ペルソナ4 有里湊のif世界での物語   作:雨扇

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この話はみなさんのお陰でお気に入りが100件いって、「ヤッフー!」とかなりうかれた気分で作りました。製作時、本編では6月ですがそんなの気にしません。

捜査隊全員集合。マリーちゃんも登場。記念なので何でもアリです。

鳴上、花村、有里は互いに名前呼び。


本編お気に入り100件記念の番外編

 僕は“誕生日”を祝われた事なんて数えるほどしかなかった。最近ーーみんなにとっては最近ではないのだがーーだと活動部のみんなに祝ってもらったくらい。初めて、“祝われる事の嬉しさ”を知った瞬間とも言えた。

 

◇◇◇

 

 放課後。違和感はすぐに感じた。捜査隊のみんなだとすぐに分かった。

 

「陽介。一緒に帰らない?」

 

「わ、悪ぃ湊! きょ、今日はすぐに帰らねぇといけないんだ!」

 

「悠は?」

 

「俺もなんだ。悪いな湊」

 

 かなりソワソワしている陽介に比べ、いつも通り落ち着いていた悠。天城も里中もソワソワと言うかハラハラしていたし、完二なんて普段「お手伝いとかめんどい」とか言っていたのにーー文句を言いつつも結局はやるけれどーー今日に限って、

 

「オレ今日だけはお手伝いするって決めてるっスよ!」

 

 と「今日君の母さんは死ぬのか?」とでも訊いてしまうくらいの無理な言い訳で無理矢理帰っていったのだ。陽介も分かりやすかったが、完二はもっと分かりやすかった。

 

「ごめんね湊先輩。今日は一緒に帰れないの。お店の手伝いしなくちゃいけなくて……」

 

 りせを誘ってもやんわりと断られた。りせは演技力凄いから最初の頃はよく騙されたなぁ。悠はすぐに見破る技を身に付けたらしい。

 

「す、すみません。今日僕は協力を頼まれてる事件に行かなくてはいけないので……。し、失礼しますっ!」

 

 直斗に訊いても断られた。

 

 一通り訊いた結果。……何か隠してる。陽介、里中、天城、直斗。ここら辺が何か変にキョドってる。てかいつも冷静な直斗がキョドってる時点でアウトだと思う。

 

 さて、どうするか。この後は一日暇なのだ。

 

◇◇◇

 

 ……何か視線を感じる。

 

「……ターゲット、ジュネスに向かう模様。はぁ!? さっさと済ませて早く出てこい!」

 

 陽介よ。声丸聞こえだ。バレバレだ。

 

「ジュネスから出たか? よし、そのまま悠ん家で菜々子ちゃんと合流。急いで作れよ?」

 

 だから丸聞こえだってば。そう言えば完二の時もかなりバレバレだったって直斗から聞いたことがある。もっとも、この時は直斗はまだペルソナについて全然知らない時だったので僕たちの行動が意味不明な行動だと言われても仕方ないのだが。

 

 陽介たちは僕に何をしてほしいのだろう? どこかに行こうとするとヒヤヒヤするし、立ち止まっていると何か「今の内に!」とか聞こえるし。……ボーッとしてほしいのかな?

 

 ジュネスを出て本屋に向かう。適当な雑誌を手に取って読む。これならしばらく暇潰し出来るだろう。

 

 ちなみにジュネスでクマと会ったが子どもが群がっていたので話しかけるのを諦めた。

 

◇◇◇

 

「……あっ! や、やぁ湊! 偶然だなぁ!」

 

「そーだね。陽介」

 

 意外と立ち読みで時間を潰すことが出来た。後ろに隠れていた陽介がとても暇そうにしていたのがかなり分かる。特捜隊のみんなよりもシャドウとの戦闘をこなしてきたからこういうのは多少ーー本当に多少ーー出来るのだ。

 

「で? どうしたの? 早く帰らないといけないって言ってたけど」

 

「えっと、もうその用事は終わったんだ! そ。そうだ! 湊も悠ん家来いよ!」

 

 急にどうした。てか僕の腕掴まないでよ。「やだ」って言っても絶対行かせる気だよねコレ。

 

「わかったから。腕から手を離してよ」

 

「おっと。悪い」

 

◇◇◇

 

 家の前につくと陽介が「電話するから待ってて」と言われたので少し待つ。何か「もういいか? 大丈夫だな?」と念入りに確認の声が聞こえたけどあまり気にしなかった。

 

「よし……じゃあ、入るか」

 

 背中を押されて僕から入る。部屋の明かりはついていなかった。現在もうそろそろ暗くなる時間なのに明かりがついていないのは少し違和感があった。

 

「……!」

 

 急に電気がつく。油断していた僕は急な明かりに目が若干チカチカした。そしてクラッカーの弾ける音。そして……。

 

「お誕生、おめでとー!!」

 

 みんなの声が聞こえた。目が慣れ、辺りを見渡すと捜査隊に菜々子ちゃん。マリーまでいた。ちなみに堂島さんは仕事らしい。まぁ、何かあるとは思っていたけど……。

 

「そっかぁ。僕誕生日今日か。すっかり忘れてた」

 

「忘れてたのかよ!? よかった。前に訊いておいてよかった!」

 

 陽介のとてもホッとする声が聞こえた。確かに。今回は陽介が事前に僕に訊かなかったらなかった事だよな。

 

「湊お兄ちゃん! たくさん料理用意したんだ。一緒に食べよ!」

 

「うん。そうだね」

 

「ハンチョー!! クマがとってあげるクマーっ」

 

 悠によれば、女子たちが作ろうとしたから必死に止めたらしい。料理は買ってきたものだと言っていた。僕はかなりホッとした。誕生日にあんなムドオン料理は食べたくない。

 

 テーブルには豪勢な料理が並べてあった。ジュネスで買ってきたものや悠が作ったものなど。なるほど、僕がジュネスに行くときに陽介が焦っていたのは鉢合わせする可能性があったからか。納得。

 

◇◇◇

 

 食べ終わって一息つくと陽介が「プレゼント渡すぞー」と言った。僕は何も聞いてないぞ。……サプライズだから当然か。

 

「えっとじゃあ俺から」

 

 悠から受け取った小さな箱を開けるとイヤホンが入っていた。

 

「湊。よく音楽聴くだろ? だから新しいイヤホン」

 

「ありがとう。そろそろ欲しいって思ってたところだ」

 

 お礼を言うと悠は嬉しそうに頷いた。次は陽介。

 

「イヤホンもいいけどヘットホンも良いんだぜ! という事で俺からはヘットホンだ」

 

 青色のヘットホン。陽介によるとメーカーはお揃いの色違いらしい。そうだな、たまにはヘットホンでも……。

 

「次はあたし! どーぞ!」

 

「『成龍伝説』のDVD……」

 

「君もこれでレッツカンフー!」

 

 ものすごく里中らしいプレゼントだ。だからと言ってレッツカンフーはしないけど。

 

「じゃあ次は私だね」

 

 天城が渡したのは一枚のクーポンだった。

 

「ウチの旅館の値引きクーポン。最近作って試験的に常連さんに渡してるんだ。よかったら使って」

 

「お金貯まったら、ね」

 

 時間の関係が少しあったので多少スピードアップした。

 

 完二はお手製の編みぐるみ。相変わらずクオリティは凄い。

 

「有里先輩も一緒に作らないっスか?」

 

「僕不器用だからー」

 

「絶対嘘だろ」

 

 陽介につっこまれたけど気にせず次。

 

 りせは群青色の綺麗なストラップだった。

 

「直斗くんは青が似合うでしょう。湊先輩が群青。大変だったんだからっ。……でも、どっちもクールでカッコいいよね! あ、もちろん一番は悠先輩っ」

 

「次」

 

 直斗は手作りの通信機だった。とても小型でシンプルだけどとても凄そうだ。

 

「これでいつでも連絡とれますね」

 

「何を尾行しようと企んでるの?」

 

「ハンチョー、次はクマクマ」

 

 クマから渡されたのはクマそっくりな編みぐるみ。

 

「完二が作ったの?」

 

「クマ公に頼まれたんスよ。『ハンチョーにプレゼントしたいクマ』って」

 

「カンジに真似されても嬉しくないクマ」

 

「んだとコラ!」

 

「でも嬉しいよ。ありがとクマ、完二」

 

 次は菜々子ちゃんとマリー。二人で一つにしたらしい。まぁ、マリーはそもそもお金持ってないのでいい判断と言えばそうなるかもしれない。

 

「はいコレ」

 

 パンダみたいで丸っこい動物のストラップだった。かわいい……かもしれないが正直どこがかわいいのか分からない。

 

「わー これかわいい!」

 

 女子たちがそう騒いでいたのでそうなのだろう。

 

「マリー。これは?」

 

「ストラップ」

 

 いや。それは見れば分かるさ。僕が知りたいのは「何の」ストラップなのかだ。

 僕の考えてることが何となくわかったのか、菜々子ちゃんが代わりに答えてくれた。

 

「これね。“うーぱ”って言うんだよ」

 

「ゲホッゲホッ!!」

 

 完二とりせが急に咳き込んだ。けどそれより僕が気にしているのは……。

 

「うーぱ……」

 

「そうそう。うーぱ。かわいいからプレゼント。しかも“メタルうーぱ”」

 

「ゴホンゴホン!!」

 

「おい二人の咳き込みが酷くなったぞ!」

 

「そ、それ以上そのストラップの話題に触れないでください!」

 

 背中をさすってる陽介と直斗が注意する。確かに僕もこれには危機感を感じた。何か……デンジャラスな匂いがする。

 

◇◇◇

 

 ひと騒ぎあったが、無事にパーティーは終わった。菜々子ちゃんは先に寝て、僕たちは片付けして外に出た。

 

「今日はありがとう。楽しかった」

 

「そりゃよかった」

 

「じゃあ、また明日!」

 

「またねー!」

 

 解散時間が夜中になっても、僕たちは疲れなんてなかった。それほど、楽しかったから。

 

 こんなに楽しい誕生日はとても気持ちのいい感覚だ。この世界のイレギュラー的存在の僕でも、この時ばかりは、この世界に……みんなの輪の中にいるのを許されている気がしたんだ。

 

「来年も……みんなと一緒に誕生日を、祝いたいなぁ」

 

 気がついたらそう呟いていた。それに気づいた僕は苦笑いして家の道のりをゆっくりと歩いたのだった。




他ゲームの物(うーぱ)が出てきましたが記念のお祝いってことで……許してください(笑)

これからも湊くんたちの物語をよろしくお願いします。

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