この世界には魔術と呼ばれる物がある。
その魔術を扱う者を育成するために多くの学院が設立され、シロウ=エミヤが通うことになった学院も同じだ。
そんな彼らは驚愕していた。目の前にいるあまりにも制服が似合っていないシロウ=エミヤに。
「えっとだな...こいつは転校生だ。名前は」
「シロウ=エミヤだよろしく頼む」
「えっと......同い歳ですか?」
「失礼だよシスティ」
「けどあれは酷いわよ。そこら辺のコスプレイヤーより酷いわよ」
「プフハハハ!酷いって本当腹が......おいお前ら同い歳だから仲良くしろよ」
「あぁ全くだ。もしまたふざけたこと言う奴がいるなら、手が滑ると思え」
シロウの手には黒い少し刃の部分が曲がっている短剣が握られていて、その剣と対をなす白い短剣はグレンの顔のすぐ横に突き刺さっていて、グレンの額から汗がこぼれる。
それを見た周りの生徒が全員理解した。決して制服の事を馬鹿にしてはいけないと。
それからグレンの自己紹介もあったのだが、問題はその後に起こる。
グレンが黒板に自習と言う文字を書くと、そのまま机に突っ伏し寝始める。
まぁある程度予想はしていたが、まさか本当にこんな事をするとは...はぁ...流石はグレンだな。
「これは一体なんですか!」
「ぷぷ自習も知らねぇのか?自由に自己学習する時間略して自習だろ?」
「そんな事は知ってます!私が言ってるのは何で自習何かしてるんですか!」
「えーだってめんどくさいし。そもそもやる気なんてゼロだし」
グレンは上げていた顔をまた机に向けて、寝息を立てた。
「むむむむ」
「システィ落ち着いてね」
「はぁ......全くグレンは...」
その後グレンは女子更衣室に突撃して、然るべき罰を受けることになった。
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現在12時過ぎ頃、絶好のランチタイムの中グレンは腹を空かせていた。
「クソ...急ぎすぎて、サイフ忘れるとか......死ぬ...」
独り言をブツブツと呟きながら歩いていると、グレンをシロウが止める。
「何だ腹を減らしているのか。ならこれを食べるか?調味料があまり手に入らずしっかりとした」
「やっほぅぅ!飯だ飯だ!どけどけ!!」
「全く君と言うやつは」
シロウは呆れながらその後を付いていくと、グレンがシスティーナとルミアの空いてる席に座り、手招きをするように椅子を叩く。
渋々座ると2人から怪訝な目を向けられた。
「もしかして...これですか?」
システィーナは右の小指を上げシロウに確認をとる。
「違う。断じて違う」
「えっと...本当ですか?」
「本当だ」
軽く仲を疑われている中グレンはシロウから奪い取った、大きな包みを解くと2段の大きな重箱が現れる。
その重箱の蓋を取ると多種多様な食材が入っていて、その下の段には米の1粒1粒が生きているご飯が出てくる。それらを横に並べると美味しそうな匂いが鼻腔をつく。
「うっひょうーー!うまそ」
「美味しそうですねそれ、先生が作ったんですか?」
「あぁ違うよ、シロウが作ったんだ」
「なるほど。1口貰っても良いですか?」
「別にいいぜ、こんだけいっぱいあるんだからな」
まずはと2人が箸を伸ばしたのは、色が茶色く変化し味が染み込んでいると分かる里芋を口に含む。
ひと噛み目味の爆弾が爆発する。
口に入れた時の不快感などは無く、丁寧に下処理をして味がしっかりと染み込んでいて、味もしょっぱくもなく濃くもなく丁度いい塩梅だ。
「「うまぁぁぁ!!」」
「システィシスティ!これ食べてみて本当に美味しいよ!」
「うっうん。それじゃあ」
若干引き気味にルミアから卵焼きを食べさせてもらう。
卵焼きは作り方がシンプルで、卵を溶き焼く。簡単に言えばこれだけだが、甘かったりと家庭毎に味付けが違い、誰しもが美味しいと思う卵焼きなど存在しない。
だがシロウの作る卵焼きは甘くないのだが、1口入れただけで分かる。
「美味しすぎる...何これ...」
「だよね。うぅん美味しい」
「生きてて良かった」
「やめろ褒めても今はサラダぐらいしかでんぞ」
どこから取り出したのか分からないが、白いサラダボウルに、野菜が盛られその上に白いドレッシングがかかっている。
3人とも口に溢れる唾を飲み込む。
食べたいと手を伸ばす......がそのサラダを横から誰かがかっさらい逃げていく。
「「「な!」」」
「これは頂くぞ。うんやはりシロウの作る物は美味しいな」
「「「.........」」」
「お前達も食いたいか?残念全部私が食べた」
「「「.........」」」
「いやあのなうん少し悪ふざけが」
「「「返せ」」」
「え?」
「「「サラダを返せぇぇぇ!!!」」」
3人とも手元にあった食器を投げた上に、 【ゲイル・ブロウ】と【ショック・ボルト】
が飛ぶ。
それを難なく躱したセリカは自前の脚力を全力で使い、その場から逃走する。
セリカを追おうと1歩を踏み出すが、先にシロウの食べてからだと席につき美味しそうにランチを食べる。