落第騎士の英雄譚~破軍の眠り姫~(一時凍結)   作:スズきょろ

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今回は詩音の戦闘です!
本編をどうぞ!


第6話

 

 

「いくわよシオン!」

 

 ステラは、開始早々《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》に《妃竜の息吹《ドラゴンブレス》》纏わせ、さらなる魔力を込めて、目の前に立つ詩音に向けて―――

 

「喰らい尽くせ《妃竜の大顎(ドラゴンファング)》!!」

 

 撃ちはなった。

 《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》――その切っ先から迸った火炎は、瞬く間に蛇のように長い身体を持つ炎竜へと姿を変える。

 その炎竜が乱ぐい歯の並ぶ顎門を開いて詩音に迫る。

 その一撃を詩音は、

 

「業炎を纏え《炎竜帝(ティアマット)》」

 

 そう唱えると、詩音の霊装の紅い宝玉がひかり、右手を炎竜に向け左手で二の腕の辺りを掴み、そして―――

 

「《炎竜帝の咆哮(ティアマット・ロア)》!」

 

 一声、砲声。

 そして、炎竜を飲み込むほどの炎で迎え撃った。

 

『うわぁぁあぁっっ!?!?』

『あっつ!!』

「あはは☆さすがAランクだね!」

 

 双方の伐刀絶技(ノウブルアーツ)がぶつかり起こったのは、爆発と尋常じゃないほど熱い熱風。

 

「やるわね!」

 

 ステラがシオンを警戒して武器を構え直した、次の瞬間――

 煙の中から詩音が真っ直ぐ突っ込んできた。

 

「なっ!?」

「ハァァアァッ!!」

 

 詩音は勢いを殺さずに右腕を振り上げ思いっきりステラを殴り付け、ステラはそれを《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》の刀身で受け止める。

 

「ぐっ、なんて力!」

「お互い様でしょ!はぁっ!」

「負けるかぁぁ!!」

 

 お互いが力を更に加えて、競り勝ったのは――

 

「なあっ!?」

「ハアッ!」

 

 ステラだった。

 それもそうだ、詩音は片手、ステラは両手、力がより出るのは両手で剣を持っているステラだ。

 

「ハッ!」

「やぁっ!」

 

 ステラの使う皇室剣技(インペリアルアーツ)を殴って相殺する詩音。そして生まれる轟音と衝撃。

 

「ハァァアァッ!!」

「ヤァァアァッ!!」

 

 それもそのはず、ステラはリングを激震させるほどの攻撃力を持っていて、それを相殺するほどの攻撃力を詩音は持っていた。その剣と拳の攻防が実に、十分ほどたった頃に拮抗していた試合が動いた。

 

「ヤアッ!」

「ぐぁっっ!!」

 

 詩音の身体がリングのぎりぎりまで押し返されたのだ。

 

「しーちゃんが押し負けた!?」

「すごいですわね・・・・」

 

 泡沫とカナタがそれぞれ、詩音を押し返したステラを評価する中、刀華は、

 

(しーちゃん・・・まさか、貴女・・・)

 

 詩音がまだ本気を出していないことに気が付いていた。

 刀華は、詩音の実力を知っている。小さい頃に何度も手合わせしたことがあるそんな彼女だからこそ気がついたことだった。

 そんな事を思われている詩音はというと・・・

 

(ふーん・・・こんなもんか・・・はぁ、期待・・・してたんだけどなぁ・・・)

 

 この戦いに飽き始めていた。確かに精練された剣術、圧倒的なパワーとスピードは確かにすごい。だが、ただそれだけだ。

 詩音の感じている違和感それは、ステラは自分の力を十分に扱えていない(・・・・・・・・・)感じがしたのだ。

 

「やあっ!」

 

 ステラの大剣の振り下ろしを右手で掴んで受け止める。

 

「どうしたのシオン!こんなものなの貴女の力は!」

「はぁ・・・ねぇ、ステラ」

「なによ!」

 

 詩音はため息を吐いてステラに顔を近づけて声を低くして威圧した。

 

「貴女、この程度なの(・・・・・・)?」

「な、なんですって!?舐めないで!」

 

 ステラは力を加えて詩音を押し潰そうとするが、

 

「な、なんで、動かないのよ!?」

 

 ピクリとも動かなかった。

 それどころか、押し返され始めた。

 

「私は、自分の力を100%以上に使えていない相手には負けないよ?」

「だったら!」

 

 ステラはリングぎりぎりまで下がって《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》を頭の上に構えた。

 

「蒼天を穿て、煉獄の焔!」

 

 自分が持つ最大の一撃を放つために魔力を溜め始める。詩音はその間一歩も動こうとしなかった。

 

(バカにしてっ!)

「全力の《天壌焼き焦がす竜王の焔(カルサリティオ・サラマンドラ)》ァァッッーーー!!」

 

 一輝の試合の時以上の威力を込めた、ステラの伐刀絶技(ノウブルアーツ)は真っ直ぐ詩音に向けて放たれた。

 

「個にして軍を成す赤き竜よ、その真なる力を示せ―」

 

 その一撃を詩音は、両腕をステラに向けて自身の伐刀絶技(ノウブルアーツ)を真正面から放った。

 

「《炎竜帝・天焔砲(アマツ・ホムラ)》」

 

 詩音の回りに魔力が集まり、拳大の火球が現れる。そしてその数が十、二十と増えていく。最終的にはその数が数えきれなくなるほど増え、リングを埋めつくした。そして、このひとつひとつが魔力の塊。そんな火球が、詩音の両腕に集まり彼女は左腕を振り上げ、

 

「貴女の伐刀絶技(ノウブルアーツ)・・・破壊するわ」

 

 殴るモーションで振り抜くと、焔が収束したビームが拳からステラの光剣と衝突すると、

 

「う、嘘・・・でしょ・・・!?」

 

 ステラの固有霊装(デバイス)だけを残し伐刀絶技(ノウブルアーツ)を破壊した。

 誰も予想もしなかった、伐刀絶技(ノウブルアーツ)の破壊。

 

「これが、力を扱えている者と、扱えていない者との差だよステラ!ハァァアッ!」

 

 そう言って右腕を振り抜いた。ステラは今、大剣を振り抜いて無防備な状態。そして放たれた詩音のレーザー。

 

「キャアァァア!!!」

 

 詩音の攻撃を、防御を出来ずステラは意識を失った。

 

「しょ、勝者、龍切詩音」

 

 《眠り姫》の前に崩れ落ちた《紅蓮の皇女》。

 

「まっ、これからに期待ってことで!お疲れステラ!」

 

 ステラをお姫様抱っこをしてリングを後にする詩音。そんな二人を見守る観客達。

 

『な、なんだよ、さっきのあれ!?』

『本当に同じ学生なのかよ!?』

「あ、あはは・・・・・こ、これは予想してなかったな・・・」

「そ、そうですわね・・・」

「しーちゃん、伐刀絶技(ノウブルアーツ)の破壊って七星剣王じゃないんだから・・・・」

「あれが、詩音さんの実力・・・・」

「ここまでとはね・・・・」

(詩音、君は一体どんな修行をしてきたんだい?)

 

「ステラ、君が自分の力に気づいた時、君はもっと強くなれるよ。

 だから・・・・頑張れステラ、学園生活はまだ始まったばかりなんだから」

 

 そんな詩音の呟きは誰にも届かなかった。そう呟いた詩音の表情は優しさに溢れていた。

 

──────────────────────

 

 

 

 試合が終わり、詩音は校舎を歩いていた。

 なぜ、校舎を歩いていたのかとゆうと、あの後ステラを戻ってきた一輝に引き渡し、ベッドに寝ころがって休んでいると、生徒手帳に電話がかかってきたのだ。

 

「はい、龍切です」

『黒乃だ、悪いが一つ用事が有る。今からでも理事長室に来てもらえないか?』

「いいですよ。今行きます」

 

 黒乃に用事があると呼び出され、理事長室に向かっていたのだ。

 

(用事って何かしたっけ?うーん・・・・・・・・わかんなーい!)

 

 そんな事を考えているうちに理事長室の前に着いた。扉を二、三回ノックすると中から「入れ」と聞こえたので入った。

 

「失礼します」

「来たな」

「理事長、それで用って何ですか?」

 

 黒乃はタバコを取り、ニヤリと意味深に笑う。

 

「・・・《風の剣帝》黒鉄王馬が帰ってきたらしいぞ」

「・・・・・・えっ?」

 

 詩音はその言葉に目を見開き、己の耳を疑う。

 

「理事長、今あの黒鉄王馬が、帰ってきたって?」

「ああ、そうだ」

「なるほど・・・・」

「これはまだ定かではないが、七星剣武祭にもでるかもしれんな」

「そう、ですか・・・・」

 

 詩音はそう答えながらも、表情はまるでこの時を待ちわびたかのように残忍で獰猛な笑みを浮かべる。その様子を見て、黒乃はおもわず笑ってしまう。

 

「ふふ、そんなにあの男と戦うのが楽しみなのか?」

「ええ、楽しみで仕方がありませんよ。なんたって私が初めて戦いを楽しいと感じた相手ですよ?楽しみじゃないわけないじゃないですか。

・・・・でも理事長、それだけじゃないですよね?」

 

 黒乃は一瞬目を見開くも、すぐに表情を戻して、笑う。

 

「鋭いな・・・・・まあ、そうだ。このタイミングで黒鉄王馬が帰ってくること自体、まず普通ではない」

 

 黒鉄王馬は武曲学園に在籍はしているものの、学生生活のほとんどをどこか放浪しているため、学校にあまり顔を出すことはない。去年の七星剣武祭でも『戦うべき相手はいない。一人だけいるが、今年は出るつもりはないようだからな』と答えている。

 それには多くの学生騎士やその他から批判を買ったものの、一部の彼をよく知る人間にはそれが口先だけのことではなく、実力に裏打ちされているということが理解できた。

 しかし、そんな男がなぜこのタイミングで戻ってきたのか、黒乃にはわからなかった。

 

「つまり、今年の七星剣武祭は例年とは違う(・・・・・・)と考えたほうがいいってことですか?」

「ああ、龍切も警戒はしといてくれ」

「わかりました。それで今日はそれだけですか?」

「ああ、時間を取らせて悪かったな」

「いえ、いいですよ。では」

 

 詩音は黒乃に一礼し理事長室から出ていく。黒乃は詩音が出た後、新しいタバコに火をつけて、口をつける。

 

「あの黒鉄の放浪息子が帰ってきたのには、何か裏がありそうだ。・・・・・何も起きなければいいのだが・・・・それにしても、アイツもあんな顔をするんだな」

 

 黒乃はタバコの煙を吐きながら、そう呟く。その目に映ったのは獰猛な笑みを浮かべていた詩音だった。

 

 

──────────────────────

 

 学生寮へとつながる道を詩音は一人歩いていた。その足取りはとても軽く、表情は歓喜と恍惚に満ちていた。

 

「王馬・・・・そう・・・ふふ、やっと出てきたの・・・・王馬、ふふふ・・・・」

 

 黒鉄王馬・・・黒鉄一輝と黒鉄珠雫の実の兄であり、この国のもう一人のAランク騎士。風の伐刀絶技(ノウブルアーツ)を使うことから、《風の剣帝》の二つ名を持つ男だ。さらには、小学生リトル時代には世界一にもなったことがある実力者だ。だが、その実態は学校には行かずに、世界中を放浪している戦闘狂。

 自分が強くなること以外はとことん興味がなく、昔から己を鍛えることしかしていない。一輝以上に自分にストイックな男だ。

 なぜ、こんなことをしているのかは多くの人は理由を知らないためわからないが、彼を昔から知っている人間はその理由をよく理解していた。

 

「どこまで強くなってるの王馬・・・今から楽しみね・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

 

 詩音はぶるっと、自分の体を両手で抱いて武者震いさせ、獰猛な笑みを浮かべる。

 

「だけど、強くなってるのはお前だけじゃないよ。

 ・・・・あの時の続きをしてあげる」

 

 詩音の右腕に自身の固有霊装(デバイス)が出現する。

 

「今年の七星剣武祭はかなり楽しくなりそうね。

 ねぇ《龍星天牙(ミッドガルズ)》。

 ふふふ、あははっ!!あはははっ!!あはははははっっ!!」

 

 詩音は自身の右腕を額に当て、狂ったように笑った。

 




うーん文字数が少なかったなぁ・・・頑張らないと

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