
『ファンのみんなー! 来てくれてありがと~ぉ! 今日はりせのすべてを見せちゃうよ~!
……えぇ? どうせウソだろって? アハハ、おーけーおーけー!』
急に声が響いたと思ったらライトがひとつに集中した。現れたのは水着姿の久慈川りせ。つまりシャドウの方だ。
シャドウりせの頭上にはいつも通りタイトル名っぽいのがあった。
【マルキュン真夏の夢特番! 丸ごと一本、りせちー特出しSP!】
『ならここで……。あ、でもここじゃスモーク焚きすぎで見えないカナ? じゃあもう少し奥でウソじゃないってちゃーんと証明したげるネ!!』
「オ……オレもあんな風だったんか……? うぉ……こらキツいぜ……」
「……完二」
「なんスか有里先輩?」
「正直完二と比べるとりせの方がまだマシだ」
完二がキョロキョロと他のメンバーを見る。みんな頷いた。女子は「ヤケクソ」、男子は「毒」ーーそれとある意味精神攻撃ーーのバットステータスという嫌な出来事が中々忘れられないのだろう。あ、クマは受けてないのか。
みんなからの頷きに完二はがっくりと肩をおとした。
『じゃあファンのみんな、また奥でネ! ホントの私……よ~く見て、マルキュン!!』
消えたシャドウりせの代わりに現れたのはたくさんのシャドウ。僕たちは倒しながら先に進む。
【そうだなぁ……】
「!!」
天城救出の際の城で天城の声が聞こえてきた時と同じ、今回はりせの声が聞こえた。
【今の仕事は……ウン。とっても充実してるかな。小さな頃からずっと憧れてたから。今は毎日がとてと楽しいよ!
理想の男性は……うーん……やさしくて清潔感ある人かな? あ、顔とか別に興味ないかも。私逆にかっこいい人とかって苦手なんですよね~ やっぱり人は“中身”が大切じゃないですか?】
◇◇◇
『キャーハハハハハ!! 見られてるぅ! 見られてるのね、今アタシィィ!』
一番奥。ステージがあってポールによっかかるようにしてシャドウりせがいた。
『ウフフフフ……。キャハハハ!! ほら見なさい、もっと見なさいよ! これがあたし! これがホントのあたしなのよぉぉ!!』
「や……やめて!」
後ろを向くと本物のりせがいた。割烹着ってことはやっぱ盗撮未遂の男を追いかけてた時に落とされたのか。
「もう……やめてぇ……」
『ふふおっかしー やめてだって。んっもー! ホントは見てほしいくせにぷんぷん!
ざぁっけんじゃないわよ!! アンタはあたし! あたしはアンタでしょうが!!』
「違う……違うってば……」
りせは必死に否定している。でも、そんなのはシャドウには効かない。
『ゲーノージンのりせなんかじゃない! ここにいるこのあたしを見るのよ!! ベッタベタなキャラ作りしてヘド飲み込んで作り笑顔なんてまっぴら!
“りせちー”? 誰それ!? そんなヤツこの世にいない!! あたしはあたしよぉぉぉ! ほらぁあたしを見なさいよぉぉぉ!!』
「わ……たし……そんなこと……。違うのあれは、もう……やめてぇ……。やめ、て……見ないで! あれは本当の私なんかじゃ……」
「ダメだ!」
『さーてお待ちかね。今から脱ぐわよぉぉ! 丸裸のあたしを焼きつけなァ!!』
「私なんかじゃない!!」
りせがそう言った瞬間、シャドウりせが笑った。
『そうよ、あたしはアンタじゃない。あたしは……あたしぃぃ!!』
◇◇◇
変化したシャドウりせ。姿は大きな人型で……。
「あの頭のアンテナ? で突かれたら痛そう」
「そこ!? 今そこ気にすんのか!?」
「気にする」
「わかるよ有里くん! 気にするよねっ!」
「天城……! わかってくれる人がいて嬉しいよ」
「ダメだこいつら」
ツッコミを諦めた花村。諦めたらそこで試合終了ですぜ。
『我は影……真なる我』
「ペルソナッ!」
僕はオルフェウスを召喚して突撃させる。まずは様子見だ。相手がどんな能力なのか見極めないと。……けど、すんなりとはいかなかった。
『お客様~ お触りは禁止です~』
銃を持っている太ったーーお腹に穴開いてるーーシャドウが何体も現れて道を塞いだ。
「……! みんな隠れろっ」
鳴上が気がついて指示を出すのと同時にシャドウが撃ってきた。とても激しい攻撃だ。隠れるので精一杯だ。
「メガネ……メガネ」
完二がメガネーーと言うかサングラスーーを落としたのか必死に探していた。
「イザナギ!」
鳴上がシャドウの攻撃の隙をついてイザナギのスキル“ジオ”を使う。他のみんなも“ガル”や“アギ”、“ブフ”を使った。だけどシャドウには全部効かなかった。てか逆に反射してくる。つまり魔法反射、全属性だ。手強いな。
「だったらこうだっ!」
花村の声と共にジライヤが物理攻撃で倒していく。なるほど、魔法がダメなら物理でか。こういう時の花村の適応能力は素早いんだから。
「だけど数多すぎ……」
里中が呟く。彼女の言うとおり倒せるけど数が凄い。とにかく沢山いる。
「先輩! 待たせたな!」
どや顔の完二。クマが見つけてくれたらしくきっちりメガネを着けている。
「こいっ! “タケミカヅチ”!!」
大きな完二のペルソナ、タケミカヅチがどんどん敵を倒していく。
『あーあ、みんなやられちゃった。仕方ないな~ 特等席のお客さんには……メチャキッツーいのを特別サービスよッ!』
「よしっ、あとはアイツだけだ!」
ジライヤが突っ込む。
『そ~れっ!』
軽い身のこなしでジライヤの攻撃を避ける。するとシャドウりせの掛け声と同時に僕たちの体を緑の四角い円が通った。まるで“解析”してるみたいに。
「まさか……! オルフェウス!」
嫌な予感した。もしも風花と同じ情報解析タイプなら一気に叩けば問題ない。だけど……シャドウがそうだと気づくのに僕は遅かった。
『残念。あともうちょっと早く気づけたら当たったのにねっ』
とても陽気な声で僕に言った。
「花村に完二くん!?」
里中が若干慌てたような声を出した。後ろを振り向くと二人は鼻血を出して倒れていた。
「ふたりの弱いところ分析されて精神にショックを与えられたクマ!!」
……大体想像はつく。
『アンタたちのことはすべてお見通し……キャハハハッ!』
シャドウりせはポールを持ち上げる。何かの発射台みたいだ。
『じゃあ次はこちらから、いきまーすっ』
発射された弾はすごい勢いで僕らにダメージを与えた。ダメージだけでも凄いのに弱点属性を付与されているのでさらにやっかい。
『そして忘れた頃にやってくる精神攻撃、いっくよー』
もう一度緑の円がシャドウりせの周りから僕ら……いや。
「ハンチョー!」
「逃げろ!」
“僕”だけに小さな円が向かってきた。クマと鳴上が気づきとっさに叫ぶ。
『キャハハハ!! 逃げられないよーだっ』
「有里……先輩!」
薄れていく意識の中りせの声が聞こえた。
◇◇◇
周りはがれき、そして炎。僕の両親の“死体”。僕が昔よく思い出す光景だった。そしてこれが、僕の運命へのスタートだった。あれ? 何で悲しいんだろう。もうこんな悲しみ乗り越えたつもりだったのに。
ーー足が動かなくなるのを感じた。
◇◇◇
次に浮かんできたのは荒垣先輩が……死んだ時だった。
『アキ……こいつを……ま……』
料理が上手で、僕に嫌々ながらも丁寧に教えてくれた。料理が出来るようになったのは全部先輩のお陰なんだ。……何でこんなに戦う意思が失われるんだろう。真田先輩が前を向いて歩きだしたのに、僕は意外と根にもっていたのかな。
ーー下半身が動かなくなるのを感じた。
◇◇◇
次はS.E.E.Sのみんなとの記憶。楽しかったり、悲しかったり。とにかくたくさんの記憶だ。屋久島、楽しかったな。綾時に真実を聞いた時、辛かったな。あれ、何でこんなこと考えるんだろう。
今はシャドウりせと戦う時だ。早く戻って戦わないとかなり手強いから足手まといになってしまう。それは嫌だ。
◇◇◇
「……帰りたい」
気がつくと僕はそう呟いていた。そんなことを呟いた僕自身に驚いていた。鳴上たち特別捜査隊のみんなといて楽しく、この世界の活動部のみんなと会えたしーーまだ会えてない人もいるけどーー結構この世界での生活を満足してる。
今の呟きは、僕が初めて「帰りたい意思」を示した時だった。そして何故だろう。ここにいるとさらにその意思が強くなっていく。精神攻撃だから異世界に飛ばされるとかじゃないハズ。
「帰りたい……帰りたい。……僕は何でここにいるんだっけ。何で戦っているんだっけ。……僕には関係ない話なのに。もう戦うのは疲れた。僕はたくさん戦ったんだ。
もういいよ。この世界の問題は……鳴上たちが解決するべきなんだ。そもそも僕は、この世界の人間じゃないっ」
ーー全身動かなくなったので僕は目をつぶった。考えるのが、疲れた。
僕の目に、光が映ることはなかった。真っ暗なのに、ひとつの影を感じた。
「……“タナトス”」
◇◇◇
〈side鳴上〉
有里がシャドウりせの精神攻撃で全身氷漬けになってすぐ、有里のペルソナだろうか、
「何だコイツ? 有里のか?」
「でも有里くんは氷の中だよ」
「うう……この氷硬すぎだよ……きっつー」
「つかアレはホントに有里先輩のっすかね? 狂暴過ぎだぜ」
完二の言うとおりだと俺も思う。アレは攻撃していると言うよりかは暴れているって感じがする。
『何なのよコイツ! よけるので精一杯!』
流石にシャドウりせも想定外だったのか必死に避けている。それでもアレの攻撃はやまない。
「みんな、今の内に有里を助けよう」
俺がそう言うとみんな頷いて有里の周りに集まった。ペルソナで砕こうとしたり、“アギ”を使ってそうとしているが全然びくともしない。
「クマきち、何か方法ないかな?」
里中がクマに訊くがクマの方もわからないらしく、必死に考えていた。
「精神攻撃で生まれたのなら……もしかしたら“内側”からじゃないと砕けないかもしれないクマね」
「内側……有里くんのこと、私たちって知ってるようで知らないってことなのかな」
天城が若干落ち込み気味に言った。余り悠長に考える暇はない。アレがいつまでシャドウりせを抑えていられるかわからないからだ。
ーー“何で僕は戦っているんだっけ”
「……っ!!」
「センセイ、どうしたクマ?」
「い、いや。……何でもない」
みんなには聞こえてない? 俺、だけか?
ーー“「この世界」の問題は鳴上たちが解決するべきなんだ”
また聞こえた。幻聴ってわけではないようだ。有里の声、俺にしか聞こえない。……ワイルド同士だから? だとしたら……“俺の声も届けられるのでないか?”
「この世界」という気になるワードについても訊きたいことだし、試す価値はあると思う。
「有里!」
俺は大きな声で呼び掛ける。みんな驚いた顔で見ていたが気にせずに呼び続ける。
「有里! ……俺にはお前の声が聞こえた。だったら、俺の声も聞こえてるんじゃないのか? 俺とお前は、同じ“ワイルド”を持つ者同士繋がってる。そう思うんだ。……それに、俺とお前は親友だっ」
「……」
「……!!」
有里の手が少しだけ動くのが見えた。よかった。俺の読み通りに聞こえてたんだな。気がつくと他のみんなの表情はさっきの驚きではなく、見守るような……「頑張れ」と言ってくれているかのようだった。その“みんな”の中には、久慈川りせもいた。
◇◇◇
〈side有里〉
ーー“有里!”
誰の声だっけ。タナトスの影らしきのを見て以降真っ暗で何も見えない。
ーー“有里!”
また聞こえた。この声……。あともう少しで思い出せるのに。
ーー“俺とお前は、同じワイルドを持つ者同士繋がってる。そう思うんだ。……それに、俺とお前は親友だっ”
「鳴、上……」
そうだ。特別捜査隊のリーダー、鳴上悠だ。
もちろん、花村も里中も天城も……完二もクマもりせも。何だったら直斗だって。
「くっ……」
出ようとしても体が動かない。それに何故かタナトスがそこにいる気配がする。僕が召喚したわけじゃないのに。でも、だったら使うべきだ。
「僕をここから出せタナトス!」
叫んだ瞬間、急に体が動くようになり、さらに光が一気に目に映った。一瞬意識を失ったりして倒れかけた。横を見たら鳴上が支えてくれていた。
「有里……! よかった!」
無事に……戻ってこれたんだな。
「ん? アイツ、いつの間に消えてる」
「アイツ……タナトスのこと?」
「やっぱお前のペルソナだったか」
鳴上のペルソナで体力を回復した僕はすぐにオルフェウスを召喚した。まだ少し疲れてるけど何とか大丈夫。
『さっきのは何なのよぉ……。まぁ……いいわ。大きいのイクわよぉ!!』
……! これはかなりピンチだ。避けられないうえに弱点属性だ。
「くっそ! こんなことで」
「わ……私たちこれで終わっちゃうの?」
「ヤ……ヤバイまたくるぞ!」
「ダメクマ! し、死ぬとか絶対ダメクマよ!! クマはどうすればいいクマ……」
「クマ……逃げるんだ!」
「俺たちのことは構うなっ」
「センセイ……ハンチョー。そんなのダメクマよぉぉ……」
僕らを守ろうとしてくれるのは嬉しいけど……この強い攻撃をクマ一人が防げるとは思えない。
「みんな……センセイ……ハンチョー……。クマにできること……何か……何かあるはずクマ……クマはまたひとりぼっちになるの……?
いや……いやクマよ……ひとりぼっちはいやクマよ!!」
『さよなら……これで! あたしわぁあたしィィッ!!』
「くっ……!」
思わず目をつぶる。激しい音はしたけど痛みはこない。ってことは攻撃は当たってないのかな?
「ク、クマ!」
花村が叫ぶ声が聞こえた。恐る恐る目を開ける。クマが体を張って防いでいた。
「か……考えるより先にか……体が……どうなってるんじゃわしゃあ!? ぬ……ぬぉぉう」
す、凄い。完全に防いでいる。クマは少しずつ歩きだす。
「ト……トンデモないことをしでかしそうでクマってしまっている自分っ!!」
「クマ! テメ何する気だオイ!」
「クマの生き様……じっくり見とクマーッ!! ぬおおおおおおおお!!」
「クマーッ!!」
クマが突撃していく。大きな音と煙のせいで無事なのかわからない。僕たちは固唾を飲んで様子を伺う。
「あんバカが……無茶しやがって……」
煙が晴れた。シャドウりせはクマの一撃に耐えきれず元の姿で倒れていた。
「センセイ……ハンチョー……クマ……」
「クマ!」
「い、生きてた……」
「みんなの役にたてたクマか……?」
「クマくんッ!!」
クマが生きていた。ただ……先程の一撃のせいなのか結構ペラペラになってしまっているが。
「たったどころじゃねーよ……命の恩人だ」
「ああ……オトコだぜおまえはよ……」
クマはホッとしたようで、今の自分の状況に今気づいたようだ。とりあえず、死にはしないことがわかった。
「……起きて。ごめん……今までツラかったね」
りせはシャドウりせに手を差しのべていた。どうやら、もう大丈夫のようだ。
「私の一部なのにずっと私に否定されて……私……どの顔が“本当の自分”か考えてた……。けど、それは違うね。そんなふうに探してちゃ……“本当の自分”なんてどこにもない。
あなたも……私も……テレビの中の“りせちー”だって……全部……私から生まれた“私”」
つい最近気づいたんですけど、完二のメガネ受け取りシーンなかったですよね? 私も忘れていた。ゴメンよ完二。
それで入れた方がいいのかこのままいってもいいのか正直自分じゃ悩みます。なので、入れた方がいいって方はメッセージで言ってください。ひとりでもいれば書きますんで。日付等は原作と変わってしまうかもですが。
以後気を付けます……。