6月1日。水曜日。
月が変わり6月。河川敷に行ってみると暇そうに水切りをしているエリザベスがいたから、商店街を案内した。ビフテキ串にそうとうご満悦のようだった。(女帝コミュ2)
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6月2日。木曜日。
せっかく入部したので吹奏楽部に行くことにした。楽器は意外と難しくてすぐにコツを掴んだ鳴上が少し羨ましかった。僕二年前は写真部だったから。(太陽コミュ2)
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6月3日。金曜日。
ジュネスでバイトをした。今日は一日中雨だ。明日も雨が降る予報が出ていた。
「なぁ有里。明後日霧が出るって」
花村が少し心配そうに僕に言った。完二は助けたからもう安心、なのだがそれでもドキドキする。
「大丈夫。助けたから」
「そうだな。……おい有里、俺の目は誤魔化せねぇよ。サボってるだろ」
「さっきまで心配してた人に言われたくない」
「それとこれとは別だっ」
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6月4日。土曜日。
今日は真っ直ぐ家に帰った。雨で何も出来ないことと、今日は必ずマヨナカテレビを見ると捜査隊のみんなで決めたからだ。
◇◇◇
そして夜。あと十秒ほどで深夜12時になる。
「……」
時間の流れがゆっくりに感じた。日付が5日になる。マヨナカテレビが流れるがノイズ音が響くだけで何も映らなかった。今回も救出をちゃんと成功させたのだ。
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6月5日。日曜日。
「時価ネットたなか」の日だ。
一つ目は[仁義のふんどし、ダイエットフード真×2 11800円]
二つ目は[稲羽マス、コハクヤマメ×2 2980円]
「どっち買おう……?」
どちらも正直いらない物だ。ならばいっそ今回は買うのをやめるのも一つの手だ。
「……やめとこ」
今週は買うのをやめ、ジュネスへと向かった。別にバイトをするためではない。今日はゆっくりと客として行くつもりだ。
サボり中の足立さんを見かけたので今日は足立さんとお話しして帰った。……何故だか違和感があって嫌な感じになったけど、半分は僕のせいだから気にしないでおこう。(道化師コミュ2)
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6月6日。月曜日。
「自分でもよくわかんねんスけど、オレ……気づいたらまた会いたいとか口走ってて……」
「男相手に」
放課後。復活した完二を連れて学校の屋上にいた。完二から話を訊くためだ。
それと里中。「男相手に」とか言ってたけど、僕は知っている。て言うか本人に確認したし。
ーー白鐘直斗は“女”である。
……女だと知ってる僕はどう反応すればいいのだろう?
「あの彼とはどういう関係?」
天城が訊くと変に動揺した完二は「特に何もない」的な事を言った。だけどそんな完二の顔は少し赤くなっていたけど言わない、面倒だから。
「女ってキンキンうるせーし、その……すげー……苦手で男といたほうが楽なんスよ。
だ、だから……もしかしたら自分が女に興味持てねぇタチなんじゃって……。けどゼッテー認めたくないし、そんなんでグダグダしてたっつーか……」
「まー たしかに男同士の方が楽ってのはわかるけどな」
完二の発言に花村が同意する。確かに同意することもある。だれだって同性の方が楽な所があるものだ。
「……で、でも。もう大丈夫っスよ。要は勝手な思い込みだったってことっスよ。壁作ってたのはオレだったんだ。オレ、男だ女だじゃなくて、人に対してビビったんスかね。
……あ、んだオレ? 何一人でペラペラしゃべってんだ。あー、今のなしで! なんかオレだいぶカッコ悪いっスね!!」
完二が一人で喋って一人で顔を赤くしてる。僕は完二の肩に手を置き僕の方に目線がいくのを確認すると、どや顔気味で言った。
「……どんどん喋っちゃって」
「絶対嫌っスよ!」
「何でどや顔なんだよ!」
「あ、わかった? 流石、花村」
ひとしきり笑うと里中が「いい子じゃん!」と完二を誉めた。
「い、いいいい。いい子は止めろよ!!」
屋上に完二の悲鳴とも呼ぶ大声が響いたとか。
◇◇◇
僕たちはジュネスのフードコートへと向かった。通称「特別捜査本部」ーー命名したのは花村だ。到着すると八校生二人組男子が何やら話していた。
「……つーかさ、“例のテレビ”最近けっこーおもしろくね? “次に出んの誰?”とか気になるな」
「オレ前から次はぜってーアイツって思ってたんだよ。名前はなんだっけ、一年の暴走族上がりの……」
「そいつぁたぶん。“巽完二”って名前だな……。ちなみにゾク上がりじゃなくて、ゾクを潰したほうだけどな」
完二が怖い顔して行くから二人は逃げて行った。その後完二が「んだよ……つまんねーな」とか言ってたけど完全完二のせいだと思う。
「なんだかやり切れないね……。殺人事件の絡みとかよく知らないで言ってんのかもだけど、同じ学校の子なのに……。
関係ねーとか自分は大丈夫だとか、観客気分なんだろ……」
里中がそう言うのは無理もないと思う。みんなは僕たちが人の命を救っていることを“知らない”のだ。影時間の戦いと……同じ。
「なぁ完二。ほんとに思い出せないか? 俺らのことシメんぞーっつって追っ払ったあとだよ」
花村がビフテキガツガツ食べてる完二に訊く。
「ん。あー……うち戻って……部屋でフテ寝決め込んで……。あれ、そういや誰か来たような……」
「誰か来た? どんなヤツだ!?」
「あ、いや普通に宅配ッスよ。業者から荷物受け取って」
前進したと思ったら全くダメだった。すると完二が一枚の紙を取り出した。とある刑事からとったらしい。特徴から言うにたぶん……足立さんだろう。
鳴上が紙を読む。
「“演歌ヒットチャート。第一位、柊みすず新曲”」
「そういえば事件あってから前より売れてるって聞くね。知っててうまく利用してんならちょっとヤな感じだけど」
「この人はアリバイあったよね。関係なさそうだから次に行こう」
鳴上が続きを読む。
「“3月のローカル局別人気女子アナランキング!” 山野真由美は中の下くらい」
「こりゃ単に趣味のリストじゃねーの? オッサン趣味って感じだよな」
花村が「やっぱ“りせちー”だろ!」とか言ってたけど僕は女子達と同じように冷たい目線を向けておく。そもそも僕はテレビで数回しか見たことないし、僕の“二年間”は空白だし。
鳴上はそんな花村を華麗にスルーして最後を読む。
「“山野真由美、4月11日。小西早紀、4月12日”」
「なんの日付だ? 山野アナの遺体が発見された日……は始業式だったから12日か。11日はその前の日だけど……」
……あ。そうか、わかった。
「“テレビ報道番組表”だ。11日は山野アナと生田目との不倫報道。12日は小西先輩が「第一発見者」のインタビュー」
みんなもハッと気づいたようだ。花村が天城と完二に流れた日付を訊く。
天城は鳴上と土手で会った日のすぐ後らしい。完二も僕たちと会う少し前。
色々と繋がった気がした。つまり、犯人の狙ってるのは“テレビで取り上げられた人”ってこと。
花村が頭を抱えて唸る。
「テレビ繋がりの線、全然あるな……。つまり被害者は単に事件関係者じゃなくてその中でも“メディアで有名になった人”か。
でも……そうなると動機はなんなんだ? テレビに出たら殺すってどういうんだ? あー くっそ。よく考えたら全然解決できてねーよ! なんで俺もっと頭よくねーんだ……!」
「なんで落ち込むことあんスか? オレ先輩らスゲーって思ってるんスけど。だって先輩ら結局オレのこと気づいて体張って救ったじゃねぇスか。十分だぜそれで」
完二……いいこと言ったな。
「私だって助けてもらった。解決はまだでももう二人も救ってる」
「今回は惜しかったよね。ま、こんだけわかってりゃ次こそは先回りできそうだし。タイホも時間の問題かもね」
里中と天城も花村をフォローする。仕方ない。僕もフォローしてあげるか。鳴上もそんなこと思っていたのだろう。最後に僕ら二人が花村に声をかけた。
「まぁ、次はいけるでしょ。焦ってたらお仕舞いだよ」
「それに、今度こそ犯行終わりって可能性もあるかも知れないし」
花村は少し笑顔が戻った。どうやらもう問題ないようだ。
「だといいけどな! 二度も邪魔してやったんだ。いい加減懲りてほしいぜ」
ーーランクアップ。「愚者:自称特別捜査隊コミュ4」