もう見たぞ!という方はお楽しみください
「チ、だったら次」
『児戯に過ぎず』
次なる魔術を放つ前に姿が瞬時に消え背後をとり斬撃を放つ。
どうにか背を曲げ回避するが、微かに刀先が当たり擦り傷が付く。たったそれだけなのだが、全身から力が抜け崩れ落ちる。
『この刀は
身体はピクリとも動かず、敵を目の前に無防備な身体を露わにする。だと言うのに追撃を仕掛けない。それだけの理由があった。
「バレていたか」
『当たり前だ。汝をこの中で一番警戒しているのだからな』
セリカが近くにいるため全力で放つ事が出来ないので、当たるまで追尾する剣を打ち放つ。
念のため左の刀を警戒し右から狙撃したが、右の刀であっても真っ二つに剣を切断する。
その隙を突きグレンはセリカを救出し戦線から離脱している。
『陽動か』
「まぁ、出来れば倒したかったがひとまずこれでいい」
「いやぁぁぁあああ!」
リィエルが空に飛び上がり、重力も合わせた大剣の一撃を振り下ろす。
二度の誘導による攻撃は絶対のダメージを与える。魔人の身体にヒビが入り吹き飛ぶ。
闘技場の縁に魔人は激突し煙を上げ姿を隠す。
「良くやったリィエル」
「ん、師匠の誘導のおかげ」
「よし、さっさと帰」
『良き連携だ。少し慢心していたようだな』
声のした方向を向くと傷やヒビが一切ない魔人が立っていた。
先程の一撃で決まったはずなのだ。それで生きているなど何個か命を持っているとしか思えない。
「何でアレで生きてんだよ!」
「知らん!それより今は防御を固めろ」
勝ったと安心していた三人はかなり大きな隙を見せつけている。無論そこをつかない魔人ではなく、瞬時に加速し刀の間合いへ入れようとする。
「システィ!」
「《集え暴風・戦鎚となりて・撃ち据えよ》ッ!」
ルミアの『感応増幅能力』により強化された【ブラスト・ブロウ】は絶大な威力だった。
近接する魔人は足をその場で止め左の刀で払われそよ風と成り果てる。
「哼ッ」
今度は三射行う。
シロウと魔人とでは相性は最悪。近接戦は剣全てが破壊される。ならばもう残るは弓術のみ。
右肩、左肩、心臓。何かしらに当たればと儚い思いで撃つ。
いとも容易く魔人は剣を弾き落とす。
『どうした?狙いが甘いぞ?』
「わざとだ」
夫婦剣の『莫耶』だけを投擲する。
あまりにも幼稚で簡単な一撃。当たり前のように右の刀で切断する時、巧みに注意を逸らし投擲していた『干将』がその特性により、心臓を背後から貫く。
そして、それにより手が止まり『莫耶』も心臓を貫く。
前後からの同じ心臓突き。かなり予想外の一撃により確実に殺すことが出来たはずだ。
なのだが、夫婦剣を引き抜き刀で消し去るともう傷も無くなり無傷の状態になってしまっている。
「不死身なのか」
『中々いい攻撃だった』
「とう言うなら倒れてほしいのだがな。グレン準備をしろ」
「だけど、あいつ付いてく」
「私が残る、時間稼ぎ程度ならば任せろ」
とても容認出来る物ではない。あの魔人はシロウであっても勝つ姿が思いつかない。
魔人の持ち前の武術に、得体の知れない不死性。この二つがある限り絶対に勝つことは出来ない。
「だったら俺も」
首を縦に振るわけもなく、左右に振る。
「邪魔だ。お前が残っても邪魔なだけだ、先にいけ」
「けど」
「あぁ時間を稼ぐのはいいが、別にアレを倒してしまっても構わんのだろう?」
「...たく分かったよ。だけど、絶対帰ったら飯いくぞ。俺のおごりだからな」
「楽しみにしているさ。それと最低でも二回は持っていく」
この時一体何を言ったのか分からず首を傾げるが、すぐに退避の準備を始める。
維持でも残りたいと言い張るルミアをリィエルとシスティが引きずり、動けないセリカをグレンが背負って走り始める。
「ちくしょう」そう呟いて走り去る。
さてと前を振り向き改めて夫婦剣を強く握る。
「待ってくれて感謝するよ」
『構わん。どうせ貴様を倒した後に殺すのは変わらないからな』
「なるほど、さすがは魔煌刃将アール=カーンか」
その名を口にした瞬間当たりの空気は一変し、感嘆の念を口にする。
『魔煌刃将アール=カーン』とは絵本『メルガリウスの魔法使い』にて、主人公に仇をなす『魔王』を守護する『魔将星』として登場する。
『魔将星』は元は人間だった者が人間を辞め、強大な力を持った者達のことを言う。
中でも、魔煌刃将アール=カーンは独特な立ち位置で、魔王に仕えながらも自身の仕える魔王により相応しい人物を探している。
絵本での特徴は二本の魔刀と、邪神がアール=カーンに課した十三の試練を乗り越え手にした、十三の命。
唯一の救いは冒険の中で七回殺されているので残りは六。さらに先程二回殺したので残りは四。
『良く気づいた』
「かなり好きな本だったから覚えていたが、さすがにすぐには信じられなかったさ」
『では褒美だ受け取れ《■■■■■■》』
認識が出来ない詠唱始める。
すると、魔人が浮かび上がり右手を上に掲げ、その上に太陽と見間違える程の大質量の炎玉が作られる。
どこにそんな力があったのか疑問に思う暇もなく太陽が地面へと落ち、大爆発を巻き起こす。