蒼天英光譚   作:アマザケ01

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今回は少しオリジナル要素……もとい、とあるネタを含みます。


砂漠の大都市 ウルダハ

門をくぐれば、ガヤガヤとした喧騒の声や商売人の声が辺り一帯へと響き渡る。その声はもちろん賑わいを表しており、道行く人の笑顔が垣間見えることが多々あった。

 

「ここがウルダハでゴワスかぁ……」

 

「大きな街だよねぇ。初めてくると、ちょっと迷いやすいかもしれないよ」

 

先ほど助けてもらったシルビアちゃんと都市に足を踏み入れつつ、ぼそりと呟きながらもきょろきょろと辺りを見渡す。自分でもわかるきっと今、傍目から見ても自分自身の顔は興奮と期待、そして楽しみに満ち溢れたような顔をしているのであろう。

 

と、そこに

 

「ようこそ、黄金の都市ウルダハへ。見たところ、その形は冒険者志望ってところか?」

 

そう呟きつつ、青いサングラスのようなメガネをかけた男性が歩み寄ってきた。

 

「よしよし、ここはこの俺が案内してやろう。俺の名はワイモ」

 

「この人の話、長いって噂だからさっさといこ?」

 

自己紹介をしていたその名の知れぬ男性に向け、彼女はそう言葉をかけながらもスタスタと小走りで行ってしまった。

 

「あ、待って欲しいでゴワスよ、シルビアちゃん」

 

自分はその後ろ姿を追いかけるように、やや早歩きのようなペースで歩みを進めていく。

 

「……………………あれ? 俺の役目は?」

 

少し距離の離れた背後から、小さくぼそりと呟くような悲しげな声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルビアちゃんが連れてきてくれたのは、その都市にある小さな酒場のような場所であった。テーブルなどの設置数は少ないものの、それなりに賑わっている様子であり、常に満席となっていた。そして中には冒険者とも見られるような姿の男性や女性が目に付いた。茶髪のポニーテールに加え、何やら厳つそうなお面をかぶったヒューマンのような姿の人物(顔が見れないので正確にはわからない)という少し異彩を放つ人もいる、個性豊かな酒場となっていた。

 

「さ、こっちこっち。ここにいるこの人に話を聞くといいよ」

 

シルビアちゃんがそう言いながらも手招きして自分を呼ぶ。その近くにはシルビアちゃんと同じような背丈をした女性がおり、赤みがかった茶髪をおだんご結びにした髪型をしていた。

 

「えっと……すみませんでゴワス。冒険者志望なんでゴワスが……」

 

「あぁ、冒険者志望の方ね。私はモモディ。ここで新参冒険者さん達の面倒を見たりしているのよ。とまぁ、堅苦しいような話は私もそんなに好きじゃないし、名前を聞かせてもらえるかしら?」

 

モモディと名乗った少女がガサゴソと自身の座っていた椅子とテーブルから羊皮紙とペンを取り出す。そこには「冒険者記録証」と書かれた、謂わば登録証のような紙であった。

 

「おいどんはゴレイヌ=レッドでゴワス。一応見て分かる通り、種族としてはルガディンと呼ばれる種族でゴワスね」

 

「……貴方の口調、どこ出身のルガディンなのかしら。聞いたことないけど……まぁいいわ。ゴレイヌ=レッド、と……はい、これで登録完了よ。じゃあここでの大まかなルールというか、最低限知っておくことを教えておくわね」

 

モモディはうんうんと頷きつつ、現在のこの街の状況や、エーテライトと呼ばれる空間転移石のこと、後は市場などについて教えてくれた。

 

「とまぁこんなところだけど……何か、質問ある?」

 

「えっと、おいどん、なんの職業というか、ジョブ……っていうんでゴワしたっけ? それがわからないんでゴワスけど……」

 

「あらそうなの? じゃあ、まずはこれね。えっと……」

 

モモディはそう言いながらごそごそと再び机の中を漁る。取り出したのは容器に入れられた水とグラス、そして一枚の葉っぱであった。

 

「これはとある地方から伝わる、自分のクラスの傾向を調べる方法なんだけど……まぁ、実際にやってみたらわかるわね」

 

そうモモディが呟けば、たぷんたぷん、とグラスの中へと水を注ぎ、そっとその上に葉を一枚乗せる。

 

「えっと、ゴレイヌさんの付き添い? の貴女。見たところ貴女は冒険者として結構な腕前みたいだし、これ、やって見てくれる?」

 

そう言いながらモモディはちらりとシルビアちゃんの方へと目線を向けた。

 

「えー、しょうがないなぁ。いいよ、やってあげます。あ、ゴレくんそこどいて? しるびあ入れない」

 

仕方ないなぁ、といったように肩を竦ませながら、モモディと自分の中間に置かれたグラスへと歩み寄る。確かに自分の背丈だと間に入ることは難しいため、数歩後ろに下がってはシルビアちゃんの様子を眺めることにした。

 

「やり方はわかるわね?」

 

「動き理解してる」

 

こくん、と小さく頷けばそっとシルビアちゃんはそのグラスへと手をかざすように両手を向ける。そして、目を閉じて何やら力を込めるようにすれば

 

「……やぁっ!」

 

と声を上げた。その瞬間、その中心に浮かんでいた葉っぱが見る見ると大きくなった。否、大きくなったという表現は違う。大きくなったというよりも、一枚の葉っぱから木が生えるというように、逆説的に成長が進んでいた。

 

「ちょっ、ちょっと待った! ストップストップ!」

 

モモディが慌ててシルビアちゃんに声をかければ、シルビアはそっと手を離しつつもきょとんと小首を傾げる。

 

「どうしたの? おねえさん」

 

「どうしたの? じゃないわよ。まったく、どんな力の込め方したのよ貴女は……見たところ回復魔法に適性があるとはいえ、葉っぱから木を生えさせかけるだなんて……普通なら、見るからに水々しく葉っぱが戻ったりするはずなんだけど……よっぽど何か、強い想いがあって回復魔法を習得したとかなのかしら……まぁいいわ。さ、次は貴方の番よ」

 

モモディは一人でにぶつぶつと呟き始めては、軽く顔を横に振り、グラスに浮かんだ葉っぱをそっと取り出しては別の葉っぱを用意した。

 

「方法は簡単。今みたいに手を添えてもらって、後はちょっと力を込める風にして貰えばいいの。そうすれば簡単に自分にあった職業というのがわかるわね」

 

「ふむ……まぁ、やってみるでゴワスよ」

 

そう言えば、シルビアちゃんがすとん、とその場から離れるように椅子から飛び降りた。そしてその後に続くように自分が座り、目を閉じては念じるように指先へと意識を傾ける。力の流動を心臓から浮き上がらせ、肩口、腕、肘、手のひら、指先に、浸透させるかのように意識を向ける。

 

「……スリザリンは嫌、スリザリンは嫌……」

 

途中、シルビアちゃんから何やら変な言葉が聞こえてきた気がしたが、気にせずに集中することにした。

 

「……はっ……!」

 

そう言いながらも力を放つように声を発する。そして恐る恐る目を開けてみれば、そのグラスに浮かんでいた葉っぱの先端が少しだけ黒く変色し、カサカサになってしまっていた。

 

「ヨウ素を無くさせ、内部から分解させるように破壊させる……うん、これは黒魔道士の素質あり、ね。となると最初は呪術士からかしら」

 

うんうん、と満足げに頷けば、そっと左を指差した。

 

「この酒場を出て、あっちの方に呪術士について教えてくれる人たちがいるから、そこに向かって? 後、さっき教えたように、途中にあるエーテライトに触れておくと移動がこれから便利になるから、オススメよ」

 

そのままにこり、と微笑みながらもモモディはグラスと葉っぱを仕舞い込む。

 

「わざわざお世話になったでゴワスね。じゃあ行くでゴワスか、シルビアちゃん」

 

「ん、だねぇ。じゃあねーおねえさん」

 

そう言いながらもゆっくりと立ち上がり、お礼を告げるように言葉を投げかける。その後、自分とシルビアちゃんがモモディへと軽く手を振り、その酒場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あの魔力の反応……もしかすると……ふむ、面白いことになりそうだ……」

 

先ほどの様子を見ていたかのようなその声は、そう呟いただけで忽然とその気配を消し去った。




FF14式クラス判断

剣術士=葉に一太刀の切れ込みが入る
格闘士=グラスの持ち手にヒビが入る
斧術士=グラスの強度や葉が固くなる
槍術士=グラスに突かれたかのように穴が広がる
弓術士=葉っぱに貫通したような穴が開く
双剣士=葉に二本の太刀筋が入る
幻術士=葉に潤いが見え始める
呪術士=葉の一部が黒くなり、変色する
巴術士=グラスの中に各々様々な物体が現れる

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