蒼天英光譚   作:アマザケ01

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期間が空きすぎてすみません。


光の戦士 シルヴィア

「くるぞ、構えろ。俺が奴を引きつけ」

 

一言、白髪の青年が一言の言葉を紡ぎ出す前に、自分の背後から声が響いた。振り返る間も無く、ただただ呆然としていた時、目の前の妖異に向かって巨大な石が降り注ぎ、その対象を一瞬として沈黙させた。

 

「なっ……今のは……」

 

青年とリリラの二人は驚きの顔を浮かばせる。そしてそのまま後ろへと視線を向ける。呪文を放った一人の人物、シルビアちゃんへと。

 

「……今のはストンガでもストンジャでもないよ。ただのストーンだよ」

 

杖を元の位置に戻しつつ、にこりと微笑みを浮かばせなから言葉を繋げる。

 

「さ、これでひとまずはおわったんでしょ? さぁかえろ? しんぱいかけるといけないからさ」

 

そのまま彼女、シルビアちゃんはパパシャンのいる方向へと向かって歩き出した。その姿はただ何も無く、淡々と作業をこなしたかのように。緊張も焦りも、躙り寄るものは無いように見えた。

 

「……驚いたな。一体彼女は何者なんだ? あんな巨大な魔力そうそう見れるものじゃないが……」

 

「おいどんも詳しくは……ただ、かなりの実力者でゴワスね。なんでおいどんに協力してくれてるのかが分からないんでゴワスけど……」

 

「……まぁ、何はともあれ恩に着よう。わら……じゃない、私はあの娘の言う通り早く帰ることしよう。ほれ、早う案内せい」

 

「……そうですね。その通りにまずは致しましょう。さ、君も早く行こうか」

 

そう自分に言葉を告げれば、二人もシルヴィアに続くかのように歩き出す。その二人を追うように、自分もその先へと足を向ける。ふと、その際に目線の隅へと何か小さく光るものが目に映った。

 

「……これは……?」

 

ふと気になり、その対象へと近づく。それは小さな青色のクリスタルであった。

 

「ふむ、宝石か何かでゴワスかね……?」

 

拾い上げ、様々な角度から見てみるも、特にピンと来ることはない。ただ、綺麗に透き通ったクリスタルであるということしかわからなかった。

 

「うーん……まぁ、綺麗なものは拾っておいて多分損はないでゴワスね。売れるかもしれないでゴワスし」

 

そう言いながら、その結晶、クリスタルを自身のポケットへと仕舞い込み、三人の後を追おうと歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………彼女……ではない……?」

 

ふと、何処からか声が響いてきた。

 

「誰かいるんでゴワスか?」

 

キョロキョロと辺りを見渡すも、周りには誰もいない。気のせいかと思い、再び歩き出そうとする。すると

 

 

「彼女ではない……でも、彼女は彼女であり、彼女は持っている……正解と不正解……の錯誤……これはいったい……」

 

歩き出せば、再び声が辺りに響く。否、辺りに響くというよりも、これは

 

「おいどんの、頭の中……?」

 

「……本来であるのならば、貴方が正しい……だけれど、彼女のような存在がいるのであれば……今一度……」

 

その声が何か思案するかのように一人、言葉を語ればそれ以降話すことは無かった。

 

「……? 気のせい……じゃあないでゴワスよね? なんなんでゴワスかね……」

 

ふと、疑問に思いながら考え込む。

 

「ごれくーん、はやくはやく、いそいでー!」

 

ふと、考え込んでいる思考を遮るかのように、正面からシルビアちゃんの声が響いた。ふと視線を前に向ければ、少し遠くの場所でこちらを見つめながらぴょんぴょんと跳ねている彼女の姿が目に入る。

 

「……まぁ、考えてても仕方ないでゴワスね。今行くでゴワスよー」

 

小さく苦笑いを浮かばせながら、自分自身も漸くやや小走りで彼女の元へと走り出す。

 

「もー、おそいよ?」

 

「ごめんでゴワス。ちょっと色々とあったんでゴワス……いや、正確には何も無かったんでゴワスけども」

 

「??? へんなごれくん」

 

そう言葉を聞けば、少しきょとんとしながらもくすくすと彼女は笑みを零す。その仕草に釣られるかのように、自分も笑みをこぼすのであった。


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