アカデミーの学生寮で勝一達第6期生が朝食の時間を過ごす頃、日本列島より西に存在するユーラシア大陸北部を二機の軍用機が飛行する。
その二機の軍用機はアカデミーに配備されているEDFの主力戦闘機『ドッグファイター』で、現代の戦闘機には珍しいテーパー翼が特徴的である。
今この機体を操縦するのは第1教育大隊所属の選抜された候補生だった。。
「ったく、なんだってんだ。朝の5時に叩き起こされていきなりロシア領空を哨戒してこいとか、トイレだって満足に済ませてないってのに」
「そう言わないの。こんな時間に出撃要請が出たのも余程の事があったかもしれないしね」
高高度を飛行する機体のコクピットで悪態を吐く男性パイロットを、隣を飛行する機体に乗る女性パイロットが嗜める。
この二人の男女はアカデミー入学時に知り合った頃からの仲でどちらも出身は日本である。
「そう言ったってよお、
「帰ったらマッサージくらいしてあげるから頑張りなさいな、
梨沙と呼ばれた女性パイロットが励ました男性パイロットは、出撃して帰還した後で梨沙にマッサージして貰うことが通例だった。何でも梨沙の実家が接骨院らしく、本人曰くマッサージ程度はお手の物だそうだ。
「わかったよ。! ……あれは?」
将太が返事をした直後、頭に装着したヘルメットのバイザーに装備する
「前方約4㌔に反応が複数……っ!? ていうどころじゃないわ! 凄い数よ!」
梨沙のバイザーには夥しい数の反応が表示されており、所属不明のアンノウンとなればデータに無い新型の軍用機か、ロシア領に棲息する怪獣のどちらかだ。
「相手はどうやら人間じゃないみたいだぜ」
将太の発言の意図はすぐに明らかになった。
前方に見える山陵地帯の上空に夥しい数の群れが見えてきた。その中心にいたのは、翼長140㍍まで巨大化し成長したギャオスだったからだ。
「こんなの聞いてないわよ。哨戒任務でギャオスの大群、目算でも百は余裕で超えてるわよ……!」
梨沙が動揺する間にギャオスの群れの一体が気付いたらしく、翼を翻して二機のドッグファイターに近付き他の個体もそれに続いてくる。
「梨沙、散開だ!
「了解!」
二機のドッグファイターがそれぞれ異なる方向へ旋回し、ギャオスも二つのグループに分かれそれを追尾する。
後方百㍍の距離から追尾するギャオスの何頭かが口から光線───EDFや世界各国で超音波メスと呼ばれる攻撃が将太の機体を襲い、経験の浅い士官候補生とは思えない機動でそれを回避しながら真上へ上昇していく。
「そら、そのまま付いてこい!」
急上昇してそこから緩いカーブを描くと45度の角度で降下していき、ギャオスもそれを追尾する。
正面からは同じくギャオスを後ろに着かせた梨沙の機体が真っ直ぐ飛んできており、このまま行けば衝突する恐れがあった。
だが二人の狙いはこの後にあった。
「いくぞ! イチ、二、サン!」
「「スワロー1(2)FOX2!!」」
直後二機の機体下部に装備する主兵装省電力速射メーサー砲『ダガー』を発射、同時に操縦捍を左に倒して旋回する。
メーサーの光弾は互いの後ろに着かせたギャオスに着弾して抵抗なく外皮を食い破り数匹が粉砕すると、他の個体はその威力を警戒して旋回を続ける。
「スワロー1から2へ! この数相手に二機では対抗できない。離脱してアカデミーに戻るぞ!」
「賛成! まだ士官候補生なのにここで死ぬのはごめんだしね!」
警戒するギャオスの旋回する隙を見計らった将太の機転から二機が反転し、強力な単発ジェットエンジンを全開にする。
警戒して出遅れたギャオスを置き去りに現場空域を離脱していった。
アカデミーの戦闘機二機がこの空域に到着し幼体と交戦して離脱するまでの間、一体だけ翼長140㍍もの巨体を誇るソイツはただ見ていた。そして進路を変えて飛翔する。
今はこうして連れているまだ成長途中の個体を拡散させる。それは高い知能を有する訳ではなく、ただ生まれた頃からの本能に従うのみ。
二の足で歩き、定住するソイツらをただ喰らう。その為には仲間を増やし、小さな定住圏から襲って喰らい続け、仲間が成長しては巣分かれをする。そうすることで自分達の勢力圏を広げていく。
今自分達が目指す場所も寒冷地に建てられたソイツラの定住圏だった。
◇◇◇
「足を止めるな! ランニングが終わったらまだ今日の課程が詰めてるぞ!」
ランニングコーナーを走る俺達に鬼のような教官の怒声が耳に届き、ただ黙々と走り続ける。
最初俺達は入学前に支給されたツナギ───緑色の作業着で出てきたのだが、基礎体力向上の為にランニングコースを40周と言う2日目から厳しいメニューだ。
ランニングを始めて暫くは普通に走れたのだが体力的に厳しい生徒はいるらしく、女性の候補生からスタミナの乏しい男性まで脱落していっていた。
因みにクレアは運動の経験があまり無いのか早い段階で脱落。
デイヴィッドは体格に難が有るのか脱落。
桐子は趣味の関係からか運動の経験が少ないように思えやはりで脱落。
ここまでで走ってるのがドイツ出身のマックスとロシア出身のルナミスと、意外にも彼がクララと呼んでいた女性だった。息を切らしながらではあるものの、もうすぐ40周を走りきるな。
アヤは息を切らさないようにペース配分を考えた走りに徹しているようだ。それでも後何周かすれば終わりだろう。
残りは俺と淳也になるわけだが、鬼教官───熊坂教官に「お前達はアカデミー創設以来の材料だ。取り敢えず倍のメニューを消化してもらう。」と言い渡した。お陰で他の連中より倍の80周を走らされ、今はみんなより速く50周を超えたところだ。
ただ、ひとつだけ気になることがあった。
「……」
俺と肩を並べるようにして(実際には背は頭二つ分低いが)走る少女がいた。
髪は赤みがかった茶色のショートボブで、先程から表情を変えずに走り続ける様子からこれ迄に訓練を積み重ねた経験があるのが窺える。
最初はこの場にはいなかったのだが、30周超えた辺りからランニングコースのスタート地点で始めて俺に追い付いた後、そのまま並走を続けている。
いきなり十代半ばの少女が並んで走ることに関して同期の色んな奴(筆頭としてはアヤだった)から質問攻めに遭い、当然俺に心当たりなどある筈もないため強引に無視し、そのまま走り続けるうちに何人か脱落して静かになった。
そして今に至るのだが、
「……」チラッ
時々こちらを見ては何事も無かったように視線を戻すのを繰り返しているのは判っており、気になってしょうがない。
そんな落ち着かない状態で他の生徒より水増しされたランニングを終えて、残りは腕立て伏せや腹筋運動を含んだ内容で午前の時間は終了した。
~あとがきのコーナー~
主「前回にやってから久しぶりのあとがきのコーナーですね。」
勝一「全くだ。あれからもう何ヵ月とたつぞ。この小説でこれをやっていくのを明らかにしたのに、毎回でないのは優柔不断じゃないのか?」
主「うぐっ。」
彩音「勝くん、何だか主さんに厳しいね。でもゲストは誰か来てるの?」
主「はい、今回はこの方をお呼びしました。」
淳也「呼ばれて訊かれて参上!プロローグ明けの第1話から皆動の中村淳也でい、べらんめい!」
勝一「いきなり妙な登場の仕方するなよ……。」
淳也「こまけえこたぁいいんだよ。」
勝一「あ、そう。」
彩音「ゲストもきたし本題に入ろっか。今回は何を話すのかな?」
主「ええ。先ず冒頭に出てきたのはEDFの主力戦闘機でありそのアカデミー仕様機であるドッグファイターで、形状はFW原作に登場する機体と同じです。」
勝一「ドッグファイターって仕様はアカデミー以外だと正規軍の機体は統一されてるのか?」
主「現時点ではそうですね。ただ、今後増えていく可能性はあります。」
彩音「ドッグファイターで出撃した先輩の一人は何だか怒ると怖そうな男性だったけど。」
淳也「対称的にもう一人の先輩は社交的な女性だったよな。そのうちお近づきになりたいぜ~。」
勝一「お前なあ、この前なんかクレアを『撃墜』したくせにいいのか?それで。」
淳也「……あの、勝一?何故ゆえにクレアをここで出すのでせうか?それに撃墜とは?」
彩音「(せう?)でも勝くんの言う通り、そう言うのは気を付けた方がいいと思うな。2日目から朝食で一緒だったのもそうなんでしょ?」
淳也「あれはただクレアが朝食一緒にどうかと訊いてきたからOKしたまでだぜ。
ただ、クレアが恥ずかしそうにしてたのは気になったけど。て言うかお前こそ彩音ちゃんのことに関しては鈍いくせに何でこういうときは鋭いんだ?」
彩音「/////」ボンッ
勝一「何度も言うけど俺とアヤは幼なじみだけどそれ以上の関係じゃないぞ。」
主「この事に関しては一朝一夕で片が付くことじゃないので取り敢えず置いときましょう。ソレニアンマリモジスウフヤシタクナイシ」ボソッ
淳也「何か最後の方で何かいってた気がしたけど気にしないでおくか。」
主「では最後にお知らせです。実は設定説明の話を幾つか編集し直したいと思います。大体は陸軍、空軍の説明に分けた話と、世界観設定の話を分かりやすく書き直します。度々変更を繰り返し、申し訳ありませんがどうかご了承ください。」
勝一「今回はこのくらいだな。……アヤは何で拗ねてるんだ?」
彩音「拗ねてなんか無いし。勝くん、締めるよ。」
勝一「お、おう。今回は前回から一週間以内に投稿できたから、これからもそれぐらいに投稿できるように主が頑張って書いていくから、気長に待っていてくれ。」
淳也「次の話では皆動キャラの俺の活躍を見てくれよな?」
主「では次回も、
また見に来て(くれ(こいよ(ね)下さい!!」