かなりの時間進んだ。構造は塔に近い物でひたすら下へ下へと進んだ。
すると、耳に巨大な爆発音が届き急いで音のする方へかける。
「あれは!」
「
セリカが放つ特大の爆発は異常な量の亡霊達を消し炭にしていく。
除霊するのではなく絶滅させていく。
闘技場のような形をしているこの場では、障害物も少なく下手に周りを気にする必要も無い。
周りの二人は凄いと呟いているが、シロウとグレンは違う。
「何故焦っている?何かあるのか?」
「確かにな、だが今はとりあえずアイツを拘束するぞ」
二人は息を合わせ戦闘真っ只中のセリカへ飛びつく。
「な、おまえ達」
「少し静かにしてろ!シロウやれ!」
「分かっているさ!」
リィエルの方はアイコンタクトで通じていたのか二人の前に立ち、大剣の背をこちら側に向け防御の姿勢をとる。
そして、地面にセリカを押さえつけているグレンを一見し、六本夫婦剣を作り全方位に放り投げ魔力を暴走させ爆発させる。
一応除霊の効果も含めていたので大量の悪霊達は全員消えていく。
「これで落ち着いて話が出来るな、さてセリカどうしてこのような事を?」
「やっとだ、やっと辿り着いた」
「辿り着いた?」
「あぁ、ここは地下迷宮の地下89階なんだ、あの忌々しい《愚者への試練》を突破したんだ!待ちに待ったかいがあった」
セリカの一言にグレンは理解が追いつかず目を白黒させているが、シロウはある意味納得していた。
この場所の異様な形などを考えればそうであってもおかしくはない。
「あそこの先に...先に」
錯乱した状態で闘技場の奥にある門へ歩み寄る。
咄嗟にセリカの腕をグレンが掴み引き止める。
「ダメだ行くな」
「何でだ!何でなんだグレン!私の事が」
「行けば必ず後悔することになると言ってもか?」
シロウはセリカの進行を妨げるために前へ入り込む。
「いやだ、いやだァ!!」
「しまった!」
我儘な子供のような事を言いながらグレンの手を振りほどき、シロウの横を通過していく。
「《其は摂理の円環へと帰還せよ・五素は五素に・象と理を紡ぐ縁は乖離せよ》ッッ!!」
セリカの持つ最大の破壊魔術。右手から放たれたそれは門に激突し、爆発を起こす。
並のものであれば壊せない事は無い。だが、ここは過去の者達が作り上げ
絶望し立つ気力すら無くなったセリカの腕を掴んで持ち上げ、連れて帰ろとした時だ。
全身に謎の悪寒が走る。
『その門に触れるな下郎共』
暗闇からしみ出るように突如としてそれは現れた。
『愚者や門番がこの門、潜ること、能わず。地の民と天人のみが能う。汝らに資格無し』
緋色のローブで全身を包み、フードの奥にはまるで無限の闇が広がっているようで、様子を一切伺うことが出来ない。
だが、それよりもシロウが驚いたのは両手に持つ双刀だ。
禍々しい呪詛と魔力が纒わり付く、紅の魔刀に漆黒の魔刀。
シロウは見た相手の剣を瞬時に理解し投影することが出来る。だが、その二つに関しては一切読み取れない。過去にこんな事一度も無かった。
『...貴女は...』
セリカを見つけ認識し懐かしむように呟く。
『戻られたか、
言いたい事が終わり、次にグレン達の方に視線を変え威圧感をます。
『愚者の民よ、この聖域に足を踏み入れて、生きて帰れると思うなよ』
双刀は怪しげな光を放ち明確な殺意が伝わる。
システィやルミアも顔を青くし震えグレンの背にしがみついている。リィエルですら無表情を崩して息を上げている。
撤退だ。この惨状では何も出来ない。
「聞けよ!無視をするなぁ!!」
「馬鹿」
グレンの静止を振り切り炎柱を作り、魔人を包み込むが
『愚かなり。そのような愚者の牙に頼るなど、王者の剣はどうした』
左手の紅の魔剣を軽く振っただけで、炎柱は掻き消える。
「
「私も忘れられては困るな」
セリカが飛び出したのを合図にシロウも夫婦剣を掴み接近する。
【ロード・エクスペリエンス】によって《剣の姫》と謳われた彼女の剣技を身に降ろしている。
魔人はセリカの剣を先に弾き、次にシロウの剣も弾く。その時不思議な事が起こった。
「馬鹿な!何故」
「なん...だと」
なんと、夫婦剣が砕け散った。決して耐久力が無くなって壊れたのではない。それこそまるで魔術を打ち消したそんな感じだ。
それはセリカも同じらしく魔術を解除させられ、いつもの彼女に戻っている。
『我が刀は
これだけで瞬時に察した。全魔術師はこの男に絶対に叶わない事を。魔術でいくら強化しても解除され近接戦となってしまう、そうなれば勝てるはずがない。
なにせ、身体能力を鍛える魔術師など数少なく、さらにシロウより身体能力が圧倒的。まさに最強の魔術師殺しだ。
勝てるはずがないと思考を放棄してしまう。それほど目の前の魔人とは絶対的な差があったのだ。