アブソリュート・デュオ 《二人目の異能(セカンド・イレギュラー)》※作者就活のため休止   作:真実の月

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《絆双刃》

時間は過ぎ去り、土曜日。

絆双刃(デュオ)》申請の最終日だ。

 

「ではでは《絆双刃(デュオ)》のパートナー申請は今日の夕方六時までに学生証をもって事務局に行って届け出すること。それを過ぎたら、申請してない人は申請してない人から抽選で《絆双刃(デュオ)》が決まって、その後はよほどの理由がない限り卒業まで変更できないからパートナーとはうまくやるように!うさセンセとの約束だぞ!」

 

まくし立てるような口調で最後の通達をした先生はそのままいつものように号令をして教室を出ていった。

放課後を迎えた教室は一気に騒がしくなり、《絆双刃(デュオ)》を組むことにした相手と事務局に向かう同級生が教室を出ていく。

 

「俺たちも行くか、トラ?」

 

「後でいいだろう。わざわざ行列に並ぶなど時間の無駄だ」

 

「なら昼飯を食ってから行くか」

 

透流とトラの会話。どうやら昼飯の後、行列が短くなったあたりで申請に行くつもりのようだ。

 

「あ、風麗。お前も昼飯一緒に食わないか?」

 

「いいのか?」

 

「当然だろ。トラもいいよな?」

 

「そういうのは普通先に確認するものだろう!まあ、ダメとは言わん」

 

「じゃあご一緒させてもらうとしよう」

 

こうして俺たちは食堂に向かった。

 

 

 

「結局ユリエさんとは組まなかったんだな」

 

「ああ、俺は元々トラと組むつもりだったし。ユリエも橘と組むって言ってたしな」

 

「そうか。確かほとんどが仮の《絆双刃(デュオ)》から引き続いて組むつもりみたいだし残っているのは穂高さんか」

 

「あと男子でタツってやつが残ってるみたいだぜ」

 

「全く知らない男子か同じ中学の女子か……せめて知り合いの男子だったらよかったんだがそんな都合のいい話なんて……」

 

「目の前に実例があるだろう」

 

そうだった。この二人は何処で知り合ったのかは知らないが知り合い同士のペアだった

 

「くそ、お前ら模擬戦の時完膚なきまでに叩き潰してやる」

 

「やれるものならな」

 

言い方にむっと着た俺はトラを睨む。一触即発の空気が漂い、周りの生徒たちが席を立って離れていく音が耳に入ってくる。トラの横にいる透流はうろたえているようだ。

 

「何をしているんだ?」

 

その空気を破る女性の声。三人同時に横を向くと、そこには橘と穂高さんの姿があった

 

「あ、ああ。何でもないよ。橘さん達も昼飯か?」

 

「そうだが」

 

「ふんっ!考えることは同じということか」

 

「ところで、橘さんは誰と《絆双刃(デュオ)》を?」

 

「みやびと組む。この後申請に行く予定だ」

 

「なっ!?ユリエは!?」

 

「ユリエからも申し込まれたが……みやびと組むからと断ったぞ?」

 

それを聞いて透流の顔色が変わる。

 

「じゃああと残ってるのは……」

 

「俺とユリエさん、それにタツとかいう男子だけか」

 

俺が言い終わるが否や、透流がすっと立ち上がる。

 

「トラ、《絆双刃(デュオ)》の話は無しにしてくれ」

 

「なに!?ちょっと待て!」

 

「ユリエのところに行ってくる!」

 

透流はそのまま何かに弾かれたように駆け出し、食堂を出ていった。目の前でトラはため息をつき、橘たちはトラの後ろにある席について昼食を取り始める。

ある意味すごい神経の持ち主だと感心していると、不意にトラが口を開いた

 

「貴様はどうするつもりだ?」

 

「お前も含めて残った人とははそこまで話したり何かでペアになったこともないからな、あえて申請は出さない」

 

「なら僕も出さないでおこう。《絆双刃(デュオ)》が組めるかは運次第だ」

 

そして夜。

俺は寮を抜け出し、先日橘と初めて出会った場所でグラウンドを眺めていた。

結果だけ言えば俺は一人あぶれることになった。今度転校生が来るとは先日理事長から聞いてはいるが、《新刃戦》は一人で戦うというのはかなりのハンデだ。

 

「一人、か。なんか懐かしい気もするな」

 

「このような時間に外をうろついている校則違反者はどなたでしょう?」

 

西洋風のランプに照らされる人影。声の調子やシルエットからして理事長か

 

「あらあら。どなたかと思えば貴方でしたか、《二人目の異能(セカンド・イレギュラー)》。早く寮へ戻りなさいな。寮監に見つかれば停学になりますわよ」

 

「あ、はい」

 

俺は立ち上がって寮へと戻ろうとすると、理事長は止めるように手で合図した

 

「いえ、ちょうどいいですわ。貴方に聞きたいことがありますの」

 

「話?」

 

「そうですわ。貴方は《特別(エクセプション)》という言葉を聞いたことがありますか?」

 

「《特別(エクセプション)》……っ!?」

 

言葉をオウム返しのように繰り返した直後、脳を貫くような頭痛が駆け巡り、思わず頭を押さえてうずくまる。同時に《特別(エクセプション)》という言葉が頭に響く。どこかで聞いたのか、それとも失われた記憶の中にこの言葉があるのか。今までこういうことがなかっただけに俺は混乱してしまう。

 

「大丈夫ですか?」

 

「はい……大丈夫、です……!」

 

「無理に思い出す必要はありませんわ。また思い出したときに私のところに来なさい。ただ、《特別(エクセプション)》という言葉は貴方の失われた記憶の鍵の一つでもありますわ」

 

「記憶の鍵……?」

 

「話はそれだけですわ。では、寮監には私が呼びだしたと伝えておきますから、貴方は早く戻りなさいな」

 

「は、はい。わかりました」

 

今度こそ俺は寮に戻ることにした。

腕時計を見ると、短針はすでに11を指すところだった。

 


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