赤き正義の味方と禁忌教典   作:暁紅

25 / 38
いくら誤魔化してもすぐ化けの皮が剥がれる

 

シロウさん影薄...

──────────────────

 

サイドでは散々な結果になっているレオス軍だが、真ん中ではかなり攻めていた。

 

「なっ!危な!」

「外したか...狙撃手は?」

「大丈夫だ、まだ囮は効いてる」

 

レオスは狙撃手が倒せないと分かれば、新たな作戦として一つの班を身代わりにして、その間に他の班で攻めると言う手に出た。

 

最悪引っかからないと思っていたのだが、思いの外囮に引っかかり、動かない、狙撃場所も分かる、となれば防ぐのはそう難しくないので囮になる事が出来た。

 

そして、攻め込んだ先ではグレンが数人の生徒と一緒にいたので、すぐさま数人の生徒を倒すとグレンに魔術を放つ。

 

グレンは飛んでくる魔術を、ギリギリで躱したり、ジャンプして躱してみたりと、アクロバティックな動きで全て避けていた。

 

グレンが余裕そうな顔で避ける度に、苛立ちが積もっていく。

 

「追い詰めたぞ...」

 

レオス軍はやっとの事で大きな岩の場所に追い込み、グレンの逃げ道を完全に奪った。

 

さすがのグレンも逃げ道が無ければ逃げられない。

 

レオス軍は死刑宣告をするかのようにゆっくりと腕を水平にして詠唱をする。

 

「《雷精の」

「今だやれ!」

 

突然カッシュの声が辺りに響き渡ると、レオス軍達を囲んでいた木々が倒れ、大きな土煙を舞いあげると共に、四角く木々が囲み逃げ道を奪う。

 

一瞬で視界が奪われ、土煙が上がり息も思う存分出来ない。そんな状況になれば到底魔術を通常通り使える者などいない。

 

急のことに何も出来なくなっているレオス軍に対してカッシュは追い打ちをかける。

 

「一班撃て!」

 

カッシュの掛け声に反応して隠れていた7人程が木の上に立つと、それぞれが木に登る前に詠唱していた【スタン・ボール】を木で囲んでいる空間に適当に投げる。

 

投げ終わった生徒は木から降り、後ろにいた二班が代わりに木に登り詠唱をしていた【スタン・ボール】を放つ。

 

また二班が降りて、詠唱を終わらせている一班が乗って【スタン・ボール】を放つ。

 

これをもう1回二班が行うと、攻撃の手を止め中の様子を見るために【ゲイル・ブロウ】で土煙を吹き飛ばす。

 

すると中には気絶して倒れている多数のレオス軍がいた。

 

カッシュの見事な作戦は見事成功して、まとめて大量の戦力を奪った。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

「何故だ!」

 

レオスは何故自分が負けているのか理解できないと、地面に落ちていた小石を蹴り飛ばす。

 

蹴り飛ばされた小石は壁を数回バウンドすると、窓ガラスの無い窓から外へと飛び出る。

 

いつまでもぐずっていても仕方が無いと、次の行動に移る。

 

今出ている生徒達を全員後退させて防御の体制をとる。

 

そも戦とは基本攻撃より防御の方がしやすいのだ。

 

防御とは相手が攻められないと思わせればいい。例えば自爆特攻などがそうだろう。下手に攻めれば巻き添えをうけると。

 

しかし最近の戦では強力な何かによって、いきなり敵の本拠地を叩くなどが増えている。

 

今回は嬉しい事に使用できる魔術は制限されている。いくら強い奴がいるとしても、使えるのは初級魔術。威力は高が知れている。

 

数で攻めれば落とす事など容易い。

 

だからこそ攻めてくるであろうグレンに対抗するために防御の姿勢をとったのだが、いくら待てど一向に攻めてこない。と言うより攻める気配がない。

 

「何が...」

 

レオスはグレンの行動が理解出来なかった。

 

 

 

今回の戦いはレオスが勝てばシスティーナがレオスの物。グレンが勝てばグレンの物。では、引き分けは?

 

引き分けは誰の物にもならない。

 

グレンはレオスの物にならなければいいと考えているので、下手に攻めてカウンターで負けるより、引き分けにして誰の物にもなら無い方法を選択した。

 

では引き分けの条件とは?

それは互いの戦力損耗率が80%を超えた場合。

もう一つがあまりにも長時間に及ぶ戦闘になった場合のどれかだ。

 

そして今回はその後者の長時間戦闘にて決着した。

 

 

 

 

 

戦いが終わると最初にいた場所に全員集まってきているのだが、その雰囲気はまるっきり違っていた。

 

グレン達の方は良くやったと和気あいあいとしているのだが、レオスは生徒のせいにして怒鳴り散らしていた。

 

「おいおい、怒るのはお門違いだろ?」

「うるさい!君に何が分かる!」

「そうかよ...ん?お前顔色が」

「話をそらすな!」

 

レオスの顔色は始めてあった時よりも悪く、その怒鳴り散らす様は初めの頃が幻想だったのでは?と思う程見違えていた。

 

グレンは思惑通りになったので当初の目的通り互いに引こうと言うが、レオスが自身の右手につけていた手袋を投げつけ、当人同士での一体一となった。

 

 

 

その日の夜。

 

レオスの怪しさからシスティーナに何かをするのではと、ルミアの護衛をリィエルに任せ、自分は姿を隠しながらシスティーナを尾行していた。

 

学院の屋上への出入口でグレンと合流し、グレンの昔話が飛び出したタイミングでレオスが乱入してきた。

 

乱入したレオスはグレンの過去の秘密などを暴露して、切れたグレンに対して人工精霊(タルパ)を使用した。

 

人工精霊はグレンとは相性がかなり悪く、『愚者の世界』が通用しないため魔術で応戦しなければいけない。魔術戦...グレンにとっては致命的だ。

 

人工精霊が出てきた事で殆ど確信を得た様な物だが、最後のピースが足らないと同僚に連絡を取り『天使の塵(エンジェル・ダスト)』についての情報を手に入れる。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。