ペルソナ4 有里湊のif世界での物語   作:雨扇

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6月18日(土)~6月19日(日)

「俺らしか来てないみてーだな!」

 

 現地解散した後、僕たちは河原へと向かった。花村が一段とウキウキしている。

 完二は朝の内に僕らのテントに回収した。夜中走り出した後のことを覚えてないらしい。里中が「夢だよ!」と強く言っていたので完二はこれ以上は気にしないことにしたようだ。

 

「よし。とりあえず泳ぐか!」

 

 花村が笑顔でそう言うが完二はダルいらしくパス。女子二人もあまりやる気ではないようだ。

 僕? 僕も断ったんだけどさ……。

 

「女子二人、君たちには“貸し”があったよな。そして有里、おまえ女子の料理の腕前、あんなだってこと隠してたよな」

 

「それを言うなら鳴上だって」

 

「相棒は泳ぐことに既に賛成だから」

 

 う……。確かに隠していたのは僕で、鳴上にも黙っているように言ったけどさ。

 

「そう、水着持ってきてないし! いや残念だなー」

 

「そ、そうだよね。残念」

 

 里中と天城も必死に入らないことを訴えていた。よ、よし。これに便乗すれば……!

 

「……? 有里、どうした?」

 

「いや……。逃げ道が失っていることにさっき気づいた」

 

 逃げ道がない。僕は、水着を持ってきてしまったのだ。そうだ。林間学校前日、花村から水着を持ってくるように言われたんだ。それでしっかりと持ってきて……はぁ。

 

「有里の性格の良さがここで出たな」

 

 鳴上が慰めているのか分からないが、そう声をかけてくれた。

 

 一方の花村は昨日のカレーがかなり根にもっていたらしく、脅しとも言える手腕で女子を説得していた。里中は逃げるために「ほんとに水着持ってくれば入れた」と言っていた。

 

「じゃーん! なんとここにありましたー! ジュネスオリジナルブランド初夏の新作だぜ!!」

 

 花村が取り出した“水着”。確かに初夏っぽい柄をしていた。

 

「花村。それずっと持ってたの?」

 

「やだなぁ。さっきバッグから取り出したに決まってるじゃなぁないか」

 

 おまえ……そこまでして女子の水着姿を拝みたいのかっ。

 

「水着持ってくれば入れたのになー」

 

「う……」

 

「晩メシ楽しみにしてたのになぁー」

 

「うう……」

 

「昨日の晩、俺らが助けなかったらどうなっていたかなー」

 

「わーかったっつの! しつこい男だな! まったく!」

 

 しつこい男、花村の勝ちとなった。

 

◇◇◇

 

 僕たちも着替えて少し経つと女子たちが戻ってきた。

 

「そ、そんなジロジロ見ないでよ!」

 

「ちょ、ちょっと……。や、やだ」

 

「いっやー 想像以上にいいんじゃね?」

 

 まぁ。確かに……。活動部女子三人の水着姿の良さとはまた違った良さがある。これはこれでいいよね。

 

「昨日“物体X”を食わされた分はまーちょっとは報われた? みたいなさー。ていうか俺の見立てよくねー? こう、グイグイ食い込んじゃうみたいな」

 

 は、花村……? 少し調子に乗りすぎなのでは?

 

「まぁ中身がちょっとだけガキっぽいけど、将来いい感じのオネーサンになるぜきっと! な! そう思うだろ?」

 

「あー……うん」

 

 女子二人の何か怖い雰囲気に気づいたのか鳴上の返答も曖昧だ。僕はノーコメントで。

 

「……すっげー不愉快……」

 

「……私も……」

 

「どわっ!?」

 

「!?」

 

 ……あ、鳴上と花村が二人に落とされた。僕は何も言わなかったし、若干完二の方に近づいていたから落とされなかった。よかった……。

 

「つめてぇー!! お……おお落とすことねーだろ……!」

 

「いーじゃんッ! どーせ入るつもりだったんでしょ!? ……自業自得だっつのったく。最低だよね」

 

 天城もプンスカと怒っていた。……少しかわいい気がするのは目の錯覚? 怒ってるよね? まぁ……いっか。

 

「完二くん?」

 

 完二が座ったまま動かないので里中が心配して声をかけた。

 

「さっきからずっと黙りっぱだけど体調悪い? も、もしかして昨日のダメージが……」

 

 そこで僕がいたことを忘れていて今思い出したのか言おうとした言葉をストップさせた。

 やっぱり。里中さんがキックしたんだね。……ね?

 

「……って」

 

「な……なんスか?」

 

「完二……鼻血出てる」

 

 僕が教えると完二は自分の鼻をさすり血のついた手を見て「……あ」と呟いた。

 

「ちょっと……やだっ!!」

 

「ぶっ! ……あ」

 

「危なかった……」

 

 完二がビンタされて落ちた……。天城さん、ビンタ強くね? よかった、僕何も言わなくてよかった! 花村に「な?」とか訊かれたら答えてしまいそうだったけど、僕に訊かずに鳴上にだけ訊いたのがまさに奇跡。

 

「ぷはー! あ、危ねぇのはこっちだろ!? オレなんもしてねースよッ!?」

 

「お、おまえら! なんてことすんだ!! ……って有里! おまえだけ免れてズリーぞっ!」

 

 やっと気づいた。……アレ? 何か上から音って言うか声? が聞こえる気がする。

 

 僕らはそっと見てみた。……モロキンが飲みすぎで吐いてた。なるほど、だから僕たちしかいなかったんだね。入る前でよかった……。

 

 下をチラッと見ると男子三人固まっていた。若干涙目だったことも伝えておく。

 

〓〓〓

 

 6月19日。日曜日。

 

 毎週日曜恒例の時価ネットたなか。

 

 今回の一つ目は[力帯、野草サプリ×2 4980円]

 二つ目は[オオミズウオ、角氷×4 9800円]

 

「……どちらもいらない」

 

 僕はテレビを見てそう呟く。今回は買わないことにした。

 

◇◇◇

 

 今日は沖奈市に向かった。古本屋に行くと文吉じいさんと光子ばあさんがニコニコと迎えてくれた。色んなことについてお話をした。帰りにメロンパンくれた事はじいさんらしいなと思った。(法王コミュ2)




次話からりせ編がスタート。19日の夜から始まります。

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