赤き正義の味方と禁忌教典   作:暁紅

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シロウの賑やかな日常

この話ではあまりシロウが活躍しません。

理由としては次回の話でやばいぐらい活躍します。

どうぞご期待ください。

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人気のない建物の影に隠れ各々座り込む。

 

グレンに至っては魔術を行使し過ぎたのか、少しばかり息が上がっている。

 

「グレン、セリカに連絡を頼む。何故か知らんがアリシアが危険だ」

「分かった...はぁ...はぁ......よし」

 

グレンは慣れた手つきでセリカに連絡する。

 

連絡はしたものの「私からは話せない」の一点張りで何も情報が入らない。

 

ゼーロスが裏切るとは考えづらい...となるとアリシアを人質に取られているのか?しかしどうやって...

 

シロウがブツブツ呟きながら考えていると、2人分の足音が近づいてくる。

 

それに3人が気づき音のした方を見ると、2人の内の一人の小柄な人物が、魔法陣を地面に拳ごと叩きつけその人物の身体ぐらいある剣を作り出す。

 

その剣を握った小柄な人が上空に飛び上がり、重力に任せて剣を振り下ろしながら落下してくる。

 

それをシロウは慣れた手つきでルミアのみを抱え躱す。グレンは突然の事に躱す動作に移れずオワタと思ったが、何故か後ろにいた人物から放たれた【ライトニング・ピアス】が、剣を振り下ろしている人物の後頭部に直撃する。

 

「は?」

 

グレンは素っ頓狂な声を出して一体何が起きているのか理解が出来てない。そこでシロウはこの現象を納得させる言葉を放つ。

 

「リィエル言っているだろ、背後からにも気をつけろと」

「ごめんなさい師匠。グレンに気を取られた」

「謝れるなら大丈夫だよ。さて、久しぶりだなアルベルト」

 

流石にここまで喋ればグレンも理解し、よくよく2人を見渡す。そうすればかつての同僚脳筋ロリ『リィエル=レイフォード』と残念イケメン『アルベルト=フレイザー』だと分かる。

 

「どうしてここにいんだよ」

「グレンを倒すため」

「違う。この状況を作り出した騎士団について調べていてな、その過程でこうなった訳だ」

 

グレンはリィエルとの再会を楽しく会話している中、シロウはアルベルトの隣に行き誰にも聞こえない声で会話する。

 

「ゼーロスが裏切ると思えない。となるとアリシアが人質に取られている可能性が高い、何か理由を知らないか」

「それはもう一つの仕事に関わっている可能性があるな」

「もう一つだと?」

「そう騎士団の監視以外にもう一つ仕事があった。貴様も会っている人物だ」

「エレノアか」

「気づいていたか」

「勘だがな」

 

アリシアの護衛をしている時にエレノアと数回接触して、その時に感じたイメージがシロウと同じ『闇』だった。

 

けれども中には『闇』を抱えながら、メイドをしている者もいるので一時も離れないように気をつけていた。

 

その間にエレノアは変な事はしてこなかったので、安心しきっていた。

 

「居場所は」

「不明だ」

「そうか...ならばオレも手伝おう」

 

ルミアの事はグレンに任せ一人街へと繰り出す。

 

 

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この街の1番高い塔に登りどこかにいないか探し始めてすでに数時間。日も微かに沈み始め本格的に暗くなり始める。

 

さすがのシロウも暗闇になってしまえば、確実に見つける事など出来ない。なので少し焦りながら探していると遂に見つける。

 

「アルベルト発見した」

『位置はどこだ』

「そこの角を3回右に曲がり、2つ曲がり角を無視して左の曲がり角に入れそこにいる」

『了解だ。行くぞリィエル』

 

通信の向こう側の2人は急いで向かっているので、こちらも準備を始める。

 

作り出すは黒い弓、それと普通の剣だ。

 

偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)を放ちたい所だが、場所が街中なので強力な一撃は放てないので、威力が低めの通常の剣を使用している。

 

数分もすればアルベルト達とエレノアが接触する。

 

剣を弓の弦に当てアルベルトの合図をひたすら待つ。

 

アルベルトが右手を上に上げ合図を出した。

 

シロウの狙いは頭。確実に仕留めるつもりで放つ。

 

 

 

 

が、それをエレノアは身体を一回転させて華麗に避ける。

 

「ち、避けられたか。なら二発目を」

 

すぐに二発目を装填するが、放つ時にはエレノアは完全に3人を撒いていた。

 

 

 

「はぁ...鈍った物だな私も」

 

シロウは自分の実力の低下に落胆していた。

 

過去の執行者時代であれば確実に仕留められていたのだから。

先程は気持ちが先行しすぎて、軽く殺気を出してしまいそれに気づかれたようだった。

 

とりあえず優勝と言う事で騒いでいるであろう店に向かっていると、その店の前にルミアが立っていた。

 

こちらにルミアが気づくと小走り気味に駆け、近づいてくる。

 

「シロウ!」

「どうしたルミア」

 

ルミアはシロウの胸に飛び込む。

 

随分と元気だなと思っているとルミアが勝手にその理由を喋り出す。

 

「よかった無事に戻ってきて」

「当たり前だろ。私がこの程度で負傷するわけが無い」

「なら良かった。それじゃあ中に入ろ?」

「あぁいいが...何にも参加してない私が行っても」

「ほらいいからいいから」

 

ルミアに引っ張られ店の中に入ると、そこでは酔っぱらい達が大暴れしていた。

 

グレンがシスティーナにちょっかいを出し、リンにちょっかい出し、男子生徒と戦闘をしたり......基本グレンが悪いのだが、面倒なとため息を吐く。

 

それを見てルミアが笑う。

 

「何かおかしな所があったか?」

「ううん別に。さシロウも飲もう」

「まぁ今日だけは祝の日だからな」

 

ルミアからぶどうジュースらしきものを受け取り、1口で一気に飲み干す。うん完全に酒の味がする。

 

怒る所なのだろうが祝の日とさっき自分で言ったばかりなので、この賑やかな光景を肴に酒を飲む。

 

それが妙に似合っていてルミアが笑い、シロウは何故だと先程と同じような事を繰り返す。

 

この時のシロウの心の内を知るものはまだ誰もいない。

 


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