赤き正義の味方と禁忌教典   作:暁紅

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お風呂でのイベントは大事

「いやーごめんごめん。別にお前らを怖がらせるつもりは無かったんだ。こっちから行ったほうが近道だったんだ」

「そうだったんですか」

「それと私も同行してやるよ」

 

セリカは妖艶な笑みを浮かべながら申告する。

 

周りにいた生徒達は世界最強であるセリカの申し出に喜ぶ。確かにこれから向う遺跡は危険度が低いといえ、危険がゼロかと言われればそれは無い。

 

その事も考えると精神的に安心度が増すのが分かるので、拒否することなく一緒に行ってもらう事にする。

 

 

 

グレンとシロウは荷馬車の方に行ってしまったセリカの代わりに、馬たちの手綱を握っていた。

 

「なぁシロウいつから知ってた?」

「ふむ......最初からとしか」

 

グレンはため息を吐きながら馬たちが脱線しないように扱いながら、荷馬車の中に流れる険悪な雰囲気がどうにかならないかなと思うが、めんどくせと考えるのをやめた。

 

 

タウムの天文神殿に近づくと荷馬車の雰囲気もかなり和み、笑い声などが聞こえてくる。

 

少し楽しそうで仲間に入りたいとウズウズするが、シロウに馬の手綱を握ってろといい行かせないようにする。

 

そのまま進み日が傾き始めた頃には神殿が見え始める。

 

その全貌は石で造られた巨大な半球体の本殿。それを囲むように連なる無数の柱。石には幾何学紋様が刻まれている。

 

とりあえず探索は次の日にしてシロウお手製の料理で腹を満たし休息をとる。

 

そして、翌日念のために何人か生徒を野営場に待機させ、グレン達は探索へと乗り出す。

 

探索に繰り出したグレン達を歓迎したのは謎のモンスター達だ。

その姿はまるで人を小さくしたようで、妖精と言えば分かりやすいだろう。

 

そんな妖精にセシルは躊躇いなく狙撃する。

 

「1......2......3...次は?」

「ふむ、さらにその奥110、85数は3」

「了解...《撃ち滅ぼす》」

 

今回使うのは【ショック・ボルト】ではなく、妖精や精霊などの敵にダメージを与えられる魔術【マジック・パレット】を放つ。

 

たった1度の詠唱で妖精の数丁度の数玉を作り的確に当てて滅ぼしていく。

 

「なかなかやるな」

「まぁシロウが直々に特訓したからな」

「全段着弾を確認した。セシル狙撃を終わらせろ」

「了解......うーーん終わった」

 

セシルは狙撃をしていた時の無表情の顔から、いつもの元気な笑顔を浮かべる姿に戻り狙撃する時地面に這いつくばっていたので、身体の筋肉を解くようにのびをする。

 

「私出番ない」

「仕方ないよリィエル」

「うんアレは無理よ」

 

リィエルは出番が無く剣を振るえなかったのが不満なのか少し不貞腐れたように頬を膨らませる。

 

一応セシル以外も攻撃をするが倒せたのは数人だけ、近接戦しか出来ない奴は到底倒す事はできなかった。

 

その後も時折妖精達は湧き出てくるが、セリカが一瞬で消したり、我慢の限界になったリィエルが切り殺したりして進んでいた。

 

全員はすでに公開されている地図を頼りに、第一祭儀場のあるとされる場所へと向う。

 

ようやく第一祭儀場に付くと、念のためにグレンが先に中へと入る。

 

「大丈夫だルミア。ここは安全だからな」

「うんそうだよね...」

 

ルミアは何か引っかかるようだが、シロウの言葉で無理やり納得をする。

 

グレンが合図をするまで暇なのでそれぞれが喋って時間を潰すが、いささか合図が遅い。

 

「仕方ない行くか」

「そうだな私も着いていこう」

 

セリカとシロウは中で何かをして遅いグレンを迎えに行く。

 

中に行くとそこには誰もいない空間に銃を向け、顔が青ざめているグレンがいた。

 

疲れでも溜まっているのか?と思ったがグレンが言うには不気味な少女がいたらしい。

 

突然それこそ転移したように現れ、自分の名前を知っていたとの事だ。

 

「グレン...熱でもあるのか?」

「いやねえよ!」

 

他の生徒達もグレンの異常だろと言い結局はそのまま有耶無耶になる。

 

その後も探索はどんどん進み五日が過ぎた。

 

やはり新たな発見は何も見つからず、すでに知られている事をこの目で確かめるだけだった。

 

その日の夜もシロウが皆の英気を養う料理を振る舞い、1人最後の露天風呂にて星空を眺めていた。

 

─まさかこんな事になり...この汚れた手でも友が出来るとは...

 

過去の事を思いながら手を見つめていた。

 

シロウは幼い頃から帝国のためにと多くの人間を殺した。それは正義のためとは言え子供が抱えきれる物ではない。

 

それでも尚、やってこれたのは、人殺しに慣れたのが大きいだろう。

 

始めて殺した時は、その衝撃で胃の中の物をぶちまけた。それはその後も続き、30を越えた所で吐き気もなくなり、躊躇いなく殺せるようになった。

 

シロウは殺しを躊躇わない。

そんな彼に寄り添ってくれたのはグレンやセリカ、そして護衛の対象であるはずのルミアだ。

 

未だ過去の自分を全て知っている友は1人といないが、それでもいなかった友が増えたのはいい結果だと言える。

 

─そうだなこれが終わったら妹達に会いに行くか...

 

シロウは1月前に3人の姉妹と触れ合っていた。

 

キリツグ達の血が繋がっているイリヤ。親から虐待を受けそれを保護という形で家族になった美遊。シロウと同じ実験を受け同じ能力を持っているクロエ。

 

彼女ら3人は目に入れてもいいと豪語できるぐらいには可愛いと思えている。

 

 

妹達に何をプレゼントしようかと考えるが、あんまり長湯しても悪いと思い立ち上がると、丁度岩を挟んだ向こう側にいた人物も立ち上がる。

 

「む?」

「はぇ?シロウ?」

 

立ち上がった人物の方を見ると、そこには一糸まとわぬ姿で湯に浸かっていたルミアが、慌てて前を隠す瞬間だった。

 


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