赤き正義の味方と禁忌教典   作:暁紅

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ふぅ...疲れたぜ。何とかかけたな


魔人VS贋作

 

空間全てを焼き尽くしたソレにより、地面に動ける物は誰一人としていない。

 

そう、地面にはいないのだ。

 

『甘いぞ』

 

熾天覆う七つの円環(ローアイアス)を普通に展開するのではなく、マントのように身体を覆うように展開し比較的被害のない天井へと駆け上がった。

 

そして、投影した剣を放つ。

 

しかし、魔人はその事を予め予想していて、不意打ちとなる攻撃を容易く首を傾けるだけで回避する。

 

「避けたのが失敗だったな」

『何』

 

魔人の初めての動揺だった。

 

頭を横切った剣が異常な角度で急回転し、改めて魔人の頭向け動き出したのだ。

 

通常の矢や剣ではありえない軌道に驚いたが、すぐに左の刀で剣を切り裂く。シロウの天敵である刀が今は反対方向にある。絶好のチャンスだ。

 

今から矢を構えるのは遅い。剣で接近したとしても右の刀で切られれば終わりだ。となればアレしかない。

 

トンプソン・コンテンダー。キリツグから渡されていた銃だ。

 

中間地点で折れそこに弾丸を装填。軽く上に上げ瞬時に閉じ撃鉄を引く。

 

放たれた銃弾は魔人の心臓に吸い込まれるように貫通し、一回分の命を刈り取る。

 

『爆裂の魔術の類か』

 

自分の命を刈り取った道具を見て、極小の爆裂魔術により鉄飛ばしているものだと誤解してしまう。

 

これこそが、唯一魔人に勝てている所であった。魔人は現代武器に疎い。そこをつけば殺れる可能性は格段に上がる。

 

そこにつけ入る。再び銃を中間地点で折り新たに銃弾を込める。今度のものは破壊力を重視した物だ。

 

「いくぞ」

 

装填してもすぐには撃たない。隙を付いて撃たなければ当たるものも当たらない。それだけの相手なのだ。

 

左手に銃を握っているので、夫婦剣を持つには多少問題が発生するので、リィエルの剣を投影する。

 

重さは身体強化で誤魔化し強引に振りまくる。

 

乱雑な剣戟は達人などにとっては予想できない動きであり、それは魔人にも当てはまる。

 

『他愛ない』

 

所詮魔術で作った剣。そうであれば消せない代物ではなく、逆に距離を詰めてきたおかげで右の刀で殺りやすくなる。

 

大剣は砕け散り、瞬時に仕留めにかかる。その時シロウの口元が微笑む。

 

金属と金属のぶつかり合う甲高い音が響く。

 

「警戒しすぎだ」

 

シロウは刀を銃で受け止め余裕の表情で言い放つ。

 

この銃はキリツグが改造したと言っても元は金属である。魔術的な余地は介入しておらず、右の刀を受け止めるのは容易い事だ。

 

そして、受け止めてすぐに細長いレイピアのような剣を投影し、突き刺す。あまり経験の少ない動きであったが的確に心臓に突き進む。

 

『剣だけが私の武器ではない』

 

レイピアの真ん中を左足で蹴り上げ砕く。そして、その場で一回転し今度は胸部に回転蹴りを叩き込む。

 

肋を粉砕した感触を覚え、経験則から心臓も停止した事が分かる。

 

惜しかった。純粋に魔人はそう思う。

 

命が何個もある自分で無く、一つの命しかなければ目の前の少年に倒されていたのは必至だ。

 

だからこそ、ここで殺してしまった事に悔やむほか無かった。

 

壁に激突し瓦礫にまみれたシロウを一見し地上に降り立つ。

 

突如として鉄が飛んでくる。

 

『何!』

 

思考外の攻撃に反応が遅れ、右の刀をどうにか当てるも魔術によるものでは無いので止まらず肩を撃ち抜く。

 

「外したか...数少ないチャンスだったんだがな」

『アレで生きていたのか。心臓程度は死なんか、確実にこの刀で命を刈り取ろう』

 

シロウはかすり傷ひとつ無い状態で立っている。まるで魔人と同じようだった。

 

これは、全て遠き理想郷(アヴァロン)による超回復で起こった現象で、シロウ自身も少しばかり驚いている。

 

多少ダメージは残りあまり回復しない物と思っていたが、かすり傷も殆ど消えほぼ全快だ。

 

「だがどうしたものか、もう倒す術がないな。これ以上の剣を作る事など出来ないわけで......剣?いや無理だ解析が出来ていないのだから」

 

夫婦剣以上の剣を望むが、シロウにはその存在を知らない。前までならばだ。目の前に明らかなる上位互換の剣がある。

 

だが、投影は出来ない。解析が出来ていないのだから。

 

『どうした意識が逸れているぞ』

「いやすまない。どうやってこの状況を打開しようかと考えていただけだ」

『打開。この状況でその言葉を吐いたのは貴様が初めてだ』

「そうか、ならば嬉しいついでにもう一つ初めてを頂こう」

 

では諦めるのか?否だ。諦めてどうなる事でもない、失敗しても失敗しても例え死ぬとしてもやるしかない。

 

投影開始(トレース・オン)

 

銃を投げ捨て目を見開き二本の刀を睨みつけるように凝視する。

 

なんでもいい、どんなに少なくてもいい。情報をかき集めるのだ。

 

投影開始(トレース・オン)

 

全魔力が暴れ狂う。解析出来ていない物を投影しようと言うのだから当たり前だ。ならば、それおも超えていけ。

 

両手から放たれる魔力が高密度の魔力となり、懐に入れていた非常用の魔石も砕ける。

 

投影開始(トレース・オン)

 

異常な情報量に目から血が流れ始め、手も割れるような傷ができ血が流れる。

 

血が流れたのならば丁度いい。投影魔術の元は錬金術からきている、だとすれば血も使える。

 

投影開始(トレース・オン)

 

何度やったのだろうか。すでに腕に感覚はなく魔力もそこをつきそうになってきた。

 

目が暗み足から力が抜けそうになる。でも立つ勝つために。

 

異常な執念による努力は実り始める。

 

形は不安定ながら左に紅い刀右に黒い刀が投影され始める。

 

『それ以上はまずい』

 

魔人も気づいた。自分の刀が投影され始めている現実に。

 

十メートル以上離れていた距離を瞬時に縮め、左の刀で心臓を穿つ。

 

投影に集中していたシロウは避けられない。左の刀を無防備に心臓に突き穿たれ壁に激突する。

 

「はぁぁぁああああ!!」

 

途中で止められたせいで刀は完成できず無残に消えたが、相手が接近してきたのだこの距離ならば防ぐ事も出来ない。

 

慣れ親しんだため一秒にも満たない時間で夫婦剣を投影し、最後の力の限りを尽くして魔人の心臓を貫いた。

 

 

 

 

 

『貴様は今まで一番の強さを誇った。名前を覚えよう』

「シロウ...エミヤ...」

『確かに覚えたぞ最強の愚者の民(シロウ=エミヤ)

 

心臓に突き刺された刀により力を吸われ続け、遂には瞳から光が消え首が折れ下を向く。

 

魔人は刀を抜き取り血を払い捨てると、念の為に肩から腰にかけ切り裂く。大量に血が流れ死を確認し(セリカ)達を追いかける。

 


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