アブソリュート・デュオ 《二人目の異能(セカンド・イレギュラー)》※作者就活のため休止 作:真実の月
「見えた!」
リーリスが叫ぶ。空は星が輝き、目の前の広場は明るく輝いている。あまり大きくはないが話し声も聞こえる
「やっと着いたか《
「最後か……」
「ねえ、人が少なくないかしら?」
周りを見ると、クラスメイトの数が少ない。変わりに本校とすこし違った制服の学生がせわしなく動き回っている
「救難信号を出して手当を受けてるのが半数、後はわからねぇ」
「ところであの襲撃は何だ?」
「ああ、あれか?それならあいつらに聞けよ。悪いが私もここに来るまで知らなかったもんでな」
「あいつらってのは誰だ?」
「あそこで治療を受けてる二人だよ。てめぇらとやり合ったとか言ってたぜ。」
月見が指差す先を見ると、黒装束の頭だけ外した男女がいた。よく見れば片方はさっきの槍使いだ
「待て、本格的に分からなくなってきた」
「知るか。襲撃に関しては後で理事長から説明してくれるんじゃねぇか?」
「フレイ、とりあえず聞きに行きましょ?」
「そうだな。行こう」
月見を残して二人の下へ向かう
あちらも気づいたようで顔を上げて手を振ってきた。一応こちらもふりかえすが、さっきまで戦っていたのにいきなりこんなフレンドリーな態度を取られると困惑してしまう
「さっきぶりだな、えーっと……風麗だったか?」
「そうだ。こっちが俺の《
「リーリスよ、よろしくね」
「ああ、銃の《
「優、私を忘れないで」
「そうだそうだ。俺の《
「島田佳奈、カナで良い」
弓矢の《
「ところで、さっきの襲撃は一体どういうことだ?」
「ああ、あれか?それが俺達分校組の役割だったんだよ」
「分校?分校はイギリスだけじゃないのか?」
リーリスも同じように首を傾げる。
「どういうこと?」
「こう言うこと」
そして二人は立ち上がり、合宿所を背にする
「「ようこそ、昊陵学園分校へ!」」
天城は気合いの入った明るい声で、カナさんは淡々と。《
「じゃあ、《資格の儀》で負けた人たちの内、入学を希望した人たちがここに来てるってことで良いのか?」
「そうそう。まさかまだ道があったなんて思いもしなかったよ」
「私も驚いた。でも、頑張ればいつか雪辱は果たせられるって思った。だから、諦めずにここに来た。結局負けたけど」
詳しく説明を聞いてやっと襲撃の意図が分かった。
あの襲撃は分校の《
「全く、本当に無茶苦茶だなこの学園は」
そんな独り言を呟いた直後、放送が入った。
何やら催しに先だって集会が行われるらしい。さっきまでせわしなく動いていた分校の生徒や、荷物の整理をしていたクラスメイトががあるというに移動している
「おっと、もうそんな時間か。カナ、行こう」
「分かった」
そういい残して二人は体育館らしき大きな建物へ走って行った。
「俺達も行こう」
「そうね」
俺達もそのあとを追う。
体育館には教師も含めてかなりの人数が集まっていた。俺達が到着すると、全員揃ったようで理事長が三國先生を従えてステージへ上がった
「本日はお疲れ様ですわ。これより三國から滞在中のお話がありますが、その前に私から皆さんへ、一つ謝罪しなくてはならないことがありますわ」
謝罪というのはあの《資格の儀》で嘘をついていたことだろう
「《資格の儀》の際、敗者は入学を認めないなどと虚偽を口にしましたこと、ここにお詫び致しますわ」
そして深々と頭を下げた。この衝撃の光景に分校の生徒を中心にどよめきが起こる
俺は聞いただけだが、学園(ここでは本校のことだ)の地下には《
真実は分からないが、昊陵学園という特殊な学校の理事長である以上、間違った噂とも言いきれない。
どちらにしろ、理事長という立場の人物がこうして自分の非を認めたことで、多くの生徒は印象が変わっただろう
「ふふっ、彼女らしいわ」
「何か言ったか?」
「いいえ、なんにも。じきに思い出すわ」
「はぁ?」
理事長が俺の記憶に関係のあるということだろうか?
そんなことを考えると、頭に痛みが走り映像が浮かんで来る。ビジョンは、かなり鮮明に見えてきた
「お兄ちゃん!おじいちゃんのところに行こっ!」
無邪気な声で手を引っ張る4歳くらいの子ども。顔は見えないが、髪型は理事長に似ている。
「ごめんなさいお兄ちゃんーーううん、風麗お義兄様」
次に浮かんできたのは、火事が起きた後の様な部屋で、涙ぐみながらストレッチャーの様なものに横になる俺の首に無針注射器を当てる子どもーー否、理事長の姿だ。
(理事長だと……!?)
理事長は今まで会ったことが無いはず。なのに、まるで会ったことがあるようなビジョンが見えた。
まさか、と思う。いや、そのまさかだろう。理事長はーー俺の記憶を知っている!
「フレイ?」
「ああ、大丈夫だ。ちょっと久しぶりの感覚に戸惑っただけだよ」
「そう、ならいいけど……」
よくよく思い返せば、あの時の夢。あれに出てきたのは何人かの研究者だったはずだ。そう考えると、燃えていたのは研究施設。今のビジョンとあの夢が同じ場所だとすれば、理事長は俺の記憶を知っている可能性が高い。
だがこの仮説は余りにも穴が多い。そう考えると可能性は0に近いだろう。しかし0では無いからには聞く価値はある
「この後は夕食ですが、本日は既に分校の皆さんが準備をしてくれています。各自、外の広場へ向かってください」
気がつくといつの間にか話は終わっていた。
夕食という言葉に反応して殆どの生徒が喉を鳴らし、話が締めくくられると同時に席を立って移動を始めていく
「フレイ!急ぐわよ!」
「ちょっ、リーリス!そんなに急がなくても夕食は逃げないって!」
浮かんだ謎は一度おいておき、そんなやり取りをしながら俺達は外へ出た