ダンジョンに手柄を求めるのは間違っていないはず   作:nasigorenn

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久々の更新で少し感性がおかしくなっているような気が………。
もっとこれらしいと思ったらアドバイスとかよろしくお願いします。
あぁ、リアルが急がし過ぎる………。


第9話 ベルの怪物祭(中)

 ベルが殺す気満々でモンスター達に向かって突っ込む数時間前……とある場所にてある会合があった。

それは祭りの喧噪につつまれたメインストリートにある喫茶店、その一角のテラスにて行われた。本来なら賑わっているはずなのに、その場所だけ周りから隔絶されたかのように静かな空気を醸し出している。

そこにいるのは二人の神。

一人は天界にて絶世の美を誇る女神『フレイヤ』。

そしてもう一人は男装がよく似合う細目をしたイタズラが大好きな神『ロキ』。

このオラリオにとトップの実力を誇るファミリアの主神達だ。その二人がこうして向き合っているというのは、それだけでただならぬ雰囲気が溢れ出す。

互いに護衛として控えているのは自分のファミリアの眷属。

フレイヤの側に控えているのは猛々しくも雄々しい存在感を出しつつも寡黙な男。『猛者(おうじゃ)』の二つ名を持つこのオラリオにて唯一のレベル7の最強の存在『オッタル』。

対するロキの側にいるのは美しい金髪をした綺麗な少女。ロキ・ファミリアの大幹部にして『剣姫』の二つ名を持つレベル5のアイズ・ヴァレンシュタイン。

護衛にしては明らかに過剰戦力とも取れる面々だが、当人達は戦意などないとしているように静かにしている。

当然そんな面々が集まれば沈黙するだけでも尋常じゃない気まずさが流れ、それにより注文を取りに来た店員は戸惑いを隠せずにいた。

そんな店員に注文をしつつ、ロキは早速フレイヤに話しかける。

 

「来てそうそう何やけど……一体何やらかす気や?」

 

最初から本題を問いかけるロキ。その顔はいつものおふざけの時とは違い、目がしっかりと見開かれている。その顔からアイズはロキが真面目に話をしていることが分かった。

そんなロキに対し、フレイヤは軽く微笑む。

 

「一体なんの事かしら?」

「とぼけるな、あほぉ。急に祭に顔出すわ情報収集に余念がないわ………今度は何企んどる?」

 

前回の神の宴にて、ここ最近来ていなかったフレイヤが来たこと。

そして何かについて色々と聞き回っていたらしいということがロキは周りの男神達の様子から察していた。

それらは普通に考えれば何らおかしくはない。だが、このフレイヤに於いてはおかしいのだ。何がおかしいかははっきりとはしない。だが、滅多にそんなことをしない彼女がそういうことをするというのは……何かしら碌でもないことの予兆としか思えない。

だからこそ、ロキはフレイヤを警戒するのだ。

そんなロキにフレイヤは苦笑しながら心外だと言う。それだけのことでもこの女神は美しい。

お互いに顔を向き合わせたままほんの僅かな沈黙。

しかし、答えは直ぐに出た。

 

「男……か」

 

ロキは予想通りの答えだと微笑むフレイヤを見ながら確信した。

この女神は神々に於いてかなりの問題児だ。その美しさに幾人もの男神が誑し込まれたのもあるが、そこはまぁ問題ない。それより問題なのは、この女神は気に入った子(男)を自分の物にしようとすることだ。それが他のファミリアの子であっても権力や力、魅惑などを使って自分のファミリアに入れてしまう。

だからファミリアを持つ神々の中でフレイヤの評判はあまりよくないのだ。

当たり前だ。誰だって自分の子を強引に攫われて気分が良いわけないのだから。

 

「大方どこぞのファミリアの子でも気に入ったってところやろ? 本当に毎回毎回飽きもせずに……男癖の悪さは変わらないのぉ」

 

ロキの言葉にフレイヤは魅力的な笑みで答える。

そんなフレイヤにロキは呆れながらも問いかける。

 

「んで、どんな奴や、今回お前さんに見初められた哀れな子は」

 

その言葉に心外だわと答えつつもフレイヤは思い浮かべながら口にする。

 

「そうね………とても凄い魂をした子……表面はとても無垢で真っ白なのに、その奥底にはギラギラとした凄まじい輝きを放ってる。それも無色の輝きを……それは神ですら持っていない、初めて見る魂の輝きをした子よ」

 

気になる相手を語る度に胸のときめきを感じて頬を染めるフレイヤ。

そんなフレイヤの表情を見てロキはぐえっと思った。そこまで想われている辺り、その子とやらは相当酷い目に遭うことが約束されているようなものだ。その子が可哀想だとは思いつつも、それが自分の所の子でないことにホッとする。まぁ、その時は遊び抜きの戦争になるだけだが。

 

「見つけたのは本当に偶然。たまたま視界に入っただけ………」

 

外の光景をちらりと見てそこでフレイヤの言葉が止まる。

そして彼女は身に纏っていた黒いローブを改めて掛け直しながら席から立ち上がった。

彼女の目は先程までの穏やかなものとは少し違い、気になる物を見た好奇心旺盛な猫のような目になっている。どうやら外で何かを見つけたようだ。

 

「ごめんなさい。 急用ができたわ」

「はぁっ!? ちょ、いきなり」

「また会いましょう」

 

そう言いフレイヤはオッタルを連れて店から出て行った。

そんなフレイヤの後ろ姿を見ながらロキは文句を愚痴る。

 

「何や、いきなり」

 

そう愚痴りつつも仕方ないと思い直し、ロキはアイズと祭を楽しむために店を出た。

 

 

 そんな会合の後、フレイヤはある場所へと来た。

そこは薄暗い舞台裏。本来は世話居なく人達が出入りしている所だが、それは彼女の魅了によって皆魅入られ沈黙している。

そこに来たのはある事を思いついたから。彼女からしたらちょとしたイタズラである。

フレイヤはその舞台裏に置かれている鉄格子で固められた巨大な籠の鍵を開けながらその中身に話しかける。

 

「あの子の魂の輝きをもっと見せて」

 

その命に従い、その中身………モンスター達は大暴れをし始めた。

 

「さぁ、貴方が大好きなものが来るわよ。だからもっと魅せて頂戴」

 

そう言いフレイヤは闇へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 そんな裏で何かしらの策謀があったのだが、この男にそんな物は関係ない。

殺気全開のギラギラした輝きに満ちた目で目先にいる獲物に向かって彼は突進する。

 

「「「「「ガァアアアアアアアアアアアッ!!」」」」」

 

咆吼を上げながらベル目掛けて襲いかかるモンスター達。

その先頭にいる剣のような角を持つ鹿型のモンスター『ソードスタッグ』がベルを串刺しにしようとするが、それを見たベルはニヤリと笑う。

 

「まずはひとぉっつ!!」

 

構えた大太刀からの上段による一撃。

その一撃はソードスタッグの角とかち合い火花を散らす。

一瞬だけ均衡……その勝敗はベルの笑みによってはっきりする。

ぶつかり合った刃と角は一瞬だけ止まるが、その後刃が角を砕きながら前へと進む。そしてその先にあるソードスタッグの顔面を斜めに斬り捨てた。

頭蓋から脳まで綺麗に斬り飛ばされた頭部は地面に落ちるとグチャリと嫌悪感を催す音を立てた。

そんな事など気にも止めずに、ベルは死体が灰となって霧散する先にいる真っ白い毛をした大きな猿に向かって嬉々とした表情で叫ぶ。

 

「次ィ、大猿ッ!!」

 

振り下ろした大太刀を手元に引きつつベルは駆ける。

攻撃をした後の隙だと思ったのか、大猿『シルバーバック』はベルに拳を握り殴りかかった。

拳は素早くベルはまだ大太刀を手元に戻してはいない。このまま行けばベルの体は防御すら取れずに叩き潰される。

普通なら恐怖に身を竦めるであろう場面……しかし、薩摩兵子にとっては寧ろ好都合。

 

「甘いッ!! ラァッ!」

 

ベルは止まらず更に加速しシルバーバックの懐まで飛び込み、そのまま飛び膝をシルバーバックの顔面に叩き込む。

 

「ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?!?」

 

顔面に思いっきりめり込む膝。それが僅かに離れ、そこから出たのは鼻が潰れ血を溢れさせるシルバーバックの顔。あまりの激痛に声にならない叫びが上がる。

激痛による僅かな仰け反り……それを逃す間抜けなどいない。

 

「はは、ふたぁっつ!!」

 

そのまま大太刀は振るわれ、真っ赤な鮮血が飛び散ると共に身体から落ちるシルバーバックの首。

落ちる首の毛を掴み、ベルはそれを灰になって消えるまで嬉々とした顔で片手に持ちながら更に戦う。

 

「豚巨人ッ!!」

 

シルバーバックの首を振り回しつつベルは更にこちらに向かってくるオークに狙いを定めた。サイズはミノタウロスと同じ大型だが、ミノタウロスに比べると速くない。

そんな相手にベルが不覚を取るわけが無く…………。

 

「遅い、鈍間ぁッ!!」

 

一気に間合いを詰めて左からの横一閃。

オークは攻撃する間もなく上半身と下半身を分離させられた。

 

「みぃっつぅぅぅっっぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっぅ!!」

 

ベルの歓喜の雄叫びが轟く中、更にモンスターはベルへと向かって襲いかかる。

 その様子を端から見たら凄いの一言に尽きるだろう。基本、この街の住人は冒険者と深く関わりを持つが、実際に戦う冒険者を見る機会はそう多くない。

 だからこうして目の前で襲いかかるモンスターを圧倒する光景は彼等にとってまさに英雄のように映った。

 とはいえ危険なことに変わりはなく、皆逃げることを忘れない………見入ってしまっている者を除けば。

 その見入ってしまっている者は周りの逃げる人達に運悪くぶつかり………モンスターが走るであろう場所へと飛び出してしまった。

そしてそこへと走ってくるのは大きな猪型のモンスター『バトルボア』。

 

「ひっ!?!?」

 

彼女は目の前から迫り来る死の恐怖に声が飛び出しかける。

悲鳴を上げる暇すらない。声が、呼吸が満足に出来ない。分かるのは目の前に迫るそれが自分を殺すと言うこと。冒険者ですらない自分は絶対に死ぬと本能で分かる。

だから彼女はただ目を見開くことしか出来なかった。

そんな彼女の目は………それを捉えた。

自分の視界の後ろから飛び出してきたであろう『白色』を。

 

「はッはー!! よっつぅぅぅっぅぅぅぅぅぅっぅぅぅぅっぅぅッ!!!!」

 

彼女よりも前に駆け抜けたベルは、バトルボアの突進を真っ向から迎撃する。

真上上段からの振り下ろし………唐竹割り。

刃はバトルボアの頭に叩き込まれ、そのまま突進の勢いのままに大太刀を振るうベル。

その結果は見事な二枚おろし。

まさに真っ二つにされたバトルボアは彼女にぶつかる前にその身を灰へと変えて消滅する。

そんな彼女にベルは振り返る。

 

「やっと見つけましたよ、シルさん」

 

目こそギラギラと輝いているが、そこに居るのは少しだけ『紳士』なベルだった。

ベルの怖いけど頼もしい笑みを見て、彼女………シルは安心して泣きそうになってしまう。

 

「べ、ベルさん…………」

 

そんなシルにベルは渡された財布を渡しながら彼女の手をぎゅっと握る。

 

「あ…………」

 

そんな声がシルの口から漏れた。彼女はベルの手の暖かみをしっかりと感じ、心が温かくなるのを感じる。

 

「今度は忘れないでくださいね」

 

ベルはシルに財布をなくさないようにという思いを込めながら渡すと、彼女に背を向けた。

 

「まだ危ないから避難してください。僕は…………まだ首を取りたいから」

 

そう言ってベルは周りの反応からモンスターが暴れているであろう方向へと向かって駆けだした。

その後ろ姿を見つめながらシルは頬を紅くしながらベルの後ろ姿を見つめていた。

 

「ベルさん…………格好いい………」

 

明らかに恋する乙女の顔をしているシル。彼女にはベルが窮地を助けてくれた王子様に見えるのだろう。事実、助けられたのだから。

そんなシルを見ながら彼女は心底疲れた様子で声を出す。

 

「僕は君をミアハの所で診てもらうべきなのか、それとも僕が診てもらうべきか……心底悩むよ、本当」

 

そう彼女…ヘスティアは真面目に真剣に悩んだ。

 


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