東方人理録   作:河影 御月

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光のキセキ

side霊夢

 

「それはそうと面白いサーヴァントがいるようだな。」

 

 

緊張感のないなか、セイバーは私達に目を向ける。

 

そしてセイバーの視線がマシュの盾をとらえた瞬間、緩んだ空気はセイバーから発せられた魔力の胎動によって消え失せる。

 

「面白い、その宝具は実に興味深い。...そしてもう一人、異界の巫女よ。」

 

セイバーは視線を私に移すと、少し考え込んでいる顔を見せる。

 

 

「抑止力....いや、違うな。また別のモノによる召喚か。.....まあいい、名も知れぬ娘たちよ、その盾の守りと幻想の力が真実かどうか、この剣で確かめてやろう。」

 

そう言うとセイバーは剣を構え、全身から魔力を放出する。

 

 

「...てめぇ、しゃべれたのかよ。前会った時にはだんまりを決め込んでいたくせによ。」

 

「ああ、何を語っても()()()()()()。故に案山子(かかし)に徹していたのだ。」

 

 

 

「.......セイバー、今ならまだ間に合う。君が聖杯を守らずとも、彼女たちならば解決することが出来るはずだ。」

 

「アーチャー、確かに()()は解決するだろう。だが、.....いや、今は言うべきでないな。」

 

 

 

 

一旦言葉を区切ったセイバーは剣を上段に構え、剣に魔力を集中させる。

 

「話は終わりだ、貴様らはここで果てるがいい。━━卑王鉄槌、極光は反転する。」

 

剣が黒い光に覆われる。

 

「っ!マシュ!宝具を発動して!」

 

それを見たぐだ子が急いでマシュに指示をとばす。

 

「光を飲め、約束された勝利の剣(エクスカリバーモルガ)アアアァァァン‼」

 

「はい、先輩!仮想宝具、展開します!」

 

 

 

 

 

マシュの言葉により発動した盾を覆う光の紋様は、セイバーによって放たれた漆黒の濁流を正面から防いでゆく。

 

 

 

 

 

「っ!防ぎきりました‼」

 

光が途切れた瞬間、マシュの後ろにいた私とキャスターはセイバーに向かって走りだし、アーチャーは後方から剣を射る。

 

 

「くらいなさい!」

 

「アンサズ!」

 

 

私は封魔針を、キャスターは火の玉をとばすが、

 

「黙れ。」

 

全てセイバーの剣によって切り伏せられる。

 

その後アーチャーによる援護射撃も、避けられるか弾かれることでいっこうにダメージを与えられず、時間だけが過ぎてゆく。

 

 

 

「この程度か、興醒めだな。.....ならば、こちらからゆくぞ‼」

 

 

 

 

そう言うとセイバーは全身から魔力を放出し、すさまじい速度で私に向かって斬りかかる。

 

咄嗟にお払い棒を構えて防ぐが、あまりの力で簡単に吹き飛ばされる。

 

 

 

 

「まずは一人。」

 

 

 

そして追撃として振られた剣撃は、私の首を楽に撥ね飛ばす、

 

 

 

 

「あぁあああぁあぁ!!!」

 

 

 

 

ことはなく、セイバーの死角から走ってきたマシュの盾によって防がれる。

 

「っ!チッ!」

 

剣撃を防がれた隙を逃さず、アーチャーの剣の矢とキャスターの炎がセイバーに襲い掛かる。

 

 

「無駄だ!」

 

 

 

しかし、キャスターの炎はセイバーに触れた瞬間に霧散し、アーチャーの剣の矢はセイバーの魔力の放出によってによって軌道をそらされた後、セイバーの剣で両断されて消滅する。

 

「くそっ!やっぱりセイバーの対魔力のランクが高過ぎる!これだからキャスターは面倒なんだ!」

 

「相変わらずの強さだなセイバー!反転してもその実力は劣らない、ということか!」

 

 

 

「当たり前だ。そして、貴様は劣化したなアーチャー。」

 

 

 

そう言って魔力の放出によって高速移動したセイバーは、弓を構えているアーチャーの体を切り裂き、吹き飛ばす。

 

 

「本来の貴様ならば少しは手こずったのだが....今は見る影もないな。」

 

「カハッ!っく!」

 

体に大きな傷をおったアーチャーは、追い打ちとばかりにセイバーに蹴り飛ばされ、洞窟の壁に叩きつけられる。

 

 

 

「ハアアァァァァ!」

 

 

その隙にマシュが後ろから攻撃を仕掛けるが、あっさりと反応され、セイバーの振り向きと同時の剣撃によって体勢を崩され、魔力の放出で吹き飛ばされる。

 

 

「つまらん。その程度の力と覚悟でいったい何が出来る?とるに足らないな。」

 

 

「っ!くうぅっ....」

 

マシュの体はボロボロになっており、再び動くのに時間がかかりそうだった。

 

「マシュ‼」

 

それを見たぐだ子が飛び出そうとするが、すぐにオルガマリーに止められる。

 

 

 

 

「....もう飽きたな。最後は我が宝具をもって止めとしよう。」

 

 

 

 

「?!!」

 

その言葉にぐだ子は目を剥き、オルガマリーの拘束をとき、マシュのもとへ向かおうと暴れる。

 

 

 

その様子に目を向けることもなく、セイバーは再び剣を構え、魔力を集束させる。

 

 

 

『不味いぞ!さっきよりも魔力量が上がってる!おそらく聖杯の魔力がセイバーに流れてるんだ‼実質上彼女の魔力は底無しだ!今すぐそこから撤退するんだ‼』

 

「そんなこと言っても間に合わないわよ!マシュとアーチャーは動けないし、キャスターと霊夢の攻撃はほとんど通らないから足止めすらできない!ああ!助けてよレフ!!!」

 

 

私は外野が騒ぐのに構わず、思考する。

 

いったいどのようにしたらこの状況を脱することが出来るかを。

 

 

 

 

(即席で結界を張る?)

 

いや、無理だ。

 

マシュが防いでいたのを見たが、おそらくあの剣は私の作り出す即席結界程度ならばあっさりと破壊するだろう。

 

 

(瞬間移動して直接攻撃する?)

 

だめだ、距離が離れすぎている。

 

それに、セイバーは視界外からの攻撃にも瞬時に反応した。

 

おそらく私と同じく、勘が鋭いのだろう。

 

 

(ありったけの札を全部一気に使う?)

 

無意味だ。

 

セイバーは魔術的な攻撃に耐性らしきものを持っている。

 

キャスターの攻撃を無効化した以上、札による攻撃は全く効かないか、威力が大きく下がるだろう。

 

(どうする、どうする?)

 

 

 

 

 

「.......では、幕引きとしよう。━━卑王鉄槌、極光は反転する。」

 

 

 

「っ!霊夢さん!キャスターさん!先輩たちを連れて逃げてください!」

 

「!?何言ってるのマシュ!今、その状態じゃ...」

 

「先輩!私のことはいいですから!早く行ってください‼くっ!」

 

 

 

 

 

 

「...仲間のために命を散らす、か。........ふん、今の私には関係の無いことだ。━━光を飲め。」

 

 

 

 

「だめだ!マシュ!マシューーー!!!」

 

 

 

 

約束された(エクスカリバー)勝利の剣(モルガ)アアアアアァァァァァン‼」

 

 

 

さっきよりも明らかに強力になった漆黒の光の濁流は、すさまじい勢いでマシュを飲み込もうとする。

 

巻き込まれれば、間違いなく命を落とす、絶望の一撃。

 

どうしようもない死を見ながら、思考だけが勝手に一人歩きする。

 

 

 

 

(宝具は逸話の具現、私の宝具はスペルカード。...スペルカード、...弾幕ごっこ、...スペルカード、ルール、...スペルカードは、1つにつき、.......一回だけ、?!)

 

 

 

 

 

 

 

気付いたとき、私はマシュの前に立ち、1枚のスペルカードを手に持っていた。

 

『今なら使える』

 

そう確信した私は、そのスペルカードを掲げ、宣言する。

 

 

 

 

 

 

「宝具発動!『霊符「夢想封印(むそうふういん)」』!!!」

 

 

 

 

 

 

その瞬間、カードから光が溢れ、七色の巨大な弾幕が複数展開される。

 

 

普段はそのまま敵を追尾する巨大弾幕は、私の正面で1つに集束し、巨大な陰陽玉を形成する。

 

 

 

 

 

そして、セイバーの宝具に真正面から拮抗する。

 

 

 

 

 

「!?霊夢さん!駄目です!逃げてください!このままでは、霊夢さんまで....‼」

 

 

 

「うるっさいわね!黙ってなさい!」

 

 

 

私の一喝により、マシュが口を閉じる。

 

「私はね、基本的に面倒なことはキライなのよ!今回だって、いきなり外の世界に送られたと思えば周りは燃えてるわオルガマリーはヒステリックをおこすわ敵はウザイわで面倒なことばっか!でもね、目の前で一人の人間が死ぬのを黙って見てられるほど、私は達観してないし冷徹でないし薄情でもないのよ‼」

 

 

私はセイバーに向き直り、全身に力を込める。

 

 

「...霊夢さん。」

 

 

 

 

 

 

 

「博麗の巫女を、なめるなぁぁあああぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

私はありったけの力をスペルに注ぎ込む。

 

 

 

すると、拮抗した状態を破り、私の宝具はセイバーの宝具を押し返し、セイバーのもとで盛大に爆ぜた。

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ....」

 

ほとんどの力を使い果たし、私は地に膝をつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やったか!?』

 

「ロマン!それフラグ‼」

 

 

次の瞬間、爆風と共に黒い光が漂っていた砂煙を吹き飛ばす。

 

 

 

「まだだ、まだ終わらない‼」

 

 

 

所々鎧は砕け、全身の至るところから血を流し、見るからに満身創痍の状態なのにも関わらず、セイバーはまだ立っており、宝具を再び使おうとしていた。

 

「認めよう、博麗の巫女よ!貴様は強い!だが、だが、私は負けるわけにはいかない‼約束された(エクスカリバー)━━━」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...セイバー、私のことを忘れている訳ではあるまい?」

 

その声と共に、その場から動けないセイバーの全身に何本もの剣が突き刺さる。

 

「カハッ!....アー、チャアアアアアァァァァァ!!!」

 

 

 

「今だキャスター、しくじるなよ。」

 

「言われるまでもねえ!」

 

 

今まで気配を消していたキャスターは私達の前に立ち、杖を掲げる。

 

 

 

「...少女達よ、よくぞ耐えた、ここからは俺の番だ。━━我が魔術は炎の檻、茨の如き緑の巨人。因果応報、人事の厄を清める社━━倒壊するは、『灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)』‼」

 

 

 

キャスターが詠唱を終えた瞬間、セイバーの足下で炎の輪が形成される。

 

そこから現れたのは、木々で編まれた巨大な人形。

 

人形は動けないセイバーを捕まえると、檻のようになっている自身の胴体に放り込む。

 

そして、炎の中に倒れこみ、すさまじい熱と共に火柱を立て、セイバーと共に炎上するのであった。

 

 

 

 

 

to be continued...




霊夢の夢想封印のイメージは、某東方同人アニメのシーンを元に考えました。


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