地球防衛軍~怪獣王の系譜~(リメイク)   作:東部雲

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大変長らくお待たせしてしまい申し訳ありませんでした!今回投稿したことに関することで謝罪の場を投稿致しますのでよろしくお願いいたします。本当に申し訳ありませんでした。

※ps3版ゴジラのジオラマで撮影した画像を2017年5月27日に投稿しました!
※2017年6月24日に加筆修正しました!
※2017年8月19日に大幅修正しました。
※2018年7月18日に第三次加筆修正を実施しました!


序章 
プロローグ 


 2009年 夏季 東京

 

 悪夢。

 

 今、この場所で起きている状況を、一言で表現するならそれしかないだろう。

 

 この場所──民主国家日本の中枢として機能する、首都東京。

 その街の全域は、今や何処にも安全な場所等無くなっていた。

 

 東京の至るところで銃声、爆音、悲鳴、怒号。様々な音が東京の街で響き、轟く。

 そんな地獄のような状況を作り出した原因は、東京の至るところで飛び回っていた。

 

 顔の上半分は角の多いトサカと色彩の濁った眼球、下半分は、原始鳥類のように嘴に歯の生えた頭部。

 蝙蝠(こうもり)のような翼膜と爬虫類のように硬質な皮膚をした胴体。

 

 そんな現実からかけ離れた異形が東京の街に飛来し、この惨状をもたらしたのだった。

 

 『怪獣』

 

 それは通常の生物の枠を越えた常識を超えた存在。

 半世紀以上前に日本に出現した最初の個体を初めとして、日本で出現するようになった数多いる特殊生物の総称。

 

 今、東京を地獄に変えた生物もその一種で、日本を含め、世界各国はこう呼んだ。

 

 『ギャオス』

 

 1995年に日本に最初に出現し、1999年に世界各地で大量発生して以来、一部を除いて世界で最も危険な怪獣のひとつとして指定された災いの影。

 

 それが幾つもの群れを成して東京の空を飛び回り、街の住民達を蹂躙している。

 

 日本は過去に幾度もギャオスの襲来に遭ったがその度に海上と海岸線に展開した陸海空の自衛隊と、在日米軍の連携により首都圏を含めた都市部の被害は少なく済んでいた。

 

 だが今回の東京侵入に限っては総数が千以上に及び、自衛隊と在日米軍の構築した防衛線すらも突破する事態に陥っていた。

 東京の至るところで響く銃声や爆音は、飛来したギャオスと市街地で交戦する部隊が引き起こしているものだった。

 

 東京の二十三区ある特別区渋谷の街、そのオフィスビルの建ち並ぶビジネス街をふたつの人影が駆ける。

 

 そのふたつの人影の片方は十代前半か半ば程の、青みがかった黒髪が特徴的な少年。

 片方はその少年に手を引かれながら走る人影で同じく十代前半か半ば程の、ウェーブがかった淡い栗色の髪を伸ばした少女。

 

 お互いに手を繋ぎ走る少年少女の顔には恐怖と不安の入り雑じった表情を浮かべており、それでも安全を確保するために走り続けていた。

 

 

「もう少しで渋谷駅前に着く!! あと少しだけ頑張ってくれ、アヤ!」

 

 瓦礫(がれき)やガラスの破片が散乱する歩道を走りながら、少年は自分と手を繋ぎ走る少女を励まし、名を呼んだ。

 

 名を呼ばれた少女からはすぐに返事が返ってくる。

 

 

「うん! 大丈夫だよ!」

 

 極限的状況にも拘らず返ってきた返事には不安の色は感じられず、凛と(りん)した声音で答える。

 

 そうしたやりとりの間に交差点をひとつ通り過ぎて更に走り続ける。

 

 彼らが目指す渋谷駅周辺は特生自衛隊を中核とした部隊が避難する住民を地下鉄の構内に集め、渋谷駅を包囲する形で防衛線が構築されている。そこに辿り着ければひとまずは安全であった。

 

 そんな二人にとって最悪ともいえる、死の宣告にも等しい鳴き声が聞こえたのはその時だった。

 

 

『キイィオォーーー!!』

 

 少年と少女の後方から響く異質な咆哮。

 

 それを聴いて振り返る彼らの視線の先には、今まさに自分達が逃れようとしていたこの街を襲う怪鳥の、群れの一羽が彼らに向かって来ていた。恐らく先程の咆哮は彼らを見つけた時に発したのだろう。

 

 

「こっちだ!」

 

 それを見て少年は少女の手を離さずふたつのビルの間に入る。狭い場所を通れば翼長のあるギャオスは入ってこれないと考えたからだ。

 

 少年の判断は極限的状況のなかでは間違ったものではなく寧ろ(むし)現実的なものだったが、彼らを追うギャオスにとっては時間稼ぎも良いところだった。

 

 自分達の後方から突如として鳴り響く怪音。

 

 それを耳にした少年はその正体について疑問を抱くが、今はそれどころではないと後ろを振り向きたい衝動を胸中に押さえ込んで走り続ける。

 

 そこから状況はすぐに変化した。

 突然、正体不明の破壊音が響き、続いて自分たちの周りからガラガラと音がしてくる。

 

 それら一連の音を耳にした少年が視線を上に向け、次いで顔に驚愕の表情を浮かべた。

 

 自分たちの通る狭い抜け道、その両側のビルの上半分が鈍い振動音を発しながら崩れ始めていたのだ。彼らはその時二つのビルの間を通過し終えようとしていたが、ビルが崩れ瓦礫が落下してくる。

 

 

「ッ!? くっ!」

 

 少年は少女を庇うように肩を抱き寄せ、少女に直撃する瓦礫から守りながら走る。瓦礫が降り注ぎ少年に瓦礫が直撃するが、それでも少年は走り続け抜け道を出た。

 

 抜け道を出たところで少年の頭からは血が流れ、アスファルトの路面に彼の血が滴り落ちていく。

 

 だが抜け道を出た彼らを待っていたのは、絶望的な光景だった。

 

 初めに彼らの視界に飛び込んできたのは大破炎上して燃え盛る装甲車。

 次いで上空に向けて自動小銃を連射する迷彩服を身に纏った(まとった)自衛隊の隊員達。周囲に横たわるギャオスの死骸。

 

 そして彼らの上空を飛ぶ6体のギャオスだった。

 

 

「そんな・・・」

 

 表情に絶望を浮かべながら少年は膝をついた。

 その横ではこれまで少年と一緒に逃げ続けてきた少女が、同じように絶望の表情を浮かべて地面にへたりこむ。

 

 ここから安全な渋谷駅周辺まで移動するには、どうしてもこの先を進まなければならない。

 だがそれには目の前で自衛隊とギャオスが交戦する場所を通らなければならず、通ったあとは上空のギャオスに標的にされるのは目に見えていた。

 

 しかも自分たちは後方のギャオスに追われている、前後を挟まれて迂回も困難だった。

 

 

『キィイオォォーー!』

 

 自分たちの後ろから咆哮が聞こえ振り向けばそこには、上半分が崩れたビルの上で自分たちを見下ろすギャオスがいた。

 

 

(死ぬのか、俺は。アヤも守れず・・・!)

 

 少年は悔しさと少女を守れない自分の不甲斐なさに歯軋りする。

 

 

(これじゃあ、あの時帰ってこなかった父さんに顔向けできるわけない・・・!)

 

 少年の父親は戦死していた。

 

 5年前、特生自衛隊の隊員だった彼の父親は日本に現れた4体目のゴジラから東京を守るため、品川埠頭の防衛ラインでメーサー車輌に乗って戦い殉職した。

 

 その日から少年は命を賭けて東京の街を守ろうとした父親と同じように、将来的に怪獣から人々を守る組織に入ることを誓った。

 だがそれももう叶わない、今自分たちに迫る死を自覚した時には彼は既にそれを諦めていた。

 

 その時、自分たちを崩れたビルの上から見下ろすギャオスが動き始めた。翼を広げ羽ばたき空中に浮かび上がる。

 

 それを見た少年は自分の隣にいる少女を見る。

 少女の顔に既に不安の色はない、少年と同じく目の前にある死を自覚して諦めたのだろう。

 少年は少女を抱き寄せ、少女はそれに対し抱き返し最後の瞬間を待った。

 

 だが、彼らにその最後の瞬間が訪れることはなかった。

 

 ギャオスが空中に浮かび少年と少女を食らおうと迫ろうとした時、突然ギャオスの胴体に光弾が音速で飛来し突き刺さる。

 

 胴体に音速の光弾が直撃したギャオスは空中で体勢を崩し、続けざまに光弾が飛来してギャオスの頭部を直撃。

 

 瓦礫の散乱するアスファルトの地面に落下し絶命した。

 

 少年は目の前の突然起こった出来事に理解が遅れた。

 数秒遅れて状況を把握してようやく理解が追いつき、その上で驚愕する。

 

 

(────ギャオスが、ほんの数秒で倒された!? あり得ない自衛隊だってメーサー砲を使ってもすぐに撃ち落とせなかった、なら一体誰が!?)

 

 現時点で自衛隊が装備するメーサー砲は、かつて日本に上陸を繰り返した『ゴジラ』のような、50㍍以上の巨体をした怪獣を想定している。

 

 対して翼長が最小15㍍の小柄で小回りの利くギャオスには当たりづらかった。

 そのため海岸線に展開した自衛隊のメーサー部隊はギャオスを上陸する前に殲滅しきれず、首都への侵入を許してしまったのだった。

 

 そういった理由からメーサー車輌ではあり得ない、たった今ギャオスを秒殺したのが何なのか少年が見当をつけようとした時だった。

 

 鈍い振動音がする。それに反応した少年が振り向いたとき、再び驚愕した。

 

 そこにいたのは、銀色に鈍く輝く巨大なロボットだった。

 

 大きさは目視で測る限り高さ10㍍以上。

 外見は黄色く光るアイレンズと爬虫類のそれに類似する特徴をした頭部。

 背部にバックパックのようなものを背負った胴体。

 銃身の二つ並んだ武装を装備する右腕。

 丸い円形状の盾のようなものを装備した左腕、更に後ろに伸びる長大な尻尾。

 

 それを見た少年はあるものを連想させ、呟く。

 

{IMG30341}

 

 

「・・・・・・機龍?」

 

 少年が呟いたのは、かつて存在した生体ロボットの略称だった。

 

 1999年に東京湾千葉県館山沖で発見され、自衛隊により回収されたゴジラの骨をメインフレームに製作された対ゴジラ用戦闘ロボット、『三式多目的戦闘システム 三式機龍』。

 

 少年がそれを知っていたのは、今は亡き父親が機龍配備の記念式典に招待したからだった。

 

 そして少年の目の前にいるロボットは大きさこそ違え、全体的な特徴が酷似していた。

 

 そのロボットの右肩にはあるマークが描かれている。

 

 左右対称に描かれた白い稲穂、その中央にある空洞のある円形、そして中央の円形にはアルファベット3文字でこう書かれていた。

 

 『EDF』と。

 

 

 

────首都防衛戦に参加しているのが自衛隊と在日米軍と前述したが、他にもうひとつの組織が今回の首都防衛に参加していた。

 

 世界で増え続ける怪獣の被害を鑑みた国連が2006年に組織した超法規軍。

 

 地球防衛軍 Earth Defense Force。通称EDFと呼ばれる組織である。

 

 

 少年が自分達の目の前に立つロボットを呆然と見詰めている頃、そのロボットの内部───胴体部分にあるコクピットでは、それに搭乗するパイロットが付近上空を旋回飛行する航空機と交信していた。

 

 

『・・・了解した。今付近にいる救助可能な部隊に向かわせる、それまで現地で逃げ遅れた市民を護衛し持ち場の維持を優先だ!』

 

「了解!」

 

 パイロットに指示を出す上官らしき人物、富樫(とがし)の指示を確認して凛とした声で返すパイロットは女性だった。

 

 

『今回が新たな機龍(・・・・・)にとっての初陣になる、やれそうか?』

 

「大丈夫です、行けます」

 

 女性パイロットは落ち着いた口調で返す。その様子はどこかクールでストイックな印象を受ける。

 

 

『そうか、現在試作二号機と三号機がそれぞれ別の地区で既に交戦している。

家城がいる地点の周辺の敵はそこにいるのも含め20羽前後だ。数が多い、気を引き締めてかかれ!』

 

「了解!」

 

 女性パイロット───家城は返答して通信を終える。

 

 

「こうした形でお前に乗ることになるとはあの時(・・・)は思ってもみなかった」

 

 こことは違うどこかへと視線を向け、懐かしむように語る。

 

 

「こうして一緒にここに来た以上、やることはひとつだ」

 

 視線をこちらに気づいて近づこうとするギャオス達に移しそして、

 

 

「いくよ、機龍ッ!!」

 

 自らの乗機の名を呼んだ。

 

 家城が富慳との交信を終了した頃、既にギャオス達は自分たちの近くに脅威があるのを知覚していた。

 その脅威が再び動き出す前に先手を打つべく突撃しようとしたときだった。

 

 銀色に鈍く輝く巨大なロボットが再び動き出す。

 そして右腕の肘関節に当たる部分を曲げ、ギャオス達に向けた。

 

 これから起こることを予測し得ないギャオスは構わず突撃する。

 直後、ロボットの右腕のふたつ銃身の並んだ武装から光弾が連続して発射される。

 

 その光弾はギャオスの体を何発かが貫く、文字通りの蜂の巣になり力尽きて地面に落下していく。

 

 その間に3羽のギャオスが迫る。

 

 それに対し右腕の武装で攻撃し続け、それと同時に武装から刀身が伸びる。

  先ほどから撃ち続ける光弾で2羽が倒され、残る一羽が肉薄してくる。

 

 脚部のスラスターを点火、それによる跳躍で逆に間合いを詰める。

 スラスターの点火によって生まれた速度と勢いに任せて、武装から伸びる刀身をギャオスの胴体に突き立て、一気に薙いだ。

 

 瞬間的に生じた運動エネルギーと勢いに任せた一撃で胴体を両断されたギャオスは、体が上下に別れて体液を撒き散らしながら地面に落ちた。

 

 と、その時。

 

 前方より怪音が響く。

 怪音が鳴り響くのは自衛隊がいる通り、そこから東側に位置するビルの屋上、その外側にギャオスはいた。

 

 怪音はギャオスの頭部から発しており、ギャオスの嘴を中心に空間が歪んでいた。

 同時にロボットも左腕を掲げて構える。

 直後、キーンと鳴るような高い音が響き同じように空間が歪む。

 

 次の瞬間、ギャオスの嘴から光線が放たれる。その光線はロボットに向けられ、直撃しようとしていた。

 

 この時少年は直感的に光線の正体について悟っていた。

 

 恐らくあれは先ほど自分たちが逃げていた時にビルを破壊された時と同じものだろう、まともに食らえばタダではすまない。

 

 だが同時にロボットの取った行動について疑問に思っていた。

 なぜすぐに右腕で先手を打たず(・・・・・・・・・)左腕を構えたのか。

 

 その疑問はすぐに明らかになった。

 

 ロボットに光線が直撃する・・・・・・いや、光線はその手前で止まっていた。

 

 ロボットが左腕に構える丸い円形の盾に遮られるように光線は掻き消された。(・・・・・・・)

 

 やがて光線は次第に細くなって消え、次いでギャオスは驚愕した様子を見せる。

 

 ロボットはその隙を見逃さずスラスターを点火、上昇してからビルの屋上に陣取るギャオス目掛けて空中で突進する。

 

 ギャオスに展開したままだった右腕の刀身を、下半身から上半身に抜けるように一閃した。

  体を左右に両断されたギャオスは、断面から体液を撒き散らしながらビルの屋上に倒れた。

 

 ビルの屋上にいたギャオスを駆逐したロボットは再び道路に降りて、咆哮した。

 

 

『キュオォォーーーン!!』

 

 

 

 一連の戦闘が一段落したあと、少年と少女のいる通りに1両の装甲車輌が到着していた。

 

 その装甲車輌からは数人の武装した迷彩服に身を包んだ兵士が降車して、更にあとから白衣を着た一人の女性が降りて、現場にいた二人を見つけると途端に駆け寄り、その場にいた二人のうち少年の名を呼んだ。

 

 

勝一(しょういち)!!」

 

 興奮した様子を見せる女性。その瞳の端には涙を浮かべていた。

 

 

「・・・・・・母さん」

 

 興奮した様子の女性とは対照的に少年───勝一は低くか細い声で力なく呟く。その様子はどこか弱々しかった。

 

 そんな様子の勝一を女性は側にいた少女と一緒に抱き寄せた。

 

 

「良かった・・・! 全く連絡が取れないから心配してたのよ! 東京はあちこちが戦場で、二人に何かあったらどうしようって思った!」

 

 二人の無事を直接触れることで再確認して安堵のため息をつき、さらに強く抱き締める女性。

 

 

「・・・・・・どうしてここにいることが?」

 

「八王子にある駐屯地であなた達が映像に映ってたのよ・・・。そしてあなた達を救出に向かう装甲車に私も乗せてくれるよう頼んだの」

 

 涙を流し嗚咽を漏らしながらも、勝一に聞かれて事の次第を話す女性。

 

 

「ここは危険です、車輌に乗り込んでください!」

 

 兵士の一人が促す。周囲では残りの隊員が上空を警戒していた。

 

 

「わかりました。二人とも、色々聞きたいことはあるでしょうけどそれは移動しながら話すわ。さっ、乗って!」

 

 女性に促され車輌に三人で乗り込み、次いで数人の兵士が乗車して車輌は発車する。

 

 

「母さん、さっきのロボットはなんだったの?」

 

 勝一は聞くが「その前に、」と女性が言い、

 

 

「勝一、あなた怪我してるじゃない! 大丈夫なの!?」

 

 再び興奮した様子を見せる女性。車内はエンジンなどの騒音があり、それほど煩くはない。

 

 

「大丈夫だよ、いつものことだから(・・・・・・・・・・)

 

 何でもないことのないように勝一は言う。まるでそれが当たり前のことのように。

 

 先ほど少年はビルの倒壊した時に頭に瓦礫が直撃して血を流していた。

 だが既に出血は止まり、傷口が治りかけていた。(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 普通なら1週間、早くとも数日はかかるはずだ。だが勝一は一時間と経たないうちに傷が治りかけていた。

 

 そんな事情を知ってか女性は表情を暗くして下唇を噛む。

 だが女性が何か言う前に勝一の隣に座る少女が彼の手を取り、口を開く。

 

 

「大丈夫だよ、勝くん」

 

 安心させるように、静かに、優しく少女は語りかける。

 

 

「確かに、勝くんは他の人より回復が早いかもしれない。それが異常といえるほどかもしれない。だけど、」

 

 そこで切って、次いで顔に眩しいほどに綺麗な微笑みを湛え続ける。

 

 

「私は、勝くんを人間だって思ってる。私と変わらない、一人の中学生の男の子だって思ってるから」

 

 少女の言葉に勝一は最初瞠目して、次に顔をくしゃっと歪め瞳の端から涙を浮かべて、口を開く。

 

 

「・・・・・・ありがとう、アヤ」

 

 短いが、それでも先ほどに比べれば感情のこもった一言だった。

 

 そんな二人が数秒は見つめあっていた時に、

 

 

「感動の場面に水をさすようで悪いんだけど、」

 

 その言葉に勝一達は自分たちの他に同乗者がいるのを思い出した。

 見ると、兵士の何人かがこちらに視線を向けてにやにやとした表情を浮かべていた。

 

 

「先ほどのロボットの件、話していいかしら?」

 

 勝一達はサッと離れた。そしてどちらも同じように顔を紅く染め、アヤと呼ばれた少女は恥ずかしそうにモジモジとしていた。

 

 その様子に兵士達は、「若いって良いね~」と仮にも任務遂行中にも関わらず和んだ雰囲気になり、それに対して少女は更に顔を紅く染めた。

 

 勝一は今車内に広がる空気を変えたくて、「早く話して!」と言った。その催促に女性は頷き話始めた。

 

 

「あのロボットの名前は九式多目的戦闘システム、」

 

 ロボットの正式名称と思われる単語を口に出し、さらに言葉を紡いだ。

 

 

「通称九式機龍(くしききりゅう)と呼ばれる戦闘ロボットであり、」

 

 ゆっくりと、これから言う言葉を少しずつ語る。

 

 

「この日本、そして世界を守る新たな希望よ」

 

 

 

 その後EDFは世界に向けて発表した。

 

 5年前に4体目のゴジラと日本海溝に沈んだ三式多目的戦闘システム、通称三式機龍の次世代機として開発した新たな機龍。

 

 九式多目的戦闘システム、通称九式機龍は数が肥大化するギャオスの脅威に対抗する新たな希望として全世界が注目した。

 

 そして、九式機龍の初陣に立ち会った少年と少女は4年経った2013年、新品川EDF国際総合士官学校に入学する。

 

 少年は父親のように最前線で怪獣に立ち向かうため、

 

 少女は少年を支えるために、

 

 人類と怪獣が争う混沌とした世界で、物語が動き出す。

 

 




以前のプロローグとはまた違う展開にしてみました。個人的には今のところこれが作者としての限界です。
こんなドタバタした小説を読んでくださった読者の方々には申し訳なさと感謝の気持ちでいっぱいです。
次に投稿するのは今回の件についての謝罪と、これからの投稿活動についてのお知らせとなります。
それでは今回はこのあたりで締めたいと思い入れます。読んでくださって本当にありがとうございました!

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