赤き正義の味方と禁忌教典   作:暁紅

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グレンは.....良い奴だったよ

 

午後の授業になると珍しくグレンが黒板に自習以外の文字を書き始める。

 

シロウのご飯を食べたおかげで元気が湧き、真面目にしようと思ったが、数分で諦めて適当に教科書を読み始める。

 

当たり前のようにシスティーナは肩を震わせて、怒りをためる。

 

結局その後の授業も同じような事の繰り返し、そんな事をしていればシスティーナが怒らないわけが無い。

 

「いい加減にしてください!!」

「言われた通りいい加減にしてるだろ?」

「な!子供のような屁理屈を言わないでください!先生がその態度を変えないのなら、こちらも考えがあります」

「考え?」

「えぇ本当は使いたく無かったんですが、私はこの学院にそれなりの力を持つフィーベル家の娘で」

「よっしゃぁ!!辞められる!!」

「は?」

 

システィーナの考えではここでグレンが謝り、授業をしっかりやるのだと思っていた。だが、グレンはそんなに甘い男ではない。

 

いつもいつも予想の斜め上を行くそういう男だ。

 

「そうですか...考えを変えないのですね。なら別の形で教えます!」

「痛てっ!」

 

システィーナは自分がはめていた右の手袋をグレンの顔面に投げつける。

 

ルミアはそれの意味を知っているので必死に止めるが、システィーナはそれでもやめる気はない。

 

手袋を投げそれを受け取った相手とは決闘をせねばならない。それは昔からある伝統的な儀式だ。 

 

「お前本気か?」

「本気です」

「本気と書いてまじ?」

「えぇそうですよ本気と書いて大マジです」

「そうか」

 

システィーナはしっかりと受け取ってくれる。そう思っていたが、やはりそこはグレンだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だが断る」

「は?」

「そもそもお前みたいなガキと誰がやるかよ」

 

グレンは面倒くさそうに手を振り、椅子に座り睡眠を始めようとする。だがここまで馬鹿にされてきたシスティーナは、意地でも決闘をしたい。

 

「ぷぷ逃げるんですか?そのガキが怖くて」

「何?」

「本当のこと言ってもいいんですよ?怖いんですよね。私の事が」

「よぉし!やりたくなってきた!さっさと外に行くぞ戦闘だ戦闘」

 

グレンの手のひら返しにビックリするが、すぐにクラス全員が外に出る。

 

 

 

 

 

 

「いいな、この決闘は【ショック・ボルト】の呪文のみでつける物とする。異議はあるか?」

「いいえありません」

「それでお前が勝てば」

「先生の退職です」

「そうかなら俺が勝てば何でも言うことを聞くでいいな」

「ええもちろん。貴方なんかに負けるつもりは毛頭ありません」

「それがフラグなんて今気づいても遅いからな!」 

 

2人の無駄話をしている間に生徒間で誰が勝つか、話をした結果、9割がシスティーナと答え残り1割がグレンと答える形となる。シロウはと言うと当たり前のようにシスティーナと答えた。

 

 

2人の間の空気がピリピリと張り詰める。

 

理由としては今回の決闘に使う魔術にある。

 

【ショック・ボルト】

魔術学院に入学すれば最初に覚える、初歩中の初歩の魔術。微弱な電気で相手を気絶させる殺傷能力を一切持たない護身用の魔術である。

 

呪文を唱え、指さした相手に向け指先から真っ直ぐに、微弱な電気が飛ぶ。その簡単な魔術のため【ショック・ボルト】の撃ち合いは、いかに相手より先に発動させるかが勝負となる。

 

「ほら?どうした?かかってこないのか?」

「くっ......」

 

本来の戦闘であれば【ショック・ボルト】のような攻性呪文(アサルト・スペル)には、無数の対抗呪文(カウンター・スペル)がある。

 

だがこの戦闘においては【ショック・ボルト】しか使用出来ず、先に動いた方が確実に勝てる戦い。

 

なのだが、目の前の男グレン=レーダスは先手を譲ろうとしている。こんな事が出来るのはシスティーナより確実に早く【ショック・ボルト】が放てる自信がある者のみ。

 

グレンの実力は誰も知らず、あのセリカが念押しする程優秀なのではと予想していた。そして、この先手を譲る構えから確実に強い。

 

だからこそシスティーナは無闇に動く事が出来ない。

 

私は負けられない。これは私の意地。だけどあんな魔術を馬鹿にしてるような人、絶対に倒す。

 

腹を決めグレンを指差し呪文を唱える。

 

「《雷精の紫電よ》ッ!」

 

指先から放たれた雷は真っ直ぐにグレンに向かっていき、それを避けることなく余裕な顔で受けた。

 

「ぐぎやぁぁぁぁ!!」

「え?」

 

グレンは雷が直撃して身体をビクンと震わせる。

 

何とか耐えるとかも無く普通に倒れる。

 

何かルールを間違えた?と思っていたらグレンが起き上がる。

 

「馬鹿め!これは3回先に勝った方が勝ちだ!《雷精よ・紫電の衝撃を以》」

「《雷精の紫電よ》ッ!」

 

グレンの鈍間な呪文が完成するよる先に、システィーナの方が完成しグレンに激突する。

 

 

「はぁ...考えていた通りだったな。やはり負けるか。まぁグレンは元からこのような真っ当な戦闘には向かん男だから仕方が無いがな」

 

グレンはその後も「あそこに女王陛下が!」「あっ何だあれ?もしかして天馬か?」など言葉巧みに騙したが、やはり魔術の起動は遅く 【ショック・ボルト】が当たりまくり、結局土下座をして負けを認めた。

 

 

 

土下座をしたグレンとは言うと「魔術師じゃねーやつに魔術師のルール持ってこられては困るな」と捨て台詞を吐いて逃げていった。

 

そのあまりの情けなさから生徒からの評価は地に落ちたが、次の日もケロッとグレンは授業に現れ3日が経過する。

 

 

 

 


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