シロウさんてこんな性格だっけ?
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男を倒し転移塔へと進んでいると、突如として巨大なゴーレムが道を塞ぐ程出現する。
「時間稼ぎか、たがわざわざそれに付き合うほど、お人好しではない
手元に黒い弓を作り出し、それに先がいくつもにも捻れた剣を添える。すると、その剣はまるで弓矢のように長くなる。
「I am the born of my sword...
射出された剣は手前のゴーレムに当たると、一瞬で粉々して突き進み、全てのゴーレムを粉砕する。
ゴーレムが破壊された事を確認すると弓を消して道を進む。
シロウの放った剣により学院が崩壊寸前までいっているが、今は気にせずひたすら走る。そうルミア優先そう言う命令ルミアタスケルルミアタスケル...
精神がおかしくなるほど自問自答して数十分が経つと、塔の頂上まで登り目の前にある大きな扉を開ける。
その部屋の中は真っ暗だが、シロウの目にはしっかりと見えている。
「貴様が黒幕でいいのかね?ヒューイ=ルイセン」
「流石は帝国宮廷魔道師団の執行者ですね。こう言った方が言いでしょうか?元天の智慧研究会の被験者シロウ=エミヤさん?」
「なるほど貴様は天の智慧研究会の人間か」
天の智慧研究会とは政府と敵対する組織で、シロウが投影魔術を使えるように改造した組織でもある。
そのシロウの事を知っていると言うことは、天の智慧研究会の関係者であるのは明白であった。
「シロウさん?...」
「ルミアか...これは......まさか【サクリファイス】か」
「ご明察」
「貴様死ぬ気か」
「ええそうですよ。ルミアさんを送った後すぐにでもこの術式が起動して、私の命と引き換えにこの学院が吹き飛ぶでしょう」
死ぬのが当たり前そう口にするヒューイに、少しばかり驚いた。
だが、逆に落ち着きすぎているとも思った。
「なるほどなそれで何故君は死ぬ?ルミアの誘拐が目的では無いのか君たちは?」
「そうですね。ですがルミアさんの立場や特性が少々特殊でして」
「第二王女エルミアナ」
「知っていましたか。となると貴方が護衛役と言う事なんでしょうね」
ヒューイは納得と言った様子で頷く。
「では本題です。貴方はルミアさんの下にある魔術式を解かねば」
「君は一体何がしたい」
シロウの言葉にヒューイは急に黙る。
それは先程からの口調にある。何かとルミアを大事にしているようにルミアさんと呼び、助ける方法すら提示する。
ヒューイはシロウの目を見ると諦めるように心のうちを語る。
「私はまだ講師をしたかったのですよ。ここは本当に楽しい...どうしてこうなってしまったのか私にも分かりません」
「ふ、それが君の本心かね」
「えぇ、そうですよ」
「ならばそれに答えるとしよう」
シロウは魔術は使えど、魔法陣を解読して解除するなど出来ない。
「私が何故魔術殺しと言われているか知っているか?」
「いえ知りませんね」
「先の戦いを見たなら分かると思うが、錬金術の上位互換の魔術を使っているが、それでは魔術殺しなんて呼ばれない」
「確かに...なら一体」
「これを見て生きた者はいなかったからだ......
シロウの手に魔力の渦ができ、その形が定まると、刀身の部分が波が打っているような形で、殺傷能力がかなり低い武器を作る。
ヒューイは何故?と思うがその考えは次の瞬間に打ち砕かれる。
「ルミア離れていろ」
「ううん...後でちゃんと聞かせてね」
「あぁ分かっている」
ルミアを安心させるために満面の笑みを浮かべ、その武器の能力を解放する。
「
その剣が魔法陣に突き刺さった瞬間、魔法陣が跡形もなく粉々に壊れる。
「...何が......」
「これは
グレンも似たような物を持っており、グレンのそれは『愚者の世界』と呼ばれ相手と自分共に魔術が使えなくなる。
それに対してシロウのそれは、起動しようとする魔術に突き刺せば、その全てを無効にできるかなりのチート武器だ。
一時期シロウとグレンが組んだ時はどんな魔術師ですら相手にならなかった。
「まさかここまでとは...それは敵わない訳ですね」
「あぁだから君は眠っていろ。すぐに終わる」
ヒューイの首に手刀を放ち意識を奪うと、ルミアの所に向かいルミアを拘束しているヒモを切る。
拘束から解かれたルミアは数回手首を回すと、その場に正座してシロウを座らせる。
「何で私の事を知っていたんですか?」
「あぁ...そうだな......たまたまと言っても無理があるか」
「はい。ちゃんと答えてください」
「...とある女性から依頼されてね、君を守って欲しいと。今言えるのはそれだけだ、後は本人にでもあって聞いてくれ」
「分かりました、ちゃんとその時聞きます。それとありがとうございましたシロウさん」
「そのシロウさんはやめろ、小はずかしい私の事はシロウでいい」
「はいシロウ」
ルミアは恐怖を感じさせないような笑みを浮かべる。
それがどうしても酷く脆くシロウは感じた。
ルミアの本質は自分は傷ついても、他人は気づけない事なのだろう。
そんなルミアを見たのがいけなかったのだろう、自然と手が伸びルミアの頭を撫でる。
「良く頑張ったな」
「なん...で......うっ」
「君は1人で良くやったさ。だから今はぐらいは泣いていい。ここから先は私の仕事だからな」
ルミアは撫でられ暖かい言葉を掛けられた事をきっかけに、せき止めていた感情が溢れ涙が零れた。
シロウはルミアの泣き顔を後ろに隠れているグレンに見られるのは不味いと、自然と抱き寄せ胸を貸した。
そんな事をしながらポツリと呟く。
「しまった転移魔術も一緒に壊してしまった...」
それはセリカからの厳しいお仕置きを意味していた。