2016年、日本のどこか。
そこには古からの自然が残る場所が存在した。
場所の名は「幻想郷」。
博麗大結界によって現世から隔絶された、「忘れ去られた者達」の最後の楽園。
そこでは人と妖怪が、時に争い、時に競い、時に助け合って暮らしていた。
さて、現在割りと平和な幻想郷において、ある噂が存在した。
曰く、「妖怪の山で光り輝く黄金の杯を見た。」
曰く、「それを取りに行った者達が、人妖問わずに行ったっきり戻ってこない。」
曰く、「戻ってこない者達を探しに行った者達も帰って来なかった。」
曰く、「その関係者達も忽然と消えてしまった。」
曰く、曰く、.....
噂は徐々に加速していき、「噂」は「事件」へと発展していった。
これを恐れた人間達は、この事件を「異変」として、博麗の巫女に助けを求めた。
「はぁ~、めんどくさい。何が黄金の杯よ、そんなものあるわけないでしょ。むしろあったら私が欲しいくらいよ...。」
とぶつくさ言いながら空を飛ぶ巫女服の少女。
彼女は
結界の維持と異変の解決を専門とする当代の博麗の巫女である。
「どうせ行方不明者もまたアイツのせいで神隠しにあったんでしょ。さっさと黄金の杯なんて無いことを証明したあとに〆ておかないと...。」
と彼女がぼやいていると、
「霊夢さーん!」と烏のような黒い羽をはやした少女がこちらに飛んで来ながら呼んできた。
「毎度お馴染み!文々丸新聞の射命丸文です!霊夢さんに情報があります!」
彼女は
妖怪の山に住んでいる烏天狗の新聞記者で、『
「文、私の邪魔をしないで。余計なことしたらまた退治するわよ。」
「いえいえ~、今回は本当に役に立つ情報を持ってきたので、お願いですから御払い棒をこちらに向けて封魔針を構えないでください。」
「ふんっ。」
霊夢は戦闘体制を解くと
「で、どんな情報?あの出鱈目新聞みたいに嘘の情報だったら目に封魔針をねじ込むわよ。」
と言った。
「は~、心外です。私の新聞には何一つ嘘は書かれていません。ただ真実をそのまま伝えられたらつまらないじゃないですか。だから私は読者が退屈しないようにアレンジを加えていr「御託はいいから(ギロり)」はい、わかりましたので御払い棒で頬をぐりぐりしないでくださいとても痛いです。「ふんっ。」えーと、ではでは報告させていただきます。」
射命丸は表情を切り替えると
「霊夢さんの探している黄金の杯が、妖怪の山の中腹で見つかりました。念のために、離れたところから白狼天狗達が見張っています。私達は、この異変の元凶であろう黄金の杯の排除を望んでいます。どうか力を貸してください、霊夢さん。」
と言った。
「...わかったわ。本来は博麗の巫女は妖怪からの要望は聞かないのだけど、まぁ、今回はあんたらは関わっていないし、被害者側ってことで見逃してあげるわ。早速だけど案内して。」
「はい、こっちです。」
文に案内された場所はそこだけ木が無く、その中心に黄金の杯がぽつんと置いてあった。
「確かに黄金の杯ね。今のところは?」
「はい。特に何も起こっていませんし、誰も触れていません。」
「そう。」
そう言ってよく見るために霊夢が杯を持ち上げた瞬間、すさまじい風と光が杯を中心に発生した。
霊夢が手を離す隙もなく光は膨れ上がり、周囲を呑み込んだ。
その後、すぐに風と光は止み、何もなかったかのように静かになった。
「........霊夢さん?」
射命丸達の視界が戻った時には、ただそこに黄金に輝く杯が木漏れ日の光を受けて更に輝いて転がっているだけであった。
..........君たちの力が必要だ。力を貸してほしい。
暗闇の中、霊夢はそんな声を聞いた気がした。
ふと意識が回復したとき、霊夢は自分がうつ伏せに倒れていることに気がついた。
「....いったい何が.....?」
目を開けて起きあがった彼女の視界に入ってきたのは、
「「えっ。」」 「どういうことなの!?」 「フォーウ!」
二人の少女とヒステリックに叫ぶ女性、白い謎の生き物、そして
「なによ、これ.....。」
火の海に沈む、見たこともない建物の群であった...。
特異点F 炎上汚染都市 冬木
開幕
to be continued...