「正義の味方になりたい」
子供ならば誰しもが思い、成長すれば無理だと理解して自然と諦める。
だが彼は諦めれずにずっとその夢を望続けた。
その結果6歳の時に「天の知恵研究会」に誘拐されとある実験体となる。
実験内容は錬金術の上位互換で無から有を生み出す魔術の使用。基本錬金術は何かしらの物を、例えば土を剣に変えるなどを行うが、この魔術は土を使わずにいきなり剣を作り出そうとしていた。
その実験は一応は成功してしまった。
彼は剣にまつわる物であれば大抵の物は作れる。だが見た目は大きく変化する。
地毛にしては明るいと思っていた赤髪が全て白髪に変化し、肌の色も白っぽい物から浅黒い肌に変化した。
彼はその後も一ヶ月にわたり剣の知識を大量に埋め込まれ、戦術の知識も植えられた。大を救うために小を切り捨てる等がその時に埋め込まれた知識の一つだ。
彼はその能力も相まり最強の魔術師殺しとなったが、そんな彼をも圧倒する魔術師セリカ=アルフォネアに倒され、帝国宮廷魔道師団特務分室に引き抜かれ最年少で執行者となる。
空は暮れ地に伏せるは大量の死体。
その周りに転がる大量の砕けた剣。
その全ては命令のままに無情に彼が殺した。殺して殺し尽くした。
付いたコードネームは《死神》そんな彼が逃した獲物は1人たりともいない。必ず死を届ける。それこそがコードネームの由来となっている。
そんな彼だが未だに「正義の味方になる」夢を諦めていない。
「はっ...夢を見るとはな。少し油断しすぎだな。これから任務があるというのに」
彼は今回自分に当てられた任務を思い出す。それは自分の娘が心配で心配で仕方がない、1人の女性からの任務だった。
「シロウお願いがあるのです。あの子をエルミアナを見守って欲しいのです」
「私がかね?ふむ.....了解した。その命令受けるとするよ」
「良かった。それでは行ってくれるのですね」
「あぁ構わないさ。それで私は何処に行けばいいのかね」
本当になんでこの時にこの命令を聞いてしまったのか、いくら自問自答しても答えを得れない。
今の彼の服装は白いワイシャツの上に羽織る学園の文様が入っている青い羽織物、それに黒いロングズボン。白い髪などが合間りとてつもなく似合っていない。とても学院生とは見えず、コスプレをしているいい大人程度だ。
こんな事になったのもあの時の自分が行けないと、揺れる馬車の中頭を壁にぶつける。
「はぁ...こんな事をしていても始まらないか。とりあえずこの情報に目を通すか」
学生カバンから取り出したのは、数枚に渡りビッシリと文字が書かれているA5サイズの紙だ。
この紙はアリシアが書いた物らしく、どれだけ過保護なのか分かる代物だ。
「なるほどルミアか...流石に名前は変えたか」
一通り見て満足すると、その紙に向け「燃えろ」と呟き、火をつけ灰になるまで見届けた。
それをしたタイミングでちょうど、アルザーノ帝国魔術学院に到着し、待ち構えていた女性を見つけため息を吐く。
待ち構えていた女性は見た目は20歳程だが、実際はは400年以上生きている「
「久しぶりだなシロウ。元気にしてたか?」
「あぁ少し前まで元気があったが、君にあって無くなっ」
シロウの横を雷が走る。
数々の死線を超えてきたシロウですら、見えず動くことすら出来なかった。
「ほほぅ面白い事を言うな。もう1度聞こう...元気か?」
「あぁ元気だよ」
このまま後ろを向いてダッシュで帰りたいが、そうするとセリカが殺しにくるのでそれだけはしない。
まだ学院には少しあるので、軽く道を歩いているとセリカからクスクスと笑い声が聞こえる。
「ふふふ。にしても似合ってないな」
「それだけは言わないでくれ、これでも気にしているのでな」
「そうかそうか、ならいいさ。さてシロウお前の担任だがグレンだ」
「グレン...だと......アイツが働くというのか......明日は矢がいや、【イクスティンクション・レイ】が降るな」
グレンと言う男とはシロウと同じ執行者で、コードネーム《愚者》彼もシロウと同じ魔術師殺しの1人だ。
そんな彼の性質は働きたくない。簡単に言えばニート・フリーターの類だ。そんな彼が働く......意外すぎて頭が痛くなる。
その後もセリカとたわいもない世間話をしていると、あっという間に学院長室の前につく。
「失礼する」
「あぁいいとも」
それでいいのか?とツッコミたいがその声は出さない。
中に入るとそこはイメージ通りの大量の本などが、ショーケースの中に入っていて、その中央に高めの黒いイスに1人の男学院長が座っている。
「彼がそうかな?」
「あぁそうだよ。こいつがシロウ=エミヤ。ルミアの護衛できた者だ」
「そうかいそうかい。ならよろしく頼むよ」
学院長の出した手を握り握手をする。
そのタイミングで外がドタバタと騒がしくなり、ドアが勢いよく開けられる。
ドアから現れたのは髪から水が滴り、服も身体にぴったりとくっついていて、お風呂からすぐ出たような状態のグレンだ。
「クソ!テメェ!セリカ!わざと時計遅くしたろ」
「当たり前だろ。その方が面白いと思ってな」
「この......お?随分と久しぶりだな。元気そうだなシロウ」
「これが元気?は、馬鹿も休み休み言え」
大変仲がいいんだなと学院長は満面の笑を浮かべる。
下手に邪魔されても困るので、グレンには今回の任務の事を話した。
「なぁにぃぃ!めんどくさ!何それめんどくさ!厄介事に巻き込むなよな」
「分かっているさ。君には君の仕事を全うしてもらいたいからね」
これで邪魔も入らないと安心した瞬間
「にしてもぷぷ似合わなさすぎだろ。面白すぎて腹筋割れそうだぜ」
「そうか...
「ちょっ!まってよ!少し馬鹿にしただけだろ!」
そんなグレンの言い訳は聞かず、夫婦剣を握り構える。
「グレン君は私を怒らせた」
「いやぁ!!死ぬぅぅ!!!!」
数十分にも渡り追いかけっこが続いた。