アブソリュート・デュオ 《二人目の異能(セカンド・イレギュラー)》※作者就活のため休止 作:真実の月
今日から新たに始まる授業、《
「ていうかなんで入学直後といってもいいこの時期からやるんだ?武道経験者もいるとはいえほとんどは初心者も初心者だから危ないんじゃないか?」
「技術は教わるだけじゃ身につかないからだとさ」
「はは、ごもっともだな」
こんな会話を透流としながら、ある一組の組手を眺める。
片や息もつかせぬ連撃を放つ女子生徒、片やヒットアンドアウェイを凄まじい速さで行う女子生徒の姿が。周りからは驚きと感嘆の声が上がっている。
「ユリエの動きもすごいけど橘も負けてはないな……」
「武道経験者だったな。たしか橘流って言ったか」
「なんだそれ」
「俺も知らないよ」
「古武術を主体に様々な武芸に通じている有名な流派だ。風麗はともかく、透流お前はあの書類を見る時間は十分にあっただろうが。しっかり目を通していなかったのか?」
「俺はトラと組むつもりだしさ」
「貴様は馬鹿か。もし組めなかったらどうするつもりだ?」
隣でトラの説教が始まり、その声をBGMに、目の前で繰り広げられる組手を眺める。
どちらとも一歩も譲らない接戦。橘の洗練された動きから繰り出される一撃はユリエが素早く避け、逆にユリエが放つ鋭い一撃は橘が受け流し、または避けて対応する。まさに一進一退の攻防、もしあの二人が《
「はいはーい!そこまでー!3分休憩したら相手を変えてもう一回やるよー!」
組手終了のホイッスルが鳴り、先生の宣言と同時に組手をしていたすべてのペアが別れ、武道場の隅へと歩いて行く
「さてと、ちょっと橘さんに《
「おう、速攻で終わらないように頑張れよ」
「お前もな」
透流たちと別れ、俺は橘を探す。俺のいたところのちょうど反対側で誰かと話しているところだった。
「橘さん、ちょっといいか?」
「ああ、荒巻か。《
「ご名答。相手を頼めるか?」
「受けて立とう」
「あ、あの!」
橘の後ろから見覚えのある顔を覗かせる女子生徒。よくよく見ると知っている顔だ。
「ん?あれ、穂高さん?」
「よ、よかったぁ……覚えていてくれたんだ」
「やっぱり知り合いだったのか」
「知り合いも何も同じ中学なんだ。まさか同じ中学出身の同級生がいるなんて……」
「はいはーい!じゃあ続きを始めるよー!」
空気を読まない先生の超ハイテンションな声が騒がしい武道場の中でひときわ大きく響く。
「もう3分かよ。じゃ、また後でな。よろしく頼むぞ、橘さん」
「手加減などしないからな」
俺と橘は立ち上がり、畳の上にあがる。周囲を見渡すと、透流がユリエさんと組んでいるのが見えた。
「始まる前からよそ見か?」
「いやいや、透流の奴が誰とやるのかが気になっただけだよ」
「それじゃあスタートっ!」
開始と同時に俺は一歩踏み込みボディブローを放つ。もちろん寸止めだが、橘がバックステップで避けて間合いを取り直したのを目で確認した。
「鋭い正拳突きだな!」
「お褒めの言葉をどうも!」
「次は私の番といこう!はぁっ!」
俺がやったことをそのままやり返してくる橘。俺が放った一撃よりも早く鋭い一撃を俺は橘と同じようにバックステップで避けて距離をとった。
「レベルアップさせての意趣返しってか。さすがは武術経験者だな!」
「君こそ、今のをいともたやすく避けるとはな!ここからは本気を出させてもらうぞ!」
「上等!」
そこからは話す暇もない双方全力の格闘戦となり、結果的にお互い決定打を打ち込めずに組手終了を示すホイッスルが鳴った。
「あれだけ打ち込んでまさか一撃も入れられんとは……」
「はぁ、はぁ。ありがとう。また手合わせしてくれ」
「望むところだ」
橘の返事を聞いて俺はその場に寝転ぶ。
身体中の筋肉が悲鳴を上げ、それが痛みとなって脳に伝わる。体力が超化されているとはいえ、ここまですればさすがに体力的に辛い。これは明日からトレーニングだなと心に決めて立ち上がり、武道場の隅に向かった。
「お疲れ」
「おう。すさまじい組手だったな。俺とユリエを含めてみんな組手を止めてお前たちの方を見てたぜ」
「おかげでクタクタだ。それで?お前の方は?」
「決定打は避けたけど終始圧倒されたよ」
「はいはーい!おしゃべりは~そこまでっ!これで今日の授業を終わるよー!きりーつれーいちゃくせーっき!ちゃんと体をほぐしておかないとぉ~、明日すっごくきつくなるからね~!」
いつものように授業を終わらせて職員室に帰っていく先生。その後を追うように同級生たちも寮へと向かう。
「さて、戻るか……」
俺もその後に続いて寮の自室へと戻った