アブソリュート・デュオ 《二人目の異能(セカンド・イレギュラー)》※作者就活のため休止 作:真実の月
翌日、朝
「ふぁーあ。あれだけ寝たら嫌でもこんな時間に起ちゃうか……」
日が昇る前に目が覚めた俺は、寮ですることもないので記憶のヒントを探すために寮の外を散歩している。人口島の中心にある建物と一体化している巨大な時計台は午前5時前を示しているのでもう少し待てば日は昇るだろう。
「まだ五時前か……どこか暇をつぶせる所ってあるかな……」
「おはよう!」
横のグラウンドから挨拶が聞こえてきた。
だれかはわからないが、とりあえず挨拶を返し少し近づく。よく見ると、挨拶をしてきた人以外にも、トラックを走る人影も見えた。
「ん?君は……ああ、自己紹介の時からずっと寝ていた」
「荒巻風麗だ」
「私は橘巴だ。君もトレーニングか?」
「いや、早く起きすぎたからちょっと散歩をな」
「そうか。なら私たちと一緒に朝練でもしないか?」
「私たち?あそこで走っているあいつも一緒なのか?」
「そうだ」
俺と橘の視線は走っている人影へ向かう。女性らしきその人影は、やっとコーナーを抜けてこちらに向かってくるところだった。
この学校にいるからには《
「あいつは?」
「穂高みやび。私の仮の《
「穂高さん……もしかすると知ってるかも」
「実家が近所なのか?」
「まあ、そんなとこ。申し訳ないけど今日のところは断るよ。また後、食堂か教室で」
「ああ。また後で」
俺は橘と別れ、また散歩を始めた。
結果だけ言うと一時間近く歩いて、記憶の手掛かりになりそうなものはなかったし、あの後誰かと会うこともなかった。
もう一度時計台を見ると、ちょうど食堂が開く時間になっていた
食堂にはまだ一人も生徒はいなかった。
時間は午前6時。ほとんどの生徒が起き始める時間でもあり、朝練をしていた生徒が一度部屋に戻って着替えるような時間だ。そのため、ビュッフェ形式の食堂の大皿の上にはまだ盛り付けられたばかりの野菜や肉が乗っている。
俺はとりあえず肉を数切れと野菜をいくつかとってサラダっぽく盛り付けて、一人カウンター席に着いた。
「あら、お早いですわね」
さあ食べようと思った時、後ろから理事長の九十九朔夜に声をかけられた。
おはようございます。と返すと、理事長は俺の隣に座ってきた。
「朝はここで済ませているんですか?」
「いえ。普段は私の部屋で済ませていますわ。しかしずっとそれでは飽きてきますから、時々学食に来ているのですわ。それよりも昨日、入学式の後ずっと寝ていたそうですわね」
「ええ、体は疲れてなかったのですが、どうにも眠たくて。睡魔の誘惑に負けて寝てしまいました」
「いけませんわね。ちゃんと聞いておかないと、あとで困ることになりますわ」
「はい、以後気を付けます……」
すでに困りかけている俺は食べながら頭をがくんと下げた
「まあ、次から気をつけなさいな」
「わかりました」
それからしばしの間、お互い無言で朝食を食べ進めていると、不意に理事長が口を開いた
「人には必ず『過去』があります。《
「だから俺の《
「その通りですわ。そして、貴方は魂の形、《
「はぁ。」
「しかし、形がないということはすなわち空白。闘う者、護る者、支える者……空白に入るものならば何者にもなることが出来るということとも言えますわ。」
一息おいて、理事長は話を続ける
「今回、理事長権限で特別に貴方だけ《
「特別に?」
「その理由は近いうちにわかることでしょう。早ければ、ゴールデンウィーク明けにも明らかになりますわ」
そのまま席を立って、理事長は食堂を出て行った。
また一人になった俺は、食事を済ませて部屋に戻った