赤き正義の味方と禁忌教典   作:暁紅

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まぁグレンは...いいやつだったよ

まじで誤字報告感謝しています。

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「たくシロウの奴何処いんだよ」

 

グレンは研究所見学が終わるとシロウを探しに街へと繰り出していた。

 

シロウ程命令に忠実な人間もいないのですぐ帰ってくるとも思ったが全く帰ってこない。

 

もしかしたらと最悪な考えが浮かぶが、頭を横に振ってありえないと切り捨てる。

 

シロウの実力はグレンよりも上で、アルベルトにも過去に模擬戦で勝っていた。そんなシロウが負ける相手なんて今ここにいる人間じゃあまず勝てない。

 

探し始めて既に数時間経過している。

さすがに行方が一向に掴めず、ヒント無しで探すのは辛く身体もかなりバテてきた。

 

「どうすっかな...」

 

グレンがため息混じりで呟いた時、建物と建物の間で何か物音がなる。

 

いつもなら猫だろと見に行かないのだが、今回は別で藁にもすがる思いで見に行く。

 

するとそこには息を上げ左手をだらしなく垂らし、その左手で掴んでいる刀が地面を削りながら歩いていて、身体の至る所から血を流しているシロウがいた。

 

「シロウ!!」

「グレンか......はぁ.........」

 

グレンは慌てながらも簡単な白魔術をかけ、シロウの治療を始める。

 

シロウの傷が目に見えなくなると、上がっていた息も戻り立ち上がる。

 

「助かった。だが今はそれどころではない」

「どういう事だ?」

「リィエルが狙われている」

「リィエルだと!!」

「あぁそうだ。今どこにいる」

 

グレンはリィエルの行きそうな場所を必死に考える。

 

研究所での険悪な雰囲気を考えるに、確実に落ち込んでいるだろう。だって昨日まではあんなに楽しそうに笑っていたのだから。

 

その場でジタバタ考える事数分、考えがまとまり予想がたつ。

 

「海辺だ」

「海辺?」

「あぁ多分そこにいる。てかここら辺つったら海辺しかないだろ?いつものお前ならすぐ分かったと思うけどな」

「すまない気が動転していた」

 

まぁそれもそうかと納得して海辺に向かう。

 

 

 

海辺に行くとやはりそこにはリィエルがいたが、それ以外にもう1人別の男がいた。

 

「あいつは天の智慧研究会の一員だ」

「ならもう手を出してんのか!行くぞ」

「あぁアレを発動させておけ、私は武器を作っておく」

 

 

シロウは刀を作り、グレンはポケットに手を突っ込んで「愚者の世界」を発動させリィエル達の間に割り込む。

 

「随分と手が早えな」

「なっ、君はグレン...レーダス」

「なんだよそこまで知られてんのかよ。ならこれの意味も分かるな」

 

グレンはポケットから愚者のカードを取り出す。

それは「愚者の世界」の発動を意味する。

 

さらに目の前にいる男は驚きのあまり瞬時に魔術の発動を行う素振りを一切見せなかった。

 

勝った!第3部完!

 

そう思ったのもつかの間次にグレンを襲ったのは、背後から感じる鋭い痛みと、胃の方から上がってくる何か。

 

それを止められずに口から赤い液体として溢れる。

 

「血?...なんで...」

 

グレンは口元の血を拭った時自分の胴体を貫く一つの刃が目に入る。

 

その剣はリィエルが作るような青い模様ではなく、割り込む時にシロウが作った刀だった。

 

「どういう......ことだよ......シロウ...」

「これを見れば簡単に分かるだろ。私は君の敵だよグレン」

 

何でだよとシロウを見つめながら、腹から刀を抜かれその場に意識を失って倒れ込む。

 

 

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昨日の夜。

 

シロウの投げた夫婦剣をエレノアは避けようとせず、そのまま剣は回転して進み、木を登っていた大トカゲの脳天を直撃する。

 

「それが貴方の答えですか?」

「あぁ私には世界を守る力がいる。だが、あの学院にいると鈍って仕方がない。だから君達の側につくよ」

「だけど、そんな簡単に仲間になれると思ってるのかな?」

 

まぁそれが当たり前の反応だろう。

 

少し前まで敵対関係だったのに、俺お前の仲間になると言われ、よしおけ!と言う馬鹿はいない。

 

そこでシロウは予め考えていた条件をだす。

 

「ならば信頼を得るためグレン=レーダスを殺そう」

「あらあらまぁ」

「さらに」

 

 

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「本当にグレンは死んだのかい?」

「心臓の音を確認してみろ」

 

青髪の青年シオンは恐る恐るグレンの胸に手を当てると、心臓が全く動いていないのを確認する。

 

まずそんな心臓の音を確認する前に、かなりの量の血が流れているので普通に考えて死は確定しているだろう。

 

「確認したな。ついでに死体の処理をしておこう」

 

シロウは躊躇いなくまたグレンに刀を刺すと、軽く振りかぶり海へと向け投げる。

 

投げられたグレンの腹部からは赤い液体が滴りながら宙にばらまかれ、大きな水柱を上げるとその身体は海底へと向かって落ちていく。

 

いやいい兵士を得た。

 

それがシオンの感想だった。

かつての仲間を殺す。それも躊躇いなく。もうこれだけで仲間にしてもいいと思うのだが、シロウはさらにもう一つ条件を自分で出していた。

 

 

『ルミア=ティンジェルの捕獲』

 

これが最後に自ら出した条件だ。

 

これはリィエルでは下手に怪我を負わせてしまう可能性もあるので、シロウならば怪我なく捕獲できると確信して、リィエルを連れ先にシオンはアジトへと帰る。

 

グレンを刺した刀を消すと今度は足に力をため、ルミア達がいる寝室へと向かう。

 


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